日本健康教育学会誌
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最新号
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巻頭言
原著
  • 川村 佳祐, 戸ヶ里 泰典
    2025 年33 巻4 号 p. 251-261
    発行日: 2025/11/30
    公開日: 2025/12/12
    ジャーナル オープンアクセス

    目的:パーキンソン病患者が症状と上手く付き合い生活するには,社会生活への適応やセルフマネジメント能力,支援する医療者との関係性が重要となる可能性がある.しかし,これらを測定・評価し健康関連指標への影響を調査した報告は少ない.本研究ではこれらを評価する尺度を開発し,妥当性を検証することを目的とした.

    方法:本研究は自記式質問紙法を用いた横断研究である.得られた回答に探索的・確証的因子分析を行った.外的基準尺度との関係性の検討にはParkinson’s disease Questionnaire-8(PDQ-8),主観的健康観,パーキンソン病症状との付き合いの良好さを評価し用いた.

    結果:調査票を691部配布し,203部を回収した.うち198部を解析対象とした.自己が症状に対してどのように対処しているのかを調査する質問紙と,医療者との関係性や社会的適応を評価するための2種類の質問紙を作成し,それぞれ探索的および確証的因子分析を実施した結果,「症状のマネジメント」「医療者との適度な関係性」「社会生活への適応」が抽出された.また,これら3つの因子が健康関連尺度に関連することを明らかにした.

    結論:パーキンソン病患者のセルフマネジメントを評価する尺度を開発し,妥当性を確認した.健康関連尺度と併用することで療養生活状況の包括的評価が可能である.

実践報告
  • 小山 達也, 川畑 輝子, 青野 昌代, 井上 知紀, 川村 ちこ, 三國 正人, 道林 千賀子, 千葉 綾乃, 川原田 恒, 中村 正和, ...
    2025 年33 巻4 号 p. 262-269
    発行日: 2025/11/30
    公開日: 2025/12/12
    ジャーナル オープンアクセス

    目的:本調査では,食塩の摂取量を減らしカリウムの摂取量を増やす工夫をした,リーフレットに記載されたレシピに興味のある者の特徴を明らかにすることを目的とした.

    活動内容:2024年から青森県東通村では,住民健康診査の受診者と村内の診療所に高血圧治療のため通院者に対し,リーフレットを配布した.リーフレット配布のねらいは,ナトリウム/カリウムの摂取比を意味する「ナトカリ比」という概念の普及と,それに対する意識の向上,および減塩や増カリウムを意識した食事の啓発であった.リーフレットには,「5分でできる減塩&増カリウムレシピ」を5品紹介した.レシピに興味を示す対象者の特徴を把握するため,自記式質問紙をリーフレットと一緒に配布した.

    活動評価:質問紙は住民健康診査の受診者185名,村内の診療所への高血圧治療のための通院者118名から回収できた.レシピに興味があると回答した者の割合は,223名(73.6%)であった.配布したレシピに興味を示した者の特徴として,ナトリウム摂取に気をつけて実践をしている,料理を作る際に普段からレシピを利用している,ことが抽出された.

    今後の課題:今後は,ナトリウムやカリウム摂取に気をつけていない者やレシピを日常あまり利用しない者にも興味が得られるようなリーフレットの内容を検討していく必要がある.

特別報告
  • 岩部 万衣子, 髙橋 佳奈, 吉井 瑛美, 中西 明美, 坂本 達昭, 中村 彩希, 會退 友美, 新保 みさ
    2025 年33 巻4 号 p. 270-275
    発行日: 2025/11/30
    公開日: 2025/12/12
    ジャーナル オープンアクセス

    背景:日本健康教育学会栄養教育研究会は2023年度からICT活用による栄養教育の実践をテーマに活動を行っている.本稿では2024年度の活動として2025年3月22日に開催した公開学習会「SAMRモデルを用いたICT活用の実践術~児童・生徒主体の学びの実現に向けて~」について報告する.

    内容:学習会はオンラインにより2部構成で実施した.第1部は三井一希氏による講義「学習者主体の学びの実現へ向けたICTの活用」,第2部は講義を受けての意見交換をワールドカフェ方式で行った.意見交換は小グループに分かれ,①講義を聞いての気づきや疑問,②栄養教育におけるICT活用のメリット・デメリット,③SAMR(Substitution, Augmentation, Modification, and Redefinition)モデルを踏まえた今後の実践におけるICT活用の3点について行った.参加者は50名であった.学習会に対するアンケート(回答者45名,回答率90%)では,全回答者が本学習会で新しく学んだことがあった,満足したと回答した.満足した理由にはSAMRモデルという新たな知識を得たことや意見交換で理解を深められたことなどが多く挙げられた.また,回答者の96%が,学習会で得たICT活用の知識を用いて学習者主体の学びを実践できそうだと思うと回答した.

    結論:本学習会は,SAMRモデルという新たな視点でのICT活用に関する知識を提供し,参加者の今後の実践につながる学びを深めることに貢献できた.

特集:第33回日本健康教育学会学術大会
  • 助友 裕子, 河村 洋子, 宮脇 梨奈
    2025 年33 巻4 号 p. 276-277
    発行日: 2025/11/30
    公開日: 2025/12/12
    ジャーナル オープンアクセス
  • 河村 洋子, 助友 裕子
    2025 年33 巻4 号 p. 278-282
    発行日: 2025/11/30
    公開日: 2025/12/12
    ジャーナル オープンアクセス

    本特別講演の企画の目的は,大会テーマ「パートナーシップ」に基づき,米国サンディエゴにおいてラティーノ・コミュニティと長年協働してきたDr. Navarroの経験を紹介し,アクションリサーチにおけるパートナーシップ構築の意義を再考する機会の提供であった.Dr. Navarroは研究・コミュニティ活動・トレーニングの三要素が循環的に作用することを強調し,持続的なコミュニティ参加型リサーチの実現には,これらを統合する取り組みが不可欠であるとした.講演では,パートナーシップの長所として長期的な成果,予期せぬ相乗効果,社会的価値や持続可能性の向上を挙げる一方,短所として,成果顕在化までの時間,調整の負担,利害の妥協などを指摘した.さらに,実践的戦略として,“SMART”基準による目標の共有,相互尊敬の醸成,失敗を成長の機会とするマインドセット,行動指針となる枠組みの設定,リーダーシップ継承と人材育成を提示した.さらに,パートナーシップは円形でなく螺旋型の発展を目指すことを推奨し,研究者はコミュニティをつなぎ変化とイノベーションを媒介する役割が期待されることが示唆された.本講演の内容はDr. Navarroの実践的経験に基づいた知恵の共有であり,実践に向けた示唆に富む内容を読者の方々にも活用していただくことを期待する.

  • 藤野 善久
    2025 年33 巻4 号 p. 283-287
    発行日: 2025/11/30
    公開日: 2025/12/12
    ジャーナル オープンアクセス

    人々の健康は,医療のみならず経済,教育,労働,環境など多様な要因に規定される.この視点から,すべての政策に健康を組み込む「Health in All Policies(HiAP)」と,その実践ツールである「Health Impact Assessment(HIA)」が注目されている.HIAは政策や事業の健康影響を予測・評価し,特に健康格差の是正に資する手法として国際的に推奨されてきた.英国のAchesonレポートやWHOの社会的決定要因委員会報告書では,健康格差対策の第一にHIAの導入が掲げられている.さらにHiAPは,縦割りを超えて教育,労働,都市計画など幅広い部門の協働を促進し,健康を社会全体の共通価値とする政策枠組みである.しかし日本においては,HIAの認知度や教育体制が不十分で,実践事例や専門人材の不足が課題となっている.一方で「健康日本21」では健康格差縮小が掲げられ,HIA普及の重要性が増している.今後は制度的基盤の整備,公衆衛生教育への導入,専門人材の育成が不可欠である.HIAとHiAPの推進は,健康寿命の延伸と公正な社会の実現に寄与するものと期待される.

  • 髙野 真梨子, 村上 梨紗, 村田 凪咲, 亀山 泉, 宇都宮 涼
    2025 年33 巻4 号 p. 288-293
    発行日: 2025/11/30
    公開日: 2025/12/12
    ジャーナル オープンアクセス

    目的:第33回日本健康教育学会学術大会で開催した若手の会企画「私たちが考える,未来の健康のために築きたいパートナーシップ」の内容を報告する.

    活動内容:学術大会前に実施した事前調査では,「未来の健康」や「その実現のための課題」について多分野の若手研究者・実践者から意見を収集し,その結果を報告した.健康教育分野以外を代表して,農業経済学専攻の宇都宮涼氏による指定発言の後,若手研究者・実践者は,「築きたいパートナーシップ」について話し合うグループワークを行った.あわせて,ベテランの研究者からパートナーシップ形成の経験や困難に関するコメントを収集した.

    活動評価:参加者は73名であった.事後調査(N=24)では,「非常に満足している」「まあ満足している」と回答した者が91.7%と,高い満足度を得た.「グループワークで得た気付き」では,分野による視点の違いについての気付き等が挙げられた.「今後築きたいパートナーシップ」では,多様な主体との連携や,連携相手を深く理解し尊重する姿勢が示された.

    結論:本企画では,事前調査による多分野からの意見収集や指定発言,グループワークを通じて,参加者が今後築きたいパートナーシップやそのために必要な姿勢について考えるきっかけを提供できた.若手研究者・実践者がパートナーシップを形成していくために必要な取り組みを,今後さらに推進していきたい.

特集:第25回IUHPE 国際会議報告
  • 福田 洋
    2025 年33 巻4 号 p. 294-300
    発行日: 2025/11/30
    公開日: 2025/12/12
    ジャーナル オープンアクセス

    International Union for Health Promotion and Education(IUHPE, ヘルスプロモーション・健康教育国際連合)は,すべての人々の健康と幸福の向上を目指し,世界保健機関(WHO)と緊密に連携して活動する国際NGOである.2025年5月にアラブ首長国連邦(UAE)のアブダビで開催された第25回国際会議は,「Settings for Planetary Health and Well-Being(地球規模の健康と幸福を見据えたセッティング)」をテーマに掲げ,近年の多岐にわたる地球規模の複合的危機(ポリクライシス)に対し,ヘルスプロモーションが果たすべき役割と新たな方向性を探求した.会議では,セッティングスアプローチの視座をローカルからグローバルへと移行させる議論が展開された.会議を通じて「温暖化する地球のために,より涼しくスマートな都市を設計する」「デジタルヘルスの再構築:テクノロジーファーストからピープルファーストへ」「メンタルヘルスは特権ではなく権利」などの重要な提言が生まれた.本稿では,この国際会議の概要と主要な論点を整理するとともに,日本を含む北部西太平洋地域(NPWP)の活動と,今後,地域として取り組むべき課題と展望について報告する.

  • 江川 賢一
    2025 年33 巻4 号 p. 301-306
    発行日: 2025/11/30
    公開日: 2025/12/12
    ジャーナル オープンアクセス

    背景:気候変動や社会格差は人々の健康に深刻な影響を与えており,健康政策にはウェルビーイングの統合が進められている.全ての生命と環境の健康を重視するプラネタリーヘルスの推進が呼びかけられている.従来の学校・職域・地域といった固定的な場に依拠するアプローチでは,参加と公平性が十分に保障されていない.

    目的:本報告は,第25回ヘルスプロモーション・健康教育国際連合(IUHPE)国際会議で提示された「プラネタリーヘルスとウェルビーイングのためのセッティング」概念を整理し,参加と公平性に関する研究課題を明らかにする.

    結果:人工知能や精密医療を活用した先進的取り組み,先住民の文化を尊重した実践,気候変動や資源管理を踏まえた都市政策が報告された.また,学校や地域活動で子どもや市民を巻き込む仕組み,文化的多様性を尊重する包摂的制度設計,国際協力による健康格差の是正が強調された.参加機会の偏在や資源分配の不均等は依然として課題であり,理論と実践の統合が求められた.

    結論:セッティングは単なる生活の場ではなく,参加と公平性を担保する社会的インフラとして再定義された.今後は,①セッティングを超えた参加型協働モデルの構築,②弱者や少数者を含む公平な資源配分の評価,③文化的背景や先住民の知識を組み込む包摂的デザインの検討が必要である.これにより,多層的かつ持続可能なウェルビーイング社会の実現が展望される.

  • 日比野 浩之
    2025 年33 巻4 号 p. 307-312
    発行日: 2025/11/30
    公開日: 2025/12/12
    ジャーナル オープンアクセス

    目的:本稿では,2025年5月13日から16日にアラブ首長国連邦・アブダビ市で開催された第25回IUHPE国際会議の概要と産業保健領域の研究動向,ならびに筆者の発表内容を報告する.

    内容:会議テーマは「Settings for Planetary Health & Well-being(地球規模の健康とウェルビーイングのための場づくり)」であり,職場を「健康生成の場」と捉える研究が各国から報告された.国際的な実践が多数共有された.とくに韓国からは座位時間削減の介入,フィンランドからはマインドフルネス導入,モロッコからはヘルスリテラシー研修の成果が報告された.筆者は「Is drinking alcohol really useful for releasing stress?」と題し,製造業の男性労働者4,709名を対象に,飲酒習慣をAlcohol Use Disorders Identification Test(AUDIT),抑うつをBrief Job Stress Questionnaire(BJSQ)で評価し,両者の関連をロジスティック回帰分析により検討した.その結果,AUDITスコアが20点以上の群では抑うつの有意な増加が認められた.

    結語:IUHPE2025は,産業保健を制度対応から環境・文化を含む「場のデザイン」へと拡張する重要性を再確認する機会であった.今後も産業保健の専門家として,積極的な情報発信を行っていきたい.

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