顕微鏡
Online ISSN : 2434-2386
Print ISSN : 1349-0958
44 巻, 3 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
特集:SPM による半導体表面分析の最近の展開
  • 藤田 大介
    2009 年 44 巻 3 号 p. 156-
    発行日: 2009/09/30
    公開日: 2020/01/21
    ジャーナル フリー
  • 三井 泰裕
    2009 年 44 巻 3 号 p. 157-160
    発行日: 2009/09/30
    公開日: 2020/01/21
    ジャーナル フリー

    近年のLSI故障解析ではデバイスの微細化,構造の複雑化に伴い,詳細な故障箇所同定が困難となっている.これに対応するための技術として走査電子顕微鏡(SEM)を用いたナノプロービングシステムが開発された.SEM式ナノプロービングシステムではSEMで観察しながら,トランジスタや配線に微細探針を接触させ,電気特性を計測する.本稿ではSEM式ナノプロービングシステムの実用化に対する開発課題(微細箇所へのプロービング可能な探針形状,高精度,高信頼測定のためのプローブ―試料間接触抵抗低減,探針長寿命化,高スループット化の為の高精度迅速プローブ動作制御,迅速プローブ交換,使いやすさのためのSEMの高画質化,広視野化など)および実際の解析事例について概説する.

  • 張 利
    2009 年 44 巻 3 号 p. 161-164
    発行日: 2009/09/30
    公開日: 2020/01/21
    ジャーナル フリー

    近年,微細化によりLSIデバイスのサイズがナノスケールに突入し,プロセス制御の困難さが増し,高精度,高分解能,高次元分析技術への要求が高まっている.その中でも最も重要なテーマの一つは電荷キャリア濃度分布の2次元計測技術である.その代表的な計測技術として走査型広がり抵抗顕微鏡(SSRM)が注目されている.SSRMは,導電性原子間力顕微鏡(C-AFM)アプリケーションの一つであり,デバイス断面に導電性プローブを当てて内部抵抗を精査する手法で,短時間で電荷キャリアの分布を2次元的に解析できる.本稿では,SSRM技術を用いたキャリア分布評価において,導電性プローブと試料間の接触抵抗低減による分解能向上や,断面試料作製プロセス,3次元デバイスシミュレーションにより1 nm高分解能検証及び,45 nm以降世代の実デバイス解析への応用例を紹介する.

  • 小林 圭
    2009 年 44 巻 3 号 p. 165-169
    発行日: 2009/09/30
    公開日: 2020/01/21
    ジャーナル フリー

    原子間力顕微鏡(AFM)を用いることで,半導体表面の構造観察だけでなく,さまざまな電気特性計測が可能である.導電性カンチレバー探針を試料に接触させて静電容量や抵抗を測定する手法は広く知られているが,ダイナミックモードAFMを用いて静電気力を測定することでも,表面電位や静電容量などの電気特性計測が可能であり,最近になって原子分解能の表面電位観察例も報告され始めている.本稿では,ダイナミックモードAFMによる静電気力検出に基づく半導体デバイスの評価手法について原理を紹介するとともに,最近の動向およびドーパント分布評価の事例を紹介する.

  • 本田 耕一郎, 長 康雄
    2009 年 44 巻 3 号 p. 170-173
    発行日: 2009/09/30
    公開日: 2020/01/21
    ジャーナル フリー

    半導体デバイス中に蓄積された電荷を観察することはデバイスの動作原理や信頼性上の特性を理解する上で重要である.特にフラッシュメモリは注入電荷を利用してセルトランジスタの閾値電圧を変化させることでメモリ素子として動作させるため,電荷の蓄積位置を明らかにすることは重要である.したがって蓄積された電荷を直接観察する方法の開発が期待される.この電荷の可視化手段として,マイクロ波顕微鏡技術の一種である走査型非線形誘電率顕微鏡法(Scanning Nonlinear Dielectric Microscopy: SNDM)はきわめて有効な手段である.私たちはSNDMにより,どのように固定電荷の電子とホールを検出することができるかを説明する.またSNDMを応用して,Metal-SiO2-SiN-SiO2-Semiconductors(MONOS)型メモリの蓄積電荷の存在位置,書き込み―消去を繰り返すいわゆるサイクリング後の電荷の分布に関して報告する.更に微細化デバイスに対応できる高分解能技術に関しても述べる.

  • 尾身 博雄, Ilya Sychugov, 小林 慶裕, 村下 達
    2009 年 44 巻 3 号 p. 174-178
    発行日: 2009/09/30
    公開日: 2020/01/21
    ジャーナル フリー

    物質の表面および表面から数ナノメータ程度のナノ領域でルミネッセンスの特性を評価することを目指し,同一のナノ領域に対してトンネル電子励起および近接場光励起によるフォトルミネッセンスを近接場で測定することを可能とする新しいタイプの走査型プローブ顕微鏡,すなわち,トンネル電子・近接場光励起一体型プローブ顕微鏡を開発したので紹介する.本装置の性能はGaAs基板上GaAs/AlAs多層構造のヘキ開面を観察することにより評価した.本装置の開発実現のポイントは,半導体表面の微弱な近接場光を検出するため,トンネル電子と光励起を同時に可能とする高い集光効率のイルミネーション・コレクションプローブをシミュレーションにより設計し,ナノメートルの精度で作製することに成功したことにある.

解説
  • 釜崎 とも子, 高木 智子, 馬渕 一誠, 大隅 正子
    2009 年 44 巻 3 号 p. 179-184
    発行日: 2009/09/30
    公開日: 2020/01/21
    ジャーナル フリー

    アクチン細胞骨格は,細胞の極性成長や細胞質分裂などの生命活動の基盤として重要である.分裂酵母は,アクチン細胞骨格の形成機構や役割を研究するための優れたモデル系である.分裂酵母のアクチン細胞骨格は,主に蛍光顕微鏡によって解析されており,パッチ,ケーブル,リングの3種の構造として観察されるが,その微細構造はほとんど可視化されていなかった.最近,我々は加圧凍結固定法および免疫電子顕微鏡法によって,3種のF-アクチン構造の微細形態を明らかにした.さらに,分裂酵母細胞のアクチン細胞骨格を構成するF-アクチンの方向性を初めて明らかにした.これらの解析から,アクチン細胞骨格に関する基本的な情報や,アクチン細胞骨格の機能を解明するための一助となる知見が得られた.

  • 藤本 俊幸, 一村 信吾
    2009 年 44 巻 3 号 p. 185-190
    発行日: 2009/09/30
    公開日: 2020/01/21
    ジャーナル フリー

    ナノテクノロジーの産業への応用・展開が進展している現状を受け,2005年5月,ISO(国際標準化機構)の中にナノテクノロジーを専門に扱う新しい技術委員会(TC229)が発足した.ここでは,ナノテクノロジー国際標準化の中核となっているTC229において,標準化が進められている計量計測に関連した項目と,標準化に対する戦略について紹介する.

講座
  • 武藤 俊介, 巽 一厳
    2009 年 44 巻 3 号 p. 191-198
    発行日: 2009/09/30
    公開日: 2020/01/21
    ジャーナル フリー

    電子エネルギー損失分光法(EELS)における内殻励起スペクトル(ELNES)の解釈のためには,第一原理計算に基づく理論予測スペクトルとの比較が必要になる.近年,この目的のためにいくつかのプログラムコードが公開されており,比較的手軽にスペクトル予測が可能となってきた.本稿では,ELNESの理論計算のための基礎知識を簡単に説明した後,一般に公開されている代表的なプログラムの特徴と使用上の注意を比較してまとめ,ELNESから化学結合状態を議論するための手順について紹介する.最後にケーススタディとして,異なる酸素配位環境にある金属酸化物の理論ELNESを本稿で紹介したいくつかの方法で実際に計算して,それぞれの化学結合状態に関して具体的に比較検討する.

  • 戸田 裕之, 小林 正和, 鈴木 芳生, 竹内 晃久, 上杉 健太朗
    2009 年 44 巻 3 号 p. 199-205
    発行日: 2009/09/30
    公開日: 2020/01/21
    ジャーナル フリー

    シンクロトロン放射光による高分解能X線トモグラフィーを念頭に,X線の吸収や屈折を利用するX線イメージングの基礎的な事項,三次元画像再構成の原理,画像のS/N比などについて詳述する.また,第三世代の大型放射光施設であるSPring-8で現在利用できるX線トモグラフィーのセットアップについて,検出器やシンチレーターの特性も含めて紹介する.これらに加え,筆者らの研究事例など,各種応用研究の現状についても簡潔に触れる.本稿では,高い空間分解能が応用研究の鍵となることに鑑み,空間分解能を本質的に規定するサンプリングの考え方をはじめ,結像光学のための光学素子,検出器系やその他の各種因子など,様々な観点から空間分解能を考えていく.これは,X線の上流から下流に至る様々な因子が複雑に重畳し,X線トモグラフィーで得られる画像の空間分解能が規定されるためである.

  • 藤田 秋一, 藤本 豊士
    2009 年 44 巻 3 号 p. 206-209
    発行日: 2009/09/30
    公開日: 2020/01/21
    ジャーナル フリー

    従来の免疫電顕法では,脂質分子の分布を捉えることは困難であった.急速凍結法とSDS処理凍結割断レプリカ標識(SDS-FRL)法を組み合わせることにより,脂質を物理的に固定し,膜脂質の分布をナノレベルで定量的に解析することが可能になった.空間統計学的な解析を用いることで,膜内での二次元的分布を客観的に判断することもできる.この方法を応用することにより,糖脂質GM1とホスファチジルイノシトール4,5-二燐酸(PI(4,5)P2)の分布について,他の方法では得られない新たな知見を獲得することができた.

  • 宮田 真人
    2009 年 44 巻 3 号 p. 210-214
    発行日: 2009/09/30
    公開日: 2020/01/21
    ジャーナル フリー

    病原性のバクテリアであるマイコプラズマは細胞の一方の極に膜突起を形成し,その部分で固形物表面にはりつき滑るように動く,滑走運動を行う.そのメカニズムはこれまでに調べられてきた生体運動とは根本的に異なる.最速種,Mycoplasma mobileを用いた一連の研究により,その装置と構成タンパク質,さらにはメカニズムが明らかになりつつある.滑走の装置は4つのタンパク質から構成され,細胞内部からくらげのような骨格構造に支えられている.ATPを加水分解することによって作られた動きが,細胞表面の“クランク”タンパク質をへて“あし”タンパク質に伝わる.あしはひも状の構造で,シアル酸を結合して決まった方向に引っぱることにより,細胞を前方向に進める.

  • 清蔭 恵美, 樋田 一徳, 山本 登志子, 石村 和敬
    2009 年 44 巻 3 号 p. 215-218
    発行日: 2009/09/30
    公開日: 2020/01/21
    ジャーナル フリー

    副腎・性腺などの末梢器官とは独立して中枢神経系でde novo合成されるステロイド物質は神経ステロイドと呼ばれ,神経機能の調整と維持に関わっていると考えられているが,その存在意義は未だ十分明らかになっていない.このため我々は神経ステロイドを合成する酵素に着目し,その局在を解析している.本稿ではステロイド合成酵素のうちtestosteroneやprogesteroneを還元する酵素である5α-reductaseの嗅球における局在についての解析結果を紹介し,神経ステロイドの存在意義を合成酵素の点から考えてみたい.

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