目的:従業員食堂を活用した栄養教育と環境づくりを統合したプログラムを開発し,その効果を評価することを目的とした.
方法:食品製造企業工場内に勤務する従業員1,530名に対しベースライン調査を実施し,596名から回答を得た.有効回答者から,BMI25(kg/m
2)以上の男女と,ウエスト周囲径85cm以上の男性を合わせた123名を栄養教育の直接の対象として抽出し,学習の呼びかけに応じた教育・環境群58名と応答しなかった環境のみ群65名の準実験デザインを用いた.介入プログラムは,栄養教育介入と,食堂や売店での食環境介入からなり,食環境介入はトランスセオレティカルモデル(TTM)に基づいて開発した.ベースライン調査の結果から4項目の課題を行動目標とした.本研究の解析対象者は教育・環境群53名,環境のみ群55名であった.
結果:教育・環境群全員がビデオ学習は「わかりやすかった」と回答し,学習内容を生活に取り入れた者は男性95.5%,女性87.1%であった.男性の教育・環境群は,食事バランスガイドの副菜SV(5~6つ分)の知識(p=0.005),「野菜料理を1日2回以上食べる」ことへのセルフエフィカシー(p=0.001),副菜SVの行動(p=0.021),食物繊維(4.9(SD1.5)→5.6(SD1.4)(g/1000kcal),p=0.021)や葉酸(129(SD57 )→161(SD 47)(mg/1000kcal),p=0.011)の栄養素摂取において,一連の有意に望ましい変化がみられた.女性の教育・環境群は砂糖入り飲料の減少という目標において,男性と同様の一連の変化が認められた.
結論:環境のみ群と比較して教育・環境群では,食知識・食セルフエフィカシー・食行動・食物摂取と望ましい行動の変化がみられたことから,栄養教育と食環境介入を統合して行う意義は大きいものと示唆された.
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