日本健康教育学会誌
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28 巻, 3 号
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巻頭言
論壇
原著
  • 行成 由美香, 玉浦 有紀, 赤松 利恵, 藤原 恵子, 鈴木 順子, 西村 一弘, 酒井 雅司
    2020 年 28 巻 3 号 p. 176-187
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/09/01
    ジャーナル フリー

    目的:特定保健指導積極的支援で,減量成功者と不成功者の体重変化パターンを特定し,属性,食習慣・運動習慣の改善状況の違いを検討すること.

    方法:本研究は,後ろ向き縦断的研究である.2011~2017年度に,都内1市の国民健康保険加入者で,特定保健指導積極的支援の初回支援時に行動目標を設定し,6か月間の保健指導を完了した267人を対象とした.約1か月ごとに管理栄養士によって個別支援が行われ,初回支援から各支援までの体重変化率と経過日数を用いて30・90・180日後の推定体重変化率を算出した.体重減少率が4%以上であった者を減量成功者,他を不成功者とし,それぞれで推定体重変化率を用いてクラスター分析を行い,体重変化パターンを特定した.パターンの属性,食習慣・運動習慣改善状況をχ2検定,クラスカル–ウォリス検定で比較した.

    結果:減量成功者では,約10%減量した急激減量パターン,毎月約1%ずつ減量した減量順調パターンの2パターン,不成功者では,90日まで順調に減量したが,その後体重が停滞した減量後停滞パターン,わずかに減量した減量不十分パターン,増量パターンの3パターンが得られた.成功者のパターンには積極的支援の完了経験のある者が少なく,支援前半で食習慣や運動習慣を改善させた者が多かった.

    結論:5つのパターンが得られた.減量成功者の急激減量パターンには,積極的支援のリピーターが少なく,支援前半で食習慣・運動習慣を改善していた.

  • 松本 悠貴, 内村 直尚, 石竹 達也
    2020 年 28 巻 3 号 p. 188-197
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/09/01
    ジャーナル フリー

    目的:本研究では,日本人男性労働者において対人関係および寝酒の問題が睡眠の位相(リズム),睡眠の質,睡眠の量とどのように関連しているかを調査し明らかにすることを目的とする.

    方法:2014年5月に製造業中心の事業所に勤務する日勤の男性労働者を対象に横断研究デザインによる自記式質問紙調査を実施し,280名を解析対象とした.睡眠を評価する方法として3次元型睡眠尺度(3DSS)を使用した.寝酒については「寝酒(寝るためのお酒)はしていますか」という質問に対し「していない/している」の2択とした.対人関係の問題については,「この一年で対人関係の問題はありましたか」という質問に対し「なかった/あった」の2択とした.

    結果:多重ロジスティック回帰分析の結果では,寝酒は睡眠の量得点の低下と有意な関連を認めた(OR[95%CI]=2.24[1.15, 4.35]).対人関係の問題は位相得点の増加(OR[95%CI]=0.39[0.17, 0.87])と量得点の低下(OR[95%CI]=2.78[1.19, 6.48])との間で有意な関連を認め,質得点とは有意な関連を認めなかった.寝酒と対人関係の問題の交互作用では位相得点の低下(OR[95%CI]=5.08[1.29, 20.0])と有意な関連を認めた.

    結論:男性労働者における寝酒と対人関係の問題は,寝酒単独もしくは対人関係単独では睡眠の量の低下と関連し,交互作用は睡眠の位相と関連することが明らかとなった.

短報
  • 中出 麻紀子, 木林 悦子, 諸岡 歩
    2020 年 28 巻 3 号 p. 198-206
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/09/01
    ジャーナル フリー

    目的:20~40歳代成人における朝食時の家族との共食状況と朝食欠食との関連について検討を行う.

    方法:平成28年度ひょうご食生活実態調査に参加した20~40歳代の男女804名のうち,家族と同居し,データに欠損のない522名を解析対象とした.朝食欠食者は朝食摂取頻度が週3日以下の者とし,朝食時の家族との共食状況と朝食欠食との関連についてχ2検定,二項ロジスティック回帰分析を行った.

    結果:朝食時に毎日家族全員が揃って食べる人は62名,時々家族全員が揃って食べる人は106名,家族の一部が揃って食べる人は205名,家族がばらばらに食べる人は149名であった.朝食欠食者は上記の順に3.8%,14.2%,34.0%,48.1%であり,家族との共食状況と朝食欠食の有無との間に有意な関連が見られた.従属変数を朝食欠食の有無,独立変数を家族との共食状況,属性や朝食欠食と関連する項目を調整因子とした二項ロジスティック回帰分析を実施したところ,毎日家族全員が揃って食べる人を基準として,時々家族全員が揃って食べる人の朝食欠食のオッズ比[95%信頼区間]は2.45[0.74, 8.14],家族の一部が揃って食べる人は3.37[1.08, 10.56],家族がばらばらに食べる人は7.91[2.57, 24.39]であった.

    結論:朝食時に家族全員が揃って食べない人では,朝食欠食者が多いことが示唆された.

実践報告
  • 坂本 達昭, 本田 藍
    2020 年 28 巻 3 号 p. 207-214
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/09/01
    ジャーナル フリー

    目的:主食・主菜・副菜の組み合わせからなる学生食堂(以下,学食)の定食価格と量の調整,販売促進を行うことによる定食利用者数の変化を明らかにすること.

    事業/活動内容:熊本県立大学学食で実施した.2019年10月から定食の主食(ご飯)を50 g減らし,通常の定食(400円)より50円割引した定食小盛(350円)をメニューに加えた.販売促進として,他のメニューと比べた定食の優位性等を発信した.調査期間は2019年10月から翌年1月までとした.評価は,調査期間中の1日あたりの学食利用者数,定食利用者数,学食利用者数に占める定食利用者数の割合(以下,定食利用者数の割合)を前年度同時期との比較により行った.

    事業/活動評価:調査期間の学食営業日は74日であった(前年73日).1日あたりの学食利用者数の中央値(25, 75%タイル値)は120.0(113.0, 131.0)人であり,前年(101.5(92.8, 113.3)人)より多かった(P<0.001).定食利用者数の中央値は57.0(47.0, 66.0)人で,前年(36.5(32.0, 45.0)人)よりも多かった(P<0.001).定食利用者数の割合は46.8 (41.1, 53.6) %で,前年(37.3(31.7, 43.4) %)より高かった(P<0.001).

    結論:定食価格と量の調整と販売促進により,定食利用者を増加させる可能性が示唆された.

特集/厚生労働省「健康寿命をのばそう!アワード」受賞事例
  • 藤内 修二
    2020 年 28 巻 3 号 p. 215-223
    発行日: 2020/08/31
    公開日: 2020/09/01
    ジャーナル フリー

    大分県では健康寿命日本一を目指して,多様な主体との協働による社会環境の整備に取り組んでいる.その中心的な役割を果たしているのが,2016年に設立された「健康寿命日本一おおいた創造会議」(以下,創造会議)である.創造会議は,経済団体,保健医療福祉関係団体,報道機関,行政機関,健康づくり関係団体,大学等の39団体で構成され,構成団体間の連携や健康寿命の延伸を支援する「おうえん企業」との連携を促すプラットフォームとして機能し,官民一体となった県民運動の展開の原動力になっている.

    こうした協働の背景には,2014年度に開始した「健康経営」の推進により,健康づくり担当課と商工会議所をはじめとする経済団体や協会けんぽ大分支部との協働体制が構築されたこと,同じく2014年度に開始した,美味しく減塩を進めようという「うま塩」プロジェクトの実践を通して,Creating Shared Value(共通価値の創造)の理念に基づく企業との新たな連携の形態に手応えを感じ,より積極的に企業との連携を進められたことが挙げられる.

    ヘルスプロモーションの実践においては,健康寿命の延伸というアウトカムの評価だけでなく,多様な主体との協働による社会環境の整備のプロセスの評価も重要であり,そのノウハウやエビデンスの蓄積が望まれる.

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