顕微鏡
Online ISSN : 2434-2386
Print ISSN : 1349-0958
56 巻, 2 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
特集:ライブセルイメージング:細胞機能の可視化と操作
  • 荒木 伸一
    2021 年 56 巻 2 号 p. 53
    発行日: 2021/08/30
    公開日: 2021/09/11
    ジャーナル フリー
  • 後藤 祐平, 青木 一洋
    2021 年 56 巻 2 号 p. 54-58
    発行日: 2021/08/30
    公開日: 2021/09/11
    ジャーナル フリー

    外界からの刺激や自身の内部状態に適切に応答するために,細胞はシグナル伝達を通じて情報を変換している.シグナル伝達ネットワークを形成する分子の役者はその全貌が明らかになってきた.さらにそれらの間の相互作用や時間変動などのダイナミクスに情報が符号化されていることが近年注目されてきている.ライブセルイメージングはシグナル伝達のダイナミクスを測定するための非常に強力なツールであり,様々なバイオセンサーの開発により複雑な生命現象の仕組みがひも解かれつつある.さらに,光により細胞機能を制御する光遺伝学の発展によって,シグナル伝達に可逆的な摂動を与えながらその影響をライブセルイメージングによって詳細に観察することも可能となってきている.本稿では,バイオセンサーによるライブセルイメージングと光遺伝学によるシグナル伝達の人為的操作に関する最新の動向を紹介する.

  • 稲葉 弘哲, 中田 隆夫
    2021 年 56 巻 2 号 p. 59-63
    発行日: 2021/08/30
    公開日: 2021/09/11
    ジャーナル フリー

    RhoおよびRasファミリーの低分子量Gタンパク質は細胞外からの刺激により活性化し,細胞運動や増殖,分化などを制御している.FRETなどを利用したバイオセンサーにより,その細胞内での時空間的な活性分布が明らかとなったが,その機能を正確に理解するためには,人為的に活性を操作し,細胞の応答を観察することが必要である.光遺伝学は光応答性のタンパク質を利用し,光照射によってシグナル分子の活性を操作する技術である.光遺伝学によって,細胞内で低分子量Gタンパク質の活性を高い時空間分解能で自在に操作することが可能となった.本稿では,6種類の低分子量Gタンパク質の活性を操作する光遺伝学ツールを作製し,低分子量Gタンパク質と細胞内カルシウムシグナルとのクロストークを解析した最近の我々の研究例を中心に,低分子量Gタンパク質の光遺伝学による操作と,バイオセンサーを用いた細胞内機能の観察について解説する.

  • 川合 克久, 荒木 伸一
    2021 年 56 巻 2 号 p. 64-67
    発行日: 2021/08/30
    公開日: 2021/09/11
    ジャーナル フリー

    低分子量GTPase分子スイッチのひとつRac1の活性化(ON)は,アクチン細胞骨格の重合・再編を介し,細胞移動,マクロピノサイトーシス,ファゴサイトーシスなど様々なアクチン依存性の細胞運動の制御に関わっている.しかし,Rac1不活性化(OFF)の意義については重要視されていなかった.オプトジェネティクスによるphotoactivatable Rac1の顕微鏡下光制御は,生きた細胞の局所に青色光を照射することで,Rac1スイッチのONとOFFを可逆的に行うことができる.このメリットを活かし,我々は,マクロピノサイトーシスとファゴサイトーシス過程におけるRac1 ONとOFFそれぞれの役割を解析してきた.本稿では,photoactivatable Rac1の光操作を用いた最近の我々の研究を中心にマクロピノソームとファゴソーム形成のRac1 ON-OFFスイッチングによる時空間制御について解説する.

  • 青木 佳南, 池ノ内 順一
    2021 年 56 巻 2 号 p. 68-72
    発行日: 2021/08/30
    公開日: 2021/09/11
    ジャーナル フリー

    ブレブは,アクチン細胞骨格の裏打ちが一時的に消失し,細胞内圧によって突出した形質膜の球状突起構造である.近年,脊椎動物の始原生殖細胞やがん細胞が,能動的にブレブを形成して運動することが明らかになった.しかしブレブの形成を制御する分子機構は殆ど明らかになっていない.我々は,がん細胞のブレブをライブイメージング観察することで,Rnd3とRhoAの活性の切り替えがブレブの形成と退縮のサイクルを制御することを明らかにした.さらに,拡大中のブレブの細胞質は,他の細胞質領域と比較して有意に細胞質の流動性が上昇し,特定のタンパク質が濃縮することを見出した.このような拡大時に形成される流動性の高い細胞質領域の形成には,拡大中のブレブの細胞質に限局したカルシウムイオン濃度の上昇が必要であることを明らかにした.本稿では,ブレブの形質膜のダイナミックな形態変化を可能にする細胞質流動性の制御機構について筆者らの知見を紹介する.

解説
  • 治田 充貴, 倉田 博基
    2021 年 56 巻 2 号 p. 73-80
    発行日: 2021/08/30
    公開日: 2021/09/11
    ジャーナル フリー

    新しい世代のモノクロメーターの開発は,電子エネルギー損失分光法(EELS)のエネルギー分解能を向上させると同時に,球面収差補正走査透過電子顕微鏡(STEM)と組み合わせることにより,高い空間分解能での局所電子状態分析を可能にしている.STEM-EELS法の特徴を最大限に発揮させるためには,質の高いスペクトルを計測することが不可欠である.本稿では,スペクトル検出器(CCD)のダークノイズを効率的に除去することで,スペクトルのシグナル/ノイズ比を劇的に向上させる手法を紹介した後,内殻電子励起スペクトルの吸収端微細構造を用いた高温超伝導体の原子分解能ホールマッピングや遷移金属酸化物中の酸素八面体構造の解析について紹介する.さらに,高エネルギー分解能化の効果が顕著となる有機薄膜の炭素K殻吸収端微細構造や金属ナノ粒子の表面プラズモンポラリトンに関する研究成果についても述べる.

講座
  • 真柳 浩太
    2021 年 56 巻 2 号 p. 81-86
    発行日: 2021/08/30
    公開日: 2021/09/11
    ジャーナル フリー

    負染色法は半世紀以上にも渡って,電子顕微鏡による生物試料観察において中心的な役割を果たしてきた.本手法は特別な電子顕微鏡や装置器具類を必要とせず,試料作製等も極めて簡便且つ迅速に行えるにもかかわらず,コントラスト及び分解能の高い画像が得られる強力な解析手段である.ターゲットとなる生物試料も,巨大なウイルスから分子量10万以下のタンパク質までと幅広く,汎用性もある.単粒子解析法と組み合わせることで,タンパク質や核酸等から構成される超分子複合体の立体構造を,分解能2 nm前後で迅速に取得可能であり,これまで重要な生命現象に関わるこれら超分子複合体の構造,及び動作・制御機構の解明に貢献してきた.本稿では負染色法の原理,実際の試料作製法,及び電子顕微鏡観察法について概説する.更に,負染色した超分子複合体の,単粒子解析法による立体構造解析について紹介する.

最近の研究と技術
feedback
Top