近畿理学療法学術大会
第49回近畿理学療法学術大会
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  • 生野 公貴, 北別府 慎介, 松尾 篤, 梛野 浩司, 徳久 謙太郎, 森本 茂, 庄本 康治
    セッションID: 1
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/11
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    【目的】近年,脳卒中患者に対する末梢神経電気刺激(以下,PNS)によって,嚥下機能の向上,ピンチ力の向上,使用に依存する可塑性変化,手指機能の改善が報告されている。さらに,PNSと課題特異的練習の組み合わせが上肢機能の改善に効果的であるという報告がある。しかし,これらの研究の多くは2時間という長時間のPNSを実施しており,臨床での実用性に欠けることが問題である。そこで本研究の目的は,脳卒中患者に対する1時間のPNSと課題特異的練習の組み合わせが上肢機能に与える影響を検討することとした。
    【方法】研究はマルチベースラインデザインのABデザインを用いた。対象は,本研究に同意の得られた3名の脳卒中患者である。基礎水準期(A)は,正中および尺骨神経に電極を張るのみのSham刺激後に課題特異的練習を行い,操作導入期(B)ではPNS直後に課題特異的練習を行うこととした。基礎水準期は,症例1は1日,症例2は2日,症例3は3日とし,操作導入期は1日とした。PNSにはIntelect ADVANCE COMBO(Chatanooga社製)を使用した。刺激部位は麻痺側正中および尺骨神経の同時刺激とし,刺激パラメーターは単相矩形波,パルス幅1ms,周波数10Hz,50%デューティサイクルとした。刺激強度は,筋収縮が起きない感覚閾値程度とし,刺激時間は1時間とした。課題特異的練習はBox & Block Test(以下,BBT)を20回(約40分)行った。評価は,練習時のBBTを全てプロットし,介入終了24時間後に保持テストとして再度BBTを行った。また,全ての治療介入日前後で,麻痺側ピンチ力と治療の疲労度をVisual analog scaleで評価した。
    【結果】3症例全てにおいて,基礎水準期と比較して,操作導入期にBBTが特異的に改善した(平均BBTスコアにて症例1: + 4.9,症例2:+ 3.1,症例3:+ 5.7)。また,全症例とも24時間後のBBTスコアが維持されていた。ピンチ力には特異的な変化は見られなかった。治療の疲労度は全て50%以下であった。
    【考察】操作導入期に上肢の機能的能力に特異的な改善を示したことから,PNS後の課題特異的練習は,即時的に上肢パフォーマンスを向上させ,かつ24時間後も維持されることが示唆された。治療の疲労度が全て50%以下であったことから,患者負担も少なく臨床での実用性があると考えられる。
    【まとめ】脳卒中患者に対する1時間のPNSと課題特異的練習の組み合わせは,課題特異的練習のみよりも上肢機能の改善に効果的である可能性がある。
  • 向井 佑介, 川村 敦奈, 場工 美由紀, 宮脇 智
    セッションID: 2
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/11
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    【目的】  我々理学療法士は脳卒中片麻痺患者の治療を行う上で姿勢コントロールの改善、そして移動や上肢機能につなげるという目的で端坐位によるアプローチを積極的に実施する。その際、多くの患者の重心が麻痺側へ偏倚しているような印象を受ける。そこで今回我々は、安静坐位での重心の側方偏倚を測定し片麻痺患者の坐位における特性について若干の知見を得たので報告する。 【対象】  当院入院中の片麻痺患者で、端坐位保持が30秒可能な25名を対象とした。内訳としては、平均年齢:70.9歳、右片麻痺15例、左片麻痺10例、平均罹病期間39.5日であった。なお、円背、側弯などの骨・関節の変形が著明な症例は除外した。 【方法】  片麻痺患者の安静坐位における重心の側方への偏倚を測定した。また、骨盤の前後の傾斜角度を測定し、両者の関係を調べた。さらに上記について、麻痺側別に症例を2群に分けた分析も行った。方法は対象者に背もたれのない台座上で足底を接地した端坐位をとり30秒間保持することを課題とした。なお足関節0°、膝関節90°で大腿が床面と水平になるよう調節し、大腿部が座面と接する面は1/2となるよう一定させた。前額面上における中心を尾骨とし、触診にて設定した。重心偏倚は重心動揺計(スズケン社製)を用いてX軸の動揺中心位置を測定した。骨盤の傾斜角度は上前腸骨棘、上後腸骨棘にマーカーを貼付し麻痺側側方からデジタルカメラで撮影した。統計手法についてはPEARSONの積率相関係数を使用した。 【結果】  25例中21例(84%)が麻痺側に偏倚していた。また、左片麻痺については10例中全てが麻痺側に、右片麻痺では15例中11例(73%)が麻痺側に偏倚していた。重心偏倚と骨盤傾斜角度の関係においては有意な相関関係がみられ(r=0.448,p<0.05)、後方への傾斜角度が大きい程、重心位置は中心から離れて側方に偏倚していた。また、右片麻痺患者においては有意な相関がみられた(r=0.539,p<0.05)が、左片麻痺患者については有意な相関はみられなかった(r=0.25)。 【考察】  片麻痺患者の安静坐位は約80%の割合で重心が麻痺側に偏倚していることが確認できた。重心偏倚と骨盤傾斜角度については、骨盤後傾角度が大きい程、重心の中心からの偏倚も大きくなるという関係があった。このことから重心の側方偏倚が著明な片麻痺患者の坐位姿勢の特性として、腰腹部、骨盤の筋活動が著しく低下しているために、骨盤の後傾角度が大きくなり、しかも麻痺側に重力で押しつぶされ、物理的に物と同じように安定性を保っているということが考えられる。また、麻痺側別にみた結果からは右片麻痺患者で有意な相関関係がみられたことから、腰腹部や骨盤の筋の活動性が重心の側方偏倚に、より影響していたと思われる。一方、左片麻痺患者ではそれらの要因だけでなく身体図式の障害やPusher症候群等の影響も考慮すべきであると考える。
  • 泉 圭輔, 大畑 光司, 山田 実, 佐久間 香
    セッションID: 3
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/11
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    【目的】 脳損傷後の片麻痺者において,麻痺側の支持性が低下は,歩行の非対称性を生じさせる。しかし,この非対称性が歩行速度の低下と関連するかどうかについては明確ではない。特に麻痺側の支持性低下は,麻痺側による推進力(水平方向へ重心を移動させる力)の低下につながると考えられるが,片麻痺者における麻痺側,非麻痺側の推進力が歩行機能に与える影響については明確ではない。よって,本研究の目的は,片麻痺者における荷重量の非対称性と両側の推進力が,歩行機能に与える影響について明確にすることとした。 【方法】 対象は脳損傷後6か月以上経過した片麻痺者15名(50.7±10.6歳)とした。測定には床反力計を用い,快適歩行速度における麻痺側,非麻痺側の立脚時間,歩行荷重量(床反力垂直分力の平均値),歩行荷重総量(床反力垂直分力グラフ下面積),推進力(床反力水平分力の最大値)を算出した。また,それぞれの値の麻痺側/非麻痺側比を算出した。歩行機能としては,10m歩行にて,歩行速度,歩数を算出した。統計解析は,麻痺側と非麻痺側の差の検定には対応のあるt検定を,各々の相関にはスピアマンの順位相関係数,偏相関係数を用いた。 【結果】 麻痺側の立脚時間,歩行荷重量,歩行荷重総量,推進力は,非麻痺側と比べ有意に低下していた(p<0.01)。また,歩行荷重量の麻痺側/非麻痺側比と歩数(r=-0.593)及び歩行速度(r=0.700)との間に有意な相関がみられた。さらに,歩行速度と非麻痺側推進力(r=0.754)および麻痺側推進力(r=0.561)との間に有意な相関がみられた。しかし,麻痺側推進力で調整した場合,歩行速度と非麻痺側推進力との間に偏相関がみられた(r=0.748)が,非麻痺側推進力で調整した場合,歩行速度と麻痺側推進力との間に有意な偏相関は認められなかった。 【考察】 歩行荷重量の麻痺側/非麻痺側比は歩行速度および歩数と相関を示したことから,床反力垂直分力の対称的な歩行であるほど歩行速度や歩幅が大きいことが示唆された。この理由としては,麻痺側の立脚期が安定し,反対側である非麻痺側の歩幅が増加させることができるため,結果的に歩行速度が増加したのではないかと考えられた。また,麻痺側では,垂直方向だけでなく,前後方向の支持性はさらに低いため,歩行の推進力においても非対称性が認められ,歩行速度と麻痺側,非麻痺側推進力に相関がみられた。さらに,それぞれで調整した場合,歩行速度と麻痺側推進力では相関が見られなくなり,非麻痺側推進力とのみ有意な相関を示すようになった。このことは,片麻痺者の歩行速度が,非麻痺側推進力により強く影響を受けていることを示唆している。このことから,片麻痺者における歩行の推進力は,非麻痺側で補える推進力の大きさと関係が深く,これが歩行速度を決定する重要な因子であると考えられた。よって,片麻痺者の歩行速度は,垂直荷重という面では歩行荷重量の非対称性,つまり,麻痺側の荷重量低下の影響を受け,水平方向への推進力という面では麻痺側のみでなく,非麻痺側による代償能力が重要である可能性が示唆された。
  • ~重心前方移動に着目して~
    清水 美絵, 矢野 裕之, 宮脇 智
    セッションID: 4
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/11
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    【はじめに】  脳卒中片麻痺患者(以下、片麻痺患者)の立ち上がり動作では、体幹を深く屈曲し殿部離床を何度も試みなければ立ち上がれないことがあり、このような片麻痺患者に訓練の中で前方への重心移動を大きくするよう指示することがある。今回、実際にこのように立ち上がっている片麻痺患者の訓練を進める中で立ち上がり動作の方法に変化を生じ、動作の円滑さに改善が見られた症例を経験したので報告する。 【症例と評価】  症例は脳梗塞による左片麻痺の73歳男性で、発症後6週目に当院入院となった。  運動機能はBrunnstrom Recovery Stageで左上下肢ともに_V_、表在感覚は正常、深部感覚は軽度鈍麻であった。Barthel Indexは75点で院内はT字杖歩行にて自立していた。しかし端坐位では骨盤が大きく後傾、立位・歩行は反対に腰椎前彎が増強し、左股関節周囲が不安定であった為、独歩では監視を要していた。 【方法】  両足底面に重心動揺計を設置し、大腿部と床面が平行になる高さの台(37cm)に両足関節を背屈15°に設定した端座位をとり、立ち上がり動作時の重心前方移動距離を測定した。また同時に矢状面からデジタルビデオカメラで撮影し、端座位時の骨盤傾斜角度、殿部離床時の体幹前傾角度、殿部離床後に頭頂部の位置が最も前方に位置した際の足尖から頭頂部までの距離を測定した。測定は初期時と3週間後に行った。 【理学療法】  初期時の評価から、腰腹部や股関節周囲筋の活動性が低下していると考えた。その為、主に腰椎前彎を軽減させ、腰腹部や股関節周囲筋が活動しているアライメントでの立位・歩行訓練を中心に3週間行った。 【結果】  初期時→3週間後の順で、 重心前方移動距離は5.2cm→3.6cm、骨盤傾斜角度は後傾方向へ22°→5°、体幹前傾角度は65°→47°、頭頂部までの距離は36.4cm→33.0cmであった。 【考察】  重心前方移動距離は初期時の方が3週間後よりも長かった。  初期時は腰腹部の活動性低下により骨盤傾斜角度が後傾方向に大きく、そのまま頭部・上部体幹の重量を利用することで重心を足底面へ移動させていた。その為、殿部離床時に体幹前傾角度が大きくなっており、殿部離床後の頭頂部までの距離、重心前方移動距離が長くなっていた。 3週間後、骨盤傾斜角度と体幹前傾角度は減少していた。これは腰腹部や股関節周囲筋の活動性向上により動作開始姿勢が良好となり、体幹前傾が筋活動でコントロールされた為であると考える。殿部離床後に頭頂部までの距離や重心前方移動距離が短くなったのは、筋活動の向上により股関節周りのモーメントが体幹後傾方向から大腿伸展方向へ円滑に移行出来た為と考える。  これらより、片麻痺患者に円滑な立ち上がり動作を獲得させるには、重心を大きく前方へ移動させることにばかり着目するのではなく、患者の回復段階に応じて、筋活動で動作を制御できる身体機能を再獲得させることが重要であると考える。
  • 健常者と脳卒中片麻痺者におけるsecondary torqueの検討
    佐久間 香, 大畑 光司, 泉 圭輔, 塩塚 優, 安井 匡, 市橋 則明
    セッションID: 5
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/11
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    【目的】片麻痺者における共同運動は,運動機能の回復を阻害する要因の一つとされる.Dewaldらは共同運動を主働筋に対する付随的な運動と捉え,主働筋により発揮される筋トルクと他関節の運動に伴って生じる付随的なトルク(secondary torque:以下STo)を比較し,共同運動の性質を明確にする試みを行っている.これまでに,健常者と片麻痺者ともにSToが生じ,片麻痺者でSToが大きいことが示された.しかし,これらは共同運動が生じた状態で発揮できるトルクと比較しており,付随的なトルクが生じない状態で選択的な随意収縮により発揮されるトルクと,他の運動に伴って生じる付随的なトルク,および最大随意トルクにおける健常者と片麻痺者の違いは明らかではない.そこで,本研究では、これら3つのトルクにおける健常者と片麻痺者の違いを検討することを目的とした. 【方法】対象は健常成人14名(平均50.9歳)と片麻痺者6名(平均50.8歳,B.R.S.III以上)とした.なお本研究は京都大学大学院医の倫理委員会の承認を受けて行われ,対象者には書面にて同意を得た.測定姿勢は背臥位とし,選択的な随意収縮により発揮されるトルク(T1)と他の運動に伴って生じる付随的なトルク(T2),および最大随意トルク(T3)における足底屈トルクと下肢筋電図を測定した.T1の測定では股伸展トルクを生じさせず,選択的に最大足底屈トルクを発揮させた.T2では最大等尺性股伸展トルクを発揮させ,そのとき付随して生じた足底屈トルクを測定した.さらに,T3では股伸展トルクを生じさせた状態で最大足底屈トルクを測定した.筋電図測定筋は腓腹筋とヒラメ筋とし,T1とT2測定時の筋活動量を,T3すなわち最大等尺性随意収縮に対する割合で表した(%MVC).健常者と片麻痺者におけるT1,T2,T3の違いをFriedman検定,健常者と片麻痺者の違いをMann-Whitney U testを用いて比較した. 【結果と考察】健常者のT1(0.58±0.35Nm/kg),T2(0.16±0.20Nm/kg),T3(0.75±0.35Nm/kg)は,T3,T1,T2の順に大きな値を示した.一方,片麻痺者のT1(0.07±0.05Nm/kg),T2(0.14±0.07Nm/kg),T3(0.09±0.06Nm/kg)は差を認めなかった.また,片麻痺者のT1とT3は健常者より低い値を示した. 健常者の腓腹筋とヒラメ筋は,T1,T2,T3で差を認めたが,片麻痺者では差を認めなかった.健常者における腓腹筋とヒラメ筋の%MVCではT1に比較してT2が低かったが,片麻痺者では差を認めなかった.
     本研究の結果より,片麻痺者は主働筋を動員してT1とT3を発揮することが困難であり,相対的にT2が大きくなっていることが示唆された.
  • 佐藤 剛介, 乾 康浩, 久保 徳昌, 千葉 郁代, 森岡 周
    セッションID: 6
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/11
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    【目的】頚髄損傷者(以下CSCI)は、損傷髄節以下の運動麻痺や感覚麻痺、自律神経障害など種々の症状を呈する。ケースによっては、環境や対象物と接する身体部位を知覚できないことが存在するにも関わらず、損傷レベルに応じたADL動作が獲得される。これらは環境や対象物を体性感覚や視覚を基に識別していることが考えられるが、CSCIの識別能力について研究したものは見当たらない。本研究ではCSCIの硬度識別能力と身体機能の指標としてASIA motor score(以下AMS)とsensory score(以下ASS)を使用し、それらとの関係について明らかにすることを目的とする。 【方法】CSCI 10名が実験に参加した(平均年齢33.1歳)。脊髄損傷機能評価にはASIA分類を使用した。損傷高位はC5が3名、C6が5名、C7が2名であった。Impairment scaleでは、Aが7名、Bが3名であった。対照群として健常成人18名(平均年齢26.2歳)が実験に参加した。なお、全ての実験参加者には研究趣旨を説明し同意を得た。課題は参加者の前方に3種類の硬度の異なるスポンジを提示し、素手で識別を行わせ硬さの回答を求めた。課題にはそれぞれ視覚の影響を検討するため、開眼、閉眼、スポンジとの接触部のみ提示する場合としない場合の4条件を設定した。1条件につき10設問とし合計40問を行った。加えて、課題提示から回答までの時間を測定した。統計学的解析は、CSCI群と対照群間の正解数、回答時間の比較にMann-Whitney U検定を行い、視覚4条件間の比較にはFriedman検定を使用した。また、CSCI群の上肢のAMSとASSを調べ正解数と回答時間の間のSpearman順位相関係数をそれぞれ求めた。いずれの検定も有意水準は5%未満とした。 【結果】正解数の中央値が対照群の素手条件で35問、CSCI群で28問であり、CSCI群で有意に低かった。回答時間の中央値は、対照群で1.90秒、CSCI群で3.37秒であり、CSCI群で有意に遅延していた。CSCI群での視覚4条件間の比較では、正解数、回答時間ともに有意差が認められなかった。CSCI群の正解数とAMSの間で正の相関が認められた。回答時間では、すべての視覚条件でAMSと負の相関が認められ、開眼条件と閉眼条件においてASSと負の相関が認められた。 【考察】CSCI群の正解数は、対照群と比較して有意に低く、回答時間についても有意に遅延していた。これらの識別能力と識別処理時間は、AMSとの相関が認められ上肢の運動機能が影響していることが示唆された。視覚4条件の比較では、正解数、回答時間ともに有意差が認められなかったが、開眼条件と閉眼条件の回答時間でASSとの間に負の相関が認められた。これは課題が識別課題であるため視覚の影響が少ないと考えられる一方で、開眼と閉眼を除いた条件において身体の一部を隠すことで識別に混乱が生じ、識別処理時間の遅延を引き起こしたことが考えられる。
  • 大工谷 新一, 小野 淳子, 鈴木 俊明
    セッションID: 7
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/11
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    【はじめに】
     筆者らはスポーツ外傷後の神経筋機能を評価する目的で,理学療法評価に電気生理学的検査を取り入れている.今回,スポーツ動作中に足関節内反捻挫を受傷したバスケットボール選手に対する電気生理学的検査で特異的な所見を得たので報告する.
    【対象】
     対象は本件に関する説明に同意を得た21歳の男子大学バスケットボール選手であった.診断は左足関節内反捻挫(II度損傷)であった.現症としては,応急処置が奏功した結果,腫脹と疼痛,可動域制限はそれぞれ軽度であった.筋力検査は疼痛のため不可能であった.ADLレベルは,歩行は疼痛自制内で可能であるものの,段差昇降には時間を要し,走行は不可であった.
    【方法】
     電気生理学的検査として,ヒラメ筋からH反射を導出した.具体的には,筋電計Viking Questを用いて,安静腹臥位で足尖をベッド外へ出した状態の被験者の膝窩部脛骨神経に電気刺激を16回加えて,H反射を記録した.電気刺激強度は,振幅感度を500μV/divとした画面上でM波出現が同定できる最小強度とした.H反射の記録後,同部位に最大上刺激を加え,最大M波を記録した.H反射振幅とM波振幅の平均値を求めた後に各々の比(振幅H/M比)を算出して,受傷前,受傷後3日,受傷後1ヶ月の振幅H/M比を比較した.
    【結果】
     受傷前,受傷直後,受傷後1ヶ月の振幅H/M比は,非受傷側で0.17,0.88,0.21,受傷側では0.62,1.23,0.58であり,受傷直後に顕著に増大していた.また,得られた波形の外観上の特徴として,受傷直後の受傷側には長潜時反射様の律動的波形がH反射出現後に記録された.
    【考察】
     振幅H/M比は脊髄神経機能の興奮性を示す指標である.また,下肢における長潜時反射は脳幹または大脳皮質の興奮性を表す指標となる.本症例では,受傷直後に両側についてヒラメ筋に関連する脊髄神経機能の興奮性に著しい増大が認められた.また,通常は安静時には導出されない長潜時反射も受傷直後の受傷側において記録された.これより,本症例においては足関節内反捻挫の受傷によって,一過性の脊髄神経機能の興奮性の増大が両側性に認められ,受傷側においては脳幹より上位の神経機能の興奮性も増大していたことが明らかとなった.この機序としては,受傷そのものによる脊髄神経機能への影響と,受傷した状態でADLに適応する過程で脊髄神経機能に及ぼされる影響の2つの観点から考慮する必要がある.受傷そのものによる脊髄神経機能への影響としては,疼痛を回避するために脊髄反射が亢進していた可能性や腫脹による関節内圧の変化などが考えられ, ADLに適応していく過程で脊髄神経機能に及ぼされた影響としては,受傷直後の不安定感や疼痛を回避するために,ヒラメ筋などの足関節周囲筋群の緊張性収縮を常時亢進させた状態で姿勢保持や動作遂行を繰り返していた影響があった可能性が推察された.
  • ~腰痛との関連性を求めて~
    貴志 真也, 小林 啓晋, 奥田 智史, 高崎 恭輔, 山口 剛司, 鈴木 俊明
    セッションID: 8
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/11
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    【目的】  剣道選手には左下部腰椎部にしばしば腰痛を認める。今回、その原因と剣道踏み込み動作との関連性を検討し、理学療法への指標を得ることを目的に、踏み込み動作時の脊柱のalignment調査を行った。 【対象】 0大学の診療所に腰痛を主訴で受診した男子大学剣道選手10名のうち、本研究の趣旨を説明し同意を得た5名(以下P+群)とコントロール群として、過去に腰痛を1度も経験したことがない選手をランダムに抽出した5名(以下P-群)である。腰痛群は、全例が筋・筋膜性腰痛症の診断を受け、今現在腰痛は消失している選手である。 【方法】  正面打突動作による踏み込み動作(踏み込み前期:右足離床~右膝最高点と踏み込み後期:右膝最高点~右足着床)を6台のVTRカメラ(180Hz)を有する三次元動作解析装置UM-CAT_II_(ユニメック社製)を使用して、腰椎の回旋と側弯、腰部側屈の動きを測定・分析した。腰部回旋や側弯は、19ヶ所に貼付したマーカーのうち両肋骨下縁のマーカーを結んだ線(胸郭線)に対する両上前腸骨棘を結んだマーカーの線(骨盤線)のY軸に対する水平面上の回旋や前額面上の傾きで計測した。腰部側屈は、骨盤線に対するL1とL5の棘突起を結んだ線(腰椎線)の側屈角度(LB角)および腰椎線に対するC7とL1の棘突起を結んだ線(胸椎線)の側屈角度(THB角)を計測した。 【結果】  正面打突動作では、P+群、P-群ともに踏み込み前期で腰椎右回旋から左回旋し、踏み込み後期で左回旋から最終時に少し右回旋する。回旋の大きさは、踏み込み後期でP+群が有意に大きかった。腰椎側弯は、2群とも胸椎と骨盤が踏み込み前期で右傾斜し、踏み込み後期で左側へ傾斜する。ただし踏み込み前期での骨盤の右傾斜が胸郭に比べ小さく、踏み込み後期では骨盤の左傾斜が大きいので、骨盤は左傾斜していることになり踏み込み前期・後期とも腰椎は左凸の側弯を呈していた。側屈はP+群、P-群で動きにばらつきが認められたが、踏み込み後期では2群とも腰椎は右側屈していた。また、P-群は腰椎側屈に対し胸椎が同様の角度で逆に動いているが、P+群は腰椎側屈に対する胸椎の逆の動きが少なく、可動性もP-群に比べて少なくなっていた。 【考察】 今回の結果より、多くの剣道選手に認められる腰痛部位は、正面打突動作時で床からの衝撃が加わる時期に伸張と回旋ストレスが加わっている可能性が示唆された。さらに、胸腰椎の柔軟性低下がこれらのストレスを過剰にし腰痛発生に関わっている可能性が示唆された。したがって、LB角とTHB角がバランスよく逆の動きが出来る協調性とその動きをある程度生み出す柔軟性が腰痛発生予防には必要と考えられる。
  • 和田 治, 建内 宏重, 市橋 則明
    セッションID: 9
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/11
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    【目的】 身体回旋動作は,日常生活やスポーツにおいて頻回に用いられる。身体回旋動作では,骨盤や脊柱に回旋以外の運動が運動連鎖として生じるとともに,回旋側に重心が移動すると考えられている。したがって,重心位置に近い骨盤や脊柱の運動連鎖は重心移動に大きな影響を与えることが予想される。しかし,身体回旋動作における骨盤や脊柱の運動と重心移動の関連性に関する報告は認められない。本研究の目的は,身体回旋動作における骨盤および脊柱の運動連鎖と側方重心移動量の関連性を明らかにすることである。
    【方法】 対象は,書面にて本研究への参加に同意の得られた健常成人男性17名(23.3±2.9歳, 全例右利き)とした。測定課題は立位での身体回旋動作とした。開始肢位は,両足部踵骨中心間を対象者の足長とし,足角は10゜に規定した。また,動作中は両手を腹部の前で組ませた。対象者には,3秒間の静止立位の後,3秒間で後方へ身体を回旋し3秒間で正面に戻る動作を左右交互に3回ずつ行わせ、左回旋3回の平均値を解析に用いた。計測には三次元動作解析装置 (VICON社製)を用い,身体回旋動作時の側方重心移動量(+; 回旋側)を算出し,各被験者の足長で正規化した。次に,対象者の側方重心移動量の平均値を求め,その平均値より側方重心移動の大きい群(以下; L群)と小さい群(以下; S群)に分けた。また,動作時の骨盤と脊柱(胸郭と骨盤の角度変化量の差)の矢状面/前額面/水平面での角度を求め,各々について静止立位時から最大身体回旋時の角度変化量を算出した。対応のないt検定を用いて,骨盤および脊柱の角度変化量を2群間で比較した。有意水準は5%とした。
    【結果】 身体回旋動作時の側方重心移動量は平均11.3±12.7%であり,L群は19.2±11.6%,S群は2.5±6.9%であった。骨盤の運動では,L群はS群と比較して,前傾角度変化量が有意に大きかった(L群;3.0±3.9°, S群;-1.1±3.3°, p < 0.05)。前額面・水平面では有意な差は認められなかった。また脊柱の運動では,L群はS群と比較し,屈曲角度変化量が有意に小さく(L群;1.4±6.2°,S群;8.5±4.5°, p < 0.05),回旋角度変化量が有意に大きい結果となった(L群;34.9±4.8°, S群;28.5±7.4°, p < 0.05)。前額面では有意な差は認められなかった。
    【考察】 今回の結果より,身体回旋動作時に側方重心移動量の大きい群では,小さい群と比較して,脊柱回旋角度が大きく、同時に骨盤前傾が大きく脊柱屈曲が少ないことが明らかとなった。回旋側への大きな重心移動を伴う回旋動作では,運動連鎖として,骨盤前傾が脊柱屈曲を減少させ回旋可動性を増大させていると考えられる。一方,骨盤後傾を伴う回旋動作では,回旋に伴う脊柱屈曲の増加により脊柱への力学的ストレスが増大し,障害発生につながる可能性があると考えられる。以上より,身体回旋動作を伴う動作において回旋側への重心移動を促すためには,骨盤を適度な前傾位で保持し,脊柱の屈曲を少なくしながら回旋させることが重要であると考えられる。
  • 杉本 真理, 安田 一平, 熊崎 大輔, 大工谷 新一, 濱田 太朗
    セッションID: 10
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/11
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】姿勢変化によって肩関節の運動に影響を及ぼすことは数多く報告されている。しかし、骨盤肢位の変化と肩関節運動の関係についての報告は少ない。そこで今回、骨盤肢位の変化による姿勢の違いが肩関節運動に及ぼす影響について検討した。
    【方法】対象は、健常成人男性11名、22肩(年齢21.3±1.8歳、身長172.8±6.8cm)とし、肩関節、体幹に整形外科的疾患の既往がない者とした。対象者には本研究の主旨を説明し承諾を得た。方法は、端坐位にて足関節背屈台を傾斜角度10°にし、座面に傾斜を設定した。課題運動は肩関節屈曲、外転、および肩関節内旋・伸展・肘関節屈曲の複合運動(いわゆる結帯動作、以下、複合内旋)、肩関節外旋・屈曲・肘関節屈曲の複合運動(いわゆる結髪動作、以下、複合外旋)とした。骨盤肢位は中間位、前傾位、後傾位、肩関節運動側の骨盤が高い肢位(以下、同側高位)、肩関節運動側と対側の骨盤が高い肢位(以下、対側高位)とした。肩関節屈曲と外転可動域は関節可動域測定法に従い、ゴニオメーターにて計測した。複合内旋は第7頸椎(以下C7)と母指先端の距離を計測し、複合外旋はC7と中指先端の距離をメジャーにて計測した。共に骨盤中間位での距離を基準値とし、基準値からの距離を計測した。関節可動域、指椎間距離は骨盤前傾位と後傾位、同側高位と対側高位での比較を行った。統計処理は対応のあるt検定を用い、有意水準5%未満とした。
    【結果】肩関節屈曲可動域は前傾位166.2±11.6°、後傾位151.8 ±9.2°、同側高位158.5±11.1°、対側高位162.4±10.9°であった。外転可動域は、前傾位179.0±13.9 °、後傾位166.4 ±15.9°、同側高位171.2±16.2°、対側高位180.3±18.2°であった。複合内旋は前傾位0.6±1.7cm、後傾位0.2±1.5cm、同側高位-0.1±2.0cm、対側高位0.8±1.4cmであった。複合外旋は、前傾位0.3±1.1cm、後傾位-0.4±1.3cm、同側高位-0.1±1.2cm、対側高位0±1.3 cmであった。肩関節屈曲と外転可動域は前傾位、対側高位が有意に大きかった。複合内旋は対側高位、複合外旋は前傾位が有意に大きかった(p<0.01)。
    【考察】肩関節屈曲時には最終域で体幹伸展、肩甲骨後傾、上方回旋が生じ、外転時には体幹側屈、肩甲骨上方回旋が生じる。骨盤後傾位では体幹屈曲、肩甲骨前傾が生じ、肩関節屈曲、外転時に生じる椎間関節や肩甲上腕関節の運動が阻害され、可動域が減少したと考えられた。複合内旋では肩甲骨外転が生じるが、同側高位では姿勢保持のために体幹側屈と肩甲骨内転が生じ、複合内旋が制限されたと考えられた。複合外旋では肩関節屈曲可動域が必要となるが、骨盤後傾位では屈曲可動域が減少するため複合外旋が制限されたと考えられた。以上より、骨盤肢位が変化することによって体幹や肩甲骨のアラインメントに変化が生じる結果として、肩関節運動に影響が及ぼされることが示唆された。
  • 小川 卓也, 小柳 磨毅, 田中 則子, 木村 佳記, 横谷 祐一郎, 松尾 高行, 椎木 孝幸, 境 隆弘
    セッションID: 11
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/11
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    【目的】  下肢関節疾患に対するリハビリテーションでは、筋力の回復と関節の安定性向上を目的にClosed kinetic chain(以下CKC)トレーニングが行われている。我々は安定性向上のためのCKCトレーニングとして、サイドランジ(Side Lunge:SL)や片脚立位で支持脚の屈伸運動を行いながら、対側の下肢を側方へリーチする側方レッグリーチ(Lateral Leg Reach:LLR)の臨床応用を検討している。先行研究によりSLの運動特性は明らかにされているが、LLRの詳細な運動力学的特性は明らかにされていない。本研究の目的はLLRにおける支持脚の運動力学的特性を明らかにすることである。
    【対象と方法】  下肢に障害既往のない健常成人男性10名(平均年齢:21.8±1.2歳、身長:175.3±3.8_cm_、体重:65.5±7.6_kg_)を対象とした。被検者には本研究の主旨を説明し、実験への参加について同意を得た。運動課題はLLRとし、運動計測には三次元動作解析装置(Motion Analysis社製MAC3D System)と床反力計(AMTI社製 OR6)を用いて計測した。収集したデータから、支持脚の矢状面と前額面における関節運動と関節モーメントを算出した。
    【結果】  LLRの関節運動は、身体重心の下降に伴い股関節が屈曲及び内転し、膝関節は屈曲、足関節では背屈した。各関節運動の最大角度の平均値は、股関節屈曲51.2±9.5°、股関節内転5.5±5.1°、膝関節屈曲70.2±3.7°、足関節背屈29.1±0°であった。
     関節モーメントの最大値は、股関節伸展48.2±21.5 Nm、股関節外転23.2±13.5Nm、膝関節伸展69.3±18.7Nm、足関節底屈61.3±20.1Nmであった。
    【考察】  LLRの支持脚は膝関節の屈伸運動が股関節より大きく、膝関節伸展モーメントが股関節伸展モーメントより大きかった。また、遊脚側下肢の股関節を軽度外転した屈曲相初期と伸展相後期において、支持脚の股関節外転モーメントが最大値を示した。LLRの支持脚は、側方へリーチした対側下肢の質量を支持するために股関節の外転モーメントが増大したと考えられた。
     LLRと同じ前額面におけるCKCトレーニングであるSLを分析した倉林らの報告では、SLにおける股関節モーメントの最大値は、踏み込み脚の伸展モーメントが36.4Nm、外転モーメントが14.8Nmであり、蹴り脚は、屈曲モーメントが67.5Nm、内転モーメントが14.3Nmであったとされている。以上のことから、LLRは側方への加速が生じるSLと比較しても同等以上の股関節の伸展と外転モーメントの発揮がなされており、股関節周囲筋のトレーニングとして有用であると考えられた。
  • 荷重時痛から足部アライメントに注目し、改善した一症例
    平尾 聡, 鈴木 智洋, 藤井 奈穂子, 矢田 純也, 安達 信宏, 坂元 晃典, 竹内 嘉代, 吉井 さやか, 林 秀一, 青木 雄介
    セッションID: 12
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/11
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    【はじめに】
     遠位脛腓骨骨折は骨癒合が遅く偽関節を形成しやすいとされる骨折の一つである。今回、足部アライメントに注目し、インソール挿入により荷重時における筋再学習を目的にアプローチを行った。その結果、疼痛なく独歩自立を獲得することが出来たので考察を加えて報告する。
    【症例紹介】
    61歳女性。平成20年12月7日受傷。右脛腓骨粉砕骨折と診断され、同年12月10日観血的骨接合術(ORIF)施行。翌日より理学療法(以下PT)開始。
    【画像所見】正面天蓋角が94°(健側90°)であり、患側は腓骨距骨間の狭小が認められる。
    【理学療法経過】
     PT開始翌日よりギプス除去し、足関節関節可動域訓練を開始した。平成21年1月9日足関節背屈・底屈角度他動にて全可動域獲得。術後6週免荷後右下肢1/3荷重開始。両松葉杖歩行にて疼痛出現することなく歩行可能。その後1週間ずつ1/2、2/3、と荷重量を増加し平成21年2月16日全荷重となった。しかし、2/3荷重時より立脚中期から後期にかけて外果後方に疼痛出現し、さらに全荷重になると内果後方、距腿関節前面にも疼痛出現した。全荷重開始時(術後74日)の歩行では立脚中期から立脚後期にかけて患側前足部ロッカーが消失し患側立脚時間が短縮した。荷重時患側足部は扁平足を呈しており、右踵接地時に右骨盤の下制、右肩甲帯下制が出現した。平成21年2月20日片松葉杖歩行にて退院となり、その後外来通院にてPT継続となった。
    【考察】
     本症例の疼痛出現原因として1)右足尖離地時に距骨下関節回外位から長腓骨筋の作用困難であること、2)右立脚中期に扁平足によって足部回内位となり、下腿外側傾斜が増大すること、の2つに注目した。立脚後期に長腓骨筋は内側前足部を固定し、立方骨の挙上・横足根関節の固定作用が起こる。しかし、右足部が扁平足であること、また、触診により右距骨下関節回外の動きが健側より低下していたことから、右距骨下関節の十分な回外が起こらず長腓骨筋作用が困難となり、腱部に疼痛が出現したものと考えた。
     立脚中期に後脛骨筋、前脛骨筋は下腿外側傾斜を制動する。しかし、扁平足であるために右足部は回内位を呈し、下腿は外側傾斜が増大する。これの制御のために前脛骨筋、後脛骨筋は過剰な遠心性収縮を要するため疼痛が出現したと考えた。
     日常歩行時に踵部内側から内側縦アーチへのインソールを作成した。その目的は、1)立脚後期に踵骨回外を伴わせること、2)足底外側から足底内側への重心移動時に内側前足部固定力を増大させること、3)立脚中期の下腿外側傾斜を減少させること、である。これによって足底面での正しい重心移動を促し、筋再学習に努めた。これにより(術後87日)立脚中期から立脚後期に十分な踵離地が出現し、右立脚期にみられた右骨盤の下制右肩甲帯下制はみられず、疼痛は消失した。
    【まとめ】
     足部機能・運動学に沿って疼痛部位と筋収縮形態を熟慮したアプローチにより、術後3ヶ月で歩行能力が著明に向上した。
  • 伊能 良紀, 大塚 靖子, 阿部 渉, 井澤 克俊, 武本 有紀子, 藤本 太郎, 石川 智昭, 前野 啓介, 柴沼 均, 三浦 靖史
    セッションID: 13
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/11
    会議録・要旨集 フリー
    【背景】変形性膝関節症は、しばしば膝関節屈曲拘縮を合併している。人工膝関節全置換術(以下、TKA)の手術操作により屈曲拘縮は除去されるが、膝伸展筋力はすぐには改善しない。 先行研究により、TKA術後の膝伸展筋力改善に必要な期間は術後1ヶ月から12ヶ月と様々に報告されているが、術前の屈曲拘縮の程度によって膝伸展筋力がどのように改善するかについての報告はない。そこで今回、術前の屈曲拘縮と術後の膝伸展筋力の改善率との相関について検討したため報告する。【方法と対象】中枢神経障害や他の下肢障害のない変形性膝関節症(以下、膝OA)患者で、TKAを行った35名38肢(男性8名、女性27名、右膝18肢、左膝20肢、平均年齢76.8±6.6歳、BMI24.7±3.5)を対象とした。対象者を日整会の基準に準じて測定した膝関節伸展可動域により、0~5°(A群)、-10~-15°(B群)、-20~-25°(C群)の3群に分けた。測定は、膝関節角度を調整できる椅子にハンドヘルドダイナモメーターμtas F-1(アニマ社製)を固定し、端座位にて測定した。測定膝関節角度は膝関節屈曲30°・60°・90°とし、それぞれ3回測定した平均を膝伸展筋力の値とした。測定時期は、術前・術後1週・術後2週・術後3週・術後4週とした。比較検討は、術後の膝伸展筋力を術前の膝伸展筋力にて除した値を各群内にて術後1週と術後2週・術後2週と術後3週・術後3週と術後4週にて行った。統計は対応のあるt検定(p<0.05)を用いた。【結果】術前の測定の結果、A群は17肢(右6肢、左11肢)、B群は15肢(右7肢、左8肢)、C群は6肢(右5肢、左1肢)であった。有意(p<0.05)な膝伸展筋力の改善率が見られたのは、A群は測定肢位膝屈曲30・60度の術後1週と術後2週、B群は測定肢位膝屈曲30・60・90度の術後1週と術後2週であり、またB群は測定肢位膝関節屈曲30度の術後3週と術後4週にも有意な改善率が見られた。【考察】膝伸展筋力の改善が遅延する理由として、屈曲反射の影響、術前の大腿四頭筋の廃用性筋萎縮、そして、拘縮除去のための手術操作による影響などが考えられるが、今調査では、術前に屈曲拘縮の強いC群において、膝伸展筋力の改善が最も遅延したことから、術前の屈曲拘縮の存在が、回復遅延の原因のひとつであることが示唆された。一方、屈曲拘縮がある患者に対しては、術前に外来で拘縮除去のための関節可動域運動と大腿四頭筋筋力増強運動、更には電気刺激を用いた筋力増強などを実施して屈曲拘縮を低減し、膝伸展筋力を改善させることにより、術後早期回復による早期退院へとつながり、入院日数の短縮ができることが期待される。
  • 吉塚 瞳, 小野 志操, 澁谷 秀幸
    セッションID: 14
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/11
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】肩関節の運動は肩甲上腕関節(以下GH jt)と肩甲胸郭関節の協調した運動により成り立っている.今回,GH jtの拘縮によりX線画像上において肩甲骨のmal alignmentを呈し,肩関節挙時に肩甲骨上腕リズムに異常をきたしていた症例を経験した.理学療法はGH jtのアプローチのみを行った結果,拘縮が除去されることにより肩甲骨のmal alignmentも改善した.このことによりGH jt障害が肩甲骨における静的アライメントへの影響を再確認したのでアプローチと共に報告する.なお,症例に対し発表の目的を説明し,同意を得た.
    【症例紹介】50歳代 女性 左利き.誘因もなく疼痛出現.経過観察していたが疼痛増悪し,可動域制限著明となったため,発症1ヶ月後、当院整形外科受診.左肩関節周囲炎と診断.同日,理学療法開始.
    【初診時所見】ROM flex 165°/80° ext 55°/ 10° abd 165°/80° add 40°/ 0° h-add 30°/-5° I/R 1st 70° 2nd 0° 3rd 0° E/R 1st 0° 2nd 0° 3rd 0°※2nd、3rd 肢位 完全に取れず 右肩関節制限(-)
    大円筋・小円筋・大胸筋・肩甲下筋・肩甲挙筋・僧帽筋上部線維 短縮(+)
    SGHL、MGHL、AIGHL、PIGHL、CHL 短縮(+)
    棘上筋・棘下筋 筋硬結 圧痛(+)
    結髪 頭部側面 結帯 Th2-3/仙骨
    夜間痛(+)
    LVA:48.0°/68.3° GHA:3.9°/6.4°
    【理学療法・治療経過】棘上筋、棘下筋のリラクゼーション、短縮筋のストレッチ、関節包靱帯のストレッチを中心に理学療法開始.週3回外来フォロー.屈曲角度は徐々に改善したが、内外旋制限残存、結帯動作L4-5レベルで止まっていた。圧痛所見は無く、end feelも非常にtightだったため、後下方関節包靱帯伸張目的にstooping-exを追加.その後、結帯動作、内外旋角度とも増加.ADL動作すべて自立となったためRH終了.
    【最終時所見】ROM flex 165°/170° ext55°/ 40° abd 165°/170° add40°/ 20° h-add 30°/15° I/R 1st 80° 2nd 25° 3rd 5° E/R 1st 20° 2nd 60° 3rd 75°〈BR〉結髪 頭部中央 結帯 Th3/Th9
    LVA:48.0°/43.3° GHA:3.9°/3.6°
    【考察】 本症例の治療において,棘上筋,棘下筋の筋スパズムの除去,後下方組織の伸張を目的に理学療法を実施した.実施後は比較的良好な屈曲可動域と内外旋角度を獲得した.拘縮除去後のX線画像上ではLVAが著明に改善し,肩甲骨の静的アライメントが修正されたことを認めた.肩関節の運動は肩甲骨と上腕骨の位置関係が良好な状態ではじめて回旋筋腱板が正常に働く.肩甲上腕関節に拘縮ができたことにより肩甲骨と上腕骨の位置関係が崩れ,それを代償するために肩甲骨がmal alignmentを呈すると考えられる.今回はX線画像上での静的アライメントの計測のみであったが,挙上時の肩甲上腕リズムも同様なことが言えると考えられる.評価の際も肩甲上腕関節の拘縮を除去したうえで再度,肩甲胸郭関節の評価をするべきと思われる.
  • ―術後1年間の経過―
    岡 徹, 黒木 裕士, 水野 泰行, 古川 泰三
    セッションID: 15
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/11
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    【はじめに】  骨折や変形性肩関節症(以下OA)に対して除痛や関節機能の向上を目的に、肩人工関節置換術(total shoulder arthroplasty:以下TSA)が行われている。しかし、術後理学療法の術後1年間の経過報告は比較的少ない。今回、TSAを行った症例の術前から術後1年間の経過について報告する。 【症例紹介】  82歳、女性、右利き。10年前より右変形性肩関節症と診断され強い安静・夜間・運動時痛を認めた。結髪、結帯動作困難でADLに支障をきたすため当院紹介受診し、OA末期と診断され除痛目的にてTSA施行となる。 【術中所見】  上腕骨頭と関節 は変形し関節軟骨は消失していた。骨頭を切除し、ステムをセメントで固定し大・小結節や肩甲下筋を再縫合した。腱板損傷は認めなかった。 【理学療法】  術後2日目よりリラクゼーション、患部外運動(肩甲胸郭関節、体幹、手・肘関節)、アイシングを開始。術後2週目より他動運動開始(外旋は3週目)、術後3週目より自動介助・自動運動開始、術後4週目より抵抗運動開始と進めた。 【経過】  疼痛(NRS )は術後5週目で軽減し、13週目でほぼ消失していた。肩屈曲筋力は術前が健側比10%で、術後12週で健側比78%まで改善した。肩屈曲・外転ROM(自動)は術前屈曲30°、外転20°が術後13週目で120°、90°と改善した。肩JOA Scoreは術前12点が、術後13週目で81点と向上した。術後1年経過時も肩機能は維持されていた。 【考察】  肩OAに対するTSAの主たる目的は、除痛であり、本症例は比較的達成できた。ROM制限に関しては、ADL動作自立までは獲得できたが、術後25週目以降の向上は認めなかった。TSAに関する術後ROMの報告によれば、林田らは平均自動屈曲92°、神平らは84°であったと報告しており他の報告よりは良好であった。これは、術後早期から縫合筋(肩甲下筋)に注意しながら積極的にROMを実施したためと考える。筋力に関しては、駒井らや末永らの報告にあるようにTSA後の筋力は腱板機能の有無に左右されるとされており、本症例は腱板機能が残存していたこと、また、肩甲胸郭関節、体幹機能の強化を先行したことが肩関節筋力の回復に有効であったと考える。  本症例においては術後13週目での機能回復が大きく、その後25週目までは向上していた。TSA術後は、外来などでの理学療法の継続が重要であると考える。
  • 負荷量増加による活動量の変化
    井尻 朋人, 高木 綾一, 大工谷 新一, 鈴木 俊明
    セッションID: 16
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/11
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    【緒言】
     肩甲骨周囲筋の筋力強化を行う一つの方法に肩関節等尺性収縮がある。しかし、肩関節等尺性収縮時の各肩甲骨周囲筋の筋活動は十分明らかにされていない。そこで、本研究では肩甲骨周囲筋を動作筋と拮抗筋に分類し、肩関節等尺性収縮時の各肩甲骨周囲筋活動を分析したので報告する。
    【方法】
     現在までに肩関節疾患のない男性20名を対象とした。運動課題は端坐位にて上肢下垂、肘関節90度屈曲位での肩関節外旋、内旋等尺性収縮、肩関節外転45度位での外転等尺性収縮とした。この時外旋、内旋は前腕遠位、外転は上腕遠位に設置した徒手筋力計(アイソフォースGT-300 OG技研社)で負荷量を計測した。外旋の負荷量は体重の3、5、10%、内旋及び外転は5、10、15%とした。各肩関節運動で生じる肩甲骨運動の方向に作用する筋を動作筋、拮抗作用を持つ筋を拮抗筋と分類し、等尺性収縮を行った際の筋活動を筋電計(MQ-8 キッセイコムテック社)にて測定した。各肢位における各負荷量での等尺性収縮時の筋電図積分値を開始肢位の筋電図積分値で除し、積分値相対値を算出した。各筋で各負荷量の積分値相対値をフリードマン検定及び多重比較検定にて比較した。
    【結果】
     肩関節外旋では負荷が体重の3、5、10%となるにつれ、動作筋の僧帽筋中部の積分値相対値は10.5、16.1、29.6、小菱形筋は10.0、15.8、29.5、大菱形筋は5.8、10.0、20.9となった。全ての動作筋で3%、5%と比較して10%で有意に増加した。拮抗筋の前鋸筋は1.8、2.6、4.7であり、3%、5%より10%で有意に増加した。肩関節内旋では5、10、15%の負荷で動作筋の前鋸筋は4.9、8.4、12.8となり、拮抗筋の僧帽筋中部は1.4、1.8、2.7、小菱形筋は1.4、2.1、3.2、大菱形筋は1.9、2.9、4.4となった。前鋸筋、僧帽筋中部、小菱形筋の5%、10%と比較し15%で有意に増加した。肩関節外転では動作筋の前鋸筋は2.6、3.7、5.7、僧帽筋上部は2.5、4.0、6.8であり、拮抗筋の僧帽筋下部は2.4、4.5、7.6、小菱形筋は3.2、6.0、9.4、大菱形筋は3.8、7.4、11.9であった。前鋸筋、僧帽筋上部、僧帽筋下部及び小菱形筋では5%、10%と比較し15%で有意に増加し、大菱形筋では5%より10%、5%と10%より15%で有意に増加した。
    【考察】
     動作筋、拮抗筋共に負荷量増加に伴い積分値相対値は増加傾向を示し、負荷が大きい場面では内旋の大菱形筋を除く全筋で有意に増加した。動作筋は肩甲上腕関節の筋群と協調して働き、動筋として肩関節外旋や内旋、外転の等尺性収縮に作用していたと考えられた。また、拮抗筋も積分値相対値が増加したことから、動作筋が発揮した力により変化する肩甲骨位置を拮抗筋が制御していると考えられた。つまり、肩甲骨周囲筋の拮抗筋は動作筋と共に働き、運動の調節を行う機能を有すると考えられた。
  • 加藤 良一, 今久保 伸二, 赤松 波子, 久野 陽治, 隅谷 政, 中土 保, 中島 重義, 岩城 啓好, 池渕 充彦, 箕田 行秀
    セッションID: 17
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/11
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】 現在、人工股関節全置換術(以下、THA)後のリハビリテーションにおいてクリニカルパスは広く普及している。パスは医療の標準化・効率化といった利点もある一方、質的向上と相反しており、患者の個別性を反映しにくいといった問題点を抱えている。THA術後のパスでは歩行獲得は必須項目であるが、歩行評価は医療スタッフの経験により主観的に行われることが多く、定量的かつ客観的な評価が必要とされている。近年、測定が簡便であり、測定条件が限定されず携帯可能な加速度計が開発され、加速度計が歩行の評価に有用であることを我々は先行研究で確認している。そこで本研究の目的は、wearable加速度計を用いて歩行自立の判定を行い、個々の症例に合わせたテーラーメイドリハビリテーションプログラム立案を試みたので報告する。 【対象および方法】 対象はTHAを施行した患者50症例、53股であり、本研究に対して同意を得ている。対象者の腰部に加速度計を装着して自由歩行中に得られた加速度データを波形解析した。歩行評価項目は動揺の指標としてroot mean square(以下、RMS)を用いた。これは小さいほど動揺が少ないことを示す。THA群は術前および術後歩行可能となった時期から退院時まで測定した。先行研究で歩行自立時のRMSの平均値を求めており、そのRMS平均値+1標準偏差(以下、指標値)の値以下となったら歩行自立と判断した。その後は退院基準となる階段昇降自立、セルフケア自立まで理学療法を継続した。 【結果】 歩行器獲得平均日数は4.4日、ステッキ獲得平均日数は9.2日であった。指標値を判断基準として、実際に歩行自立した割合は歩行器歩行で85%、ステッキ歩行で69%と高い的中率を示した。ステッキ歩行獲得日数は3日から20日と患者によって大きく異なった。また退院基準を満たした日数は11.80日であった。 【考察】 我々はTHA術後患者に見られる歩行動揺性の増加を、wearable加速度計による新たな歩行評価システムによって、定量的に示すことができることを先行研究にて確認している。今回、Wearable加速度計を用いた歩行自立判定に従って理学療法を進行すると、退院基準を満たした日数は11.8日となった。つまり従来までの3週パスと比べて早期に退院でき、入院期間の短縮が可能であることが示唆された。またリハビリテーションの進行度には個体差があり、特に高齢者ではパスから遅れる症例が散見された。やはり画一的ではない、患者ひとりひとりにあったテーラーメイドリハビリテーションプログラムの立案を客観的な評価に基づき実行する事が今後、重要であると考える。
  • 安田 真幸, 山本 裕一, 西原 隆志, 明比 大
    セッションID: 18
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/11
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     一般的に股関節術後の早期荷重は推奨されている。今回、左股関節術後に早期荷重を行った結果、歩行時に左膝関節周囲に疼痛を認めた症例を経験したので考察を加え報告する。
    【症例紹介】
     75歳、女性。平成20年12月2日に左変形性股関節症のためTHAを施行し、その後退院。翌年1月27日、転倒により左大転子部を骨折、ステムのゆるみが生じ、当院再入院。2月7日に骨接合術とステムの再置換術を施行。術後4日目に杖歩行自立となるが、術後9日目に膝関節痛が出現し歩行困難。術後18日目に膝関節周囲痛が消失し、杖歩行自立。
    【理学療法評価】
    杖歩行、疼痛、機能を術後4日目・9日目・18日目の順に記載する。
    杖歩行:自立・理学療法実施後疼痛が強いも可能・自立
    疼痛:なし・立脚初期~中期、腸脛靭帯遠位1/3と外側広筋遠位1/3にVAS(9/10)鵞足にVAS(1/10)・なし
    機能:左下肢MMT:股伸展2・2・3、股外転2・2・3、股内旋2・2・3、股外旋2・2・2、膝伸展3・3・3
        左膝FTA:165°・160°・165°左膝Q角:15°・15°・10°
    【歩容(左立脚初期~中期)の変化】
    術後4日目:骨盤左挙上、左股関節内転・内旋、knee-in toe-outが軽度見られる。
    術後9日目:骨盤左挙上、左股関節内転・内旋、knee-in toe-outが著明に見られる。
    術後18日目:骨盤左挙上、左股関節内転・内旋、knee-in toe-outが共に改善。
    【アプローチ】
    術後9日目より
    1、筋の滑走性、伸張性を出すためのストレッチ。
    2、OKCとCKCの股関節周囲筋、大腿四頭筋の筋力訓練、CKCで膝関節周囲負荷を考慮して荷重訓練。
    3、病棟杖歩行から四脚歩行器歩行に変更。
    【考察】
     股関節術後では荷重や歩行が進む時期に内転筋、大腿直筋、大腿筋膜張筋や腸脛靭帯にかけて痛みが起きやすく、knee-in toe-outでは鵞足部に牽引負荷がかかると言われている。
     今回、術後4日目から左股関節の筋力が十分回復していないにも関わらず、積極的に杖歩行を開始したことで、術後9日目には左立脚初期~中期に左股関節内転・内旋、knee-in toe-outが著明に見られ、膝関節周囲に疼痛が出現し歩行困難となった。
     股関節の固定に代償的に大腿筋膜張筋が過剰収縮したこと、内側広筋の収縮も弱く膝関節の外反制動に代償的に外側広筋が過剰収縮したこと、knee-in toe-outで膝関節屈曲位での外反、下腿外旋が強制され、鵞足部への牽引負荷が生じたことが膝関節周囲に痛みを出現させたと考える。
     術後早期荷重が推奨されているが、本症例を通じても早期荷重をするにあたって、歩容から過剰収縮や牽引負荷といった他関節への影響を考えることが重要であり、このことから、理学療法の場面だけでなく病棟での荷重方法の設定を考慮することが重要であると再認識した。
  • ~歩行速度差とgait variabilityの関係について~
    山口 良太, 土井 剛彦, 小松 稔, 牧浦 大祐, 西山 隆之, 藤代 高明, 神崎 至幸, 平田 総一郎, 黒坂 昌弘
    セッションID: 19
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/11
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    【はじめに】 歩行速度は加齢とともに低下することが知られており、歩行能力を最も反映した指標の一つであるとされている。すなわち速度が速いほど歩行能力が高いと評価されるが、下肢疾患を有する患者においては、患側荷重支持不全によって立脚期時間が短縮するために、速く歩くことよりも、むしろゆっくりと歩くことの方がより困難である可能性がある。全人工股関節形成術(total hip arthroplasty以下THA)後患者の歩行速度は、術後期間の経過とともに改善するとされているが、step時間のばらつき(gait variability)は術後4~6週においても改善しないという報告がある。そこで本研究では、THA患者における歩行特性として、normal speedとslow speedの差(以下歩行速度差)に着目し、gait variabilityとの関係を調査することを目的とした。 【方法】 対象は、当院にて片側のTHA施行後3~4週の患者7名(男性1名、女性6名)とした。被験者には研究の趣旨を口頭にて説明の上、同意を得た。被験者の第3腰椎レベルと右踵骨隆起部に3軸加速度計(MicroStone社製)を設置し、計測区間10mの歩行路をnormal speedとslow speedの2条件で歩行を行った。歩行補助具は全員患側と対側にT字杖を使用した。得られた右踵の加速度から右踵接地期を同定し、定常状態と思われる10strideを抽出して以下に列挙する指標を算出した。1.歩行速度差、2.stride時間のばらつき(以下stride CV, coefficient of variance)、3.strideにおける第3腰椎レベル3軸の各加速度方向の自己相関係数(以下stride AC, auto-correlation)。これらのうち2と3は各条件間で対応のあるt検定を、さらに1と2、1と3の相関関係をspearmanの順位相関を用いて検討した。すべての統計学的有意水準は5%未満とした。 【結果】 歩行速度の平均はnormal speed:0.59±0.22m/sec、slow speed:0.41±0.15m/sec、歩行速度差:0.18±0.14m/secであった。stride CVの平均はnormal speedで4.10±2.31%、slow speedで7.07±3.13%となりslow speedで有意に高値を示した。歩行速度差とnormal speedでのstride CVとの関係については、相関係数-0.70(P<0.05)と有意に負の相関を認めた。また、歩行速度差と各加速度方向のstride ACとの関係は、歩行速度差と前後方向のstride ACとの間に、有意な相関関係を認めた(r=0.80, P<0.05)。 【考察】 日常生活における歩行能力には、場面に応じて歩行速度を調節する能力も重要であると考えられる。そこで本研究では、normal speedとslow speedの差と、normal speedにおけるgait variabilityとの関係を検討した。その結果、歩行速度差が大きいほどnormal speedの歩行ではばらつきが小さく、さらに定常性の高い歩行であることが示唆された。 歩行速度差はストップウォッチさえあれば臨床場面においても簡易に算出できる指標である。本研究の結果から、歩行速度差はTHA患者の歩行特性を反映した、簡便かつ有用な指標である可能性が示唆された。
  • 藤田 容子, 南角 学, 西村 純, 安藝 浩嗣, 秋山 治彦, 後藤 公志, 中村 孝志
    セッションID: 20
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/11
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】当院では,人工股関節置換術(THA)再置換術において臼蓋補強プレート(KTプレート)を用いた場合には荷重制限を設けず,術後の理学療法を行っている.一般に,THA術後においては股関節機能の回復状況に応じて,歩行を中心としたADL動作を獲得していくことが重要である.しかしTHA再置換術後の股関節機能の回復や歩行獲得に関する報告は少なく,不明な点が多い.本研究の目的は,THA再置換術後における股関節機能およびADL動作の回復過程を定量的に評価することである. 【対象】初回THA施行患者23名(男性2名,女性21名,年齢64.3±8.8歳,以下P群)とTHA再置換術施行患者19名(男性6名,女性13名,年齢67.3±12.9歳,以下R群)を対象とした.手術のアプローチ方法は,P群はDall法,R群はHardinge法であった.両群ともに術後リハビリテーションは同様であり,術後4~5週で退院した.各対象者に本研究の趣旨と目的を説明し,参加の同意を得た. 【方法】股関節機能として,Hand-Held Dynamometer(日本MEDIX社製)を用いて,術側の股外転筋力を測定し,トルク体重比(Nm/kg)を求めた.歩行能力としてはTimed up and Go test(TUG)を測定した.各測定項目は術前と術後(退院前)の2回測定し,それぞれの回復率(術前/術後×100%)を算出した.また,術後のADL動作として,初回離床時での介助の必要性の有無ならびに杖歩行自立に要した期間を調べた.杖歩行自立に要した期間は,術日から担当理学療法士が病棟内での杖歩行を許可した日までの日数とした.統計はt検定とMann-WhitneyのU検定を用い,有意基準を 5%未満とした. 【結果と考察】P群の股外転筋力は術前0.49±0.20Nm/kg,術後0.44±0.14Nm/kg,R群の股外転筋力は術前0.43±0.25Nm/kg,術後0.40±0.19Nm/kgで,両群ともに術前と術後で有意差を認めなかった.また,術前の股外転筋力はP群とR群で有意差を認めなかった.股外転筋力の回復率はP群97%,R群105%で両群間に有意差を認めなかった.TUGは,P群では術前と術後の有意差を認めなかったが,R群では術前より術後に有意に遅い値を示した.術後の初回離床時に介助が必要であった割合はP群で63%,R群58%で,両群で同等の割合であった.杖歩行自立に要した期間は,P群12.5±3.8日,R群17.7±8.1日でP群よりR群が有意に遅かった.本研究の結果より,THA再置換術後においては,1)股外転筋力は初回THAと同様の回復過程であるが歩行能力は術前より低下すること,2)初回THAと比較して,杖歩行自立までが遅くなることが明らかとなった.THA再置換術後では初回THAより杖歩行自立までが遅く,退院時までの歩行量が少なくなることから,退院時の歩行能力は術前よりも低下すると考えられた.
  • 疲労が筋力発揮に及ぼす影響
    岡山 裕美, 山内 仁, 大工谷 新一
    セッションID: 21
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/11
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     筆者らは先行研究でダイナミックストレッチング(以下、DS)の実施回数が筋力と柔軟性に及ぼす影響について検討し、DS実施回数によりピークトルクが低下することを報告した。この要因を明らかにするには、DSが筋活動に及ぼす量的・質的変化の検討が必要であり、本研究では、DS実施回数の違いによる股関節屈筋群の等速性筋力と表面筋電図の関係について検討した。
    【対象と方法】
     対象は、本件の趣旨を説明し同意を得た健常男性5名とした。DSは安静立位を開始肢位とし、1Hzのリズムで一側の股関節・膝関節を90度まで挙げ降ろしさせ再び立位に戻る動作とした。DSの回数は10・20・30回とした。DS前後にBIODEX System 3(BIODEX MEDICAL Inc.)を用いて、角速度300deg/secでの等速性運動を3回行い、股関節屈曲ピークトルクを計測した。また、ピークトルクの計測と同期して大腿直筋(RF)、大腿筋膜張筋(TFL)、長内転筋(AdL)の表面筋電図をMyosystem1400(Noraxon)により記録した。得られた波形からピークトルク発揮時を中心とした0.05秒間の筋電図積分値(IEMG)と中間周波数(MdPF)およびピークトルク発揮時点のMdPFを算出した。なお、MdPFの算出には連続ウェーブレット変換とフーリエ変換の双方を用いた。得られた結果から、DS前後における各指標の差を検討した。また、連続ウェーブレット変換により得られるスケイログラムの様相についても検討した。
    【結果】
     ピークトルクは20回のDS後にのみ有意に増大した。IEMGとMdPFには有意な差は認められなかった。一方、スケイログラムの様相から20回のDS後には、4名においてRFの中周波領域と高周波領域での活動減少がみられ、2名ではTFLの中周波領域と高周波領域での活動減少がみられた。また、2名ではRFとTFLの中周波領域と高周波領域での活動増大がみられ、1名では同様にAdLの活動増大がみられた。
    【考察】
     本研究では、20回のDS後に有意なピークトルクの増大がみられたものの、IEMGに差は認められなかった。したがって、20回のDS後にみられたトルク発揮における促通効果には、動員される筋線維の種類の変化などの質的影響があったものと推察された。しかし、MdPFには差が認められなかったため、スケイログラムの様相をすべての被験者について検討した。その結果、5名中4名でRFの中周波領域と高周波領域での活動減少が観察され、その他にも被験者ごとに異なる様相を呈していた。これより、20回のDS後にみられたピークトルクの増大にはMdPFでは反映されない質的な変化があったものと考えられた。また、今回選択した等速性運動は高速度に分類されるため、低周波領域の活動は動員されにくいことも本結果に影響を与えた一因と考えられた。本結果から、DS後のトルク変化には筋疲労の影響よりも筋力発揮における質的な影響があることが示唆された。
  • 身長及び重心動揺計測の結果における検証
    村上 加緒理, 山口 織江, 梅木  正篤
    セッションID: 22
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/11
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】 Functional Reach Test(以下FRT)距離は、年齢・性別・身長・COPの前後長等に影響されると言われているが、否定的な報告も多い。今回の研究では直立時・直立前傾時・最大リーチ時の重心動揺測定を行い、最大リーチ距離と重心位置及び身長との関係を検証した。
    【対象及び方法】 対象は本研究に同意を得た健常女性21名とした。対象年齢は平均26.2±6.8歳であった。
    身長は金属身長計(アイズワン株式会社製YS-OA)を用いて測定した。
    FRT距離は、被験者を側方に設けたホワイトボード(200cm×240cm)と平行な方向に、裸足で足位は閉脚位に直立させて行った。開始肢位は両肩関節90°屈曲位とし、開始肢位と最大リーチ位での、第三指尖を通る床への垂直線の距離を3回測定し、平均値を求めた。
    重心動揺計測には重心動揺解析システム(アニマ社製G-620 )を用いた。計測時の足位は、閉脚位とし、基準点は両外果を結ぶ線の中点と一致させた。測定肢位は直立位、両母趾球の間に重心が落ちるよう指示した直立前傾位、両上肢を最大限前方に伸ばすよう指示した最大リーチ位の3肢位にて動揺検査を行った。各肢位における計測時間は30秒間とし、総軌跡長、外周面積、直立位のY軸中心変位を求めた。統計学的処理として、FRT距離と外周面積は、Spearman'sの順位相関係数を用い、最大リーチ距離と身長・総軌跡長・Y軸中心変位はPearsonの積率相関係数を算出し、いずれも有意水準は5%未満とした。
    【結果】 FRT距離の平均は34.4±9.0cmであった。外周面積の平均は、直立時2.32±3.5cm、前傾時2.99±5.67cm、リーチ時6.14±5.99cmであり、FRT距離と直立時の外周面積(rs=0.59;P<0.01 )、最大リーチ時の外周面積(rs=0.47;P<0.05 )には相関を認めた。身長の平均は、160.9±10.1cmであり、FRT距離と身長には相関が見られなかった。総軌跡長の平均は、直立時で32.83±16.52cm、前傾時で44.25±27.46cm、最大リーチ時で66.0±30.78cmであり、FRT距離と総軌跡長の間には相関は見られなかった。Y軸中心変位の平均は、直立時4.49±2.98_cm_、前傾時10.22±2.98cm、最大リーチ時10.64±3.5cmであり、FRT距離と直立時のY軸中心変位のみ負の相関を認めた(r=-0.48;P<0.05 )。
    【考察】 先行研究では、身長がFRT距離に影響をするという報告は多数あるが、今回の結果での相関は認めなかった。FRT距離は直立時と最大リーチ時の外周面積、直立時のY軸中心変位と相関が見られた。これは動的立位バランスの指標とされているFRTが、直立位の影響を受けていると考えられた。
  • 山下 彰, 鈴木 俊明, 谷 万喜子, 鬼形 周恵子, 米田 浩久, 土井 鋭二郎, 古澤 正道
    セッションID: 23
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/11
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】 脳血管障害片麻痺患者の治療では麻痺側手掌からの感覚入力により静止立位時における麻痺側下肢の支持性が向上した例を数例経験する。本研究の目的は手の感覚入力により同側下肢脊髄運動神経機能に与える影響を確認することにある。そのための基礎的研究として、背臥位にて健常者を対象に振動刺激にて上肢感覚入力中の同側下肢筋群に対応する脊髄運動神経機能の興奮性に与える影響をF波にて検討する。 【対象と方法】 対象者は神経学的及び整形外科学的に自覚的、他覚的所見を有さない健常者11名(男性9名、女性2名)、平均年齢32.7±9.3歳であった。被験者には事前に実験の目的と方法を十分に説明し、実験参加への同意を得て実施した。実験方法は被験者に背臥位にて右手母指球筋の振動刺激前後での右足の母趾外転筋より導出するF波の全体的傾向を比較することで下肢脊髄運動神経の興奮性を評価する。振動刺激の試行条件は安静時、連続振動刺激実施の直後、2分30秒後、5分後、刺激終了後の直後、2分30秒後、5分後の7試行とし、振動数は108Hzとする。右母指球筋より振動刺激を行い、同側母趾外転筋よりF波を導出する。F波波形分析は出現頻度、振幅F/M比、立ち上がり潜時の3項目について行い、各試行間を比較する。統計学処理はクリスカルウォーリス検定を適用し、有意差を判定し、有意水準は1%未満とする。 【結果と考察】 各試行間の出現頻度・振幅F/M比・立ち上がり潜時共に安静時と各試行間との間に有意差は認められなかった。振動刺激による同名筋への影響としてはPark ら1)が振動刺激により筋紡錘の興奮がIa線維に伝わり、同名筋のα運動神経を興奮させると報告している。上肢への振動刺激から下肢脊髄内への興奮性の伝達は脊髄内の同側支配による固有脊髄路が行っていると考えられる。上肢の振動感覚が後索―内側毛帯系を上行し皮質全体へ波及し皮質内の下肢脊髄神経領域の興奮性を増加させ、脳幹を中継して下肢脊髄の興奮性を増加させると考えられる。今回、下肢脊髄神経の興奮性に変化が見られなかった要因は以下の2つの機序が考えられた。機序1は皮質橋網様体脊髄路、皮質脊髄路、皮質前庭脊髄路、皮質赤核脊髄路などの皮質下行性線維による感覚制御機能として抑制性介在細胞を介して後索核へ抑制性に作用し、振動刺激の上行路の感覚神経の興奮性が調節されると考えられる。機序2は延髄網様体からの抑制機能が上肢からの運動神経の興奮性を調節しているとも考えられる。脳幹網様体は重力に対しての姿勢調整機能であり、背臥位で姿勢が安定しているため姿勢調節が機能しにくいと考えられる。よって、機序2の脳幹調節の運動神経への抑制性作用は極めて少ないと考えられる。以上のことから機序1により下肢脊髄内への興奮性が調節され変化がみられなかったのではないかと考えられた。 【文献】 1)Park HS,et al:Contribution of the tonic vibration reflex to muscle stress and muscle fatigue.Scand J Work Environ Health,19:pp35-42,1993
  • -運動の切り換え方法の違いによる検討-
    井上 隆文, 中道 哲朗, 山口 剛司, 鈴木 俊明
    セッションID: 24
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/11
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】 立位での一側下肢への側方体重移動練習は、様々な目的で用いられる。その中でも我々は、歩行の立脚中期を想定し、移動側内腹斜筋は高まり同側腰背筋が減少する筋活動パターンを獲得する目的で実施することが多い。この時、側方体重移動の切り換え方法の違いにより、移動側腰背筋の筋活動が変化することを臨床上経験する。そこで今回は、立位での一側下肢への側方体重移動において、運動の切り換え方法の違いが内腹斜筋と腰背筋の筋活動に及ぼす影響を、足底圧中心位置(以下、COP)と筋電図にて検討した。
    【対象と方法】 対象は、本研究に同意を得た健常男性7名とした。まず、被験者の両下肢を重心計のプレート上に置き立位姿勢をとらせた。運動課題は、開始肢位を立位姿勢とし、1秒間で利き脚側(以下、移動側)へ側方体重移動を行った後、1秒間で立位姿勢に戻ることとした。運動課題は、側方体重移動後すぐに切り換えす課題(以下、連続課題)と、体重移動後の姿勢を1秒間保持する課題(以下、静止課題)の2通りを実施した。測定項目は、COPと両内腹斜筋、両腰背筋の筋電図波形を記録した。運動課題中の規定は、体幹・骨盤の回旋は最小限とし両肩峰は水平に保持させた。側方移動距離は、規定内で各被験者が最大に移動できる距離とした。上記の運動課題を各課題につき3施行測定した。分析方法はCOP軌跡の時間的変化とそれに伴う導出筋の筋活動パターンを分析した。
    【結果】 両運動課題において、COPは側方体重移動の開始に伴い移動側へ変位した。両内腹斜筋はCOPの移動側変位初期から活動し、移動側へ変位するに伴い筋活動は増加傾向を示した。連続課題時の両腰背筋は、COPの移動側変位に伴い筋活動は増加する傾向を示した。一方、静止課題時はCOPの移動側変位に伴い、移動側腰背筋の筋活動は認めず、非移動側腰背筋は増加傾向を示した。
    【考察】 内腹斜筋は仙腸関節の剪断力に対する安定化作用があることをSnijdersらは報告している。両課題において、移動側仙腸関節には荷重に伴う剪断力、非移動側仙腸関節には、側方体重移動の駆動として同側下肢で床を押すことで生じる床反力により剪断力が加わる。これに対し、両内腹斜筋は仙腸関節を安定する目的で活動したと考えられる。両課題において非移動側の腰背筋は、骨盤を引き上げ、移動側への側方体重移動の駆動力として活動したと考えられる。一方、連続課題において移動側腰背筋は、移動側から非移動側へ運動を切り換えす目的で活動したと考えられる。渡邊らは、体重移動側の腰背筋は股関節周囲や骨盤の安定性が得られている条件下では、体幹の伸展位保持には筋活動をそれ程必要としないと報告している。このことから、静止課題において移動側腰背筋の筋活動はそれ程必要とせず、低い筋活動を示したと考えられる。この結果から、歩行の立脚中期を改善する目的で立位での一側下肢への側方体重移動練習を実施する際には、連続課題よりも静止課題が有用であると考えられる。
  • -健常群と足部不安定性群との比較-
    山口 剛司, 高崎 恭輔, 鈴木 俊明
    セッションID: 25
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/11
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】 我々は、先行研究で足部不安定性に対する運動療法は、閉鎖性運動連鎖でのエクササイズも重要であり、その時は足部周囲筋群の筋活動を把握する必要性があることを報告した。具体的には、足部不安定性の認められない健常群を対象とした片脚立位での一側下肢の運動課題時に、支持脚の足部内に起こるCOP変化と足部周囲筋群、膝屈筋群の筋活動に着目した。この結果は、運動課題に伴うCOP移動は一定の傾向を認め、COP移動方向と足部周囲筋群の筋活動にも傾向が認められた。そこで足部不安定性を有する群に対してエクササイズを実施する際には、健常群との間で筋活動の相違点があるかを把握する必要があると考えられた。このことから今回は、足部不安定性を有する群に同運動課題を実施し健常群と比較した結果、若干の知見を得たので報告する。 【対象と方法】 対象は本研究に同意を得た健常群男女7名の支持脚7肢と、足部に不安定性を認める3名(以下、不安定性群)の支持脚3肢とした。不安定性群は、足関節内反・外反ストレステストが陽性で、川野による振り向きテストにおいて回外不安定性が認められる群とした。方法は、被験者に重心計のプレート上で支持脚の片脚立位をとらせ、筋電図を測定した。筋電図は支持脚の腓骨筋、後脛骨筋、前脛骨筋、足趾伸筋、半膜様筋、大腿二頭筋を記録した。運動課題は、立位の状態から非利き足側下肢の足底が接地しないよう前方で空間保持した状態を開始肢位とし、この肢位から運動側股関節を内転する運動(内側運動)、外転する運動(外側運動)を行わせた。なお下肢の運動と筋電図波形、COP記録を同期するためにフットスイッチを運動側の母趾と小趾に配置し、これが作動するように被験者の前方に台を二つ設置した。運動課題は開始肢位より内側運動から行い、外側・内側の3回の接触で1施行とし3施行測定した。 分析方法は、運動課題中のCOP軌跡の時間的変化とそれに伴う導出筋の筋活動パターンを分析し伸展位のデータと比較した。 【結果および考察】 運動課題時のCOPは、健常群・不安定性群ともに内側運動課題中は小趾側方向へ移動し、外側運動課題中は母趾側方向へ移動した。一方筋活動パターンは、両群で次のような違いを認めた。まず健常群では、COP移動方向により腓骨筋と後脛骨筋の筋活動が明確に切り換る場合やCOP移動方向に関わらず後脛骨筋が持続的に活動する場合が見られた。また膝屈筋群は、一定の傾向は見られなかった。次に不安定群では腓骨筋と後脛骨筋の筋活動の明確な切り替えは見られず、後脛骨筋と半膜様筋の持続的な筋活動が見られた。 まず不安定性群の後脛骨筋は、足部内側の剛性を形成し足部安定化作用を担うと言われており、運動課題時のCOP移動時の足部不安定性を補償する目的で持続的に活動すると考えられる。次に半膜様筋は、膝関節の動的制御と安定化に大きく関与するため、運動課題時の足部不安定性から生じる膝動揺性を予め制動する目的で持続的に活動したことが考えられた。
  • 福島 隆久, 竹嶋 宏剛, 西埜植 祐介, 中島 敏貴, 杉島 裕美子
    セッションID: 26
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/11
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】 当院(総病床数370床)では、平成17年4月より亜急性期病床を8床導入している。亜急性期病床では様々な問題(疾患・合併症・家庭環境・居住環境)でクリティカルパス(以下パス)から遅れるケースに対応し、週6日のリハビリテーション(以下リハ)機能、他職種との連携強化(医療ソーシャルワーカー(以下MSW)の介入、退院前訪問、退院前カンファレンス)を図り、急性期病床から患者を受け入れ在宅復帰の後方支援を行っている。 【目的】 今回特に整形外科でも一般的な疾患である人工股関節全置換術(以下THA)に照準を絞り、急性期病床患者(以下急性期群)と亜急性期病床患者(以下亜急性期群)の傾向を調査したので報告する。 【対象と方法】 平成18年4月1日から平成20年12月31日までに当院でTHAを施行した全39名のうち、急性期群21名と亜急性期群18名に分け、状況をカルテから後方視的に調査考察を行った。調査項目は、年齢、在院日数、Barthel Index(以下BI)、SLR挙上獲得時期、移動レベル、定期カンファレンス以外の他職種との連携実施率(退院前訪問・サービス担当者会議)とした。 【結果】 平均年齢は急性期群68.6歳、亜急性期群71.0歳、平均在院日数は急性期群31.0日、亜急性期群47.3日であった。平均BIの経緯は急性期群で入院時89.4点 / 術後2週目87.7点 / 退院時98.3点、亜急性期群で入院時84.0点 / 術後2週目80.5点 / 退院時98.6点と退院時には急性期群と同レベルの状況で退院が可能となっている。SLR挙上獲得時期では急性期群9.0日、亜急性期群12.5日と有意差はなかったが急性期群の方が獲得の早い傾向として見られた。術後2週目のパスの移動レベル(当院では杖歩行実施)に到達していない患者は急性期群19.0%、亜急性期群77.7%であった。退院時に杖歩行に到達していない患者は急性期群9.5%、亜急性期群11.1%であった。定期カンファレンス以外の他職種との連携実施率は急性期群5.0%、亜急性期群59.0%であった。 【考察】 当院ではTHA術後2週程度でMSWを中心とする亜急性期判定会議を行っている。しかし全ての患者が候補として挙がらず、空床状況・医学的観点・投薬状況などの視点から候補者は絞られている。今回リハの観点から術後2週目の時点でADLが著しく低下している・パスから逸脱している患者の7~8割が亜急性期病床へ入室している傾向が認められた。亜急性期病床入室後、急性期群と比べ移動レベルが目標に到達していない患者に十分なリハを提供でき在院日数延長に伴い機能改善が図られた。またADLから見て入院時・術後2週目に亜急性期群がADLの低い傾向にあったが、他職種連携及び地域連携を頻回に行うことにより退院時には急性期群と同じレベルで在宅復帰を可能としていると考えられる。
  • 九鬼 智子, 中澤 美智子, 大工谷 新一
    セッションID: 27
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/11
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    【はじめに】現在我々は、39の有料老人ホームにおいて入居者の生活機能向上、特に歩行、入浴、トイレ動作、食事の自立を目的に理学療法的介入を行っている。今回は入居者の移動能力に着目し、日常生活において車椅子からの離脱を目的とした理学療法的介入の結果を報告する。
    【対象】対象は、39の有料老人ホームに入居している高齢者774名とした。日常生活で常時車いすを使用している者は330名、歩行と車いすを併用している者は181名、歩行している者は263名であった。
    【方法】介入期間は16ヵ月間、入居者1名あたり平均3回(±2回)の介入を行った。入居者の移動能力に関連する要因を内的要因と外的要因の2つにわけた。内的要因は入居者自身の身体機能、外的要因は関わるスタッフの意識や介護技術、施設・設備とし、これらの要因それぞれを改善させるために理学療法的介入を行った。内的要因である身体機能を向上させるためには、運動療法やADLにおいて最大能力を発揮し体力を維持する動作方法を、入居者自身あるいは関わるスタッフに指導した。また、外的要因に対しては、歩行能力向上を目的に施設にある家具や設備を使った生活環境を提案した。指導にあたっては、ケアマネジャー、看護師、介護福祉士の立会いのもと、入居者の身体機能評価を実施した。治療的な介入を必要とする場合を除き、介入は原則として1回とし、指導内容は施設のスタッフが日々継続して実施した。
    【結果】日常生活において歩行が可能となり、車いすを使用しなくなった者は43名であった。また、常時車いすを使用していた入居者330名のうち、180名が歩行可能となった。
    【考察】常時車椅子を使用している者は、入居者自身の身体機能障害の他に、スタッフの歩行能力に対する認識不足や、過介助が要因となると考えられた。したがって、入居者の身体機能の改善とともにスタッフの意識を変化させることや介護技術の改善が必要であった。我々は入居者の生活機能向上には、内的要因として筋力(strength)、柔軟性(suppleness)、協調性(skills)の「3S」が重要であり、外部的要因としてはスタッフの介護意識と適切な介助量で介助する介護技術が重要であると考える。したがって生活機能を向上させるためには、3つのSを改善させるようなプログラムを指導し、さらにスタッフに対し生活機能向上ための最小限の介助技術を理解するような指導を行う必要性がある。本研究において、我々は直接的な介入としては3つのSを向上させるための治療を行い、間接的な介入としてはスタッフの意識に応じた指導方法で、介助技術を向上させるような技術指導を行った。これらにより、入居者の移動能力向上を図り日常生活における車いす使用を減らすことができたと考える。
    【結論】有料老人ホームに入居する高齢者の生活機能を向上させるためには、身体的機能の改善とともに介護者の移動能力に対する意識と介助技術の改善を考慮すべきである。
  • 包括的リハビリテーションをめざして
    東  佐登美, 宮井 善光, 前田 直子, 小川 栄二
    セッションID: 28
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/11
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    【目的】  超高齢者社会となった現代、国は社会保障費抑制を狙い、要介護高齢者の在宅生活を推奨している。そのような中、介護の社会化と国民の共同連帯の理念に基づいた介護保険制度の導入の下において、生活期リハビリテーションは位置づけられている。日本においてリハビリテーションは医学的なものとして体系化されてきたが、WHOの定義にもあるように、社会的な問題にアプローチすることもわれわれセラピストの役割である。そこで、医学モデルと社会モデルを統合させたリハビリテーションが包括的リハビリテーションと言えるのではないか。よって、在宅生活継続条件をリハビリテーション領域で考察することの有効性について述べる。 【方法】  平成21年2月から10月まで、当院において訪問リハビリテーションを利用した患者に対し、基本属性をはじめ、FIM、HDS-R、及びZarit介護負担尺度などの評価項目を用いて在宅における状況を調査する。それらの調査項目をクロス分析し、さらに生活実態の聞きとり調査をもとに、社会学的な生活問題を考慮に入れた在宅生活継続条件を考察する。       【結果】  FIMの項目に関しては、在宅におけるADL動作であることに置き換えて評価している項目もある。その上で、FIM、HDS-R、介護度、Zarit介護負担尺度、それぞれの間に相関関係があるのか。等、今後分析をおこなっていく。      【考察】  訪問リハビリテーションサービスの提供として理学療法士が介入することにどのような意義があるのか考察する。 【まとめ】  在宅における要介護高齢者の生活を支えるためには、医療的な側面からだけでなく、まず生活上に起こっている諸問題を考えなければならない。地域にはひきこもりや援助拒否の高齢者が潜在化している現状もあり、それらの社会的な側面にもアプローチしていかなければならない。そこで、運動機能の向上や社会資源としての社会保障制度の情報提供など、医学モデルと社会モデルを統合させたアプローチが、まさにリハビリテーションであると考えている。在宅生活の継続条件が医療的な側面だけでなく、社会的な側面にもあることを述べつつ、同時に、医療的な視点に基礎をおいた生活期リハビリテーションが重要な要件であることも述べる。最後に、医療保険下で行うリハビリテーションの評価・治療が実際のADLに結びつくように考慮されたものであることはもちろん、今後のリハビリテーションにおける重要な視点として、社会的な生活問題にも十分に配慮されたものであることの重要性を述べ、締めくくる。
  • 大平 雄一, 柳川 禎, 金山 剛, 永木 和載, 植松 光俊
    セッションID: 29
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/11
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    【はじめに】  高齢者へのレジスタンストレーニングの有効性は1990代に入り多数報告されているが、病院及び施設入所中の障害を呈する高齢者、或いは虚弱高齢者へのトレーニングを支持する研究成果は少ない。また、週に1~2回の理学療法は転倒予防に有効であったとした報告(Donald,2000)があるものの、理学療法を実施した群はコントロール群に対して、筋力やバランスなどの身体機能、転倒率ともに変わらなかったとした報告(Mulrow,1994)もある。このように、理学療法士による個別介入の効果も明らかになっていない。本研究の目的は、短時間型通所介護利用者における自費予防サービス併用効果について検討することである。 【方法】 対象は短時間型通所介護利用者で理学療法士による自費予防サービスを併用する群(併用群)8名(平均年齢69.4±10.4歳、脳血管障害4名、整形疾患4名、要支援3名、要介護2-1名、要介護3-3名、要介護4-1名)と併用しない群(非併用群)37名(平均年齢70.7±9.3歳、脳血管障害17名、整形疾患15名、その他5名、要支援15名、要介護1-5名、要介護2-12名、要介護3-4名、要介護4-1名)とした。  運動器機能向上プログラムは筋力トレーニング、持久力トレーニング、バランストレーニングより構成された。ウォーミングアップ開始からクールダウン終了までの時間は約120分であった。理学療法士による自費予防サービスの導入手順は、通所介護利用開始時に理学療法士が直接口頭説明し、希望者へのみ提供した。その内容は30~40分の疼痛管理や徒手的治療、課題志向型トレーニング、日常生活動作指導などである。利用開始時と6ヶ月後のfunctional independence measure(FIM)、握力、膝伸展筋力、30秒椅子立ち上がりテスト(CS-30)、10m歩行所要時間、Timed up & Go test(TUG)、Functional Reach test、自己効力感を計測した。 【結果】  併用群は非併用群に比して開始時のFIM、CS-30、10m歩行所要時間、TUGが有意に低かった。併用群、非併用群ともに利用開始より6ヵ月後の膝伸展筋力、CS-30、10m歩行所要時間が有意に改善した。その改善率は併用群が有意に高く、併用群のみFIM、TUGが有意に改善した。重回帰分析ではFIM、膝伸展筋力、CS-30、10M歩行所要時間において、自費予防サービスの実施が改善度を大きくする因子として抽出された。 【考察】  短時間型通所介護での運動器機能向上プログラムは筋力やバランスなどの身体機能を改善させ、自費予防サービスはその効果を高めることが示唆された。
  • 地域在住女性高齢者における検討
    土井 剛彦, 牧浦 大祐, 小松 稔, 小嶋 麻有子, 山口 良太, 小野 くみ子, 小野 玲, 平田 総一郎
    セッションID: 30
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/11
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】 転倒に対する恐怖は、高齢者において身体活動量低下を引き起こす要因の一つであり、身体機能や健康関連QOLなどの心理面と強く関連する。一方、身体活動量は、高齢者の全身状態・身体機能を反映し、個別特性を考慮する上で重要とされているが、ある程度の身体活動量を有していても、一定の割合で転倒に対する恐怖を持っている人は存在する。つまり、身体活動量が高い者と低い者では転倒恐怖感に対する要因が異なると考えられるが、その関係は明らかとなっていない。本研究の目的は、転倒恐怖の有無に、健康関連QOLがどのように関連するかを、身体活動量を考慮した上で検討することである。 【方法】 対象者は地域在住女性高齢者312名とした (年齢 : 79±7.2歳)。転倒恐怖感は質問紙にて転倒恐怖感ありと返答したものを転倒恐怖感あり群 (Fear of falling : FF) 、転倒恐怖感なしと返答したものを転倒恐怖感なし群 (No fear of falling : No-FF) とした。身体活動量は生活習慣記録機 (Lifecorder EX, Suzuken) を一週間装着して一日平均歩数 (Physical activity : PA) を算出し、PAが対象者全体の中央値より高い者を高活動群、低い者を低活動群とした。その他の測定変数はTime up & Go (TUG)、年齢、BMIとした。健康関連QOLについては、SF-36を用いて測定し、国民標準値を50点とするスコアリングを行い下位尺度別 (身体機能 : PF, 身体的日常役割機能RP, 身体の痛み : BP, 社会的生活機能 : SF, 全体的健康感 : GH, 活力 : VT, 精神的日常役割機能 : RE, 心の健康 : MH) に算出した。統計解析は、群間比較をunpaired t testにて行い、転倒恐怖の有無を目的変数、QOLの下位尺度と調整因子であるTUG、年齢、BMIを独立変数とし強制投入した名義ロジスティク解析を活動群別に行い、統計学的有意水準を5%未満とした。 【結果】 FF群は124名(60% ;78.4±7.5歳)、No-FF群は188名(40%;79.3±7.0歳)であり、年齢、身長、体重、TUGの対象特性に有意な群間差はみられなかった。身体活動量は対象者全体では5750±3467歩 (中央値:4990歩)であり、低活動群の方が高活動群に比べ、転倒恐怖有する者の割合が高かった (高活動群;54%, 低活動群;66%)。FF群はNo-FF群に比べPA、SF-36の下位尺度全項目ともに有意に低値をとった。転倒恐怖の有無に対して有意に関連性の認められた項目は、高活動群ではPF (オッズ比;14.6)、GH (オッズ比;74.7) が、低活動群ではBP (オッズ比;9.8) であった。以上のことから転倒恐怖に関連する健康関連QOLの要素が身体活動量レベルにより異なることが示唆された。 【考察】 転倒恐怖によりPA、健康関連QOLがともに低下し、高齢者の健康を阻害する要因の一つであることが示唆された。また、高活動の者においては身体機能や健康状態が、低活動の者においては身体の痛みが、転倒恐怖感と強く関連した。つまり、健康状態を低下させる転倒恐怖感を消失させるためには、個々の活動レベルを考慮した上で異なったアプローチを行う必要性があると考えられる。
  • 下村 祐介, 南條 千人, 熊崎 大輔, 大工谷 新一, 高野 吉朗
    セッションID: 31
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/11
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】  運動プログラムを立案する際に筋力増強訓練と有酸素運動を組み合わせることが多い。先行研究では血液検査を用い、筋力増強訓練後に有酸素運動を実施した方が筋力強化に対し効果的であるという報告もある。今回の研究目的は、筋力増強訓練と有酸素運動の実施順序を変える事により、筋力および心肺機能に対してどのような効果の違いを明らかにする事とした。
    【対象者と方法】 対象は、研究の説明を受け、同意書に署名した実験上支障が無いと判断された成人男子10名(21.1±0.3 歳)20脚である。運動期間は4週間とし、運動期間の間は2ヶ月間の無運動期間を設けた。有酸素運動(Aerobics training以下、AT)後に筋力増強訓練(Muscle training以下、MT)を行った期間をAM期とし、MT後にATを行った期間をMA期とした。MTは、下肢筋力強化マシンを用い、膝伸展運動を実施した。運動負荷量は、膝関節60度屈曲位での等尺性収縮にて測定した最大膝伸展筋力値(100%MVC)の70%とした。ATは自転車エルゴメーターを用い、運動強度はカルボーネン法を使用し、目標心拍数を50%に設定した。筋力増強の効果判定は大腿周径、最大膝伸展筋力を測定すると同時に、表面筋電図にて大腿直筋、外側広筋の筋積分値(IEMG)を測定した。ATの効果判定はトレッドミルを使用し、呼吸代謝モニターにて最高酸素摂取量(peak VO2)を測定し、AT Windowデータ解析ソフトを用い解析した。統計解析は、大腿周径、最大膝伸展筋力、IEMG、peak VO2についてAM期、MA期での運動実施期間の開始時と終了時の値を各々対応のあるt-検定にて比較した。
    【結果】 大腿周径及び最高酸素摂取量はAM期、MA期とも有意差を認めなかった。IEMGは、AM期、MA期各々285.6±171.5V・Sから316.0±248.9V・S、318.8±174.5V・Sから347.3±196.1V・Sと増加したが有意差は認めなかった。膝伸展筋力はAM期に232.3±46.4Nmから209.9±46.0Nmへと低下傾向を認め、MA期は221.7±54.1Nmから276.2+53.8Nmへと有意な増加を認めた(p<0.01)。
    【考察】 心肺機能はAM期、MA期ともに有意な効果は認めなかったが、筋力はMA期で増強が認められた。今回の筋力増強は大腿周径に変化はなく、IEMGが増加傾向を示したことから、運動単位動員数の増加によるものであると考えられた。先行研究では、筋力増強訓練の前に有酸素運動を行うことで、筋力増強に必要な成長ホルモンの分泌を抑制するという報告もあり、今回AM期と比較してMA期に筋力増強効果が得られたと考えられた。
  • 塚越 累, 池添 冬芽, 市橋 則明
    セッションID: 32
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/11
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】筋出力が高まるにつれ,筋硬度は上昇していくことが知られており,上腕二頭筋や総指伸筋では最大等尺性随意収縮(100%MVC)の60%程度までは筋出力と筋硬度は直線的な関係にあると報告されている。しかし,より高い筋出力時における筋硬度の変化は明らかではなく,下肢筋を対象とした報告は少ない。また,筋出力によって変化し得る筋厚と筋硬度の関係についての報告はほとんどない。本研究の目的は,大腿四頭筋の筋出力に伴う筋硬度と筋厚の変化およびその関連性を明らかにすることである。 【方法】健常成人男性15名(年齢25.1±4.6歳)を対象とした。対象者には研究内容を説明し,同意を得た。筋力測定器(OG技研社製ISOFORCE GT-330)を使用して,膝60度屈曲位における100%MVC時の右膝伸展筋力を測定した後,被験者にモニターで直接確認させながら安静時から100%MVCまで20%MVC間隔でランダムに筋出力させた時の右側の大腿直筋(RF)部および外側広筋(VL)部の筋硬度と筋厚を測定した。筋硬度の測定には筋硬度計(NTI製マイオトノメーター)を使用し,各筋を2kgの圧迫力で押したときにプローブが貫入した筋移動距離を筋硬度値として2回測定し,平均値をデータとして採用した。筋厚は超音波診断装置(東芝メディカルシステムズ社製famio cube)を使用し,RF部はRFと中間広筋,VL部はVLと中間広筋を合わせた筋厚を測定した。反復測定分散分析と多重比較検定を使用して,筋出力の上昇に伴う筋移動距離と筋厚の変化を検討した。さらに,筋移動距離および筋厚の安静時に対する100%MVC時の変化率を算出し,その関連性について相関係数を求めて検討した。 【結果と考察】筋移動距離はRF部およびVL部ともに安静時から100%MVCへかけて有意に減少し, 20%MVC毎の各水準間に有意な差が認められた。筋厚はRF部では20%MVC毎の各水準間に有意差はみられず,VL部では安静時に比べ20%MVCの方が有意に低い値を示した以外は20%MVC毎の各水準間に有意な差はなかった。安静時に対する100%MVC時の筋移動距離の変化率はRF部-64.5%,VL部-61.1%であった。筋厚の変化率はRF部では5.9%と有意に増加したが,VL部では-1.8%と安静時に比べて100%MVC時では僅かな減少を示した。筋移動距離の変化率と筋厚の変化率との相関はRF部(r=-0.12)およびVL部(r=0.31)ともに有意な相関を示さなかった。これらの結果から,膝60度屈曲位においては筋出力の増加に伴ってRF部およびVL部の筋硬度は直線的に増加する一方で,筋厚は筋出力の初期に変化し,その後の変化は僅かであることが明らかとなった。また,最大筋力発揮時の筋硬度と筋厚の変化には関連性がみられなかった。本研究により,膝60度屈曲位の大腿四頭筋においては,筋厚の変化は筋力発揮の指標にはならず,筋硬度の変化が最大筋力発揮時までの筋出力の程度をより鋭敏に反映していることが示唆された。
  • 鈴木 暁久, 吉尾 雅春, 橋本 康子
    セッションID: 33
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/11
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    【目的】 廃用症候群は診療報酬制度による診断名として取り扱われているが、その基準は曖昧である。例えば、脳卒中後の患者では麻痺側下肢だけでなく非麻痺側下肢にも筋力低下がしばしば見られるが、患者の発症前の状態を把握することは困難であり、その筋力低下が「廃用」によるものかどうか、また、その程度を判断することは難しい。そこで、「廃用性筋萎縮」の客観的な評価尺度として、安静臥床で廃用を起こしやすい抗重力筋のある大腿と下腿の周径を用いた簡便な方法を考案した。その方法とは_丸1_一般的な周径と_丸2_緊縛した周径との差を_丸1_で除した値(萎縮率)を用いるものである。今回、萎縮率を健常者と廃用症候群と診断された患者において比較し、その有用性の検討を行った。 【対象と方法】 対象は廃用症候群と診断された、回復期リハビリテーション病棟入院後1ヶ月以内で著明な浮腫の無い患者8名(平均72.4±12.6歳、脳卒中7名、呼吸器疾患1名、男6名)と健常者10名(平均26.3±3.7歳、男7名)とした。メジャーを用いて、左右の大腿の膝蓋骨上縁上15_cm_と下腿最大部の周径を測定して萎縮率を算出し、それぞれについて比較・検討した。統計学的分析にはF検定、t検定を行い、有意水準を5%未満とした。なお本研究は当院倫理委員会にて承認されており、対象者の了解を得て実施した。 【結果】 萎縮率の平均値は健常者の大腿で右0.115±0.009、左0.114±0.011、下腿で右0.093±0.012、左0.096±0.011であった。患者の大腿では右0.136±0.015、左0.136±0.017、下腿で右0.104±0.024、左0.102±0.015であった。膝蓋骨上縁上15_cm_における患者と健常者の萎縮率の間には有意な差が認められた(p<0.05)。しかし、下腿最大部においては患者・健常者間に有意な差が認められなかった。片麻痺患者5名では麻痺側の平均0.137±0.012、非麻痺側の平均0.130±0.019であった。 【考察】 大腿部の周径では健常者と患者との間で有意な差がみられ、且つ、脳卒中患者では麻痺側と非麻痺側との間に特徴的な差が確認されなかったことから、萎縮率は廃用による特徴を表しているのではないかと考えられる。一方、下腿においては、健常者と患者との間に有意差がみられなかったことから本法の有用性は示されなかった。下腿は大腿に比べて筋、脂肪ともにその量が少なく、萎縮率の程度に明確な差がつき難かったためと考えられる。今後は対象者数を増やし、廃用性筋萎縮の程度を具体的に数値化できるよう検討を重ねる必要がある。
  • 治郎丸 卓三, 伊藤 章
    セッションID: 34
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/11
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】走動作において低速度から最高速度に至る走行において考慮すべき体幹、骨盤での関節運動についての基礎的知見は得られていない。そこで今回、走動作の接地期に着目し、走行速度変化に対する骨盤、体幹運動の分析を行ったところ、股関節回旋運動、骨盤・腰椎屈曲伸展運動において若干の知見が得られたので報告する。 【方法】大学陸上競技部の男子短距離選手6名、年齢20.3±2.0歳、100M自己記録11.39±0.48秒を対象とした。速度条件は、2.5、4.5、6.5m/s、および最高速度の4条件とした。全試技を4台のハイスピードカメラ(Vision Research社製)を用いて撮影し、ビデオ動作解析システム(DKH社製)により角度変化を算出した。股関節回旋角度は両上後腸骨棘を結んだ線に対する大腿骨内側上顆、外側上顆を結んだ線とのなす角度。骨盤・腰椎屈曲伸展角度は上後腸骨棘、大転子を結んだ線に対する第1、第3腰椎を結んだ線とのなす角度とした。検討の対象は左接地期のみとした。検討項目は、(1)全接地期における経時的な関節運動方向の検討(2)接地初期に起こる股関節内旋運動、骨盤・腰椎屈曲運動の角変位、その後の股関節外旋運動、骨盤・腰椎伸展運動の角変位を各速度間で比較し、統計学的処理にはSteel-Dwassの方法を用い危険率5%未満をもって有意とした。 【結果】(1)股関節回旋運動方向は、走行速度2.5、4.5、6.5m/sでは接地初期に内旋運動が起こり、その後、外旋運動が起こる。最高速度では接地初期の内旋運動がほとんど起こらず、外旋運動が起こっていた。骨盤・腰椎屈曲伸展運動方向は、走行速度2.5、4.5m/sでは接地初期に屈曲運動が起こり、その後、伸展運動が起こる。6.5m/sから接地初期の屈曲運動は減少し始め、最高速度ではまったく起こることなく、初期から伸展運動が起こっていた。(2)接地初期の内旋角変位は、最高速度において2.5m/s、4.5m/sよりも有意に減少が認められた。接地初期の骨盤・腰椎屈曲角変位は、6.5m/sでは2.5m/sよりも有意に減少が認められ、最高速度においては2.5m/s、4.5m/sよりも有意に減少が認められた。その後の股関節外旋角変位、骨盤・腰椎伸展角変位では各速度間で有意な差が認められなかった。 【考察】今回の結果より、最高速度に近い速度で接地初期の股関節内旋運動、骨盤・腰椎屈曲運動が減少し始めるのは、短時間に大きな減速の力を受け止め、瞬時に大きな加速の力を発揮するために骨盤・体幹部の固定が必要になるためであると考えられる。この際、股関節外旋、腰椎前彎、骨盤前傾作用により骨盤・体幹部の固定が行われていると考えられる。これら全てに作用する筋として腸腰筋があげられるが、久野らは、大腰筋横断面積と疾走速度との関係について大腰筋が大きいほど疾走速度が速くなると示した。このことから、走行速度を高めるためには接地初期の腸腰筋作用が重要であることが示唆された。
  • 三谷 保弘, 木村 哲彦, 小林 敦郎
    セッションID: 35
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/11
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】乗馬シミュレータによる運動介入は,虚弱高齢者の運動機能を向上させるなど理学療法の手段としても有用であることが認められつつある。これは,乗馬シミュレータの揺動刺激が,騎乗者の運動機能を向上させるのに適したものであるからと考えられる。しかし,乗馬シミュレータの揺動刺激が騎乗者に対してどのような身体運動を誘発するのかについては十分な検討がなされていない。そこで今回,乗馬シミュレータに騎乗時の体幹運動を計測しその特徴を検討したので報告する。
    【方法】対象は,研究参加の同意を得た健常成人30名(22.5±3.3歳)とした。乗馬シミュレータ(JOBA EU6414,松下電工社製)に騎乗時の体幹運動を超音波式三次元動作解析装置(CMS-HS,Zebris社製)を用いて計測した。なお,乗馬シミュレータの速さ設定は約1.4秒周期とした。対象者の第1胸椎部と第2仙椎部に3つの小型マーカから形成されるトリプルマーカを貼付し,それぞれ上部体幹と骨盤の角度変化の指標とした。また,それらトリプルマーカの相対的な動きを計測することにより脊柱の角度変化の指標とした。乗馬シミュレータの動きと体幹運動とを同期させるため,乗馬シミュレータの後部に小型マーカを1つ貼付した。
    【結果】骨盤および上部体幹の前傾と後傾は1周期につきそれぞれ2回,側方傾斜と回旋は左右1回ずつ生じた。これら骨盤および上部体幹の角度変化は,乗馬シミュレータの動きに相反する傾向を示した。また,乗馬シミュレータ騎乗時は,安静立位時と比べて身体を前傾位に保持していることが示された。骨盤の後傾角度,前後傾斜可動範囲,左右回旋可動範囲は上部体幹に比べて大きかった。一方,骨盤の左右傾斜可動範囲は上部体幹に比べて小さかった。骨盤の後傾,左右傾斜,左右回旋のピークに達する時間(1周期に対する比率)は上部体幹に比べて早かった。
    【考察】乗馬シミュレータの動きに相反した体幹運動や,骨盤と上部体幹の角度変化がピークに達する時間に違いを認めたことは,乗馬シミュレータの揺動刺激に対して立ち直り反応が誘発された結果であると考える。また,骨盤と上部体幹の各方向への可動範囲に差が生じたのは,乗馬シミュレータの揺動刺激に対して身体動揺を最小限にするための姿勢制御反応であると考えられる。乗馬シミュレータ騎乗時に認められた前傾位の姿勢は運動に備えた“構え姿勢”であり,揺動刺激に対応するための姿勢制御に適した姿勢であると言えよう。このように,乗馬シミュレータの揺動刺激は,姿勢制御能力を向上させるのに適したものであると考えられる。しかし,乗馬シミュレータの揺動刺激により誘発される体幹運動は画一的なものであり,あらゆる場面での姿勢制御能力を獲得することは困難であると考える。
  • 川崎 翼, 高濱 宏, 森岡 周
    セッションID: 36
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/11
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】 運動は人の意図や意思の表現である.正確な運動を行うためには姿勢を制御し,心的シュミレーションが行われることが必要である.しかしながら,臨床において立位保持に努力を要するリハビリテーション対象者が他の動作を行おうとすると動揺をきたすことがあるため,我々は動作を行う際の心的シュミレーションが副次課題となり,動揺の原因となっているのではないかと仮説を立てた.心的シュミレーションを行なうためにメンタルローテーション(心的回転)は不可欠な要素となることから,メンタルローテーション課題を副次課題として用い,立位姿勢バランスの影響を調査した. 【方法】 対象はHDS-Rが正常と判断され,歩行が自立している男性高齢者61~73歳の22名(68.9±3.5歳),男性若年者20名(26.0±1.9歳)とした.対象者には事前に研究意義,方法の説明をおこない,同意を得た.方法は条件1:開眼片脚立位時間,条件2:Hand Lateral Recognition Task(HLRT)中の開眼片脚立位時間,条件3:無意味な図形注視中の開眼片脚立位時間とし,それぞれの時間をデジタルストップウォッチにて測定した.高齢者,若年者ともに条件1~3の割りつけは無作為に行った.HLRTは左右の手背,手掌の写真を3秒毎に提示し,心的に答えさせる課題とした.統計処理は,高齢者,若年者ともに一元配置分散分析後,Tukey’s HSD testを用いた.なお,統計学的有意水準は5%未満とした. 【結果】 条件2は条件1に条件に比べ有意に低い値を示した(p=0.04).また,条件2は条件3に比べ有意に低い値を示した(p=0.02).条件1と条件3には有意差は認めなかった.若年者に関しては全ての条件間で有意差は認めなかった(p=0.5).なお,各条件間の年齢,身長,体重に有意差はなかった. 【考察】 結果より,高齢者はHLRT中の開眼片脚立位時間が他の2条件に比して有意に低い値を示した.このことは,注意資源の分配における構造学的制限に関連していると考えられる.これは,神経系の一つの領域を一度に通過するのは1つの信号だけという概念に立脚している.例えば,歩行中のリズミカルな指のタッピングではお互いの運動制御処理が皮質下で干渉し合い,互いのパフォーマンスが低下するというものである.本研究課題においては,片脚立位とメンタルローテーションに干渉が生じ,その結果開眼片脚立位時間が低下したことが考えられる.若年者においては,課題が容易であるため注意資源への影響は少なかったことが,片脚立位時間に影響しなかった原因と推察される.これらのことから,心的シュミレーションは高齢者において,身体動揺を起こす1つの因子になる可能性が示唆された.今後はHLRT以外の心的シュミレーションを要する課題を設定し,重心動揺計などの精密機械を用いて検討する事,立位姿勢バランス能力の改善に寄与するかなどの介入研究も行う必要がある考える.
  • 鈴木 俊明, 谷埜 予士次, 米田 浩久, 高崎 恭介, 鬼形 周恵子, 浦上 さゆり, 塩見 紀子, 谷 万喜子
    セッションID: 37
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/11
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】我々の先行研究において、左側母指と示指によりピンチメータを用いて最大の50%のピンチ力で対立動作を練習させた後に、センサーを軽く把持した状態で50%収縮をイメージさせた場合(センサー把持運動イメージ試行)とセンサーを持たないで運動イメージだけをおこなわせた場合(センサーなし運動イメージ試行)での母指球筋のF波成績を検討した。両試行とも安静時と比較して脊髄神経機能の興奮性は増加した。しかし、運動イメージの効果については個人差があるため、本研究では、運動イメージのイメージ環境によって運動イメージ効果は影響されるか否かについて検討した。 【方法】対象は健常者9名(男性6名、女性3名)、平均年齢31..8歳とした。被検者を背臥位とし、左側正中神経刺激によるF波を母指球筋より導出した(安静試行)。F波刺激条件は、刺激頻度0.5Hz、刺激持続時間0.2ms、刺激強度はM波最大上刺激、刺激回数32回である。次に、左側母指と示指によりピンチメータを用いて最大の50%のピンチ力で対立動作を練習させた。その後、センサー把持運動イメージ試行とセンサーなし運動イメージ試行で母指球筋よりF波を測定した。今回のF波測定項目は振幅F/M比とし、データはセンサー把持運動イメージ試行とセンサーなし運動イメージ試行ともに安静試行との相対値で求めた。なお、研究に実施に関しては被検者の了承を得た。 【結果】センサー把持運動イメージ試行での振幅F/M比相対値は、センサーなし運動イメージ試行と比較して増加した(p<0.05, paired t-test)。両試行の間には相関は認めなかった(p=0.576,Spearman相関係数)。 【考察】著者らのF波を用いた先行研究では、運動イメージによって脊髄神経機能の興奮性は増加すると報告したが、運動イメージ効果は個体差があること、運動イメージ環境によって運動イメージ効果が異なることが予想された。 本研究では母指と示指での対立運動の運動イメージをピンチメータのセンサーを保持させながらおこなわせた場合のセンサー把持運動イメージ試行とセンサーを持たないで運動イメージだけをおこなわせた場合のセンサーなし運動イメージ試行での振幅F/M比について検討した。センサー把持運動イメージ試行での脊髄神経機能の興奮性はセンサーなし運動イメージ試行と比較して有意に増加したものの、両者間の相関は認めなかった。運動イメージ効果は、運動イメージ環境を変化させることで変化するだけでなく、その効果の程度には個人差を認めることがかった。  理学療法で運動イメージを用いる場合には、個人による最適な運動イメージの環境を設定することが重要であることがわかった。 【まとめ】等尺性収縮を用いた母指対立運動の運動イメージ環境の違いは、個体により脊髄神経機能の興奮性に影響を与えることが示唆された。
  • 山本 昌樹, 森實  徹, 上野 隆司
    セッションID: 38
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/11
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】脳における多様な情報処理過程を単純化する一つの手法として、外部ダイナミクスを観測入力とした予測や行動の出力動態をパラメータモデルにて近似する計算論的推定がある。昨年の本学会において、教師あり運動学習であるプリズム順応時の内部ダイナミクスによる状態推定のモデル化をパラメータ線形モデルによりおこなった。今回プリズム順応過程においてアプリオリにあたえられたパラメータ線形モデルの予測能力を確率分布により評価しその有効性を検討した。 【方法】参加者は20歳から30 歳代の30名の健常学生であった。参加者は机上のLED(発光ダイオード)パネルに対座し、水平位置の三か所にランダムに提示されるLED視標に対しsaccadeと右示指による急速なポインティング運動を行う。プリズム順応の実験プロトコルは三ブロックより構成され第一ブロックは裸眼にて、第二ブロックではプリズム眼鏡(屈折変位量は12diopter)装着下にて、そして第三ブロックは再び裸眼により各ブロック30回試行した。第二ブロックでは実験条件として運動中の手先の軌道を周辺視野より遮蔽するが到達誤差は提示される条件(ERROR群;10名)、運動中の手先軌道は視認できるが最終の到達誤差は提示しない条件(ORBIT群;10名)と、どちらも提示されるcontrol群10名とした。プリズム順応の観察はLEDと指先との水平誤差距離をビデオにて記録した。順応過程のパラメータ線形モデルの推定はKitazawa等の予測モデル式にしたがった。これはトライアル誤差の総和と次回のトライアル誤差との関係より得られた修正係数と初回誤差値とをパラメータとした離散モデルである。得られた線形モデルによる予測誤差値を確率変数とした推定確率分布よりパラメータモデルの予測の確立値を算出した。 【結果】第二、三ブロックを通してORBIT群のうちの4名はプリズム変位を自覚しておらず、ブロックごとの二乗平均平方根誤差(RMSE)が他の参加者よりも増大した。そのためORBIT群の線形モデルはプリズム変位自覚者と非自覚者にてそれぞれ推定した。線形モデルのあてはまり決定係数は全群ともに高かった(R2=0.706~0.885)。修正係数はcontrol群とERROR群が有意にORBIT群よりも大きかった。線形モデルによる予測誤差の期待値mは全群間に有意な差はなかったが、期待値のP(m-5≦X≦m+5)の範囲の確率はcontrol、ERROR、ORBIT群の変位自覚者および非自覚者の順にそれぞれ平均0.340、0.321、0.235 および0.168であった。 【考察】プリズム眼鏡にて変位した外部ダイナミクスを予測するための内部ダイナミクスの情報処理過程は単純な線形モデルにて近似できる。線形モデルの係数は予測の時間を示し、また確率分布が予測の推定精度を表すとすれば、今回最も順応が悪かった変位非自覚者の誤差距離RMSEの増大が上手に説明される。
  • 熊崎 大輔, 図師 あゆみ, 大工谷 新一
    セッションID: 39
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/11
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
    我々は健常男性を対象とした先行研究において、持続的なランニングによって生じた疲労が身体機能や動作能力に影響を及ぼすことを明らかにしている。今回、健常女性において持続的な運動による疲労が身体機能や動作能力にどのような影響を及ぼすのかを明らかにすることを目的とした。
    【対象と方法】
    対象は運動習慣がない健常女性10名(平均年齢23.9±2.4歳、平均身長162.7±7.4cm、平均体重56.3±7.9_kg_)とし、下肢の疲労課題前後における血中乳酸濃度、膝等速性筋力、垂直跳び高を測定した。本研究における下肢の疲労課題はトレッドミル上での20分間のランニングとし、ランニングスピードは主観的運動強度(RPE)で「ややきつい」から「きつい」と感じられるスピードとした。測定の手順は、準備運動・等速性筋力測定・血中乳酸測定・垂直跳び・トレッドミルでのランニング・血中乳酸測定・等速性筋力測定・垂直跳び・整理運動とした。血中乳酸測定は、簡易血中乳酸測定器ラクテート・プロ LT-1710(KDD)を使用した。等速性筋力は、Biodex System3(Biodex Medical system,Inc.)を使用し、利き足の膝関節伸展・屈曲筋力を角速度60deg/secを5回、180deg/secを10回測定し、膝関節伸展・屈曲筋力の体重あたりのピークトルク値を算出した。垂直跳びは、デジタル垂直跳測定器ジャンプMD(TAKEI)を使用し、2回の跳躍を行い、高い数値を採用した。得られた結果について、疲労課題前後の各測定値の比較を対応のあるt検定により行った。なお、有意水準は5%未満とした。
    【結果】
    ランニングスピードの平均は10.4±0.9km/hであった。各測定値の平均は、運動前後でそれぞれ、血中乳酸濃度3.3±0.7mmol/l、7.9±2.6mmol/l、等速性筋力60deg/secで伸展278.7±43.2 Nm/kg、285.9±50.6Nm/kg、屈曲127.2.±17.7Nm/kg、124.0±14.2Nm/kgであった。同様に、180deg/secでは伸展173.4±32.2Nm/kg、184.1±33.7Nm/kg、屈曲91.1±15.9Nm/kg、95.8±12.4Nm/kgであった。各測定値の比較においては、運動前後で血中乳酸濃度が有意に増加し、180deg/secでの膝伸展筋力が有意に増加した(p<0.05)。
    【考察】
    本研究では主観的運動強度の設定と血中乳酸濃度の増加から、身体疲労が生じたと考えられる。しかし、膝筋力や垂直跳び高は低下せず、中角速度の膝伸展筋力は増加した。矢部によるグランジェンの報告によると、身体を動かすことによる深部感覚といった末梢からの情報によって脳幹網様体が賦活化され、大脳皮質の興奮水準が高まり、身体的な作業能力が高まるといわれている。今回の対象は普段ほとんど運動をしていないため、ランニングによって賦活系の影響がみられたのではないかと考えられた。
  • 牧浦 大祐, 井上 順一朗, 浅井 剛, 土井 剛彦, 山口 良太, 小嶋 麻悠子, 小松 稔, 三輪 雅彦, 黒坂 昌弘, 岡村 篤夫, ...
    セッションID: 40
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/11
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】不活動は廃用症候群を招く。これまで安静臥床研究によって、不活動により抗重力筋の筋力低下やバランス機能の低下など様々な悪影響が発生することが報告されているが、人間の最も基本的な活動である歩行における変化は明らかになっていない。不活動による歩行変化を明らかにすることは、不活動による廃用が招く転倒などの健康障害防止や、早期離床の意義付けとしても重要である。そこで本研究の目的は、治療過程において中長期的にクリーンルームという閉鎖環境に曝され、不活動状態に陥る造血幹細胞移植患者を対象に、不活動による歩行変化について検討することである。
    【方法】対象者は、神戸大学医学部附属病院血液内科で造血幹細胞移植を受けた血液疾患患者9名(男性7名,女性2名,年齢:49.9±10.9歳)とした。歩行に影響を及ぼす神経疾患や整形外科疾患を有する者は除外した。対象者には事前に本研究の目的を説明し、同意を得てから測定を行った。測定は、身体機能(等尺性膝伸展筋力・片脚立位)、身体活動量、歩行について移植前後に行った。膝伸展筋力測定にはハンドヘルドダイナモメーターmicroFET2(NIHON MEDIX)、身体活動量測定にはLifecorder EX(SUZUKEN)を用いて行った。対象者は入浴、就寝時以外Lifecorder EXを装着し、評価日の前一週間における1日平均歩数を各評価時期の身体活動量とした。歩行解析にはMicro Stone社製の3軸加速度計を用い、対象者の第3腰椎棘突起部に加速度計を装着し、加速・減速路含む20mの歩行路で自由歩行を行い、中間15mの加速度信号を計測した。得られた加速度データから歩行の動揺を示す指標としてroot mean square(RMS)を、歩行のばらつきの指標としてstride-to-stride time variability(STCV)を求めた。統計解析では、対応のあるt検定を用いて不活動による各指標の変化を検討した。有意水準5%未満を統計学的有意とした。
    【結果】対象者の移植開始から移植後評価までの期間は、41.2±17.8日であった。移植前後で身体活動量と膝伸展筋力は有意に低下した(移植前/移植後:2498±1523/483±230歩/日,p=0.01 193.7±47.3/154.5±54.7N,p=0.05)。片脚立位では有意な変化は見られなかったが、移植後は片脚立位時間が低下する傾向を認めた(40.9±26.4/30.8±24.3秒,p=0.08)。移植前後での歩行変化は、歩行速度が有意に低下し(1.27±0.14/1.08±0.18m/sec,p<0.01)、STCVが有意に増加した(1.72±0.99 /2.84±1.48%,p<0.01)。また有意差は認めなかったが、移植後は前後方向のRMSが増加する傾向を認めた(1.31±0.17/1.55±0.35,p=0.07)。
    【考察】本研究より不活動が歩行に影響することが示された。すなわち歩行速度が低下し、歩行の動揺・ばらつきが増加することが示唆された。移植前後では下肢筋力およびバランス機能が低下しており、これらの変化により歩行時の動揺・ばらつきが増加したと考えられる。不活動による歩行変化を防止するためにも、臨床現場では早期から活動に対して介入し、廃用を予防することが重要である。
  • 吉岡 佑二, 大畑 光司
    セッションID: 41
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/11
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】 脳血管障害における歩行障害に対し、下肢の支持性向上、尖足の防止等を目的として短下肢装具(以下AFO)を処方する場面が多い。しかしAFOの角度設定が歩行に対しどのような影響をもたらしているかの詳細な知見は少ない。本研究の目的は健常人における装具の角度設定の違いが歩行に与える影響を運動学的、運動力学的に検討することである。 【方法】 対象は本研究の趣旨、目的について説明を行い、同意を得た健常成人11名(男性7名、女性4名。平均年齢22.7±2.0歳)である。歩行条件として、_丸1_裸足での快適歩行(以下N条件)、AFOによる装具歩行で_丸2_底背屈中間位からの背屈制限(以下LDF条件)と_丸3_底背屈中間位からの底屈制限(以下LPF条件)の3条件における歩行を計測した。快適歩行の様子を光学式三次元動作解析装置VICON MX(Vicon社製)と2枚の床反力計(KISTLER社製)を使用し、サンプリング周波数200Hzで計測した。歩行の分析項目は歩行周期の時間特性、股・膝・足関節における関節角度変化量、および関節周りのパワーとした。統計学的検討には三条件の違いによる反復測定分散分析を用い、有意水準は5%未満とした。 【結果】 歩行周期の時間特性においては、N条件に比べLDF条件、LPF条件では有意なCadence減少を認めた(p<0.05)。LPF条件では、Loading Response期(以下LR期)における底屈角度変化が他の二条件と比較して有意に小さくなり(p<0.01)、LDF条件では立脚期の最大背屈角度が最も小さくなった(p<0.05)。また、LPF条件では、他の条件よりも、Pre-Swing期(PSw期)における最大底屈角度が有意に小さくなっていた(p<0.01)。一方、PSw期の底屈角度変化量はLDF、LPF条件ともに、N条件に比べ有意に小さかった(p<0.01)。さらに、LDF条件では最大股、足関節パワーが他の二条件と比較して有意に減少していた(p<0.05)。 【考察】 歩行周期の時間特性に対する装具の影響では、装具の角度制限の方向に関わらず、Cadenceの低下を示した。これは装具の重量が負荷されたことが原因と考えられた。LR期の底屈角度変化、PSw期の最大底屈角度がLPFで低下し、立脚期の最大背屈角度がLDF条件で低下したことは、AFOの角度制限による直接の影響であると考えられる。 しかし、PSw期での底屈角度変化量は、LPF条件だけでなくLDF条件でも有意に減少しており、足関節底屈パワーは底屈を直接制限したLPF条件よりもむしろ背屈を制限したLDF条件で有意に減少していた。このことから立脚中期における背屈運動の制限が間接的にPSw期の足関節、股関節パワーに影響している可能性が示唆された。また股関節屈曲パワーがLDF条件で有意に減少していることは、PSw期における足関節の運動特性の変化に影響を受けていると予想される。
  • 田中 貴士, 山田 実
    セッションID: 42
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/11
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】 転倒は,高齢者における要介護度の進行や寝たきりなどの原因となり,ADLの著明な低下を招く危険性が高い.脳血管障害(CVA)者の多くが転倒を経験しており,骨折を経験している者も多い.転倒に関する幾つかの危険因子の中でも,CVA者が抱える身体機能低下や注意機能低下は,転倒の主たる危険因子である.このように転倒の危険因子が複数存在するにもかかわらず,転倒のリスクを検討する上では,運動機能に着目したものが目立ち,注意機能は重要視されていない傾向にある.しかし,回復期におけるCVA者の転倒リスク因子の検討は十分になされていないのが現状であり,これでは有用な転倒予防が行いにくい.そこで本研究では,回復期入院中のCVA者の身体機能と注意機能に着目し,転倒との関係性を検討した. 【対象と方法】 対象は,回復期病棟入院中のCVA初発患者41名(66.7±10.2歳)である.対象者には紙面および口頭にて十分な説明を行い,署名にて同意を得た. 発症1ヵ月から3ヵ月間の転倒を前向きに調査した. 注意機能検査にはAttentional Rating Scaleを用いた.下肢の運動検査には Stroke Impairment Assessment Set,下肢の深部感覚評価にはFugl-Meyer Assessmentの一部を用いた. 対象者を転倒の有無により,転倒群・非転倒群に分類し,麻痺側,年齢,注意障害,運動障害,感覚障害のそれぞれにおいて差の検定を行った.さらにロジスティック回帰分析によって,転倒に影響に及ぼす因子を検討した. 【結果】 転倒調査中に転倒したCVA者は43.9%であった. 転倒群と非転倒群とを比較した結果,麻痺側の違いや年齢には有意な差は認めなかった.しかし,運動障害や感覚障害(p<0.05),注意障害(p<0.01)のそれぞれにおいて,転倒群で有意な障害を認めた. ロジスティック回帰分析の結果,R2=0.368,p=0.004,有意な関連要因として抽出されたのは注意障害のみであった(β=1.105,p=0.014). 【考察】 CVA者の転倒には,注意機能が大きな影響を及ぼすことが示された.転倒しないためには,行動に先立って環境や身体能力に合った適切な動作を選択する必要があるが,注意障害を有するCVA者では,転倒が発生しうる環境や自己の身体機能に見合った行動を選択できないことで転倒に至ってしまう可能性がある.身体麻痺によるバランス能力などの低下よりも,外的・内的な注意機能の低下が転倒に大きく関わっていることは大変興味深い. 【結語】 回復期脳血管障害者における転倒には,運動や感覚機能以上に注意機能の低下が影響することが示唆された.
  • 二階堂 泰隆, 佐藤  久友, 高山 竜二, 大野 博司, 佐浦 隆一
    セッションID: 43
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/11
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
     パーキンソン病(以下PD)患者特有の前傾姿勢の要因は、重心の後方変位が関与しており、治療の1つに後進歩行が提唱されている。後進歩行は伸筋群の活動、最大歩行速度や重複歩距離、前傾姿勢などに影響を与えるが、その原因については不明である。今回、前屈姿勢を呈するPD患者1症例に対し、後進歩行前後の即時的な姿勢及び姿勢戦略の変化を検証した。
    【症例紹介】
     59歳男性のPD患者。発症後約2年経過し、Hoehen&Yahr重症度分類Stage3である。左上下肢優位の振戦、筋固縮を認め、軽度の前屈姿勢を呈していた。動作では加速・突進歩行・動作緩慢を認めていたが、著明にバランスを崩すことなく独歩可能であった。
    【方法】
     後進歩行は快適速度で5分間実施した。評価は後進歩行前後に、1)静止立位、2)Functional Reach(以下FR)、3)クロステストをそれぞれ3回測定した。測定には三次元動作解析装置(VICON460)と床反力計(AMTI)を用いた。マーカーは第7頚椎、第10胸椎、左右の手関節中央、肩峰、股関節中心、膝関節中心、外果、第5中足骨頭に貼付けした。静止立位は身体重心(以下COG)・足圧中心(以下COP)と各マーカーの距離を、FRはリーチ距離とCOG・COP移動距離・下肢関節モーメントを、クロステストはCOG・COP移動距離を算出した。前後方向のCOGは外果マーカーを、左右方向のCOG・COPは第5中足骨頭マーカーを基準としてその距離を算出した。なお患者には文書にて本研究の主旨を説明し同意を得た。
    【結果及び考察】
     静止立位は後進歩行後のCOGが20mm後方へ移動し、COPも右側が後方へ13.5mm、左側が後方へ33.8mm移動し、前傾姿勢が軽減した。FRは大きな変化はなかったが、下肢関節モーメントは後進歩行後、右股関節伸展モーメントが34±0.4Nmから29.1±0.6Nmへと減少し、右足関節底屈モーメントが59.1±0.6Nmから63.0±0.6Nmへと増大した。これらは前傾姿勢の軽減により、股関節によるバランス制御の割合が減少し、足関節によるバランス制御の割合が増加した結果、姿勢制御が変化したものと考えた。クロステストは左右方向への移動に変化はなかったが、前後方向のCOG・COP最大移動が増加し、COGの前方が51.56mmから73.88mmへ、後方が36.25mmから42.01mmへと変化した。COPも右足前方69.65mmから101.29mmへ、右足後方が33.35mmから35.34mmへ、左足前方が29.43mmから56.49mm、左足後方が49.69mmから57.15mmへと変化した。これはCOG・COPが後方移動した結果、前方への移動に余裕が生じたものと考えた。
    以上により、PDでは後進歩行により、バランス制御に関わる前後方向への余裕が生じた結果、即時的に前傾姿勢と前方へのバランス能力の改善が生じた可能性が示唆された。
  • 小杉  正, 大垣 昌之
    セッションID: 44
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/11
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
     重心動揺計を用いた脳血管疾患(以下CVA)片麻痺患者のバランス能力についての報告は数多くおこなわれている。 今回、CVA患者の重心動揺計測結果をバランス能力評価に活用し、良好な結果を得ることができたので考察を交えて報告を行う。
    【症例紹介】
     男性、年齢60代 経過:2009/4月中旬に脳梗塞(左内包後脚~放線冠)、右片麻痺を発症、同日当院入院。
    【理学療法及び経過】
     翌日よりベッドサイドでの理学療法開始。発症22日目よりリハビリテーション室へ車椅子で出棟。39日目で立ち上がり見守り、立位保持見守り、歩行中等度介助。50日目で立ち上がり自立、立位保持自立、歩行見守り。BRS左上肢下肢2日目_III_→50日目_V_。 2日目~39日目までは、理学療法プログラムとして、関節可動域運動や筋力増強運動、協調性運動などの運動療法を中心に行い、40日目から前後方向への重心移動を誘導するためのDYJOC、バランスボード上での立ち上がり練習を追加した。
    【方法】
     バランス能力の計測は重心動揺計(アニマ社製グラビコーダーG620)を用いた。静的バランスとして静止立位30秒、動的バランスとして前後方向最大動揺テスト、左右方向最大動揺テストを行った。測定項目は、総軌跡長、外周面積、左右方向最大振幅、前後方向最大振幅、静的バランスでは荷重バランスを測定した。測定は発症39日目と50日目に行い、ウィルコクソン符号付順位和検定を用い、その2日を母集団とした比較を行った。
    【結果】
     39日目で、静的バランスは総軌跡長69.0cm、外周面積7.2cm2、左右方向最大振幅3.0cm、前後方向最大振幅4.7cm、荷重バランス(右/左)23.6/76.4(%)となった。その際,右下肢の前後方向動揺平均中心変位は-3.5cmと後方にあった。左右方向最大動揺テストで左右方向最大振幅23.2cm、前後方向最大振幅6.9cmとなった。前後方向最大動揺テストで左右方向最大振幅9.9cm、前後方向最大振幅11.1cmとなった。50日目で静的バランスは、総軌跡長50.7cm、外周面積5.0cm2、左右方向最大振幅2.1cm、前後方向最大振幅4.7cm、荷重バランス(右/左)50.2/49.9(%)となった。その際,右下肢の前後方向動揺平均中心変位は3.9cmと前方への移動を認めた。左右方向最大動揺テストで左右方向最大振幅16.8cm、前後方向最大振幅7.0cmとなった。前後方向最大動揺テストで左右方向最大振幅5.9cm、前後方向最大振幅11.5cmとなった。39日目と50日目間で有意差(p=0.026)を認めた。
    【考察】
     この症例は下肢随意性は良好であったが、立位バランスが不良で、歩行も介助が必要であった。重心動揺計の測定結果を元に理学療法プログラムの変更を行ったことが、立位バランス改善、歩行の安定に繋がった。今後、データを蓄積し、どのような理学療法プログラムが有効かを明確にしていきたい。
  • 栢瀬 大輔, 福井 祥二, 池岡 舞, 楠田 祥之, 手塚 康貴, 松尾 篤
    セッションID: 45
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/11
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】近年,バーチャルリアリティ技術を応用したリハビリテーション(Game Based Exercise:GBE)が報告されてきている。慢性期脳卒中患者に対するYouら(2005)の研究では,GBEにより一次運動感覚皮質の優位な活動増加と運動機能の改善を報告している。また,Betkerら(2007)は,脊椎疾患や頭部外傷の患者に対してビデオゲームを用いた座位バランス練習を行い,モチベーションの向上と動的バランス能力の改善を報告した。従来の機器は研究用に開発されたものが多く,高価であることから臨床への適用が困難であると考えられていたが,最近では安価で汎用性の高い機器なども開発されてきている。しかし,本邦ではGBEの臨床的研究は少なく,脳卒中患者への応用はほとんど見当たらない。よって本研究では,脳卒中患者3名に対して家庭用ゲーム機器「Wii Fit」によるバランス訓練を実施し,その効果を検討したので報告する。 【対象と方法】研究参加に同意した当院入院中の脳卒中片麻痺患者3名(男性1名,女性2名,平均年齢60.0±11.5歳,平均発症経過日数43.3±13.9日)を対象とした。3名ともに独歩またはT字杖を使用して介助なしで歩行が可能であった。参加者は通常の理学療法に加えてバランスゲームによる介入を行った。バランス練習には,Wii Fitのバランスゲーム「コロコロ玉入れ」を用い,1日20分の介入を週5日間,合計2週間実施した。測定項目は10m歩行速度,Timed Up & Go test(TUG),座位及び立位でのFunctional Reach test(FR),左右の片脚立位時間,FIMの運動項目(FIM-m)とした。評価時期は,介入1週間前,介入直前,介入直後,介入1週間後とし,各測定項目における1週間あたりの変化率を算出し比較した。また,介入後にモチベーションに関するアンケートを実施した。 【結果】評価期間4週間において,3症例ともに測定した全ての項目で改善傾向を示した。立位のFRと左右の片脚立位時間の平均値は介入直前と直後の間で最も大きな変化を示した(立位FR:+5.3cm,麻痺側片脚立位時間:+2.64秒,非麻痺側片脚立位時間:+27.36秒)。また,アンケートでは3症例ともに好意的な回答が得られ,ゲームを通じて前方への重心移動の拙劣さや難しさを実感したとの内省報告が得られた。 【考察】介入直前と直後で,立位のFRと左右の片脚立位時間が最大の変化を示したことやアンケートの回答から,楽しみながら集中して取り組むことで下肢機能やバランス能力の改善につながったと考えられる。GBEは目標指向性が高く,画面を通じてのフィードバックにより,認識し難い重心位置や運動経過などを参加者自身がリアルタイムでモニターすることが可能である。また,今回使用した機器は,高いモチベーションを維持したまま自発的な運動を継続でき,安価であることから臨床への導入が比較的容易である。対象者自身が運動治療に没入できるような形式でのリハビリテーションが実現できれば,その効果は非常に大きいと考える。今後はさらに症例数を増やし,有用性を検討していきたい。
  • 小川 和哉, 原田 夏希, 勝原 悠太, 森田 青葉, 高田 寛彬, 泉尾 有利, 渕野 康平, 田中 裕貴, 高橋 正浩, 城戸 直美, ...
    セッションID: 46
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/11
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】
    当院では平成18年7月より診療科拡大により心臓血管センターが増設された。それに伴い冠動脈バイパス術(以下CABG)が実施されている。開胸術後のリハビリテーション(以下リハ)については平成18年7月より医師・看護師により開始され,平成19年7月より理学療法士(以下PT)の介入が開始された。
    今回、PTがチームに介入することにより開胸術後のリハがどのように変化したかについて後方視的に調査し,その妥当性について検討した。
    【対象と方法】
    平成18年7月~平成21年6月までにCABGを施行した31名を対象とした。方法については,リハ導入群20名と非リハ導入群11名に分け,調査項目は歩行開始日数,在院日数,脳性利尿ペプチド(以下BNP),左室駆出率(以下EF)とADLとして退院時Barthel Index(以下BI)とした。また参考として,運動時間,運動処方,カンファレンスを比較した。統計処理はMann-Whitney検定を使用した。
    【結果】
    非リハ導入群については対象者11名,平均年齢65.5歳,在院日数27.1日,歩行開始日数4.9日,BNP 338.7pg/dl,EF 52.0%,退院時BI 90.5点,運動については患者自身による自主運動のみ実施していた。カンファレンスは未実施であった。
    リハ導入群については対象者20名,平均年齢67.3歳,在院日数19.6日,歩行開始日数3.8日,BNP 527.0pg/dl,EF 53.6%,退院時BI 95.8点,運動時間は個別に40分~1時間/日,運動処方は医師・PTにて行い,カンファレンスは1回/週であった。
    結果として,在院日数については有意差(p<0.05)が認められた。歩行開始日数,BNP,EF,BIについては有意差が認められなかった。
    【考察】
    今回の調査から,PTのチーム参加前後でCABG患者の心機能や歩行開始時期やADLについては有意な差が認められなかった。しかし,PTのチーム参加前後の在院日数については有意に差が認められた。これは,医師からの歩行開始指示が明確になり,運動に関して,時期に応じたADL指導や運動負荷の決定ができ,結果として運動時間の延長につながったものと考えられる。また,PTが個別に担当しカンファレンスを実施することで,退院までのプログラムを計画的に進めることができ,医師,看護師を含めたチームアプローチが可能となり,ゴール設定の共通理解やADLの早期獲得,在院日数の短縮につながったものと考える。
    今後は医師,看護師,PTの連携を強化するため,クリティカル・パスの作成が急務である。
  • ―体重減少と身体機能・QOLに着目して―
    立松 典篤, 玉木 彰, 伊丹 淳, 田中 英治, 江副 康正, 坪山 直生
    セッションID: 47
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/11
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】 近年,食道癌患者に対する食道切除術は術後疼痛の軽減と術後呼吸器合併症の予防を目的として,鏡視下手術の技術が進歩してきている.しかし,根治を目指す食道切除術では頚胸腹部3領域リンパ節郭清が必要な場合が多く,依然として侵襲の大きな手術である.また,食道切除術後は普通食が食べられるようになるまでには2週間程度必要となるため,過度の体重減少を認める症例は少なくない.このように周術期の様々な要因により,体重減少や身体機能・QOL低下が引き起こされると予想されるが,食道切除術後の体重減少と身体機能および健康関連QOLとの関連についての報告は少ない.そこで本研究では,食道切除術前後での身体機能および健康関連QOLの変化を調査し,さらに術後早期の体重減少との関連を検討した. 【対象】 対象は京都大学医学部附属病院にて食道切除術を施行された患者7名(平均年齢62.3±8.4歳)とした.うち5名は術前補助療法として化学療法を施行しており,残る2名は手術単独であった.なお,全症例とも当院にて周術期リハビリテーションを実施した.対象者には本研究の説明を行い,同意を得た. 【方法】 身体機能の評価は,膝伸展筋力,内側広筋筋厚,6分間歩行距離を,健康関連QOLの評価としては,EORTC-QLQ-C30の総合スコア(以下QOL)とその下位尺度である身体面(PF),役割面(RF),心理面(EF),認知面(CF),社会面(SF)を用い、術前と退院時に評価した.術前後での身体機能および健康関連QOLの比較には対応のあるt検定,またはwilcoxonの符号付き順位和検定を用いて検討した.また,術前値を100として退院時の各値の割合を算出し,術前後での体重変化率と身体機能および健康関連QOLの変化率との関係をスピアマンの順位相関係数を用いて検討した.有意水準は5%未満とした. 【結果】 術前と比較して退院時では,体重,膝伸展筋力,内側広筋筋厚,6分間歩行距離,PF,RFが有意に低下していた(p<.05).また,体重変化率と身体機能および健康関連QOLの変化率との関係については,体重変化率はQOL(r=0.82)およびPF(r=0.81)の変化率との間に高い相関を認めた(p<.05).一方で,膝伸展筋力(r=0.71)と6分間歩行距離(r=0.71)には,有意ではないが相関傾向を認めた. 【考察 本研究の結果から,食道切除術により食道癌患者の身体機能は大きく低下することが明らかとなった.これは,食道切除術が依然として侵襲の大きな手術であることを反映した結果であると思われる.また,術後早期の体重減少は,身体機能よりも健康関連QOLにより強く関連していた.体重減少は自己効力感の低下を招き,活動量を無意識のうちに制限してしまうことで,さらなる身体機能の低下に結びつく可能性が考えられる.したがって,患者の精神・心理面にも配慮した関わりが重要であると考えられた.
  • 井上 順一朗, 小野 玲, 本山 美由紀, 牧浦 大祐, 三輪 雅彦, 黒坂 昌弘, 宇佐美 眞, 黒田 大介
    セッションID: 48
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/11
    会議録・要旨集 フリー
    【緒言】術後呼吸器合併症予防や在院日数短縮の観点から開胸・開腹手術の周術期における呼吸リハビリテーション(以下、リハビリ)の重要性は数多くの研究で報告されている。しかし、術前における呼吸リハビリが術後呼吸器合併症を予防できるかどうかについては未だ明らかになっていない。当院では、2008年3月より食道癌に対する食道再建術を施行予定の患者に対し、外来受診時より術後の呼吸器合併症および身体機能の低下を予防するために術前での積極的な呼吸リハビリを実施している。本研究の目的は、術前の積極的な呼吸リハビリ介入が術後呼吸器合併症を予防できるかどうかを検証することである。
    【対象】対象者は2008年3月から2009年7月の期間に当院にて食道癌に対する食道再建術を施行した患者54名(男性44名、女性10名、平均年齢64.1±9.8歳)であった。術前治療は、化学療法が30名、化学療法+放射線療法が1名に施行されていた。食道癌の進行度を表すclinical stageはStage 0が1名、Stage Iが11名、Stage IIが20名、Stage IIIが20名、Stage IVが2名であった。
    【方法】術前呼吸リハビリとして、インセンティブ・スパイロメトリー(Coach 2)での呼吸トレーニング・胸郭ストレッチング・排痰法の指導、積極的な身体活動量確保の指導、下肢筋力トレーニングおよび自転車エルゴメーターを実施した。術後リハビリは、手術翌日よりICUでの呼吸訓練(体位交換、呼吸・排痰介助、腹式呼吸など)、ベッド上エクササイズ(関節可動域訓練、筋力トレーニング)および早期離床(端座位、立位、歩行)を実施し、ICU退室から退院までリハビリを継続した。対象を自主トレーニングを含め1週間以上の積極的な術前呼吸リハビリを実施できた群(実施群)と1週間未満もしくは術前呼吸リハビリが実施できなかった群(非実施群)の2群に分け、各群における術後呼吸器合併症(無気肺による呼吸不全および肺炎)の発症率を算出した。統計解析はχ2検定にて行い、有意水準を5%未満とした。
    【結果】術前呼吸リハビリ実施群は30名(男性25名、女性5名、平均年齢64.1±10.1歳)、非実施群は24名(男性19名、女性5名、平均年齢64.2±9.7歳)であった。また、術後呼吸器合併症は実施群では2名(6.7%)、非実施群では8名(33.3%)に認められた(p = 0.01)。
    【考察】食道癌に対する食道再建術施行患者において、術前より積極的な呼吸リハビリを行うことにより、術後の呼吸器合併症が予防できることが示唆された。今後は、各群における身体機能や呼吸機能などの分析を行い、術後呼吸器合併症予防のための要因について検討する必要がある。
  • 本山 美由紀, 小野 玲, 井上 順一朗, 牧浦 大祐, 三輪 雅彦, 黒坂 昌弘, 宇佐美 眞, 黒田 大介
    セッションID: 49
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/11
    会議録・要旨集 フリー
    【はじめに】食道再建術を受ける食道癌患者に対し、術前呼吸リハビリテーション(以下、術前リハ)を実施することは術後肺合併症予防に重要であると考えられる。しかし、その効果は不明であり、術前リハが手術までに患者の呼吸機能や身体機能にどのような影響を与えるのかについては明らかとなっていない。我々が行った先行研究において術前リハを施行した群では肺活量が増加したものの、身体機能と全身持久力には変化はみられなかった。本研究の目的は、呼吸機能と全身持久力に与える影響について呼吸筋力の測定を追加し、症例数を増やし再検討することである。 【対象】対象者は2008年10月から2009年6月までに当院で食道癌と診断され食道再建術予定の患者のうち、術前リハを2週間以上実施可能で、測定データに欠損がなく、本研究の趣旨を説明し同意が得られた12名(男性11名、女性1名、平均年齢62.1±10.7歳)であった。 【方法】術前リハは、インセンティブ・スパイロメトリー(Coach2)、腹式呼吸の指導、四肢体幹筋力強化、エルゴメーターを実施した。測定変数は呼吸機能の指標として%VC、呼吸筋力の指標として最大吸気圧(PImax)、全身持久力の指標として6分間歩行テスト(6MWD)とし、術前リハ開始時と手術2~3日前に測定した。統計解析は各指標の術前期間における変化についてpaired t testを使用した。さらに対象者をPImaxが増加した群(増加群)と増加しなかった群(非増加群)にわけ、2群について%VCと6MWDの差分の比較をMann Whitney U testを用い、5%未満を統計学的有意とした。 【結果】術前リハ実施期間は平均27.6±14.9日であった。PImaxは59.1±26.8_cm_H₂Oから70.4±32.7_cm_H₂Oに有意な増加を認めた(p=0.04)が、%VC、6MWTについては有意な変化を認めなかった。PImax増加群は7名、非増加群は5名であり、各指標の変化について%VCは増加群で115±17%→123±24%、非増加群で100±14%→94±16%(p<0.01)で、増加群において%VCは有意な増加が認められた。しかし6MWDは増加群が485.8±68.2m→491.6±75.6m、非増加群が406.2±77.7m→378+61.4m(p=0.32)で有意な変化がみられなかった。 【考察】本研究では、術前期間においてPImaxが有意に増加していたが、%VCと6MWDに変化がみられなかった。しかし、PImaxが増加した群において%VCが増加していた。これらのことから術前リハを積極的に実施し、呼吸筋力を増強することで肺活量が増加する可能性が示唆された。呼吸筋力と肺活量の増加が術後の呼吸機能や合併症の発生率に影響を与えるかについては今後の課題である。
  • 桑山 浩明, 日林 葉月, 杉本 祐樹, 泉本 亮二, 和泉 亜由美, 廣田 将哉, 合田 直人, 川本 裕之(MD), 大江 与喜子(MD ...
    セッションID: 50
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/11
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】悪性リンパ腫や多発性骨髄腫などの血液疾患では、化学療法や造血幹細胞移植などの治療の副作用として、全身持久性低下などの廃用症候群をきたす。また、腫瘍の圧迫による神経障害や疼痛で生じる運動障害が理学療法の対象となる。八並らは化学療法などの副作用による廃用症候群が、社会復帰に多大な影響を及ぼし、患者のQOL向上に理学療法の必要性を示唆している。今回、当院における2008年度の血液疾患患者の転帰などを調査することにより、血液疾患患者への理学療法の必要性と課題が明らかになったので報告する。
    【方法】2008年度の入院患者を対象に以下の3項目において調査を行った。1.理学療法処方における血液疾患患者数2.血液疾患患者における在院日数と理学療法処方までの期間3.転帰(理学療法介入あり・なし)での調査を行った。
    【結果】1.血液患者理学療法処方数は、28名(男12女16)平均年齢74.4歳で全処方数の11.5%、全血液患者の25%が処方されていた。2.在院日数は、平均84日(最長225日最短27日)処方日は、平均14日(最長56日)で入院日もしくは入院より20日以降(全身状態が落ち着いた頃)に多い。3.転帰は、介入あり自宅71.4%、転院7.1%、入院10.7%、死亡10.7%、介入なし自宅58.0%、転院1.8%、入院5.4%、死亡18.8%、不明16.1%となり、介入ありで自宅復帰率が高いが、継続した治療が必要なケースも多い。
    【考察】当院では、血液疾患患者へ理学療法が介入し、神経障害や運動障害、全身持久力低下の改善、基本動作やADL能力に合わせた環境整備などを行った結果、介入なしに比べ自宅復帰率が高く理学療法の有効性が確認された。しかし、治療終了し全身状態安定した状態で、自宅復帰に向けて処方されており、治療早期に廃用症候群の予防として介入されていないのが現状である。そのため、入院期間の長期化や自宅復帰例でも通院や訪問リハなど継続した治療が必要となり、社会復帰が制限されていると考えられる。上田らはがん患者の約70%が疲労感や運動能力の低下をきたし、化学療法前や治療中からの理学療法の介入がその後の経過において必要であることが報告されている。以上のことから、血液疾患患者への理学療法早期介入の必要性が課題であると考える。
    【まとめ】当院では、血液疾患患者の理学療法の必要性は、治療後の効果については理解されている。しかし、治療早期からの廃用症候群の予防やQOL向上への理学療法介入がなされていない現状であるため、当院での血液疾患患者における理学療法の早期介入の必要性の理解に努めたい。そのためには、血液疾患特有の臨床症状を理学療法士が理解し、運動療法における効果を医師へ情報提供し、今後も共同した調査・検討を行い理学療法の展開を実施していきたい。
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