日本健康教育学会誌
Online ISSN : 1884-5053
Print ISSN : 1340-2560
24 巻 , 3 号
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巻頭言
原著
  • 髙泉 佳苗, 原田 和弘, 中村 好男
    2016 年 24 巻 3 号 p. 133-140
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/31
    ジャーナル フリー
    目的:食情報の入手や活用に関わる食生活リテラシーと食情報検索行動および食行動との関連を検討することにより,食生活リテラシー尺度の基準関連妥当性を検証することを目的とした.
    方法:社会調査会社の登録モニターを対象とし,インターネットによる横断調査を実施した.解析対象は1,252人(男性631人,女性621人)で,平均年齢(標準偏差)は40.3(10.7)歳であった.解析は重回帰分析(強制投入法)を用い,独立変数として食生活リテラシー尺度を,従属変数として食情報検索回数および食行動得点を投入した.重回帰分析による基準関連妥当性の検討は,全対象者,性別,年齢階層別,学歴別に分析した.
    結果:全対象者において,食生活リテラシー尺度と食情報検索回数(β=0.17,p<0.01),食行動得点(β=0.27,p<0.01)に有意な正の関連が認められた.また,性別,年齢階層別,学歴別においても食生活リテラシー尺度と食情報検索回数および食行動得点との関連が認められた.
    結論:食生活リテラシー尺度の使用により,食生活リテラシーが高いということは食情報を多く検索していること,並びに適切な食行動の実践と正の関連があることが認められた.この食生活リテラシー尺度は食情報の入手や活用に関わる行動を反映している可能性がある.また本研究結果から,食生活リテラシー尺度の基準関連妥当性が,性別,年齢階層別,学歴別に確認された.
短報
  • 辰田 和佳子, 稲山 貴代, 秦 希久子
    2016 年 24 巻 3 号 p. 141-149
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/31
    ジャーナル フリー
    目的:自立/自律した肢体不自由者における食支援プログラム企画のために,良好な食物摂取行動と関連する周囲の支援内容を明らかにすること.
    方法:東京都の障がい者スポーツセンターの利用者を対象に実施した無記名質問紙による横断調査から,成人肢体不自由者381人を対象に解析を行った.食物摂取行動の指標として食物摂取頻度得点,周囲の支援として家族や周囲の協力,仲間の有無,食物へのアクセスおよび情報へのアクセスに関する質問項目を用いた.食物摂取頻度得点を従属変数,周囲の支援内容を独立変数として,二項ロジスティック回帰分析にて男女別に解析した.
    結果:男性では,良好な食物摂取行動は家族や周囲の協力(OR: 3.31,95%CI: 1.76-6.23),食物へのアクセス(OR: 2.15,95%CI: 1.19-3.88),情報へのアクセス(OR: 2.36,95%CI: 1.20-4.65)と有意に関連し,女性では仲間の有無(OR: 4.72,95%CI: 2.24-9.97)のみ有意に関連した.
    結論:良好な食物摂取行動を目標項目とする食支援プログラムの企画にあたり考慮すべき周囲の支援は,男性では家族や周囲への食教育,食料品店や外食店での食物選択や情報活用につながる教材作成であった.女性では,仲間と一緒の参加または仲間づくりを促す学習形態であった.
お詫びと訂正
特別報告
  • 神戸 美恵子, 赤松 利恵, 稲山 貴代, 衛藤 久美, 岸田 恵津
    2016 年 24 巻 3 号 p. 151-156
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/31
    ジャーナル フリー
    背景:日本健康教育学会栄養教育研究会では,平成25年度から「学校における食育の評価」をテーマとし,研究活動を進めている.平成26年度は,提案書を作成し,本学会誌に発表した.平成27年度は,この提案書の学校現場における活用可能性の検証を行い,学校の食育担当者が,食育のPDCAサイクルを進めていくための具体的な資料として,「学校における食育の評価の実践ワークブック-評価を考えた食育計画の作成-」を作成した.本稿では,このワークブックを用いて行った公開学習会の概要および参加者からの評価の概要について報告する.
    内容:学習会は,1.実践協力校による事例紹介と協力者の感想,2.例題を使ったグループワーク,3.グループディスカッションと発表・全体討論の流れで行った.参加者は98名であった.ディスカッションシートから,「実態把握や学校全体を巻き込むことが重要,目標設定の工夫や評価指標の見直しが必要」等の気づきや学びが見られた.また,アンケート結果では,94.0%の者が満足したと回答し,その理由として,「計画から評価までの一連の流れが理解できた」等の意見があがった.
    結論:栄養教育研究会が作成したワークブックは,学校における食育の評価を行う上で有益な手引きであることが示唆された.理論をベースとした実践の普及と,より良い実践のための理論の発展には,実践者と研究者が連携したさらなる活動が必要である.
お詫びと訂正
特別報告
  • 福田 洋
    2016 年 24 巻 3 号 p. 160-168
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/31
    ジャーナル フリー
    目的:2016年5月22日~26日にブラジル・クリチバ市で開催された第22回IUHPE国際会議の概要とNPWP(北部西太平洋地域)の動向について紹介する.
    内容:国際会議のテーマは「Promoting health and equity(健康と公平性の推進)」で,約70カ国から2,000人超が参加し,980演題が集まった.前回のタイ・パタヤに続き,オタワ憲章以降の世界各国の母子・学校・職域・地域・病院などあらゆる場のヘルスプロモーションについて,経験・解決策・知の共有や議論がなされた.同時に,公平性の確保と推進のためのポリシーメイキングやアドボカシー,健康格差への処方箋とも言えるヘルスリテラシーが多くのセッションで取り上げられた.最終日にはクリチバ宣言が採択され,「ヘルスプロモーションは公平性・人権・平和・参加の4つの原則なくして存立せず」と謳われた.3年に1度の理事選挙及び地域会長選挙が行われ,会長に英国のGraham Robertson氏,NPWP地域会長には神馬征峰氏が選出された.次回2019年のニュージーランドでの国際会議に向けて新たな活動が行われることとなる.
    結語:クリチバ宣言では公平性・人権・平和・参加の4つの原則が強調された.このメッセージを日本でも共有するとともに,次期3年間の意義深い活動につなげたい.
  • 宍戸 洲美
    2016 年 24 巻 3 号 p. 169-173
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/31
    ジャーナル フリー
    目的:日本の子どもたちの健康問題と養護教諭の職務を,IUHPE世界会議で報告することを通して,養護教諭の実践の質の向上を図ることと,日本独自の養護教諭制度や実践の有効性を世界に問うことを目的とした.
    結果:1995年から約20年間にわたりIUHPE世界会議で計8回報告を続けてきた.その結果,Yogo Teacherを国際語として広げる一方で,養護教諭制度が日本独自の制度であることが確認できた.養護教諭の実践が広く世界の子どもたちの健康問題の解決にも寄与できることが示された.また,この会議の3年のインターバルを活用してNational Network of Yogo Teachersのグループで学校保健活動や保健室実践について協議を行い,さらに実践をやり直すという研究方法が養護教諭の実践の向上につながった.
    結論:養護教諭の制度は国際的にみてもユニークな制度である.養護教諭の実践のプロセスを世界に向けて発信することは,日本における養護教諭実践の質向上に有益であるとともに,世界の子どもたちの健康問題解決にも寄与できる.
  • 煙山 千尋
    2016 年 24 巻 3 号 p. 174-178
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/31
    ジャーナル フリー
    目的:メンタルヘルスを向上・維持することは必須であり,それを考慮した研究は重要である.本稿では,第22回IUHPE世界会議における,メンタルヘルスに関連する発表や議論に焦点を当て,各報告の概要と特徴について,学会大会での報告,抄録の内容や関連資料から概観した.
    内容:健康行動に影響する心理的変数としてメンタルヘルスを用いた研究が多く発表された.具体的には,メンタルヘルスとヘルスケアサービスの利用,食行動,運動の実践などの健康行動との関連性が認められた.中でも,ヒスパニック系男性カップルを対象とした調査は貴重である.さらに対象は,幅広い特性を持つ幅広い年齢層に渡っていた.そして,メンタルヘルスの不良は,喫煙,不適切な性行動,自殺,退学,身体不活動,不規則な食行動,薬物利用など,多くの不適応行動や不健康行動と関連していた.反対に,良好なメンタルヘルスは,身体活動の増進や望ましい生活習慣の獲得など,健康行動や適応的な行動との関連が大きいことも報告されていた.
    結論:今後,日本においても,心理職と他の職種とが連携しながら活動領域を広げ,その活動の一環としてメンタルヘルスの維持増進に関する研究を推進することが重要である.メンタルヘルスの概念は幅広い意味を含んでいる.社会環境や社会状況も変化している.人の心理を適切に捉えるためにも,慎重にメンタルヘルスの内容を吟味する必要がある.
  • 春山 康夫, 本井 正代, 高安 由紀
    2016 年 24 巻 3 号 p. 179-184
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/31
    ジャーナル フリー
    目的:非感染性疾患(Non-communicable diseases,NCDs)は世界の主要死因である.本報告では,NCDsに関する疫学及び予防対策のグローバルな動向,そして第22回ヘルスプロモーション・健康教育国際連合会 (IUHPE) 世界大会の中でのNCDs予防対策に関する動向について報告することを目的とした.
    結果:2008年から2012年までの世界のNCDsによる全死亡者数は増加している.とりわけ主要な循環器疾患,がん,慢性呼吸器疾患と糖尿病においてその傾向がみられる.世界保健機関(WHO)はNCDsを克服するための2013-2020行動プランを発表し,また協力機構を設立して対策を強化している.IUHPE世界大会ではNCDs対策のための社会的決定要因が重視された.特に学齢期の肥満対策とその食環境の改善,発展途上国の健康格差への取り組みがトピックスとして発表,議論されていた.これらの内容は日本でも参考にすべきである.
    結論:NCDsには多くの社会的決定要因が関与している.今後,NCDs予防対策をすすめていく上では,社会的決定要因を重視し,ヘルスリテラシーなどのアプローチ,マルチセクターの協力,制度・政策へのアドボカシーをすすめていくことが重要である.
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