日本健康医学会雑誌
Online ISSN : 2423-9828
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最新号
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原著(実験研究)
  • 峰村 貴央, 阿久澤 さゆり
    2026 年35 巻1 号 p. 2-9
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/08/06
    ジャーナル フリー

    石川県産米のなかで,ひゃくまん穀,コシヒカリ,ゆめみづほの3品種を試料とし,玄米の状態で貯蔵した場合の特性を検討した。ひゃくまん穀の精白米は,収穫年に関係なく他の品種よりも大きかった。また,3品種とも,収穫年や貯蔵期間による形態の変化はなく,搗精による米粒の損傷も見られなかった。コシヒカリとゆめみづほの炊飯米の水溶性多糖量は,貯蔵期間が長いほど減少した。テクスチャー測定において,80%圧縮測定は,口腔内で炊飯米を押し潰した状態に近い大変形であり,表層と中心部が密着した米粒全体の特徴と考えられる。ひゃくまん穀とゆめみづほは,2020年と2022年の間に大きな差は見られなかったが,コシヒカリは差があった。これらの澱粉の糊化特性は,貯蔵期間により変化し,糊化には大きな熱エネルギーが必要であった.これらの結果から,玄米の状態で脱気し脱酸素剤で密封し,3℃で貯蔵した場合,炊飯米の硬さや粘り,米粒成分の性質は若干変化するものの,貯蔵条件によっては食品として利用できることが示唆された。

  • —部位別および時間的変化の特性—
    山﨑 智可, 久田 智未, 堀 悦郎
    2026 年35 巻1 号 p. 10-18
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/08/06
    ジャーナル フリー

    部分浴は清潔やリラックスを誘導する目的で実施されるが,近年では前頭前野を活性化させることが示唆されている。前頭前野の活性を近赤外分光法で測定した場合,酸素化ヘモグロビン濃度(以下,Oxy-Hb濃度)がその指標となる。本研究の目的は,前腕浴による前頭前野のOxy-Hb濃度の部位別(中央部,右側,左側)および時間的変化の特性を明らかにすることである。健常女性10名(18歳~29歳)を対象に42.0±0.1℃で前腕浴を40分間実施し,近赤外分光法により前額部で前頭前野のOxy-Hb濃度変化を測定した。評価指標は,皮膚血行動態成分を除いた前頭前野のOxy-Hb濃度および主観的気分とした。結果,前腕浴,非前腕浴ともに時間に伴う有意な変化が認められ,Oxy-Hb濃度は上昇した。前腕浴では部位によってOxy-Hb濃度の時間的変化が異なったことから,介入時間により前頭前野の活性化する部位が異なることが示された。前腕浴と非前腕浴の比較では,中央部のOxy-Hb濃度は20分後および30分後,左側では10分後および20分後において,非前腕浴より前腕浴が有意に高値であった。主観的温熱感は,40分後まで非前腕浴より前腕浴が有意に高値であった。温熱感以外の主観的気分に前腕浴と非前腕浴で有意差は認められなかった。これらの結果から,前腕浴は中央部にあたる前頭極では20分から30分,右側や左側にあたる背外側前頭前野では10分から20分の時点で活性化効果があることが示唆された。

原著(量的調査研究)
  • 唐澤 教子, 鈴木 英子, 玉井 純子
    2026 年35 巻1 号 p. 19-29
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/08/06
    ジャーナル フリー

    コロナ禍に看護基礎教育を受け,コロナ禍で新人として看護業務をスタートした大学病院に勤務する若手看護師の離職意向の関連要因を明らかにすることを目的とし,首都圏の大学病院4病院の勤務経験2年未満である若手看護師648名を対象に自記式質問紙調査を実施した。438名から回答が得られた(有効回答率67.5%)。重回帰分析の結果,コロナ禍であるために起こりうる離職意向は,「身内や交際相手から病院勤務の反対を受けた者」,「新人研修形態が対面研修でなかった者」で高く,平時においても起こりうる離職意向は,「看護師としての志向性が低い者」,「楽しい雰囲気で仕事ができていない者」,「経験年数が2年目の者」(β=0.206),「残業時間が多い者」,「今の給料に満足していない者」で高いことが明らかになった。コロナ禍で教育を受け,看護業務に就いた看護師の離職を少なくするには,看護基礎教育や新人看護師研修の場における職業準備性の向上,組織風土や労働環境の改善,感染症に携わる若手看護師への周囲の理解など具体的な方策の構築が今後の課題である。

  • 今水流 彩乃, 遠藤 英子
    2026 年35 巻1 号 p. 30-39
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/08/06
    ジャーナル フリー

    医療現場に勤務する看護補助者の離職意向の関連要因を明らかにすることを目的に,全国の100床以上の医療機関から対象施設を抽出し,協力の得られた24施設の看護補助者760名を対象に無記名自記式質問紙調査を実施した。回収率59.1%,有効回答率54.1%,平均年齢の中央値は51歳,女性の割合は88.6%,介護系資格保有者は63.0%であった。離職意向得点の平均値は13.4点(SD:5.41)であり,重回帰分析にて離職意向と関連を認めた変数は,「看護補助者として働き続けることに不安を感じる」,「看護補助者の仕事を人に誇りを持って話すことができる」,「看護補助者の業務範囲が曖昧であると感じる」,「看護管理者(上司)から公平に評価されている」,「看護補助者の仕事にやりがいを感じている」,「看護管理者(上司)から成長・発達につながるような助言を受けている」,「職場の同僚(仕事仲間)と仲良く仕事ができている」,「看護師から褒められたり認められたりすることがある」,「看護補助者の仕事内容に満足している」,「看護職員の間で,お互いに助け合い協力し合っている」の10項目であった。これらの要因は,看護補助者の社会的立場の確立,職業への自己肯定感,職場での支援,円滑な看護チームの協働に関することを示しており,また関係性に基づくアイデンティティの概念にも類似する内容であると考えられた。従って,看護補助者の職業的アインデンティティを高める介入や,医療現場での看護補助者の立場の保証は職務継続支援として重要であり,看護チームの質の向上に繋がると考える。

  • —不安とレジリエンスに焦点をあてて—
    金森 暁彦
    2026 年35 巻1 号 p. 40-45
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/08/06
    ジャーナル フリー

    医療・保健・福祉分野に従事する対人援助職は,一般の労働者と比較して,本人,家族,職員などとの対人関係の課題が多い。そこには個人の性格,資質や能力の差があるものの,不安やレジリエンスなどが影響し,離職を招くことにもつながりやすい。そこで障害者施設の生活支援員160名を対象に無記名アンケートを実施した。有効回答数は133名(83.1%)であった。個人における不安(State-Trait Anxiety Inventory:STAI)およびレジリエンス(Sukemune-Hiew Resilience Test:S-H式)の調査を用いて,就労継続意欲との関連性について分析した。その結果,対象者の6割以上が高い不安を抱えており,状態不安とレジリエンスとにr=−0.42( p<0.001),特性不安とレジリエンスとにr=−0.50(p<0.001)の相関関係が認められた。特に特性不安はレジリエンスにおける自己効力感(問題解決を自分でどの程度できるかなどの度合いについての本人の感じ方)との相関係数がr=−0.53(p<0.001)と高かった。一方,就労継続意欲については状態不安との関連性はなかったが,特性不安とに関連性があった。就労継続意欲とレジリエンスとの関連性は社会性(他者とのつき合いにおける親和性や協調性の度合いについての本人の感じ方)の1領域に認められた(p<0.05)。以上より,生活支援員の就労の継続には特性不安への対処とレジリエンスの向上が重要である。

  • 松坂 朋佳, 高橋 有里
    2026 年35 巻1 号 p. 46-53
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/08/06
    ジャーナル フリー

    新卒看護師の「関係性のなかでの自立」と社会人基礎力との関連を明らかにすることを目的に,北海道・東北地区の300床以上の病院に勤務する就職6か月後の新卒看護師を対象に質問紙調査を実施した。その結果,「関係性のなかでの自立」,および「関係性のなかでの自立」の下位尺度である「前向きに生きる」と,社会人基礎力,仕事の満足度,仕事に対する非負担感との間に正の相関関係がみられ,「関係性のなかでの自立」の高さと社会人基礎力は関係していることが明らかになった。「関係性のなかでの自立」度が高いと,周囲と良好な関係を構築することができることにより,仕事の満足度を高め,負担感が軽減されることが考えられる。下位尺度の「前向きに生きる」は,自己肯定感が十分あることで,自らの社会人基礎力を高く評価でき,主体性をもって周囲と協力しながら課題解決できるため,仕事の満足度が高く,負担感が低かったと考える。

  • 舘ヶ澤 寿香, 菅生 希衣, 新木 菜, 福田 えりか, 鈴木 英子
    2026 年35 巻1 号 p. 54-59
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/08/06
    ジャーナル フリー

    本研究は,産後2週間の褥婦の育児困難感の関連要因を明らかにすることを目的とした。東京都東部地区の分娩取扱施設において産後2週間健診を受診した褥婦を対象とし,自記式質問紙法にて調査を行った。調査内容は,育児困難感,母児の個人属性,母の身体的状況,レジリエンス,パーソナリティ,ストレスコーピング,困った時の情報源他とした。質問紙を配布した280名中,139名から回答を得た(回収率49.6%)。そのうち,育児困難の回答に欠損のない131名(有効回答率94.2%)を解析の対象とした。 育児困難感得点(平均値±標準偏差)は49.89±15.18点であった。重回帰分析の結果,睡眠不足感(β=0.361,p<0.01),レジリエンス(β=−0.349,p<0.01),パーソナリティの神経症傾向(β=−0.213,p<0.05)が育児困難感に関連する要因であることが同定され,産後2週間の褥婦において,睡眠不足,レジリエンスが低い,神経症傾向のパーソナリティの者が育児困難感が高いことが明らかとなった。産後2週間健診の必要性の認識を広め,この時期の褥婦の育児困難感を軽減させるには,これらの関連要因にアプローチすることが求められる。

  • 熊田 奈津紀, 佐藤 真由美, 三條 真紀子
    2026 年35 巻1 号 p. 60-70
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/08/06
    ジャーナル フリー

    高齢者やがん以外の疾患を併せ持つがんサバイバーは増加している。乳がんは長期生存が可能ながんであるが,長期生存後の再発率が高い特徴がある。そのため,乳がんサバイバーが,アドバンス・ケア・プランニング(ACP)に取り組むことは重要である。乳がんサバイバーのACP支援の促進には,サバイバーがACPに対してどのような考えを持ち,どのような行動をとっているのか,その態度を量的に捉えることのできるツールが必要である。本研究の目的は,乳がんサバイバーのアドバンス・ケア・プランニング(ACP)態度尺度を開発し,信頼性・妥当性を検証することである。文献レビューと質的研究より,尺度原案を作成し,乳がんサバイバーを対象に質問紙調査を実施した。構造的妥当性を探索的・確証的因子分析,基準関連妥当性をACP準備性尺度(RACP)との相関関係により確認した。信頼性検証のため, Cronbach’s α,級内相関係数(ICC)を算出した。研究対象者は乳がんサバイバー302名であった。因子分析の結果,5因子モデル,25項目を採用した。モデル適合度は良好で, RACPとの間には正の相関が認められた。そして,Cronbach’s αは0.93,ICCは0.85であった。乳がんサバイバーACP態度尺度は,信頼性・妥当性の検証された尺度である。乳がんサバイバーのACP支援や教育プログラムの開発において活用可能である。

原著(文献レビュー)
  • 西井 聡美, 原田 通予, 寺田 美樹
    2026 年35 巻1 号 p. 71-77
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/08/06
    ジャーナル フリー

    本研究は,日本における2人の子どもをもつ母親の育児体験を明らかにすることを目的とし,日本国内で実施された質的研究7件を対象にメタ統合を行った。分析の結果,2児の育児における母親の体験は【2児育児における葛藤と対応】,【家族の関係づくりを円滑に運ぶ工夫】,【夫の家事育児関与のための意識的な調整】,【夫による家庭支援】,【家族としての成長】の5つのカテゴリーに統合され,母親たちは2児育児に伴う葛藤を抱えながら,家族内の関係性を調整し,夫の育児参加を促す工夫などを通して,家族全体の成長を経験していた。経産婦は育児経験を有しているために,初産婦とは異なる課題や支援ニーズを抱えていた。また,家族システムの視点からは,2児の育児が家族の発展的変化を促す重要な転機であることが示唆された。

原著(質的研究)
  • 宮部 明美, 叶谷 由佳
    2026 年35 巻1 号 p. 78-88
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/08/06
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,高齢者の生活の見通しをもった食支援向上のためのNST(Nutrition Support Teams:栄養サポートチーム)リンクナースの役割を明らかにすることとした。方法は,NST看護師6名,NSTリンクナース5名へ半構造化インタビューを実施した。また,NSTリンクナースおよび感染管理リンクナースの役割に関する文献から役割を抽出した。インタビューと文献よりNSTリンクナースの役割をコード化してカテゴリー分類し,4つのコアカテゴリーとして以下のものを得た。(1)「NSTと病棟看護師をつなぐ」は栄養障害患者の抽出,NST活動への参加,NSTとの情報共有,(2)「部署内の取り組み」はマニュアルの作成,病棟看護師への教育,栄養や食支援に関する情報提供,NST以外の他職種・他部門との調整,(3)「NSTリンクナースに求められる知識」は身体面のアセスメント,客観的データによるアセスメント,安全な食事摂取,安全な経腸・静脈栄養,退院に向けた準備,栄養状態の評価方法,(4)「NSTリンクナースに求められる資質」はコミュニケーション,栄養への関心,上司から得る支援,プレゼンテーション,リンクナース活動の振り返り,新しい知見の獲得が抽出された。今後は,NSTリンクナースが抽出された役割に基づいて行動できるような指標を作成することが課題である。

  • 金田 明子, 丸山 幸恵, 井上 真帆, 叶谷 由佳
    2026 年35 巻1 号 p. 89-98
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/08/06
    ジャーナル フリー

    自ら訪問看護事業所を起業して管理者となった看護師の起業時の困難と対処,望まれる支援を明らかにすることを目的に,自ら訪問看護事業所を起業して管理者となった看護師10名を対象に,起業時の困難とそれらへの対処の具体的内容,起業する際に望まれる支援をインタビューガイドとする半構造化面接を実施し,質的帰納的に分析した。経験した困難として「余裕のある運営資金の確保」,「起業・運営に関わる必須かつ詳密な事務管理」,「事業所の考えと職員の思いがマッチした組織づくり」などの5カテゴリ,対処の実態として「苦労しながらの資金工面」,「収支の先行きを踏まえた利用者の獲得」,「スタッフの結束を高める体制整備」などの7カテゴリ,望まれる支援として「経営に関する知識習得の場」,「起業前の資金調達情報の提供」,「介護・医療保険請求の実務研修」などの7カテゴリを得た。今後の課題として,起業前からの継続的な支援や,より即効性のある実践的な経営スキル習得のための教育の機会が求められる。

  • —テキストマイニングを用いたレポートの内容分析—
    片山 典子, 渡部 李菜, 陶山 克洋, 佐々木 博之
    2026 年35 巻1 号 p. 99-105
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/08/06
    ジャーナル フリー

    本研究目的は,精神看護学実習の学生のレポートの内容分析から学生が捉える精神障害者に対する地域生活支援に関する学びを明らかにすることである。研究対象は,A大学看護学科の精神看護学実習を履修した学生のうち,本研究の協力に同意が得られた学生140名のレポートをもとに,Klaus Krippendorffの内容分析手法を用いた。記述文の解析は,テキストマイニング(Text Mining : TM)の形態素解析,コロケーション解析後カテゴリー化し,その因子をネーミングした。本研究結果より5つのカテゴリーが抽出され,そのカテゴリーをもとに学生が捉える精神障害者に対する地域生活支援に関する学びの特徴が明らかになった。1.学生は,精神科デイケアが社会復帰や社会参加の促進,地域での自立生活に重要な役割を果たし,その人らしく地域で生活を送ることができるパーソナルリカバリーの実現のために精神科デイケアの役割と治療的意味を学んでいた。2.学生は,精神科デイケアのプログラムを通して症状の自己管理能力の習得や向上,自己理解を深めること,ひいては再発・再入院の予防に繋がることを捉えていた。3.学生は,多職種が対象者の個々の情報を共有し,多職種による役割分担やデイケアでの看護師の役割について学んでいた。

  • —課題と支援ニーズに焦点をあてて—
    大釜 信政, 福井 郁子
    2026 年35 巻1 号 p. 106-115
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/08/06
    ジャーナル フリー

    本研究では,終末期在宅療養者に対して,安全で効果的な投薬管理を家族介護者が過度な負担なく実践できるようにする支援のあり方について検討することを目的として,10名の家族介護者に対し,投薬管理の実際と課題,支援ニーズに関する半構造的面接調査を実施し,投薬管理に関わる家族介護者のアプローチや背景にある価値観,家族関係の影響も尊重しつつ,終末期在宅療養者に対する投薬管理に関する課題や支援ニーズに該当する発言をコードとして抽出し,カテゴリに集約した。投薬管理上の発言は,「投薬管理を支える情報提供体制の脆弱さ」,「処方薬の適正性に関する家族の葛藤」,「服薬行動に影響を与える療養者の個別要因の存在」,「家庭内での適切な投薬管理の限界」,「多様な負担」というカテゴリに集約され,これらの課題の存在が明らかになった。家族介護者が求める支援に関する発言は,「個別性を重んじた継続的な相談体制」,「投薬管理を支えるデジタル技術の導入」,「多職種連携の強化」,「公的支援制度の充実」,「家族介護者を支えるための心のケア」というカテゴリに集約され,これらが家族介護者にとって必要な支援であることが判明した。家族介護者への投薬管理支援においては,「教育的支援」,「随時的アドバイス支援」,「実践的支援」,「心理的支援」,「連携調整支援」,「政策的支援」を,療養状況の変化に即した適切なタイミングで実施することが重要である。

短報
  • 小西 円, 野田 さおり, 佐々木 八千代, 白井 みどり
    2026 年35 巻1 号 p. 116-120
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/08/06
    ジャーナル フリー

    介護老人保健施設の認知症フロアに入所中の高齢者を対象に,施設改修の前後における行動を観察し,環境支援としての意義を検討した。このたびの改修は,認知症フロアと一般フロアを隔てる高齢者には開閉できないガラス製自動ドアを取り除いて壁にし,高齢者が開閉できる玄関風ドアを設置した。観察は改修前のベースライン期(BL期),改修直後の追跡第1期,改修後1か月の追跡第2期の3期,各期4日間,9~17時に実施,改修したドア付近における対象者の行動をビデオカメラで撮影し,滞在時間と行動を分析した。対象者は男性6名,平均年齢は81.8歳で,全員が車いすを自操し移動可能であった。滞在時間はBL期より追跡第1期に5名,第2期には6名全員が減少した。また,BL期に観察された「一般フロアへの定位」と「ドアの開閉」は,追跡第1期,第2期ともにほぼ消失し,新たに「認知症フロアと一般フロアとの往来」が観察された。今回の改修は,ガラス製自動ドアから見える一般フロアの過剰な刺激を調整する支援,フロアを自由に往来し居場所を自己選択できる支援であると考えられた。

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