顕微鏡
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特集:シナジェティックSPM
  • 富取 正彦
    2021 年 56 巻 1 号 p. 2
    発行日: 2021/04/30
    公開日: 2021/05/12
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  • 磯 瑛司, 沼田 朋子, 樋口 誠司, 三浦 哲三郎
    2021 年 56 巻 1 号 p. 3-7
    発行日: 2021/04/30
    公開日: 2021/05/12
    ジャーナル 認証あり

    ラマン分光法は,非接触で試料の組成や結晶性,応力などを測定できることから,様々な分野でその応用が広がっている.1928年にインドのラマン博士によりラマン散乱が発見されてから,励起源や光学系の改良を経て,1970年代にはじめて顕微鏡と統合したラマン分光装置が発売された.顕微鏡と組み合わせることで,サブμmオーダーの空間分解能でのラマンスペクトル測定が可能になった.近年では,回折限界を超えたナノスケールでの空間分解能の測定ニーズの高まりもあり,近接場によるラマン増強効果を利用した高空間分解能の測定技術の開発が進められている.本稿では,顕微ラマン分光装置と原子間力顕微鏡とラマン分光装置を統合したAFM-Ramanの装置構成,チップ増強ラマン分光法による高空間分解能マッピングについて紹介する.

  • 大塚 洋一
    2021 年 56 巻 1 号 p. 8-12
    発行日: 2021/04/30
    公開日: 2021/05/12
    ジャーナル 認証あり

    生体組織は多彩な化学成分を内包し,健康状況に応じてそれらの量や分布が動的に変化する.質量分析イメージングは試料の局所領域に含まれる化学成分群をマススペクトルとして計測し,化学種の試料内分布を可視化できるという特徴を有することから,バイオメディカル分野への応用が期待されている.本稿では,タッピングモード走査型プローブエレクトロスプレーイオン化法(t-SPESI)の研究開発について紹介する.t-SPESIは,原子間力顕微鏡と質量分析法を融合した技術であり,振動するキャピラリプローブを用いることで,ピコリットル溶媒を用いた迅速抽出・イオン化と質量分析イメージングを実現する.生体組織の質量分析イメージングでは,組織中の疾患関連成分の分布を可視化することが出来た.また,原子間力顕微鏡の要素技術である,プローブの振動情報計測とフィードバック制御を応用することで,t-SPESIによるマルチモーダルイメージングが可能となった.

  • 大島 義文, 石塚 慧介, 張 家奇, 富取 正彦, 新井 豊子
    2021 年 56 巻 1 号 p. 13-17
    発行日: 2021/04/30
    公開日: 2021/05/12
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    ナノ材料(サイズがおよそ10 nm以下)の力学的な性質を調べるため,力センサーとして長辺振動水晶振動子(LER)を取り付けたその場透過型電子顕微鏡(TEM)ホルダーを開発した.LERを用いることで,その共振周波数の変化から金属ナノ接点の等価バネ定数を測定でき,その振幅が一定になるように印加する励振電圧の変化からナノ接点で生じるエネルギー散逸を見積もれる.このセンサーを評価したところ,測定誤差が1 N/m程度であり,金属原子鎖の等価バネ定数の測定ができることを確認できた.つまり,本手法は,原子・ナノスケール材料の原子配列をTEM観察しながら,同時に,弾性的・塑性的な機械的応答を測定できる.この手法により,白金原子鎖が量子化コンダクタンス2.0 G0をとり,そのばね定数が13.2 N/mであると測定した.本手法は,金属ナノ接点ヤング率のサイズや結晶方位依存性などナノ材料特有の力学特性解明に威力を発揮すると期待できる.

  • 小林 圭
    2021 年 56 巻 1 号 p. 18-22
    発行日: 2021/04/30
    公開日: 2021/05/12
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    われわれは最近,原子間力顕微鏡(AFM)のカンチレバーは外力がなくても常に振動している(熱振動)ことに着目し,コンタクトモードAFMにおいて走査中の各点で熱振動波形を記録し,これを解析することで粘弾性・表面下構造を可視化する走査型熱振動顕微鏡(Scanning Thermal Noise Microscopy: STNM)を開発した.STNMは,微小な熱振動の振動スペクトルの精密測定が必要なため,計測に長時間を要する問題があった.今回,共振周波数近傍の狭帯域の熱振動振幅を計測し,これが最大となるよう参照周波数を制御することで,熱振動振幅がピークを示す周波数(共振周波数)を追尾するピークトラッキング(Peak Tracking: PT)法を開発し,これをSTNMに応用することで,リアルタイムで粘弾性・表面下構造を可視化するPT-STNMを実現した.本稿ではその基本原理について概説する.

解説
  • 山内 洋平
    2021 年 56 巻 1 号 p. 23-30
    発行日: 2021/04/30
    公開日: 2021/05/12
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    ウイルスは5–300 nmほどの大きさの粒子状の感染性物質で,遺伝情報(DNAかRNA)をカプシドや脂質二重膜内にカプセル化した構造体を作る.感染された細胞は文字通り乗っ取られウイルス複製工場と化す.ウイルスは自己のみでは増殖することはできず,代謝や移動を宿主側に依存している.そのため細胞の裏表を理解し尽くしており,自由自在に操ることを得意とする.実際,分子生物学の重要な発見はウイルスまたはウイルスと宿主とのせめぎ合いから創出されたものが多い.ノーベル賞を受賞した逆転写酵素やCRISPR/Casなどが良い例である.ウイルスはその均一さと電子密度の高さから光学顕微鏡,電子顕微鏡,クライオ電子顕微鏡,原子間力顕微鏡などで観察するには格好の材料である.我々の研究室はウイルスと細胞との相互作用の仕組みに関心があるため,色々な手法で観察を行ってきたので,それらの研究を中心にウイルスの顕微鏡手法を紹介したい.

  • 三石 和貴, 中澤 克昭, 溝口 照康, 佐川 隆亮, 山崎 裕一
    2021 年 56 巻 1 号 p. 31-37
    発行日: 2021/04/30
    公開日: 2021/05/12
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    タイコグラフィーは複数の回折図形から試料の透過関数を得る手法である.その歴史は古く,既に提案から50年以上が経過しているが,特に電子線によるタイコグラフィーについては途中幾つかのブレイクスルーはありつつも,ほとんど注目されることは無かった.ところが近年,新しい検出器の登場とコンピューターの性能向上により大きく発展し,実用的な手法としての期待が高まっている.一方でタイコグラフィーは複数点からの回折図形から計算によって位相を得る手法であり,直感的に理解しにくいためか,未だ多くの研究者に広く実施されているとは言い難い.本稿ではより多くの研究者の参入を促すべく,ピクセル型STEM検出器を用いたタイコグラフィーの基本について,その原理と主流の回復方法であるシングルサイドバンド法および反復計算による方法についてなるべく平易な解説を試みた.

講座
  • 佐藤 貢, 谷口 佳史, 久保 雄大, 中村 邦康, 杉垣 安彦, 小山 晋
    2021 年 56 巻 1 号 p. 38-42
    発行日: 2021/04/30
    公開日: 2021/05/12
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    収差補正STEM(走査透過電子顕微鏡)は,結晶性試料の原子を識別できる分解能(原子分解能)を有するが,現状,装置の原子分解能は,観察した結晶性試料の格子間隔(離散値)でしか評価できない.本稿では,収差補正STEMで取得した原子ダンベル像(暗視野像)から原子分解能をRayleighの基準で連続量として評価するアルゴリズムを提案する.アルゴリズムでは,画像に記録された複数のダンベルを積算して極めて低ノイズのダンベル画像を生成する.積算したダンベル像の輝度プロファイルにガウス分布をフィッティングすると点広がり関数(Point Spread Function, PSF)が推定でき,PSFからRayleighの分解能が評価できる.さらに,Rayleighの分解能と画像のSNR(Signal-to-noise Ratio)から情報エントロピー(bit/nm2)を求め,画像の視認性の指標とした.本アルゴリズムにより,Rayleighの基準に対応する原子分解能,およびSNR,情報エントロピー(画像の視認性)が評価でき,収差補正STEMの画像性能に対する多面的な評価が可能になる.

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