顕微鏡
Online ISSN : 2434-2386
Print ISSN : 1349-0958
50 巻, 1 号
選択された号の論文の12件中1~12を表示しています
特集:電顕のためのシミュレーションの基礎
  • 今野 豊彦
    2015 年 50 巻 1 号 p. 5-
    発行日: 2015/04/30
    公開日: 2019/09/03
    ジャーナル フリー
  • 小暮 敏博
    2015 年 50 巻 1 号 p. 6-10
    発行日: 2015/04/30
    公開日: 2019/09/03
    ジャーナル フリー

    パソコンを使って電子回折図形を幾何的に計算・描画する方法を逆格子,エワルドの作図,消滅則等を基に説明する.エワルドの作図から励起誤差を数式化し,それがある範囲以内に収まる逆格子点をプロットすることで,高次のラウエゾーンも含めた回折図形を描画する.また実測された電子回折図形から,考えられる結晶の方位や反射の指数などを計算する手順を述べる.ゼロ次ラウエゾーンから得られる反射間の3つの距離を満足する指数あるいは方位の候補を探し,その方位で計算・描画した回折図形と比較することでその候補の妥当性を判断する.実測と計算との不一致の原因についても考察する.

  • 石塚 和夫
    2015 年 50 巻 1 号 p. 11-15
    発行日: 2015/04/30
    公開日: 2019/09/03
    ジャーナル フリー

    高分解能電子顕微鏡には透過型電子顕微鏡(CTEM)と走査型透過型電子顕微鏡(STEM)がある.現在,どちらのタイプの電子顕微鏡でも最適な条件では原子コラムの並びが観察できる.しかし,電子顕微鏡像から推定された原子構造が正しいこと確認するにはシミュレーションが必要になる.試料の構造情報と顕微鏡の結像情報をシミュレーションプログラムに与えれば,顕微鏡像が表示されるが,CTEMとSTEMでは顕微鏡像に寄与する信号が異なり,電子レンズの効果も異なる.表示された結果を正しく評価するにはシミュレーションの基本的な考え方やアルゴリズムの大枠を理解しておく必要がある.本解説ではマルチスライス法による高分解能電顕像のシミュレーションの基礎的な考え方,特に弾性散乱,熱散漫散乱の計算方法および部分干渉性の取り扱いについて説明する.

  • 池野 豪一, 溝口 照康
    2015 年 50 巻 1 号 p. 16-22
    発行日: 2015/04/30
    公開日: 2019/09/03
    ジャーナル フリー

    原子構造や相安定性など第一原理計算が与えてくれる情報は非常に豊富である.第一原理計算を顕微鏡法や分光法と組み合わせることは現代の物質研究において不可欠になっている.その一方で,ブラックボックス化した計測と計算をやみくもに行うだけでは,せっかくの発見を見逃すだけではなく,間違った結論を導いてしまう危険性がある.計測や計算された結果を正確に理解し,それらを活用するためには,その原理と原則をある程度理解することが不可欠である.本稿では第一原理計算で用いられる種々な近似を説明したのちに,EELS理論計算の基礎と応用を述べている.

  • 渡辺 万三志, 石塚 和夫
    2015 年 50 巻 1 号 p. 23-27
    発行日: 2015/04/30
    公開日: 2019/09/03
    ジャーナル フリー

    多変量統計解析(MSA: multivariate statistical analysis)は,最近の分析電子顕微鏡(AEM: analytical electron microscope)で測定可能となった巨大なスペクトルイメージ(SI: spectrum imaging)を効率よく解析する上で必須の解析法の一つである.本稿では,まず,MSA法の中で最も一般的な主成分解析(PCA: principal component analysis)をベースに,その原理と利点を解説する.次に,PCA法を用いることで導入される恐れがあるアーティファクトについて言及する.最後に,PCA法によって導入されるアーティファクトを抑えるために,筆者らが開発したLocalPCA法を紹介する.

解説
  • 楠 美智子, 乗松 航
    2015 年 50 巻 1 号 p. 28-38
    発行日: 2015/04/30
    公開日: 2019/09/03
    ジャーナル フリー

    グラフェンは理想的な2次元原子膜であり,その優れた電気特性から,特に高速電子デバイスなどエレクトロニクス応用に向けた研究が精力的に行われてきた.本稿では,グラフェンの合成法の一つであるSiC表面熱分解法に焦点を絞り,主に透過電子顕微鏡を用いて調べたエピタキシャル・グラフェンの成長機構,基板との界面構造,積層構造について解説する.特にSiCの極性や表面ステップ構造がグラフェン特性に及ぼす多彩性,優位性を紹介するとともに,近年の移動度を中心とした特異な電気特性,結晶異方性,ナノリボン化,ねじれ積層構造等についての話題をレビューし,今後の可能性を述べる.

  • in situ hybridization法を中心に―
    日野 真一郎, Narantsog Choijookhuu, 菱川 善隆
    2015 年 50 巻 1 号 p. 39-47
    発行日: 2015/04/30
    公開日: 2019/09/03
    ジャーナル フリー

    遺伝子が持つ本来の役割を知るためには,転写レベルでの調節,翻訳レベルでの調節,分解速度,細胞内局在を個々の細胞で見極めることが重要であり,タンパク質および核酸の両者の発現動態を総合的に検討することが不可欠である.これらを検出する方法として,免疫組織化学は抗原抗体反応を用いて細胞内におけるタンパク質の発現や局在を検出するものであり,in situ hybridization法は組織切片上で特異的な塩基配列を持つ核酸分子を視覚化することにより,個々の細胞レベルのin situ(本来存在する場所)で検出する方法ある.本解説では,in situ hybridization法に焦点を絞り,mRNAを可視化する必要性と基本原理を述べた後に,評価の仕方と応用例について説明する.

  • 樋田 一徳, 清蔭 恵美, 鈴木 良典, 浜本 真一
    2015 年 50 巻 1 号 p. 48-53
    発行日: 2015/04/30
    公開日: 2019/09/03
    ジャーナル フリー

    脳の基本的神経回路のモデルとして注目される嗅覚系の一次中枢の嗅球は,これまで介在ニューロンを中心としたニューロン構成の解析から始まったが,最近の新たな細胞標識法や顕微鏡技術の発展などにより,従来同定できなかったニューロン,特に他の脳領域からの長距離にわたる遠心性投射系ニューロンの単一標識が可能となってきた.これらのニューロンによる神経回路調節の構造的基盤は従来推測の域を出ていなかったが,遺伝子改変動物,ウイルスベクターを用いた遺伝子導入,多重免疫染色,レーザー顕微鏡と電子顕微鏡を直接組み合わせた統合解析,デジタル単一ニューロントレース,電子線トモグラフィーを駆使することで,嗅球神経回路への遠心性調節ニューロンの存在意義が分かり始めた.本稿では最近の筆者らのセロトニンニューロンについての所見を紹介し,神経回路への調節系の三次元構造解析の有用性と意義,そして今後の発展の可能性を論じたい.

講座
  • 木森 義隆
    2015 年 50 巻 1 号 p. 54-60
    発行日: 2015/04/30
    公開日: 2019/09/03
    ジャーナル フリー

    近年のバイオイメージング研究においては,生物画像情報の「定量化」がキーワードになっている.これまで目視で処理してきた事象に対し,数量的根拠を示すことがより重要視されるようになってきた.本稿では,定量化過程における計算機の内部画像処理のうち,特に重要なものに焦点をあて,その内容を概説する.とりわけ,形状計測過程で生じるディジタル誤差や測定誤差などについて取り上げ,それらが生じる原因を考察したい.

  • 坂前 浩, 林 広司
    2015 年 50 巻 1 号 p. 61-66
    発行日: 2015/04/30
    公開日: 2019/09/03
    ジャーナル フリー

    近年,SEM-EDSはその技術革新により大変身近で便利な表面分析装置となったが,検出下限値が低く定量精度に優れるEPMA(ここではSEM-EDSと対比される,WDSを搭載した電子プローブマイクロアナライザーを指す)は引き続き様々な分野で問題解決に不可欠な表面分析装置として活用されていくものと考えられる.特に近年FE電子銃を搭載したEPMA(FE-EPMA)が登場したことにより,元素マッピング像の空間分解能が格段に向上し,その応用範囲はむしろ広がりつつある.本講座ではEPMAに関する理解をより深めていただくことを目的として,SEM-EDSとの違いについて簡単に触れた後,EPMAの特徴的な性能や機能について述べ,その後に最新のFE-EPMAによるアプリケーション例を紹介する.

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