本研究では,労働衛生管理体制が導入されていなかった100人未満小規模事業所において新に労働衛生管理体制を導入して,7年間の産業保健活動を展開し,その評価を行った。産業保健師が赴任したことを契機に,これまで診療のみを行っていた事業所が,予防に重点を置いた労働衛生管理体制を構築して,労働衛生の5管理に沿った産業保健活動を展開した。その評価は,健康診断データと疾病件数年千人率や病休度数率を調査した。観察初年度の1996年から2003年にかけての健康診断結果において,BMI(p<0.001),収縮期血圧(p<0.001),空腹時血糖(p<0.001)の3項目については,有意な差を認めた。また,本研究に取り組んだ1996度時の疾病件数年千人率は9.2であり,病休度数率は0.07であったのが,2003年度の疾病件数年千人率と病休度数率はいずれも0.00であった。これらの結果より,小規模事業所で新たに産業保健活動を導入し展開したことは,社員が7歳加齢したにも係らず,有効であったことが示唆された。
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