顕微鏡
Online ISSN : 2434-2386
Print ISSN : 1349-0958
52 巻, 3 号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
特集:最近の磁気イメージングの話題
  • 孝橋 照生
    2017 年 52 巻 3 号 p. 118-
    発行日: 2017/12/30
    公開日: 2019/08/09
    ジャーナル フリー
  • 目黒 栄, 斉藤 伸
    2017 年 52 巻 3 号 p. 119-123
    発行日: 2017/12/30
    公開日: 2019/08/09
    ジャーナル フリー

    一括撮像式カー効果顕微鏡は磁気カー効果による偏光変化を光強度変化に変換して磁性体の磁区を観察する装置である.その特長として,非接触・非侵襲,高磁場印加可能,動的磁化過程解析可能,広範な磁区寸法に対応可能という点が挙げられ,磁性体研究者に広く用いられている.カー効果顕微鏡の高性能化は,偏光の微小変化を空間的・時間的にいかに高分解能かつ高コントラストに検出するかという点に注力し進められてきた.また,高性能化の進展により高品位磁区像の取得が可能になったことから磁区観察のみならず,磁区内局所磁化方向の2次元および3次元検出への取り組みも行われてきた.本報ではこれらの観察技術を概説するとともに,顕微鏡拡大光学系を応用展開したセンチメートル寸法磁区の縮小光学系技術による観察や,磁気転写膜の磁気光学効果を用いた空間磁場イメージングの試みについても紹介する.

  • 齊藤 準
    2017 年 52 巻 3 号 p. 124-128
    発行日: 2017/12/30
    公開日: 2019/08/09
    ジャーナル フリー

    磁場の勾配を検出する磁気力顕微鏡(MFM)は,数10 nm程度の空間分解能を有し,観察試料に特別な調整が不要であることから,磁性材料や磁気デバイスの研究開発の現場で磁区観察の汎用ツールとして広く用いられている.近年,空間分解能や機能性の向上が強く求められている.このため,筆者らは従来のMFMの性能を大幅に向上させた交番磁気力顕微鏡(A-MFM)を新たに開発した.A-MFMは非共振の交番磁気力が誘起する探針振動の周波数変調を利用する.A-MFMでは,1)試料表面近傍での磁場検出を実現することで,磁気記録ヘッドの交流磁場計測や高密度磁気記録媒体の直流磁場計測において,空間分解能5 nmを可能にし,2)磁場のベクトル計測,ストロボ計測を磁場の位相情報処理により可能にし,併せて試料磁極(N極,S極)の極性の直接検出を可能にした.本稿では,MFMにおける最近の進展について報告する.

  • 孝橋 照生, 松山 秀生
    2017 年 52 巻 3 号 p. 129-133
    発行日: 2017/12/30
    公開日: 2019/08/09
    ジャーナル フリー

    2次電子のスピン偏極度を信号とする数nmレベルの高分解能磁区観察技術として,スピン偏極走査電子顕微鏡(スピンSEM)が知られている.3次元的な磁化方向解析機能を有することや,表面平滑性や厚さ等の試料形状に対する制約が緩いこと等,独自の特長を活かして,スピンSEMは基礎的な磁性研究や磁気デバイスの評価等,様々な研究分野で使われてきた.本稿ではスピンSEMの原理や構造に関して簡単に紹介し,さらにNdFeB焼結体磁石の粒界相磁性評価等,最近のスピンSEMデータを含めていくつか観察例を紹介する.

  • 中島 宏, 小谷 厚博, 原田 研, 森 茂生
    2017 年 52 巻 3 号 p. 134-138
    発行日: 2017/12/30
    公開日: 2019/08/09
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    小角電子回折とは,透過型電子顕微鏡を用いて数十m以上のカメラ長を得ることで,10–4~10–7 radの微小な偏向角の回折(偏向)スポットを観測する手法であり,結晶固体中の長周期構造の空間変調や磁化分布等を解析することができる.最近我々は,観察試料に制御された外部磁場を印加した状態で,Foucault法及び小角電子回折が可能な電子光学系を構築した.本電子光学系は,対物ミニレンズ電流を制御することで,照射系と結像系を独立に制御できる特徴をもつ.また,ナノからマイクロサイズまでの構造的微細構造(格子欠陥や双晶構造など)と磁気的微細構造に関する実空間情報を同一領域から得ることができ,多角的に結晶内部の磁気状態を解析することができる.本電子光学系をLa0.7Sr0.3MnO3の強磁性相の磁気ドメイン構造解析やM型ヘキサフェライトの磁気バブルの形成過程のその場観察に適用したので紹介する.

解説
  • 川井 茂樹
    2017 年 52 巻 3 号 p. 139-145
    発行日: 2017/12/30
    公開日: 2019/08/09
    ジャーナル フリー

    原子間力顕微鏡(AFM)は,走査型トンネル顕微鏡(STM)と同様に表面上の凹凸を原子レベルの分解能で撮像するのに用いられてきた.しかし,分子の観察ではその分解能がサブナノメートル程度に限られており,また像の取得の難しさのためにSTMと比較してあまり用いられていなかった.ところが,2009年に,AFMの探針先端を一酸化炭素などで終端することで,分子骨格を直接的に観察できるようになると,この超高分解能AFMを用いた分子観察に急速な進展がおこり,表面化学の分野において重要な観察ツールとなった.本稿では,探針を分子や希ガス原子などで修飾したAFMの基本原理を解説し,それを用いた近年の研究成果について紹介する.

  • 馬場 美鈴
    2017 年 52 巻 3 号 p. 146-152
    発行日: 2017/12/30
    公開日: 2019/08/09
    ジャーナル フリー

    2016年10月3日,ノーベル生理学・医学賞が発表された.大隅先生の長年の研究である“オートファジーの仕組みの解明”に対してである.オートファジーとは,自己の細胞質構成成分の一部を液胞/ライソゾームへ取り込んで分解する経路のことである.大規模な分解系であることから,ミトコンドリアなどのオルガネラもこの系によって分解することができる.この解説では,オートファジー研究の初期において,電子顕微鏡がどのようにして関わることになったのか,どのような方向性を導き出したのかについて紹介する.

講座
  • 大嶋 篤典
    2017 年 52 巻 3 号 p. 153-159
    発行日: 2017/12/30
    公開日: 2019/08/09
    ジャーナル フリー

    ギャップ結合チャネルは隣接する細胞において細胞質間の物質透過を担い,電気的,化学的な結合を実現している.ギャップ結合チャネルを構成するタンパク質には2つの遺伝子ファミリーが存在し,脊椎動物(脊索動物を含む)に存在するコネキシンと,無脊椎動物が持つイネキシンがある.不思議なことにこれらの間には有意なアミノ酸配列の類似性が見られず,遺伝的な関係は明確ではない.最近我々の行ったクライオ電子顕微鏡による単粒子解析で,線虫の持つイネキシン6(innexin(INX)-6)の原子構造が明らかとなった.先行するコネキシン26(connexin-26)の原子構造と比較すると,サブユニットの数は異なっているが,単量体のアレンジメントやN末端が作る漏斗状(ファネル)構造など共通点も多く存在した.本稿ではINX-6の原子構造の特徴を紹介するほか,今回のクライオ電子顕微鏡単粒子解析を行う上で,高分解能化に重要な役割を果たした試料調製法についても紹介する.

  • ―物理・光学的基礎―
    下山 宏, 藤田 真
    2017 年 52 巻 3 号 p. 160-165
    発行日: 2017/12/30
    公開日: 2019/08/09
    ジャーナル フリー

    「電子源・電子銃」をテーマに2回に分けて概説する.前篇(本講座)では電子源の基本特性,特に軸上(理論)輝度と電子放出モードについて解説を行う.透過型/走査型電子顕微鏡はともに電子源を高輝度化することでその性能を大きく向上させた.軸上輝度はほぼ陰極電子流密度によって決定され,高輝度電子源の実現とは高電子流密度を提供できる陰極の開発であることを示す.陰極電子流密度は,「仕事関数」「陰極温度」ならびに「電界強度」の関数であり,これらの動作条件が電子放出モードを決める.熱電子放出,ショットキー放出,電界放出の各モードについて電子流密度の動作パラメータ依存性と期待される輝度を示す.電界印加により電子流密度が大幅に向上することが分かる.

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