日本健康教育学会誌
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23 巻, 1 号
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巻頭言
原著
  • ―製造業労働者におけるメタボリックシンドローム改善を目指した保健指導評価より―
    森田 理江, 神出 計, 三上 洋, 荒木田 美香子
    2015 年 23 巻 1 号 p. 2-15
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/02/27
    ジャーナル フリー
    目的:本研究はメタボリックシンドローム(以下,MetS)の男性労働者を対象とした保健指導において,セルフマネジメント能力を測定するheiQ-Jを適用し,信頼性と妥当性を検証することを目的とした.
    方法:2008年~2012年に便宜的に抽出した東海から関東地方の6事業所で,特定保健指導等の対象者の男性525名に縦断研究を行った.調査項目は厚生労働省が指定した生活習慣を尋ねる「標準的な質問票」とheiQ-Jで,保健指導開始前と終了時に自記式質問紙による回答を依頼した.heiQ-Jは信頼性分析と因子妥当性を検討し,標準的な質問票との関係性から感度をみた.また,保健指導前後のheiQ-J得点の変化についてエフェクトサイズを用い検討した.
    結果:モデル適合度はGFI=0.81,AGFI=0.78,CFI=0.84,RMSEA=0.060で,8下位尺度43項目で誤差間共分散を開放したheiQ-J(モデル2)を採用した.保健指導前の標準的質問票との比較で健康的な生活習慣との感度が確認された.保健指導終了時には「保健医療サービスへの誘導」,「技術やテクニックの習得」,「自己観察と自己洞察」,「健康のための行動」で約半数の対象者に改善を認めた(effect size≧0.5).
    結論:MetSの改善を目指した保健指導の評価指標としてheiQ-J(43項目)を適用した結果,信頼性と一定の妥当性が確認され,活用できることが示された.
  • 湯川 慶子, 石川 ひろの, 山崎 喜比古, 津谷 喜一郎, 木内 貴弘
    2015 年 23 巻 1 号 p. 16-26
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/02/27
    ジャーナル フリー
    目的:慢性疾患患者の代替医療による副作用への対処行動や主治医とのコミュニケーションとへルスリテラシーとの関連を明らかにすることを目的とした.
    方法:2011年5月から7月に,全国の患者会の慢性疾患患者920名に自記式質問紙を用いた横断研究を行った.603通を回収し欠損が多いものを除いた570通のうち(有効回収率62.0%),代替医療の利用経験を持つ428名を対象とした.副作用経験の有無(副作用の経験あり群・経験なし群),副作用時の対処(利用中止群・利用継続群),主治医への副作用の症状と療法の報告(主治医への報告あり群・報告なし群)別のへルスリテラシーについて対応のないt検定を行った.さらに,属性とヘルスリテラシーを説明変数,利用中止,主治医への報告ありを目的変数とした多重ロジスティック回帰分析を行った.
    結果:428名中88名(20.6%)が副作用を経験していた.そのうち45.9%が利用を継続し,61.6%は主治医に副作用の症状と療法を報告していなかった.利用中止群が利用継続群よりも,報告あり群が報告なし群よりもヘルスリテラシーが高かった.多変量解析でも,ヘルスリテラシーと利用中止か継続かとの関連(OR=2.75,95%CI 1.06-7.10),主治医への報告の有無との関連(OR=2.59,95%CI 1.01-6.65)が認められた.
    結論:へルスリテラシーは,代替医療による副作用への適切な対処,主治医への報告など,代替医療の安全な利用に重要である.
短報
  • ―KJ法による分析―
    川南 公代, 山路 義生, 堀口 逸子, 丸井 英二, 鈴木 晃
    2015 年 23 巻 1 号 p. 27-34
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/02/27
    ジャーナル フリー
    目的:本研究では,在宅高齢者の自宅内転倒に対する意識の特徴を質的に明らかにすることを目的とした.
    方法:対象者は,東京都内の一在宅療養支援診療所を受診している都内在住の日常生活が自立している75歳以上8世帯10名(男性4名,女性6名)であった.訪問調査にて,半構造化面接によるインタビューと観察を実施した.インタビュー内容は,自宅内における転倒や転倒しそうになった経験,転倒しないようにしていること,知人の転倒経験であった.内容は録音し,逐語録を作成した.転倒に対する意識を抽出し,KJ法を用い分析した.
    結果:都市部における在宅高齢者の自宅内転倒に対する意識には,〈注意・気をつけている〉があり,対立する関連に〈気をつけていることはない〉があった.〈注意・気をつけている〉と関連した意識は〈他人の転倒経験〉,〈転倒のイメージ〉,〈衰えがわかる〉,〈気をつけようと思う〉,〈あっ,危ないと思う〉で,〈気をつけていることはない〉と関連したのは〈安全・大丈夫と思っている〉の意識であった.また,〈つい,うっかり〉,〈誤解がある〉の意識もあった.
    結論:〈注意・気をつけている〉は,主に転倒不安や恐怖感,老性自覚,転倒の危険性と関連し,〈気をつけていることはない〉は,転倒自己効力感,過信や利便性を優先する意識と関連していた.転倒予防の健康教育においては,これらの高齢者の意識を考慮することが重要である.
  • 外山 未來, 福岡 景奈, 赤松 利恵
    2015 年 23 巻 1 号 p. 35-42
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/02/27
    ジャーナル フリー
    目的:中学生を対象に,家庭で残さず食べるよう声掛けされている子どもの日頃の食べ残し行動を検討し,さらに,家庭での食べ残しに関する声掛けと,学校給食中の嫌いな食べ物を食べる自信,食事を残さず食べた後のポジティブな感情の2つの認知要因との関連を検討することを目的とした.
    方法:本研究は横断研究であり,2009年12月,東京都A区の全公立中学校33校の2年生4,634名を対象に,食べ残しに関する質問紙調査を行った.家庭での食べ残しに関する声掛けと,日頃の食事の食べ残し,給食の嫌いな食べ物を食べる自信,残さず食べた後のポジティブな感情ついて,χ2 検定およびBonferroniの補正による多重比較を行った.また,残さず食べた後のポジティブな感情と,学校給食中の嫌いな食べ物を食べる自信についてもχ2 検定を用いて検討した.
    結果:4,594名から有効回答を得た(有効回答率99.1%).家庭での食べ残しに関する声掛けあり群は,声掛けなし群に比べ,日頃の食事をよく残す者の割合が低く(p=0.002),給食の嫌いな食べ物を食べる自信がある者の割合が高く(p=0.016),残さず食べた後にポジティブな感情を抱く者の割合が高かった(p<0.001).また,ポジティブな感情ありと回答した者は,ポジティブな感情なしの者に比べ,嫌いな食べ物を食べる自信のある者の割合が高かった(p<0.001).
    結論:家庭で食べ残しに関する声掛けをされている中学生は,日頃の食事を残さず,学校給食中の嫌いな食べ物を食べる自信があり,食事を残さず食べた後のポジティブな感情を抱く者の割合が高かった.
特別報告
  • 神馬 征峰
    2015 年 23 巻 1 号 p. 43-49
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/02/27
    ジャーナル フリー
  • 柴沼 晃
    2015 年 23 巻 1 号 p. 50-55
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/02/27
    ジャーナル フリー
    背景:平均的な健康水準が改善しているにも関わらず,人々の間には依然として健康格差が存在する.健康格差をもたらす要因には,政策や制度により解消しうるものとしえないものがある.「健康の社会的決定要因」は,人々の健康が,政治や社会,経済的に「本来であれば解消しうる要因」によって強く影響を受けるとの捉え方をする.本稿では,健康の社会的決定要因のうち,政治に関連する要因に着目した「健康の政治的決定要因」について紹介する.
    内容:健康の政治的決定要因の定義は論者により異なる.多くの論者は,政府やその他のプレイヤーの能力や政治的意思の欠如,利害対立に着目し,それが健康格差を解消できない原因の一端であるとしている.健康の政治的決定要因に関する研究には,国際保健におけるプレイヤー間の力学やガバナンスに着目した議論もあれば,各国における政治体制の違いや政策の優劣に関する議論もある.前者の例として,国際保健における新たなプレイヤーの参画と健康格差解消への役割に関する研究がある.後者には,政治体制の移行と健康格差に関する研究がある.
    結論:健康の政治的決定要因は,経験的には知られている一方,学術的には比較的新しい概念である.異なる視点をもつ研究者が研究を蓄積し,相互に批判を行うことで,健康と政治との関連について明らかにされていくことが期待される.
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