顕微鏡
Online ISSN : 2434-2386
Print ISSN : 1349-0958
44 巻, 2 号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
特集:生体高分子の高分解能構造解析
  • 光岡 薫
    2009 年 44 巻 2 号 p. 81-
    発行日: 2009/06/30
    公開日: 2020/01/21
    ジャーナル フリー
  • 岩崎 憲治, 宮崎 直幸, 片山 寿美枝, 大村 敏博
    2009 年 44 巻 2 号 p. 82-86
    発行日: 2009/06/30
    公開日: 2020/01/21
    ジャーナル フリー

    イネ萎縮病は,ツマグロヨコバイやイナズマヨコバイの媒介によって,イネ萎縮ウイルスがイネ科の植物に感染することで発病する.昆虫においても植物においても増殖するこのウイルスは,外殻と内殻からなる正二十面体構造をしている.我々は,外殻を構成するキャプシドからチューブ状結晶を作製することに成功し,その解析から外殻のもつ機能を提唱することができた.また,昆虫細胞間でのウイルス移行の機構についても,ウイルスの蛋白質が感染細胞で作るチューブ状の構造物の電顕イメージングにより,その機構解明に迫ることができた.これ以外にもイネ萎縮ウイルスは,そのライフサイクルにおいて,自身のRNAがコードする蛋白質を使って様々な超分子複合体を宿主細胞に形成する.分子・細胞生物学や生化学との連携により電顕イメージングが有効に活用できる例として本特集にて紹介する.

  • 大嶋 篤典
    2009 年 44 巻 2 号 p. 87-92
    発行日: 2009/06/30
    公開日: 2020/01/21
    ジャーナル フリー

    多細胞生物において細胞間の物質透過を担うギャップ結合は隣接細胞の細胞質を直接連絡するコミュニケーションチャネルである.ギャップ結合のゲーティング機構に関しては以前から複数存在することが指摘されていたが,それらの構造学的知見は少なかった.本稿ではコネキシン26(Cx26)が作るギャップ結合の二次元結晶から電子線結晶学によって計算した三次元構造と投影像の構造解析を紹介する.Cx26M34A変異体の三次元構造はチャネルの孔の中に直径約20 Åの密度が確認され,これがプラグとして通路を塞ぐことでチャネルの閉じた状態を作り出すことを強く示唆するものであった.一方,N末端を切断したCx26M34Adel2-7の投影像ではプラグに相当する密度の有意な低下を確認した.これらの構造解析からコネキシンのN末端がチャネルの孔の中で物理的に閉じることによってチャネルを開閉するプラグゲーティング機構を提案する.

  • 広瀬 恵子, 上野 裕則
    2009 年 44 巻 2 号 p. 93-97
    発行日: 2009/06/30
    公開日: 2020/01/21
    ジャーナル フリー

    ダイニンは,微小管上を運動する分子モータータンパク質である.その運動を説明する最も一般的なモデルは,ダイニン分子がストークと呼ばれるドメインの先端で微小管に結合し,ストークを回転させることによって微小管を動かすというものだった.しかし,ストークは単一のコイルドコイル構造から成る細い構造であり,微小管に結合した状態での電子顕微鏡観察は,ネガティブ染色法でもクライオ電子顕微鏡法でも難しかった.我々は,酢酸ウラニル染色とクライオ電子顕微鏡を組み合わせた新方法「クライオポジティブ染色法」を用いることにより,微小管に結合したストークの観察に成功した.2つのヌクレオチド状態で構造を比較した結果,上記モデルに反して,ストークは微小管に対してほとんど角度を変化させないことがわかった.

  • 加藤 貴之, Russell P. Goodman, Christoph M. Erben, Andrew P. Turberfield, ...
    2009 年 44 巻 2 号 p. 98-102
    発行日: 2009/06/30
    公開日: 2020/01/21
    ジャーナル フリー

    凍結氷包埋試料の低温電子顕微鏡を用いた単粒子像解析法は,生体超分子複合体など巨大な分子集合体の構造解析にその真価を発揮する.その反面,分子量100 kDa以下の小さな分子では,S/Nの悪い写真に粒子像が埋もれてしまうため,解析は不可能であると言われてきた.我々は,分子量約78 kDaの正四面体DNAナノ構造体の立体構造を単粒子像解析法を用いて解析した.さまざまな画像処理法を組み合わせて活用することで,DNAの二重らせん構造を解像し,設計上予想された2種類の立体異性体を区別するのに十分な,12 Å分解能の構造解析に成功した.

解説
  • 中西 彊
    2009 年 44 巻 2 号 p. 103-110
    発行日: 2009/06/30
    公開日: 2020/01/21
    ジャーナル フリー

    NEA表面放出機構を用いて電子を真空中へ取り出すGaAsフォトカソード型電子源はスピン偏極ビーム生成を可能とするなど幾つかの魅力的な能力を持つ電子源である.この偏極ビームを電子顕微鏡分野の研究者に利用して欲しいと願う立場から,ユーザーが知っておくべき基本的性能(偏極度,量子効率,電流密度,輝度,エネルギー分解能,運転持続時間など)についてその到達点と今後の可能性について解説する.最後に新型偏極電子源により磁性薄膜形成過程のスピンLEEM画像(磁区構造)の実時間観察が可能となった例を紹介した.

  • 松﨑 利行, 高田 邦昭, 小澤 一史
    2009 年 44 巻 2 号 p. 111-116
    発行日: 2009/06/30
    公開日: 2020/01/21
    ジャーナル フリー

    アクアポリン(aquaporin, AQP)はおもに水チャネルとして機能する膜タンパク質で,哺乳類ではAQP0からAQP12の13種類が知られている.水の移動が盛んな器官にはこのうちいずれかのAQPの発現がみられることが多い.腎臓にはAQP1, AQP2, AQP3, AQP4, AQP6, AQP7,およびAQP11が発現し尿濃縮において重要な役割を担っている.なかでも集合管細胞のAQP2はバソプレッシンに反応して細胞内小胞から細胞膜へと移行し,水の再吸収を調節している.唾液腺には腺房細胞の頂部細胞膜にAQP5があり,唾液分泌に重要な役割を果たしている.水の分泌量の変化に伴うAQP5の細胞内分布の変化が示唆されていたが,組織化学的検討からは否定的である.一方で,分泌果粒の放出により細胞膜と果粒の膜が融合するとAQP5の分布にも変化が見られる.これはエキソサイトーシスとエンドサイトーシスの際の細胞膜の動態を理解するうえで興味深い.

講座
  • 飯田 弘, 栗尾 仁之, 金子 たかね
    2009 年 44 巻 2 号 p. 117-120
    発行日: 2009/06/30
    公開日: 2020/01/21
    ジャーナル フリー

    精子はゲノムと卵活性化因子の運搬に特化した細胞であり,精子の運動,即ち鞭毛運動の分子基盤を理解することは精子を理解するために重要である.哺乳類精子鞭毛には軸糸に加え,それを取り囲む軸糸周辺構造体がある.軸糸周辺構造体は外側緻密線維,衛星線維,線維鞘,ミトコンドリア鞘からなり,軸糸と有機的に結合して鞭毛を構築している.そのため,哺乳類精子の鞭毛は軸糸のみから構成される下等動物の鞭毛よりも構造的に複雑である.これらを構成する分子の同定や機能解析により,少しずつ精子の構造や鞭毛運動の仕組みが解明されつつある.我々が最近研究対象としてきた分子を中心に,精子鞭毛内オルガネラの構造と機能について概説する.

  • 生田 孝
    2009 年 44 巻 2 号 p. 121-129
    発行日: 2009/06/30
    公開日: 2020/01/21
    ジャーナル フリー

    本講座では透過型光学顕微鏡を用いた結像実験の結果を示した上で,光学顕微鏡,電子顕微鏡に適用可能な結像光学系3次元結像特性の概念を述べる.これら実験結果は3次元光学的伝達関数(3D-OTF)を基にして解釈,議論される.最後に3次元結像特性の改善に向けて,照明・結像系の能動的な制御と逐次画像処理を用いた新しい結像手法を提案する.

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