健康教育の倫理的問題とりわけ健康教育者の倫理について検討することは, 健康教育の充実を図るうえで, また健康教育者の専門性を高めるうえで重要な課題である。
本稿は, アメリカ合衆国における健康教育者の倫理規定に関する研究の動向, Society for Public Health Education (SOPHE) ならびにAssociation for the Advancement of Health Education (AAHE) による倫理規定の内容, ならびにわが国における倫理規定研究の展望, を明らかにすることを目的とするものである。
1) SOPHEは1976年に初めて健康教育者の倫理規定を作成し, 1983年, 1993年にそれを改訂した。AAHEも倫理規定作成に取り組み, 1994年にSOPHEの倫理規定を発展させて「健康教育者のための倫理規定」を作成した。
2) SOPHEの倫理規定 (1983) は, ・公衆との関系, ・同僚に対する責任, ・職業に対する責任, ・教育ストラティジィと教育方法を使用するうえでの責任, ・雇用者に対する責任, ・学生に対する責任, ・調査研究と評価における責任の7つの領域から成るものであった。また, AAHEの規定は, ・公衆に対する責任, ・職業の専門性に対する責任, ・雇用者に対する責任, ・健康教育をすすめるうえでの責任, ・研究と評価における責任の5領域から成るものであった。
3) 健康教育者の倫理規定研究は資格制度確立の問題と相互補完的に進められる必要がある。ただし, わが国では各職種が健康教育者の役割を果たしていること等を十分に考慮せねばならない。また, 倫理規定に, 教育を受ける側の自己決定権と選択の自由あるいはインフォームド・コンセントあるいはインフォームド・チョイスの尊重を明示することや専門機関が合同で倫理規定を作成する必要性が示唆された。
〔日建教誌, 1995; 2: 27-35〕
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