目的:乳幼児をもつ母親の対処行動に関する研究を包括的に整理し,今後の研究の方向性について示唆を得ることを目的とした。方法:1984年から2013年までに発行された原著論文を対象に,医学中央雑誌CiNiiを用いて,心理的適応,コーピング,ストレスコーピング,対処行動,母,母親,育児ストレス,育児の用語というキーワードを使用してAND検索をした。外国人や乳幼児以外の母親が対象であるもの,障害児または病児の養育困難への対処行動に着目したもの,対処行動に着目していないもの,対処行動の調査方法が自由記載であるものなどを除外した結果,分析対象とする文献は25件となった。文献検討は,1)発表年別の文献数,2)研究目的,3)対象者,4)対処行動測定方法,5)対処行動の先行要因について行った。結果及び考察:文献を包括的に整理した結果,以下のことが明らかになった。1.研究目的は,対処行動と関連する要因の検討,背景要因による対処行動の検討,介入効果の検討,尺度開発の検討の4つに分類された。最近は,効果的に対処行動がとれるための要因が検討される傾向にある。2.対象は,母親の育児ストレスが高くなる時期の児をもつ母親を対象に育児ストレスと対処行動に着目した研究が行われていた。母親の対処行動の特徴を比較検討した研究は見当たらなかった。3.育児期の母親を対象に作成された尺度の使用は25件中7件だった。使用された対処行動の下位尺度は,2因子〜8因子と差があった。育児期の母親の対処行動について研究を行う際には,研究目的に合わせて適切な尺度を用いることが重要である。
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