日本健康医学会雑誌
Online ISSN : 2423-9828
Print ISSN : 1343-0025
特集号: 日本健康医学会雑誌
25 巻, Supplement 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
巻頭言
特別寄稿
原著
  • 滑川 貴之, 岩澤 まり子
    2016 年 25 巻 Supplement 号 p. 259-270
    発行日: 2016/12/16
    公開日: 2020/03/13
    ジャーナル フリー

    本研究では,失語症患者の「診断からリハビリテーションを経て社会復帰するまで」の行動を時系列に分析することにより,患者自身が調査して入手した情報,および患者の家族と医療従事者から得た情報とを明らかにし,リハビリテーションにおける患者の情報支援の可能性について考察することを目的とする。

    脳梗塞による失語症患者,その家族,リハビリテーション担当医師,2名の言語聴覚士の5名を調査対象とし,患者については療養ノートとタブレット型パーソナルコンピュータの利用履歴の調査,他の4名については「患者のために行った調査」について質問紙調査および追加の聞き取り調査を行い,調査の時期,調査後の行動について尋ねた。

    その結果,患者には,その時々の疑問や不安により発生する情報に対する偶発的な欲求と,一つの欲求が満たされると症状やリハビリテーションについての理解が進み次の情報への欲求を生み出すという連続性がみられた。入手した情報は「病名」「責任病巣(障害の原因となっている病変)」「症状」「リハビリテーションの方法」「その他」に大別でき,情報の入手方法は「家族」「医療従事者」「自身の調査」「他の患者との接触」に分けられた。すなわち患者は,患者を中心に形成された情報ネットワークにより,情報の入手が促進されていたととらえることができる。その一連の情報入手の過程の中で,獲得した知識の整理が行われ,自己効力感が発生しリハビリに取り組むことができるようになり,社会復帰に結びついた可能性が示唆された。

  • 山下 麻実, 永田 智子
    2016 年 25 巻 Supplement 号 p. 271-275
    発行日: 2016/12/16
    公開日: 2020/03/13
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は保育所・幼稚園におけるAEDの設置状況を明らかにし,医療者による教育的支援モデルを検討する資料を得ることである。対象はA県内の1180施設の施設長宛てにAED設置に関する自記式質問紙を配布し,調査の協力が得られた449施設(回収率:40.5%,有効回答率:93.5%)である。質問紙を集計した結果,回答が得られた449施設のうち,AEDを設置している施設は121施設(26.9%)であった。また,AEDの設置は子どもの収容人数が400人以上の乳幼児施設は,100人以下の乳幼児施設より,AEDの設置率が有意に高いことがわかった。さらに,AEDを設置している121すべての乳幼児施設において,AEDの設置は2005年以降であり,これまでにAEDの使用がないことも明らかになった。これらの結果より,AEDの管理,取り扱いを含む小児一次救命処置の練習状況などの調査を継続し,子どもの安全を守るために医療と保育が連携していく必要性が示唆された。

  • 宮部 明美, 冨樫 千秋, 佐久間 夕美子, 佐藤 千史
    2016 年 25 巻 Supplement 号 p. 276-286
    発行日: 2016/12/16
    公開日: 2020/03/13
    ジャーナル フリー

    本研究は,Motivated Strategies for Learning Questionnire(MSLQ)の動機づけ尺度(Motivation Scales)をもとに,日本語版MSLQ(Motivation Scales)を作成し,信頼性と妥当性を検討することを目的とした。質問紙はMSLQを研究者間で翻訳し,Back-translationを依頼し,予備調査を経て原版と同様の31項目を作成した。1回目調査は2015年4月から10月,2回目調査は2015年7月から12月に看護系大学3校に在籍する1,2年生609名対象に自記式質問紙により行った。結果は,回収417名(回収率68.5%),有効回答330名(有効回答率79.1%)であった。31項目を探索的因子分析し,因子の抽出には一般化された最小2乗法,プロマックス回転にて6因子31項目を抽出した。各因子は,「学習価値」「学習や成績に対する自己効力感」「テスト不安」「外的目標志向」「学習能力やスキルの保有」「内的目標志向」と命名した。また,Cronbach α信頼性係数は,尺度全体でα=0.891,各下位尺度はα=0.612からα=0.865であった。再テスト信頼性係数は尺度全体,下位尺度,各項目ともに中程度から低い相関を認めた。以上より日本語版MSLQ(Motivation Scales)の信頼性・妥当性を確認した。

  • 髙橋 純子
    2016 年 25 巻 Supplement 号 p. 287-295
    発行日: 2016/12/16
    公開日: 2020/03/13
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,災害発生直後から1か月後までの災害急性期および亜急性期に,被災施設の透析患者を一時的に受け入れて透析治療を実施する支援透析において必要な患者情報および透析治療に必要な情報を明らかにし,支援透析先でも迅速で安全な治療を行うための基礎資料を構築することである。

    無作為抽出した500の透析施設に対して①支援透析の経験の有無,②災害急性期/亜急性期に被災施設から支援透析施設へ提供された患者情報と透析治療条件,③災害急性期/亜急性期に支援透析を実施する際に必要な患者情報と透析治療条件およびその必要度を調査した。また,対象施設を支援透析の経験の有/無に群分けし,災害急性期/亜急性期の患者情報と透析治療条件の必要度を比較した。

    その結果,情報の必要度の平均点が高い項目として,災害急性期では「患者氏名」,「感染症の有無」,「ドライウェイト」,「抗凝固薬」,「ブラッドアクセスの種類」,「ダイアライザーの名称」の6項目が抽出された。災害亜急性期では,急性期の6項目に加え「定期注射薬の種類」,「服薬情報」,「血液流量」,「穿刺部位」の4項目が新たに抽出された。

    支援透析の経験の有/無が患者情報と透析治療条件の必要度に与える影響についての分析では,災害急性期において「透析時間」,「定期注射薬の種類」,「血液流量」,「透析液流量」,「設定除水速度」の5項目で支援透析の経験がある施設のスコアが有意に高かった。

    本結果より,経験や推測により考えられていた支援透析に必要な情報が複数施設の有識者の意見と一致したことで,災害時に欠くことのできない情報であることが示唆された。また,不足している情報も明らかとなり,今後その情報の必要性を多くの施設に認知させることが必要である。

短報
  • 菅野 眞綾, 土肥 眞奈, 佐々木 晶世, 服部 紀子, 叶谷 由佳
    2016 年 25 巻 Supplement 号 p. 296-303
    発行日: 2016/12/16
    公開日: 2020/03/13
    ジャーナル フリー

    本研究は,就寝前に湯たんぽを足元に設置し,寝床内と足部を局所的に加温することによる施設入所高齢者の睡眠に及ぼす影響について検討することを目的とした。介護老人福祉施設に入所中の高齢者6名を対象に就寝中の客観的睡眠状況,主観的睡眠感,核心温,寝床内温度を調査し,介入日とコントロール日で比較した。その結果,有意差はないものの介入日はコントロール日と比較し,入眠の促進,中途覚醒の減少,REM睡眠時間の延長,実質睡眠時間合計の延長があった。また,主観的睡眠感では,有意差はないものの介入日はコントロール日に比較し,睡眠時の疲労回復,起床時眠気,夢みが改善した。湯たんぽによる足元加温は施設入所高齢者の睡眠状況の改善に効果がある可能性があり,事例数や介入期間を増加して検討すること,更なる睡眠の改善のためには,安全を考慮しつつも十分に寝床内を加温する方法について検討していく必要性が示唆された。

資料
  • 小石 真子
    2016 年 25 巻 Supplement 号 p. 304-307
    発行日: 2016/12/16
    公開日: 2020/03/13
    ジャーナル フリー

    高齢者のボランティア活動を支援するための資料を得る目的で,京都市の「独居高齢者サロン」において継続的にボランティア活動を行う高齢者27名にボランティア活動に関する質問紙調査を行った。27名中17名(男性3名,女性14名)から回答が得られた。回答者の年齢は61~82歳(平均71.2歳)だった。独居高齢者サロンでは,ボランティアが役割分担をして機能的に活動していた。ボランティア活動に参加したきっかけは,「活動団体からの呼びかけ」や「友人・仲間のすすめ」が多く,ボランティアを行うことで,新たな自身のネットワークを広げていた。また,女性の独居高齢者と関わるなかで,ボランティアは孤老期に対する学習・体験をしていた。さらに,ボランティアはサロン以外でも同様の福祉活動を行っていた。ボランティア活動を継続するために,活動内容の情報発信とネットワークづくりが必要であった。

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