収差補正STEM(走査透過電子顕微鏡)は,結晶性試料の原子を識別できる分解能(原子分解能)を有するが,現状,装置の原子分解能は,観察した結晶性試料の格子間隔(離散値)でしか評価できない.本稿では,収差補正STEMで取得した原子ダンベル像(暗視野像)から原子分解能をRayleighの基準で連続量として評価するアルゴリズムを提案する.アルゴリズムでは,画像に記録された複数のダンベルを積算して極めて低ノイズのダンベル画像を生成する.積算したダンベル像の輝度プロファイルにガウス分布をフィッティングすると点広がり関数(Point Spread Function, PSF)が推定でき,PSFからRayleighの分解能が評価できる.さらに,Rayleighの分解能と画像のSNR(Signal-to-noise Ratio)から情報エントロピー(bit/nm2)を求め,画像の視認性の指標とした.本アルゴリズムにより,Rayleighの基準に対応する原子分解能,およびSNR,情報エントロピー(画像の視認性)が評価でき,収差補正STEMの画像性能に対する多面的な評価が可能になる.
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