本研究は, 自発的に食生活改善の必要を感じることの少ない大学男子運動部員に栄養教育を試み, 教育のプロセス評価と効果判定をし, 栄養教育の方法を検討することを目的として行った。対象者は国立T大学アメリカンフットボール部男子1年生部員45名である。対象者の食生活上の問題点を分析し, 教育目標は, 望ましい食物選択の自己管理能力を養うことに設定し, 栄養教育の企画から評価までを計画した。教育方法は, 食事を媒体とした3回シリーズの無料の夕食会, 講義, 自己学習, 質疑応答を組み合わせた。特に, 2回目には今回の教育の中心となる。体力づくりと食生活に関しての系統的な講義を行った。その結果, 1) 教育に1回以上参加した者は41名 (91.4%) , 3回連続参加者は13名 (28.9%) , 全く参加しなかった者は4名 (8.9%) であった。参加回数は, 部活動に積極的に参加している者ほど有意に多かった。2) プロセス評価では, 話がわかりやすい, 質問がしやすい, 夕食会は楽しい, 夕食会で得をしたと回答した者の比率は, 1, 3回目よりも2回目が高かった。3) 教育の効果判定は, 2回目の出席 (n=16) , 欠席 (n=10) 別により検討した。夕食会の料理選択状況で出席群より有産に多く選択していたものは, 総料理数, 副菜, 野菜料理であった。
栄養所要量に対する知識で出席群が欠席群より有意に適正回答者の比率が高かった項目は, エネルギー, 鉄ビタミンB2, ビタミンCで, わからないと回答した者の比率は出席群が有意に低かった。学習目標に対する対象者の理解度では, 両群とも皮下脂肪と体格の関係, エネルギー携取が夕食に偏らない, 栄養剤に頼らないことを理解できた者の比率は70%以上いたが, 活動量と消費エネルギー量の関係, 「4つの食品群」の分類, 料理を主食, 主菜, 副菜別にバランスよくとることをよく理解できた者の比率は前出の3項目よりも低かった。
〔日健教誌1993; 1: 57-69〕
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