日本健康医学会雑誌
Online ISSN : 2423-9828
Print ISSN : 1343-0025
25 巻, 4 号
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巻頭言
原著
  • 石川 信仁, 星野 明子, 桂 敏樹, 臼井 香苗
    2017 年 25 巻 4 号 p. 310-314
    発行日: 2017/02/21
    公開日: 2020/03/13
    ジャーナル フリー

    本研究は,2008年度の男性健診受診者を,受診結果から,現行の「情報提供」群を心血管疾患関連リスク無しのN群,1つでも有する場合をR群,「動機づけ支援」「積極的支援」を合わせたS群の3群に再構成して,5年後のメタボリックシンドローム(以下,MetS)該当を比較し,現行の「情報提供」群に含まれる心血管疾患関連リスク保有者への介入の必要性の有無を検証することを目的とした。再構成した指導区分の分析結果は,現行の腹部肥満を必須とする指導区分の階層化は妥当であるが,心血管疾患関連リスクを一つでも保有する場合,MetS発症のリスクは心血管疾患関連リスクを全く保有しない者に比べて有意に高いことから,現行の特定保健指導区分の「情報提供」群の中に,優先的に指導すべき対象者が含まれることが明らかとなった。そのため,「情報提供」群に含まれる,心血管疾患関連リスクを保有する者に対して,MetSを予防するための保健指導等の介入の必要性があることが示唆された。

  • —看護師長が内示を受けてから配置転換後の部署で役割を発揮するようになるまでの経験—
    大島 千佳, 田中 彰子, 松下 由美子
    2017 年 25 巻 4 号 p. 315-323
    発行日: 2017/02/21
    公開日: 2020/03/13
    ジャーナル フリー

    看護管理者の配置転換は看護部全体の組織の活性化,質の向上のための一手段として,多くの病院で行われている。看護師長が配置転換の内示を受けてから,新たな部署で役割発揮するようになるまでの経験を明らかにするため,看護師長の職位のまま配置転換した看護師長9名へ半構成的面接を行い質的に分析した。結果,配置転換前の4コアカテゴリーと配置転換直後から役割発揮するまでの5コアカテゴリーの経験が抽出された。協力者が配置転換後の部署で役割を発揮できるようになるには約1年を要した。

  • 鵜沢 淳子, 佐久間 夕美子, 有家 香
    2017 年 25 巻 4 号 p. 324-334
    発行日: 2017/02/21
    公開日: 2020/03/13
    ジャーナル フリー

    認知症高齢者グループホームは,要介護の認知症高齢者に共同生活の中で日常生活のケアと機能訓練を提供している。入居者と家族の多様なニーズに対応するために介護と看護の密接な連携が必要であるが,介護職者と看護師の関わりにおける介護職者の葛藤も示唆されている。本研究は,認知症高齢者グループホームの介護職者と訪問看護師との関わりを明らかにし,よりよい協働のあり方について検討することを目的とした。

    認知症高齢者グループホーム6事業所において,108人の介護職者(20歳から74歳まで)を対象とした質問紙調査を実施した。訪問看護師を名前または職名で呼ぶ介護職者は,訪問看護師との情報交換(p<0.001)と雑談(p=0.015)の頻度が有意に高かった。また,訪問看護師から名前または職名で呼ばれる介護職者は,看護師との情報交換,ケアの知識と技術の相談(p<0.001)訪問看護師との雑談(p<0.001)の頻度が有意に高かった。受診のタイミングに不安や困難感をもつ介護職者は,訪問看護師との協働についてストレスを感じる傾向にあったが(p=0.075),訪問看護師と雑談をする頻度も高い傾向にあった(p=0.057)。さらに,自由記述では多くの介護職者は看護師に情報交換の機会や話し合いの場を求めていた。その一方で,訪問看護師に協調的な態度を求める意見もあった。

    介護職と看護職の関係性において,お互いに名前を呼びあうことは,個の存在を意識し,尊重する表現として重要な要素となる可能性がある。訪問看護師が積極的に介護職者とコミュニケーションをとる機会をつくり,協調的な態度をとることによって,よりよい協働の関係性が構築される可能性が示唆された。

短報
  • 藤本 裕二, 藤野 裕子, 松浦 江美, 楠葉 洋子
    2017 年 25 巻 4 号 p. 335-339
    発行日: 2017/02/21
    公開日: 2020/03/13
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,地域で暮らす統合失調症者におけるリカバリーレベルと背景要因との関連を明らかにすることである。

    地域で暮らす統合失調症者157名を対象にアンケート調査を実施した。リカバリーは,24項目版Recovery Assessment Scale日本語版(RAS)を用いて,リカバリーレベルを測定した。RASは5つの下位尺度で構成されている。背景要因は,性別,年齢,発症年齢,副作用の有無,病気体験で得たこと,ピアサポート,就労状況,地区行事への参加有無とした。

    男性90名(57.3%),平均年齢は(SD)46.7(12.9)歳であった。発症年齢(SD)25.6(8.7)歳,副作用がある人は51名(33.3%),病気体験により得られたことがあると回答した人115名(73.2%)であった。ピアサポート経験者は25名(15.9%),就労者は92名(58.6%),地区行事へ参加している人は45名(28.7%)であった。RAS得点(SD)は83.6(15.1)点,下位項目得点では「他者への信頼」が最も高く3.6点,「自信をもつこと」が3.2点と最も低かった。病気体験により得られたことがあると回答した人のRAS得点は無群に比べて有意に高かった(p=0.000)。また,ピアサポート経験者(p=0.024),地区行事への参加者(p=0.006)は無群に比べてRAS得点が有意に高かった。さらに,年齢とRAS得点に弱い相関がみられた(γ=0.160)。

    リカバリーにおいて,病気を自己の人生の中で意味ある体験に変えることが肯定的な人生観へと繋がっていることが推察される。また,ピアサポートの要素を取り入れた支援や介入プログラムを行うことで,リカバリーがより促進されることが考えられる。地区行事への参加は,社会からの偏見を払拭し,社会に対する信頼回復の契機となっていることが考えられる。さらに,リカバリーは人生の回復であり,発症年齢や罹患期間ではなく,人生経験を重ねたことによる成長が影響している可能性がある。

資料
  • 大西 香代子, 大島 弓子, 西本 美和, 窪田 好恵
    2017 年 25 巻 4 号 p. 340-349
    発行日: 2017/02/21
    公開日: 2020/03/13
    ジャーナル フリー

    研究目的:人生の最終段階における医療についての意思決定の実態及びそれに関する思いを明らかにするとともに,看取りに関して抱いている家族の思いを明らかにする。

    研究方法:家族の一員を0.5-3年以内に亡くし,その人生の最終段階における医療についての意思決定に関わった11人(亡くした家族は13ケース)を対象に行った個別面接を質的に分析した。

    結果及び考察:いずれのケースも病状及び治療についての説明は,本人や家族に行われていたが,多くは治療法についての説明に終始しており,よくわからないまま同意した家族も多かった。予後については,明確に説明されたケースから,かなり遅くなるまで話されなかったケースまであった。よくなると信じていて,患者の願っていた帰宅が果たされずに終わってしまったりしたケースなどでは,予後についての説明がなされていれば,別の選択が行われたに違いなく,患者本人や家族にとって,より納得できるものだったのではないかと考えられる。

    延命治療については,ほとんどのケースで家族に選択の機会が与えられ,意向が確認されていたが,主治医と家族との話し合いで決定されているケースがほとんどであった。また,患者が意思決定できる状態であったにも関わらず,患者本人の希望を訊かず,家族に意思決定が求められたケースもあった。

    また,どの家族も患者の死について,程度の差はあっても,受容していた。家族の語りからは,諦めとともに,高齢だったこと,安らかな最期だったこと,苦しい時期が短かったことなど,「いいところ探し」をして受容しようとしている姿が浮かび上がってきた。

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