顕微鏡
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特集:光顕と電顕をつなぐ生物系最新CLEMの動向と応用
  • 太田 啓介
    2024 年 59 巻 3 号 p. 98
    発行日: 2024/12/30
    公開日: 2025/01/17
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  • 吉川 知志, 仁田 亮, 太田 啓介
    2024 年 59 巻 3 号 p. 99-104
    発行日: 2024/12/30
    公開日: 2025/01/17
    ジャーナル 認証あり

    光学顕微鏡と電子顕微鏡で同じ試料の同じ場所を観察する方法は総称としてCLEMと呼ばれる.しかし,その目的は2つのモダリティーを用いた同時観察であったり,細胞同定のための相関であったり,光顕的に限局する細胞の領域を電顕下に特定するためであったりと様々であるし,標的となるものもタンパク構造レベルから組織レベルまで様々である.したがってCLEMにはそれぞれのニーズに合わせた多様な手法が存在する.そこで本稿では多様な手法の中からどの手法を選べば目的の結果を得られるのかについてCLEM技術全体のワークフローを俯瞰的に紹介する.CLEMには常温の樹脂包埋試料を切片レベルで相関するCLEMや3D電顕を用いたvolume-CLEMについては多くの事例があり,総説も多数存在する.そこで本稿では細胞内の特定の領域に存在するタンパク構造の可視化を目指したCryo-CLEMについてその詳細を紹介する.

  • 林 周一, 大野 伸彦
    2024 年 59 巻 3 号 p. 105-109
    発行日: 2024/12/30
    公開日: 2025/01/17
    ジャーナル 認証あり

    光‐電子相関顕微鏡法(correlative light and electron microscopy, CLEM)は,光学顕微鏡(光顕)と電子顕微鏡(電顕)の像の位置を対応させて,標本上の同じ領域を観察する手法である.これにより,光顕と電顕それぞれの利点を生かして得られた情報を統合することができる.近年では,走査型電子顕微鏡を用いた連続画像の取得技術が向上し,3次元の相関法(3D-CLEM)も発展している.生物試料のCLEMでは,観察する生物現象や対象の標識法に応じて様々な相関の工夫が行われてきた.本稿では,脳組織に対してserial block-face scanning electron microscopy(SBF-SEM)を用いて3D-CLEMを行う手法を紹介する.この手法では,蛍光タンパク質を発現するレポーターマウスを用いて,血管や細胞のような内在構造を目印として位置相関を行う.免疫染色を行わないため,組織形態の保持が良い状態で電顕観察を行うことができる.筆者らが行った海馬のシナプス終末の解析を例として,3D-CLEMの過程を概説する.

  • 釜澤 尚美
    2024 年 59 巻 3 号 p. 110-113
    発行日: 2024/12/30
    公開日: 2025/01/17
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    最新の光学顕微鏡技術で神経細胞の活動を記録し,同じ細胞の三次元微細構造をボリューム電子顕微鏡法(Volume Electron Microscopy, vEM)で解析する手法は,従来の光・電子相関顕微鏡法(Correlative Light and Electron Microscopy, CLEM)の改変法として,脳の機能と構造の関連を追究する目的に用いられる.特に,得られたvEM像からは,活動を記録した細胞のオルガネラ微細構造に加えて,対象細胞の周辺の構造情報も抽出することができ,神経ネットワークについて考察を広げることが可能である.一方で,膨大なvEMデータから生物情報を効率よく抽出するためには,画像解析過程に深層学習アルゴリズム等を導入する必要性が提唱されている.本稿では,二光子顕微鏡による機能測定と,相関したvEMデータから解析した神経細胞の機能と構造を考察した例を紹介する.

  • 谷田 以誠, 山口 隼司, 鈴木 ちぐれ, 角田 宗一郎, 内山 安男
    2024 年 59 巻 3 号 p. 114-118
    発行日: 2024/12/30
    公開日: 2025/01/17
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    超解像顕微鏡などの蛍光顕微鏡や走査型電子顕微鏡の発達により,蛍光画像の高解像度化および蛍光顕微鏡の視野に匹敵する広領域での超微形態解析が容易になってきた.それに伴いCLEM(光線–電子相関顕微鏡法)も,より高精度な解析手法が求められてきている.In-resin CLEMは包埋前に蛍光標識した生物試料を樹脂に包埋し,そこから作製した同一の超薄切片を蛍光顕微鏡と電子顕微鏡で観察し,得られた蛍光顕微鏡像と電子顕微鏡像を相関解析することにより相関精度を高めた手法である.高精度のIn-resin CLEMの実現には,超微形態保持性が高いエポン樹脂を用いるのが理想的であるが,エポン樹脂自体の自家蛍光に加えて,四酸化オスミウム処理などの化学処理により,多くの蛍光タンパク質・蛍光色素が蛍光能を消失してしまう問題があった.これらを解決するために様々なアプローチが行われてきており,最近では抗原抗体反応を応用して,組織レベルでのImmuno In-resin CLEM(免疫In-resin CLEM)が可能となってきている.

解説
  • 谷垣 俊明, 明石 哲也, 吉田 高穂, 原田 研, 石塚 和夫, 市村 雅彦, 三石 和貴, 富岡 泰秀, 于 秀珍, 進藤 大輔, 十倉 ...
    2024 年 59 巻 3 号 p. 119-126
    発行日: 2024/12/30
    公開日: 2025/01/17
    ジャーナル 認証あり

    物質の磁気構造とそれに関連するスピン配置の解析は,固体物理学,無機化学,スピントロニクスの分野だけでなく,材料科学や工学などの他の分野においても重要である.局所的な磁場を原子レベルで解析する方法としては,収差補正電子顕微鏡による電子エネルギー損失分光法や微分位相コントラスト法による計測が報告されている.しかし,磁場を担う元素が複数ある場合や厚さの分布があるような試料の磁場解析において,原子レベルの磁場を直接観察することは困難であった.本稿では,これらの課題を解決する,収差補正超高圧ホログラフィー電子顕微鏡を基盤とした,パルス磁場印加システム,ポストデジタル収差補正,磁場を考慮したマルチスライス法の開発と,フェリ磁性ダブルペロブスカイト酸化物(Ba2FeMoO6)中のFe3+とMo5+のスピン秩序が逆向きになり形成された(111)格子面の磁場を反映した位相分布観測に成功した結果を解説する.

講座
  • 柳川 正隆
    2024 年 59 巻 3 号 p. 127-132
    発行日: 2024/12/30
    公開日: 2025/01/17
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    生細胞において薬刺激を受けた膜受容体が細胞内へ情報を伝達する機構の解明は,分子薬理学の基礎的な課題である.近年,電子顕微鏡技術の発展により,多様な膜受容体とシグナル伝達分子の複合体構造が明らかになってきた.しかしながら,薬刺激前後にそれらの複合体が細胞内のどこでどのように形成されているかは未解明な点が多い.全反射蛍光・薄層斜光照明顕微鏡を用いた生細胞内1分子イメージングは蛍光標識した分子の拡散動態・分子間相互作用を10~20 nmの位置精度,30 ms前後の時間分解能で定量できる手法である.本手法を用いて,膜受容体の脂質膜ドメインへの集積がシグナル伝達に重要な役割を担うことが明らかになってきた.本稿では,細胞内1分子イメージングに必要な光学顕微鏡・細胞試料調製・画像解析の基礎的な要素技術を概説する.また,近年の技術的進展を紹介し,将来の医薬分野での利用促進に向けた展望を議論する.

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