日本健康教育学会誌
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17 巻, 2 号
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巻頭言
原著
  • 澤田 樹美, 武見 ゆかり, 村山 伸子, 佐々木 敏, 石田 裕美
    2009 年 17 巻 2 号 p. 54-70
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/10/01
    ジャーナル フリー
    目的:従業員食堂を活用した栄養教育と環境づくりを統合したプログラムを開発し,その効果を評価することを目的とした.
    方法:食品製造企業工場内に勤務する従業員1,530名に対しベースライン調査を実施し,596名から回答を得た.有効回答者から,BMI25(kg/m2)以上の男女と,ウエスト周囲径85cm以上の男性を合わせた123名を栄養教育の直接の対象として抽出し,学習の呼びかけに応じた教育・環境群58名と応答しなかった環境のみ群65名の準実験デザインを用いた.介入プログラムは,栄養教育介入と,食堂や売店での食環境介入からなり,食環境介入はトランスセオレティカルモデル(TTM)に基づいて開発した.ベースライン調査の結果から4項目の課題を行動目標とした.本研究の解析対象者は教育・環境群53名,環境のみ群55名であった.
    結果:教育・環境群全員がビデオ学習は「わかりやすかった」と回答し,学習内容を生活に取り入れた者は男性95.5%,女性87.1%であった.男性の教育・環境群は,食事バランスガイドの副菜SV(5~6つ分)の知識(p=0.005),「野菜料理を1日2回以上食べる」ことへのセルフエフィカシー(p=0.001),副菜SVの行動(p=0.021),食物繊維(4.9(SD1.5)→5.6(SD1.4)(g/1000kcal),p=0.021)や葉酸(129(SD57 )→161(SD 47)(mg/1000kcal),p=0.011)の栄養素摂取において,一連の有意に望ましい変化がみられた.女性の教育・環境群は砂糖入り飲料の減少という目標において,男性と同様の一連の変化が認められた.
    結論:環境のみ群と比較して教育・環境群では,食知識・食セルフエフィカシー・食行動・食物摂取と望ましい行動の変化がみられたことから,栄養教育と食環境介入を統合して行う意義は大きいものと示唆された.
  • 小・中・高の学校生活各側面の回顧的評価とSOCの10カ月間の変化パターンとの関連性
    戸ヶ里 泰典, 小手森 麗華, 山崎 喜比古, 佐藤 みほ, 米倉 祐貴, 熊田 奈緒子, 榊原(関) 圭子
    2009 年 17 巻 2 号 p. 71-86
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/10/01
    ジャーナル フリー
    目的:高校生における健康保持・ストレス対処能力概念であるSense of Coherence(SOC)を育む要因を探索するため,小学校,中学校,高校現在の経験と,SOCスコアの10カ月間の変化パターンとの関連性を検討することを目的とした.
    方法:都内私立A高等学校の第1学年より第3学年までの全生徒1,539名を対象とし,2007年5月(第1回),11月(第2回),2008年3月(第3回)の計3回,自記式質問紙による集合調査を実施した.SOCの変化パターンを把握するため,SOC高値維持群,上昇群,変動群,下降群,SOC低値維持群の計5カテゴリからなる変化パターン変数を作成し従属変数とした.
    結果:SOC低値維持群を参照群とし,性,年齢を制御した多項ロジスティック回帰分析を実施したところ,SOCが高値で維持されている要因としては小学生時の積極的な部活動,いじめられた経験がないこと,高校生時の成績,スポーツが得意なこと,芸術面が得意なこと,友達関係をうまくやれること,わかりあえる友人数が多いことは直接の関連性を有していた.また,SOCの上昇群は高校時における積極的な部活動,友達関係をうまくやれること,一定数の分かり合える友人がいることが関連していた.SOCの変動群であることは小学生時のスポーツが得意であったこと,中学生時,高校生時に友達関係をうまくやれたこと,いじめられた経験があることが関連していた.
    結論:成功的な対処経験や,いじめ等のネガティブな経験がSOCを左右しており,Antonovskyが提示するSOCの形成仮説を概ね支持していた.
  • 30-49歳を対象としたインターネット調査による横断研究
    山脇 加菜子, 原田 和弘, 李 恩兒, 岡 浩一朗, 中村 好男
    2009 年 17 巻 2 号 p. 87-96
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/10/01
    ジャーナル フリー
    目的:行動変容ステージモデルを身体活動・運動行動に適用する際,モデルに含まれる概念を精確に測定することは重要である.最も実施率の高い運動種目であるウォーキング行動に着目した尺度は見当たらないため,ウォーキング行動の変容ステージ尺度とセルフエフィカシー尺度を開発し,両尺度の信頼性と妥当性を検討することを目的とした.
    方法:30-49歳の調査モニターを対象(N=4,935)に,インターネット調査を実施した.測定項目は,ウォーキング行動の変容ステージ,ウォーキング行動におけるセルフエフィカシー,1週間当たりのウォーキング時間であった.両尺度に関して,ウォーキング時間との関連による基準関連妥当性と,1ヶ月後(N=1,174)との比較による再検査信頼性を検討し,セルフエフィカシー尺度については,構成概念妥当性と内的整合性についても検討した.
    結果:変容ステージ尺度は,1ヶ月後との一致率はκ=0.43となった.変容ステージが高いほど,ウォーキング時間(F=146.1,p<0.001)が長い傾向が示された.セルフエフィカシー尺度は,1ヶ月後の得点およびウォーキング時間との相関が確認された.また,検証的因子分析の結果,良好な適合度指標が得られた.
    結論:ウォーキング行動の変容ステージ尺度とセルフエフィカシー尺度の信頼性と妥当性が確認された.本尺度を用いることで,対象者のウォーキング行動に対する動機づけの準備性に応じた介入プログラムの提供が可能になると思われる.
実践報告
  • 中出 麻紀子, 廣田 晃一, 江崎 治, 饗場 直美
    2009 年 17 巻 2 号 p. 97-108
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/10/01
    ジャーナル フリー
    目的:コンピュータを用いた健康教育が参加者の生活習慣に与える影響について検討した.
    方法:生活習慣改善を希望する15名の中高年男女を対象に,コンピュータを用いた健康教育プログラムを6か月間実施した.プログラムでは,参加者が生活習慣の改善目標と毎月の計画を立て,管理栄養士のサポートのもとで計画を実践した.本研究では参加者の身体活動,食事,体重,日記記録回数,管理栄養士のサポートについて評価し,加えて参加者と管理栄養士には目標達成状況,プログラムの使い易さ,プログラムに対する感想についてアンケート調査を行った.
    結果:14名の参加者がプログラムを終了した.6か月後には参加者の中等度及び強い身体活動の実施時間と10分以上の歩行を行う日数が有意に増加した.また,調理法では鍋物と蒸し物の頻度が有意に増加した一方で,揚げ物と炒め物の頻度は有意に減少していた.目標達成者と目標非達成者を比較したところ,目標達成者ではプログラムの機能を多く活用し,管理栄養士がサポートに費やす時間も長く,体重も多く減少していた.管理栄養士の多くは本プログラムが健康教育において有用であると回答したものの,非対面であるため参加者の反応をつかみにくいという意見も得られた.
    結論:コンピュータを活用した健康教育プログラムによって参加者の生活習慣が改善し,このプログラムの機能の継続的かつ積極的な利用が目標達成に必要であることが示唆された.
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