細菌は飢餓や低温等のストレス下で生存するために種々の適応戦略を有している.代表的なものはグラム陽性菌では芽胞の形成である.一方,グラム陰性菌ではバイオフィルムの形成や生きているが培養できない(VNC:viable but noncalturable)状態への移行などが考えられる.コレラ菌は飢餓等のストレスが加わると,通常見られる平滑な(スムース)コロニーからしわのよった(ルゴース)コロニーに変化することを見出した.ルゴースコロニーはバイオフィルムを形成し,酸化ストレスや高浸透圧のストレスに抵抗を示した.また,コレラ菌を低温や低栄養の培地中で長期間培養すると,培養能が徐々に低下し寒天培地上でほとんどコロニーを形成しなくなった.つまりVNC状態へ移行した.VNC状態の菌をカタラーゼ等の抗酸化剤を含む培地に播種することにより蘇生(コロニー形成)に成功した.コロニー形態の相変異やVNCへの移行はコレラ菌のストレスに適応するための重要な戦略と考えられる.
CMOSイメージセンサーを用いた電子直接検出カメラ(Direct electron detector: DED)が開発され,次世代の透過電子顕微鏡用撮像媒体として注目されている.DEDはその構造原理からCCDに比べて高い解像度と感度を持つことから,クライオ電子顕微鏡などの低照射観察への応用が期待される.また連続高速撮影が可能なため,試料経時観察やドリフト補正などにも利用される.本稿ではそのDEDの仕組みと性能,そしてこれを利用した最近の応用研究を紹介する.