日本健康教育学会誌
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32 巻, Special_issue 号
健康日本21(第三次)推進に向けたアクションプランの提案―栄養・食生活,身体活動,たばこの3 分野について―
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
巻頭言
論説
特別報告
  • 新保 みさ
    2024 年 32 巻 Special_issue 号 p. S8-S15
    発行日: 2024/04/30
    公開日: 2024/06/12
    ジャーナル フリー

    目的:男性の肥満者の割合は健康日本21(第二次)の最終評価で「悪化」であり,これまで以上の取組が必要とされている.本稿では健康日本21(第三次)でも設定された「適正体重を維持している者の増加」の中で,成人の肥満者の割合減少という目標を達成するためのロジックモデルと介入のはしごに基づいた個別施策,アクションプランの例を示す.

    方法:厚生労働省の「標準的な健診・保健指導プログラム」や「健康寿命をのばそう!アワード」の受賞事例や,農林水産省の「従業員等の健康に配慮した企業の食育推進事例集」を参考にした.

    結果:ロジックモデルでは,肥満者の割合減少の中間アウトカムに摂取エネルギー量の減少に繋がる食行動,態度,知識・スキルを取り上げた.個別施策には,介入のはしごのレベル6にあたる適正なエネルギー量の食事の提供などの環境整備を含めた.アクションプランの例では,肥満者の割合が高い働く世代の男性に焦点を当て,健康経営を基盤に,社員食堂でインセンティブをつけて適正なエネルギー量の食事を提供し,グループでの参加によるチーム対抗の減量プログラムを実施する取組を提案した.

    結論:成人の肥満者の割合減少のためのロジックモデルと個別施策を整理した.アクションプランの例ではより効果が期待できる施策として,健康経営による社員食堂を活用したチーム対抗の減量プログラムの取組を提案した.

  • 吉池 信男
    2024 年 32 巻 Special_issue 号 p. S16-S27
    発行日: 2024/04/30
    公開日: 2024/06/12
    ジャーナル フリー

    目的:小児肥満は,世界的に1970年代から急速に増加しており,日本でも健康日本21(2000年)において,その減少が目標とされた.学校保健統計調査では,2006年以降2018年頃までは肥満傾向児の割合は減少傾向から横ばいだったが,健康日本21(第二次)の最終評価(2022年)では,目標項目「肥満傾向にある子どもの割合の減少」は「悪化」と判定された.本報告では,国際的に重視されているライフコースや社会環境的アプローチを中心に文献等のレビューを行い,健康日本21(第三次)等での対策のための新たな視点を提示する.

    方法:小児肥満の予防を目的とした国及び地域における対策に関して,国内外の文献のナラティブレビューを行った.Cochrane Library, PubMed等の文献データベースにより検索を行った.

    結果:Cochrane Review(2019年)で示されたように,個人の行動に焦点を当てた介入の効果は限定的であり,“obesogenic environment”という概念に基づく社会環境的アプローチや,出生前からの栄養ケア等ライフコースアプローチを組み合わせた対策が重要と考えられた.

    結論:従来からの母子保健,保育所・学校等における取り組みに加え,より包括的に社会環境に介入することが必要であり,このことは健康日本21(第三次)における「自然に健康になれる環境づくりの構築」の重要な要素である.

  • 荒田 尚子
    2024 年 32 巻 Special_issue 号 p. S28-S34
    発行日: 2024/04/30
    公開日: 2024/06/12
    ジャーナル フリー

    目的:健康日本21(第三次)の目標の一つである「若年女性のやせの減少」を達成するためのロジックモデルと介入のはしごにおける施策の位置づけを整理し,アクションプランを提示する.

    方法:ロジックモデルでは,中間アウトカムとして,健康日本21の栄養・食生活分野におけるそのほかの目標のほか,若年女性のやせの割合の減少に関連する目標を取り挙げ,総論的なアクションプランを示した.

    結果:中間アウトカムとして,「バランスの良い食事をする」「歩数を増やす」「運動習慣者の割合を増やす」「喫煙者を減らす」「朝食欠食の割合を減らす」「日照時間を増やす」「ボディイメージの改善」を挙げた.食欲の増進,エネルギー摂取量の増加,筋肉量・骨量の増加を介して,最終的に若年女性のやせの割合の減少を達成できると考えた.国,都道府県・市区町村・保険者,関連団体,関連企業,職域,保育所・学校などの教育機関において,教育・啓発,健診と保健指導,適正エネルギー摂取が可能なバランスのよい食事の提供,業界でのガイドライン規制を進めること,ボディイメージ改善を評価できる指標の作成,健康経営として女性の健康の推進を行うことを提示した.

    結論:食育の推進,運動の推進,禁煙といった教育・啓発とともに,関連する種々の団体や企業での「痩せすぎモデル規制」を含めたガイドライン作成を国がリードしていくことが重要である.

  • 成田 美紀, 清野 諭
    2024 年 32 巻 Special_issue 号 p. S35-S42
    発行日: 2024/04/30
    公開日: 2024/06/12
    ジャーナル フリー

    目的:健康日本21(第二次)では,低栄養傾向の高齢者の割合の増加を抑制することを掲げ,65歳以上BMI 20 kg/m2以下の割合22%未満を目標とした.低栄養傾向の高齢者の割合は,後期高齢者の増加による自然増により見込まれる割合を上回ることなく抑制はできているが,この割合が更に増加することを踏まえ,引き続き対策を要する.本稿では,健康日本21(第三次)で設定された低栄養傾向の高齢者の割合の減少を達成するためのロジックモデルと介入のはしごに基づいた個別施策,アクションプランの例を示すことを目的とした.

    方法:ロジックモデルの中間アウトカムは,介護予防・フレイル予防等で用いる評価指標を収集した.アウトプットは,個別施策例の取り組みが評価可能な指標例を設定した.個別施策は,国,自治体,団体等の事例を参考に収集した.

    結果:ロジックモデルの中間アウトカムは,知識・スキル,行動,食欲・口腔状態,栄養素・食物摂取で構成した.ロジックモデルの個別施策を,介入のはしごのレベルに対応して示した.アクションプランの例では,フレイル予防の地域活動に会食を加え,高齢者の健康支援に配慮した多様な食品摂取ができる食事を楽しむ取り組みを紹介した.

    結論:本稿で紹介したアクションプランは,高齢者の低栄養予防の戦略として適切な食事を確保できる食環境整備を行うことで,高齢者が健康と体重管理に役立てることが期待される.

  • 赤松 利恵
    2024 年 32 巻 Special_issue 号 p. S43-S51
    発行日: 2024/04/30
    公開日: 2024/06/12
    ジャーナル フリー

    目的:ロジックモデルと介入のはしごを用いて,「バランスの良い食事を摂っている者の増加」の目標達成に向けた施策を整理し,アクションプランを提示すること

    方法:日本人の健康な成人を対象に,バランスの良い食事の摂取頻度をアウトカムとした介入研究と横断研究を調べ,行動科学の理論・モデルを参考に,ロジックモデルを作成した.次に,介入のはしごを用いて,実施主体別の個別施策を整理した.さらに,バランスの良い食事の推進に向けたアクションプランとして,自治体の取組みをとりあげた.

    結果:ロジックモデルでは,「主食・主菜・副菜を組み合わせた食事が1日2回以上の日がほぼ毎日の者の割合の増加」のアウトカムに向けて,「調理をする者の増加」「1日3食,食事をとる者の増加」「主食に米を摂取する者の増加」「野菜を摂取する者の増加」と「バランスの良い食事を選択する者の増加」の5つの食行動が中間アウトカムとしてあげられた.介入のはしごを用いて,実施主体別の個別施策を整理したところ,ナッジやインセンティブを活用した取組み(レベル4~6)が複数提案された.アクションプランでは,地域におけるスマートミールの導入を紹介した.

    結論:野菜や食塩など食品レベルに比べ,バランスの良い食事の摂取を推進する介入研究は少なかった.効果ある取組みの普及には,食事レベルの介入研究が必要である.

  • 林 芙美
    2024 年 32 巻 Special_issue 号 p. S52-S63
    発行日: 2024/04/30
    公開日: 2024/06/12
    ジャーナル フリー

    目的:健康日本21(第二次)では,野菜350 g/日,果物摂取量100 g未満者の割合の減少を目標値としていたが,いずれも目標達成には至らなかった.野菜・果物からの食物繊維やカリウム等の摂取,また生活習慣病リスクの低下等が期待されることから,健康日本21(第三次)では野菜・果物摂取量の平均値として,それぞれ野菜350 g/日,果物200 g/日が目標値として設定された.本稿では,野菜・果物摂取量の増加に向けたロジックモデルと個別施策の例,アクションプランの例を示す.

    方法:国・都道府県・団体等の健康づくり・食育推進の取り組み事例について,ウェブで情報を収集した.また,学術誌・報告書等に掲載された取り組みをハンドサーチした.

    結果:中間アウトカムとして,食行動は野菜6項目,果物5項目,食態度2項目,知識・スキル1項目で構成し,個別施策の例は介入のはしごに組織ごとに示した.アクションプランの例では,地方自治体が仲介役となり生産者や食品関連事業者からの寄付食品を子ども食堂や生活困窮世帯に届ける仕組みを紹介した.地方自治体がJA等と連携し,寄付食品を衛生的に保管・配送,需給調整する体制を整備することで,寄付量の増加や,品揃えバランスの向上が見込める.

    結論:本稿で示すアクションプランは,健康寿命の延伸,生活困窮者支援による健康格差の縮小,さらに食品ロス削減による環境問題対策として,健康で持続可能な食生活の実現に繋がると期待される.

  • 村山 伸子
    2024 年 32 巻 Special_issue 号 p. S64-S74
    発行日: 2024/04/30
    公開日: 2024/06/12
    ジャーナル フリー

    目的:栄養・食生活の目標の内,食塩摂取量の減少について,ロジックモデル作成と介入のはしごを用いた施策の整理を行い,アクションプランの例を提示すること.

    方法:ロジックモデルはプリシード・プロシードモデルを用いて中間アウトカム要因を設定した.施策は,既存の事例や論文があるものを介入のはしごを用いて整理した.日本においてエビデンスが報告されている施策をもとにアクションプランを作成した.

    結果:ロジックモデルは,アウトカムを食塩摂取量の減少とし,中間アウトカムとして家庭,中食・外食,給食での減塩行動と研修会等の学習への参加,減塩への関心や自信等の態度,知識・スキルを設定した.既存の施策は,介入のはしごのレベル6~8が多く,レベル5, レベル4は少なかった.アクションプランは,職域における社員食堂や配達弁当の減塩と栄養教育を取り上げた.職域での施策は,地域・職域連携,健康経営,特定給食施設指導等の自治体の既存事業があり,効果のエビデンスもある.実施のポイントは,保健管理部門と給食(弁当)部門との連携体制,介入のはしごのインセンティブの導入等により選択や購入を増やすことである.

    結論:自治体がアクションプランを作成する際には,実態把握をもとにロジックモデルを作成し,食環境整備では販売される食品の減塩だけでなく,その購入促進のプロモーションやインセンティブを組み合わせることが重要である.

  • 井上 茂, 菊池 宏幸, 鎌田 真光, 北湯口 純, 都築 葵, 小熊 祐子
    2024 年 32 巻 Special_issue 号 p. S75-S84
    発行日: 2024/04/30
    公開日: 2024/06/12
    ジャーナル フリー

    目的:国民の日常生活における歩数の増加に向けて,ロジックモデルを示し,個別施策については介入のはしごに基づいてレベル分けを行う.また,アクションプランの例を示す.

    方法:関連する政策・先行研究の検討,専門家23名へのインタビューを行った.ロジックモデルは,身体活動を場面別にとらえるSLOTHモデル(S: 睡眠,L: 余暇,O: 仕事,T: 移動,H: 家庭・地域)を参考に,「仕事中の歩数」「移動での歩数」「家庭・地域での歩数」を中間アウトカムとして作成した.また,個別施策を介入のはしごを用いて整理した.アクションプランの例は,地域全体のレベルで身体活動推進に成功したエビデンスがある多面的地域介入を紹介した.

    結果:ロジックモデルでは事業の実施主体(行政,職域,保険者,学校,関連団体)別に個別施策を示した.歩く場面を想定することで,歩数増加のための具体的な対策が浮かび上がった.提案した個別施策には,情報提供や健康教育のみならず,介入のはしごのレベル1~6に相当する対策も多く含まれた.多面的地域介入は地域全体で身体活動を促進するために,単一のアプローチではなく,個人から環境まで複数のレベルの要因に多面的に働きかける介入であり,対象者の目線で様々な組織や住民と協力して長期的に取り組む必要性が示された.

    結論:健康・福祉部門だけではなく,教育・スポーツ,都市計画・都市交通といった様々な部門の施策にも着目して対策を進める必要がある.場面ごとの対策,住民目線での対策を考え,長期にわたり計画的に取り組む必要がある.

  • 菊池 宏幸, 清野 諭, 野藤 悠, 植田 拓也, 井上 茂
    2024 年 32 巻 Special_issue 号 p. S85-S93
    発行日: 2024/04/30
    公開日: 2024/06/12
    ジャーナル フリー

    目的:国民の運動習慣者割合の増加に向けたロジックモデルとアクションプランの例を示す.

    方法:運動習慣者割合の増加を分野別アウトカムとしたロジックモデルを作成した.ロジックモデルにおける個別施策は,スポーツ庁等関係省庁での取り組みと整合性が取れる内容とした.さらに,介入のはしごを用いて介入のレベル別に整理した.アクションプランの例は,既存の事業・資源を有効活用する取り組みとして,既存事業への運動「ちょい足し」プログラムを取り上げた.

    結果:運動習慣者割合の増加を目的とした個別施策は,行政については健康部門,教育・スポーツ部門,その他の部門(国土交通部門等)に分けて示した.さらに,職域,保険者,学校,関係団体・その他を実施主体とした取り組みも提示した.介入のはしごで整理した結果,レベル1~3に相当する個別施策が少ないことが明らかになった.そのため,レベル7に相当する個人や小集団を対象とした健康教育に加えて,よりレベルの高いレベル4~6に相当する地域社会環境の整備が重要と考えられた.

    結論:運動習慣者割合の増加を達成するためには,行政や職域の健康部門および教育・スポーツ部門の施策が重要である.個人や小集団を対象とした健康教育のみならず,運動を促す環境整備にも着目した施策が期待される.

  • 中村 正和, 片野田 耕太, 道林 千賀子, 齋藤 順子, 島津 太一
    2024 年 32 巻 Special_issue 号 p. S94-S101
    発行日: 2024/04/30
    公開日: 2024/06/12
    ジャーナル フリー
    電子付録

    健康寿命の延伸を目指す健康日本21(第三次)において,たばこ対策は引き続き重要なテーマであり,その効果的な対策が求められている.健康日本21(第三次)において,第二次計画とほぼ同様に,喫煙ならびに受動喫煙に関する4つの目標と目標値,すなわち成人の喫煙,未成年者の喫煙,妊婦の喫煙,受動喫煙に関わる数値目標が設定された.第一次,第二次計画では,目標が設定されるものの,その目標を達成するための道筋や方策について示されてこなかった.

    そこで,第三次計画におけるたばこ対策の推進を目的として,4つの目標を達成するためのロジックモデルを作成するとともに,目標達成のための各種の施策を介入のはしごで分類整理し,実施主体別にまとめた.さらに,これらの施策の中から,たばこ対策の現状を踏まえ,実施主体が相互に連携・協働して取組め,かつ実行可能性と実効性が期待できるお勧めのアクションプラン(「ベストバイプラン」)を検討し,3つのプランを提示した.作成した3つのベストバイプランの施策名は,1)日常診療や健診等の保健事業の場での短時間禁煙支援の実施,2)職域における喫煙対策実施の促進,3)法規制の強化につながる受動喫煙防止条例の制定と対策の推進である.

  • 道林 千賀子, 片野田 耕太, 齋藤 順子, 島津 太一, 中村 正和
    2024 年 32 巻 Special_issue 号 p. S102-S111
    発行日: 2024/04/30
    公開日: 2024/06/12
    ジャーナル フリー

    目的:健康日本21(第三次)の喫煙分野において設定された「喫煙率の減少(喫煙をやめたい者がやめる)」と「妊婦の喫煙をなくす」の目標達成に向けたロジックモデルとアクションプラン例を示すことを目的とした.

    方法:地域での喫煙率低減に向けた取り組みについて国内外の先行研究や先進事例をレビューし,成人と妊婦の喫煙率減少に向けたロジックモデルと介入のはしごの図表,短時間禁煙支援に関するアクションプラン例を検討した.

    結果:ロジックモデルでは,喫煙率低減に向けた個別施策例を国・地方自治体・関係機関等の実施主体ごとに示し,介入のはしごのレベル別に個別施策を分類した.アクションプラン例では,有効性に関する科学的根拠があり,全国各地での実施が期待される個別施策として「日常診療や健診等の保健事業の場での短時間禁煙支援の実施」を提案した.地方自治体と地域の医師会や健診機関等が連携し,医療機関における日常診療(妊婦健診を含む)や,保健センターにおける成人・母子保健事業,歯科検診や健康づくり事業など各種保健事業の場で喫煙者全員に短時間禁煙支援を行う体制を整備することが重要である.

    結論:科学的根拠に基づく実効性の高い施策を体系的に示すロジックモデルと,地方自治体における短時間禁煙支援体制の構築のためのアクションプラン例を提示した.これらの活用により,健康日本21(第三次)の目標である喫煙率低減が期待できる.

  • 齋藤 順子, 島津 太一, 片野田 耕太, 道林 千賀子, 中村 正和
    2024 年 32 巻 Special_issue 号 p. S112-S120
    発行日: 2024/04/30
    公開日: 2024/06/12
    ジャーナル フリー

    目的:職域は多様な集団に継続的に健康増進介入を提供する貴重な場である.本稿では,職域に焦点をあて,喫煙率の減少および受動喫煙対策推進のためのロジックモデルと介入のはしごにおける施策の位置づけを整理し,職域でのアクションプランの例を提示することを目的とした.

    方法:ロジックモデルと介入のはしごを構成する職域の個別施策は,国内の禁煙支援に関するスコーピングレビューの結果および文献検索に基づき選定した.アクションプランには,必要性と意義,有効性に関するエビデンス,関係する組織と役割,実施のポイントと留意点,好事例などを紹介した.

    結果:職域の喫煙対策については,職場の屋内禁煙施策や就業時間内禁煙が,最も推奨される施策であることが示された.さらに,禁煙促進活動,および健診機関と連携した健康診断での短時間禁煙支援体制構築が個別施策のメインであり,加えて,国における法規制の推進や強化(労働安全衛生法や改正健康増進法など)も重要でであった.また,職域の喫煙対策実施のポイントとして,マルチレベルの介入を組み合わせて実施すること,また,事業所規模や業種などの職場の特性に合わせて実施することが示された.

    結論:このアクションプランにより,喫煙率の減少および受動喫煙対策推進に向けて,職域の喫煙対策がより一層推進されることが期待される.

  • 片野田 耕太, 道林 千賀子, 齋藤 順子, 島津 太一, 中村 正和
    2024 年 32 巻 Special_issue 号 p. S121-S130
    発行日: 2024/04/30
    公開日: 2024/06/12
    ジャーナル フリー

    目的:健康日本21(第三次)では,社会環境の質の向上として「望まない受動喫煙の機会を有する者の減少」が掲げられている.本稿では,受動喫煙対策推進のためのロジックモデルと介入のはしごにおける施策の位置づけを整理し,受動喫煙防止条例の制定と対策の推進のためのアクションプランを提示することを目的とした.

    方法:ロジックモデルと介入のはしごを構成する施策として,公共の場所での喫煙を規制する法令や規則の強化,受動喫煙を防ぐための飲食店・事業所や家庭への働きかけ,モニタリング等を選定した.アクションプランには,必要性と意義,有効性に関するエビデンス,関係する組織と役割,実施のポイントと留意点,好事例などを紹介した.

    結果:ロジックモデルと介入のはしごにより,受動喫煙対策として,国,自治体における公共の場所等の喫煙の法規制が最も重要であることが示された.法規制に加えて,企業等の禁煙化推進,法令に基づく飲食店,職場等への禁煙化の啓発,各施策のモニタリングも重要であることが示された.アクションプランにより,自治体には,組織づくり,関係者との連携などを通じた上乗せ条例の制定,法令遵守の徹底,飲食店,事業所などへの働きかけが求められた.

    結論:国には,改正健康増進法の強化が求められる.このアクションプランが活用され,喫煙者の禁煙支援など他の対策と合わせて,受動喫煙のない社会の実現に寄与することが期待される.

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