目的:小児肥満は,世界的に1970年代から急速に増加しており,日本でも健康日本21(2000年)において,その減少が目標とされた.学校保健統計調査では,2006年以降2018年頃までは肥満傾向児の割合は減少傾向から横ばいだったが,健康日本21(第二次)の最終評価(2022年)では,目標項目「肥満傾向にある子どもの割合の減少」は「悪化」と判定された.本報告では,国際的に重視されているライフコースや社会環境的アプローチを中心に文献等のレビューを行い,健康日本21(第三次)等での対策のための新たな視点を提示する.
方法:小児肥満の予防を目的とした国及び地域における対策に関して,国内外の文献のナラティブレビューを行った.Cochrane Library, PubMed等の文献データベースにより検索を行った.
結果:Cochrane Review(2019年)で示されたように,個人の行動に焦点を当てた介入の効果は限定的であり,“obesogenic environment”という概念に基づく社会環境的アプローチや,出生前からの栄養ケア等ライフコースアプローチを組み合わせた対策が重要と考えられた.
結論:従来からの母子保健,保育所・学校等における取り組みに加え,より包括的に社会環境に介入することが必要であり,このことは健康日本21(第三次)における「自然に健康になれる環境づくりの構築」の重要な要素である.
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