日本健康医学会雑誌
Online ISSN : 2423-9828
Print ISSN : 1343-0025
27 巻, 1 号
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巻頭言
原著
  • 石井 慎一郎
    2018 年 27 巻 1 号 p. 2-8
    発行日: 2018/04/30
    公開日: 2019/03/30
    ジャーナル フリー

    本研究は,精神科看護師の情動知能(EI)に影響を与える要因を探索することを目的とした。精神科病院7施設の看護師431名を対象にJWLEISを測定した。調査期間は2013年~2014年である。分析の結果,JWLEISは精神科看護師の年齢とともに有意に上昇した(総得点p=0.001,自己の感情評価p=0.003,他者の感情評価p=0.042)。また,精神科看護師の年齢とEIには有意な正の相関がみられた。本研究によって,精神科看護師の情動知能は年齢とともに上昇することが明らかとなったが,臨床経験と情動知能には有意な差はみられなかった。本研究の結果から,精神科看護師の情動知能は臨床経験だけでは育まれないことが示唆された。

  • 永嶺 仁美, 山本 晴美, 森田 久美子
    2018 年 27 巻 1 号 p. 9-16
    発行日: 2018/04/30
    公開日: 2019/03/30
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,成人若年期における糖尿病に関する知識の程度および保健指導希望の有無への影響要因を明らかにすることである。自動車販売会社に所属する20∼39歳の335名に質問紙調査を実施し,322名を分析対象とした。糖尿病に関する知識の程度に影響する要因として「婚姻状況」「定期的に自分の健康状態をチェックする」が挙げられた。配偶者の存在や,体重などのセルフチェックの習慣化が疾病予防への関心に繋がることで,糖尿病に関する知識を習得することが示唆された。保健指導希望の有無に影響する要因として「年齢」「家族や身近な人に脳血管疾患の罹患者がいる」「運動」「野菜の摂取量を増やす」「間食・甘味飲料を摂取しない」が挙げられた。身近な人の生命の危機に直面した恐怖が予防的健康行動への意識を高めたことや,健康的な生活習慣への関心が,保健指導希望に影響することが示唆された。 一般的に20∼30歳代は未婚者が多いため,彼らが配偶者の影響から受動的に疾患や健康管理の知識を身に着けることを期待するのではなく,その年代をターゲットとした保健指導を実施する必要がある。その保健指導には,食習慣や運動習慣に関しての実用的な内容,それらの根拠となる糖尿病という疾患についての情報を含む必要があると考える。

  • 大重 育美, 松中 枝理子, 島崎 梓, 後藤 智子, 石山 さゆり, 永松 美雪
    2018 年 27 巻 1 号 p. 17-23
    発行日: 2018/04/30
    公開日: 2019/03/30
    ジャーナル フリー

    本研究では,蓄積的疲労に至る影響要因を睡眠の質や睡眠状況,食習慣などの生活活動との関連から分析し,大学生の中でも看護学生を対象に負荷が高い実習期間と講義期間で比較することを目的とした.対象者は,A大学3年次の看護学生97名とした.その結果,講義期間と実習期間のいずれも睡眠の質が低下しており,実習期間で睡眠時間の短縮がみられた.講義期間では精神的疲労感が高く,実習期間では身体的疲労感が高くなっていた.蓄積的疲労に影響する要因として,講義期間では睡眠の質の低下があり,学習時間は精神的疲労感の要因となりやすいことが示唆された。実習期間では講義期間と同様に睡眠の質の低下があり,その他として生活活動の朝食習慣が要因に挙げられた。

  • 前原 宏美, 前原 潤一
    2018 年 27 巻 1 号 p. 24-33
    発行日: 2018/04/30
    公開日: 2019/03/30
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,精神科看護師のアサーションと患者・看護師の信頼関係形成に向けたかかわりの因果関係を検証することである。精神科看護師を対象に「日本の看護職のアサーティブネス傾向測定ツール」と「精神科における患者・看護師関係形成に向けた介入尺度」を使用し質問紙調査を実施した。「日本の看護職のアサーティブネス傾向測定ツール」の下位因子を独立変数,「精神科における患者・看護師関係形成に向けた介入尺度」の下位因子を従属変数として共分散構造分析を実施した。あわせて職位(管理職,一般職)による多母集団同時分析を実施した。本研究のモデルの適合度指標は,χ2(4)= 2.712(n.s),GFI=.997,AGFI=.981,RMSEA=.00,AIC=50.712であった。「アサーティブネス」は,「協働的・支持的介入」(β=.27,p<.001),「認知・分析・伝達技能」(β=.35,p<.001),「受容的態度」(β=.26,p<.001),「介入準備性」(β=.20,p<.001),「攻撃的ノン・アサーティブネス」は,「協働的・支持的介入」(β=−.21,p<.001),「認知・分析・伝達技能」(β=−.18,p<.001),「受容的態度」(β=−.24,p<.001),「受身的ノン・アサーティブネス」は,「認知・分析・伝達技能」(β=−.08,p<.001)に有意なパス係数を示した。職位(管理職,一般職)による多母集団同時分析の結果,「アサーティブネス」から「協働的・支持的介入」(管理職:β=.53,p<.001,一般職:β=.23,p<.001),「認知・分析・伝達技能」(管理職:β=.63,p<.001,一般職:β=.31,p<.001),「介入準備性」(管理職:β=.45,p<.001,一般職:β=.17,p<.05)のパス係数に有意差を示した。精神科看護師のアサーションと患者・看護師の信頼関係形成に向けたかかわりの因果関係が支持された。

  • 高林 知佳子, 坪倉 繁美
    2018 年 27 巻 1 号 p. 34-43
    発行日: 2018/04/30
    公開日: 2019/03/30
    ジャーナル フリー

    親の介護をしながら働く女性看護師のワーク・ファミリー・コンフリクト(以下:WFC)を測定する尺度を開発し,信頼性と妥当性を検討した。インタビューの記述的データから尺度原案を作成し, 389名のデータを基に内的整合性,構成概念妥当性,基準関連妥当性の検討を行い,169名のデータを用い再現性の検討を行った。分析の結果,【介護の役割ために家庭領域内における介護以外の役割が十分果たせない葛藤】【家庭領域内における介護以外の役割のために介護の役割が十分果たせない葛藤】【仕事領域の役割ために介護の役割が十分果たせない葛藤】【介護の役割ために仕事領域の役割が十分果たせない葛藤】の4因子16項目モデルを構築した(CFI=0.951,RMSEA=0.063,AIC=326.8)。尺度全体のCronbach’s α係数は0.91,外的基準としたCFSI-18,CES-D日本語版, WFCS日本語版とは有意な正の相関が認められ,尺度総得点の級内相関係数は0.96であった。内的整合性,構成概念妥当性,基準関連妥当性,再現性の結果から,本尺度における信頼性と妥当性が確認された。

  • 小野瀬 淳一, 菅谷 紘一, 牧内 麻緒, 阿部 尚樹
    2018 年 27 巻 1 号 p. 44-49
    発行日: 2018/04/30
    公開日: 2019/03/30
    ジャーナル フリー

    市販ハーブ8種について,肝ミクロソームを用いたチトクロムP-450(CYP)3A阻害活性スクリーニングを実施した。その結果,フトモモ科フトモモ属のクローブ(Syzygium aromaticum)に強いCYP3A阻害活性が認められた。クローブに含有されるCYP3A阻害活性を指標に各種カラムクロマトグラフィーを用いて精製することにより化合物1および2を単離した。さらにNMRを含む機器分析することにより,化合物1をbancroftinone,化合物2をeugenolと同定した。

    化合物1および2をヒトCYP3A阻害活性試験に供した結果,阻害傾向が見られた。これら化合物のヒトCYP3Aに対してクローブの示す阻害活性への寄与率を求めたところ,化合物2が89.3%を示したことから,化合物2がクローブ中の主要活性物質であることが明らかとなった。

短報
  • 佐々木 晶世, 永田 茂樹, 土肥 眞奈, 鈴木 英子, 小林 由起子, 末永 仁, 叶谷 由佳
    2018 年 27 巻 1 号 p. 50-54
    発行日: 2018/04/30
    公開日: 2019/03/30
    ジャーナル フリー

    背景:緑茶ポリフェノールは細菌増殖の抑制効果があるとされているが,栄養剤注入後に胃瘻チューブを緑茶で洗浄することによる細菌汚染予防効果については明らかにされていない.そのため,胃瘻より栄養剤を注入後,従来通り微温湯で洗浄する対照群と,白湯と緑茶で洗浄する群とに分け,細菌汚染状況を検討する研究を開始した.しかし,胃瘻造設術後7日目において,ESBLを有する多剤耐性菌で第5類感染症に指定されているアシネトバクターバウマニが検出され,院内感染と考えられ研究を中止することとなった.そこで,本稿では,胃瘻造設術後7日目の胃瘻チューブ内の感染汚染状況について報告する.

    方法:対象者は65歳以上の胃瘻造設術を目的に入院する患者とし,介入群および対照群を無作為に割り付けた.介入群には,栄養剤注入後に微温湯で洗浄し,胃瘻チューブ内にポリフェノールの一種であるカテキンを高濃度に含む市販の緑茶飲料を注入した.対照群は微温湯での洗浄のみとした.術後7日目に,胃瘻留置チューブを垂直に立てコネクト部分から滅菌スワブを5cm挿入しチューブ内壁をこすり,細菌培養にて菌種およびコロニー数を検出した.

    結果:介入対照両群から,肺炎球菌,緑膿菌,エンテロバクター類が,対照群では多剤耐性アシネトバクターが検出された.

    結論:胃瘻チューブ内腔は新規造設後7日目に多様な細菌に汚染されていることが明らかになった.感染予防対策の徹底と,定期的な胃瘻チューブ内腔の培養による評価が必要である.なお,緑茶ポリフェノールの効果については明らかにならなかった.

  • 原 やよい, 中島 富有子, 窪田 惠子
    2018 年 27 巻 1 号 p. 55-61
    発行日: 2018/04/30
    公開日: 2019/03/30
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,看護学生の「口腔ケアに関する学習意欲」の影響要因を明らかにすることである。1年次の看護学生119名を対象に質問紙調査を行い,109名(回収率92%)のデータを分析した。本研究結果では,口腔ケアに関する学習意欲と進路選択に対する自己効力感に相関が認められ(r=0.344,p<0.01),進路選択に対する自己効力感が高い方が口腔ケアに関する学習意欲が高くなる傾向があった。したがって,「口腔ケアに関する学習意欲」の影響要因として,「進路選択に対する自己効力感」が確認された。学習習慣,友人関係,口腔のセルフケアと「口腔ケアに関する学習意欲」の関連は認められなかった。口腔ケアの学習が始まる前の看護学生が持つ「口腔ケアに関する学習意欲」を高めるには,口腔ケアに関する教育とともに,看護専門職の選択に自信が持てる教育が必要であると考えられた。

資料
  • 中澤 知奈美, 山田 紗百合, 細見 亮太, 福永 健治, 吉田 宗弘
    2018 年 27 巻 1 号 p. 62-67
    発行日: 2018/04/30
    公開日: 2019/03/30
    ジャーナル フリー

    食品に含まれるリン含量について,食品標準成分表による計算値と化学分析による実測値との間に差が生じる食品があることが知られている。本研究では,これまでに報告のない即席中華めんおよび中華スタイル即席カップめんのリン含有量について,食品標準成分表にもとづき算出した計算値と化学分析による実測値との差異を評価した。即席中華めん20種と中華スタイル即席カップめん14種を収集し,日本食品標準成分表2015年版(七訂)にもとづく計算値と,モリブデンブルー法による実測値を求めた。即席中華めん油揚げめん1食あたりのリン量の計算値は平均値113mg,標準偏差9mgであり,実測値は平均値157mg,標準偏差58mg,即席中華めん非油揚げめん1食あたりのリン量の計算値は平均値117mg,標準偏差6mgであり,実測値は平均値155mg,標準偏差53mgであった。一方,中華スタイル即席カップめん油揚げめん1食あたりのリン量の計算値は平均値129mg,標準偏差29mgであり,実測値は平均値165mg,標準偏差48mg,中華スタイル即席カップめん非油揚げめん1食あたりのリン量の計算値は平均値128mg,標準偏差26mgであり,実測値は平均値157mg,標準偏差27mgであった。化学分析値は計算値よりも,即席中華めん油揚げめんで平均44mg,非油揚げめんで平均38mg,中華スタイル即席カップめん油揚げめんで平均36mg,非油揚げめんで平均29mg高かった。食品標準成分表を用いて,即席中華めんおよび中華スタイル即席カップめんを高頻度に摂取している人のリン摂取量を評価する場合には誤差が生じる可能性があるため,注意が必要であると考えられる。

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