以上, 介入変数 (
IV) と仮定的構成体 (
HC) に関する主な研究をとりあげ, その要点を述べ, これに関する論争の生じた原因の一つが用語上のものであることを指摘した. そして何れも刺激
Sと反応
Rの間に介入する媒介概念 (
MV) であり,
Sと
MV,
MVと
Rの間には因果関係のあることを述べた. 一般に
IVは解析的であるか, 便宜的であると考えられているがこれは心理学において
IVといわれる概念には妥当しない. 即ち
Sと
IVの間には常に因果性を予想し, 仮定的因子を含んでいるという意味で
HCと本質的に異なるものとはいえない. 勿論
IVが
HCより操作水準が高いとはいえようが, この事は
IVが
HCより科学性が高いことにもまた
HCが純化されて
IVになることをも示さない. 何故ならかゝる意味での
HCは予言性の高い点では
IVと比べるべくもなく, また
HCが証明され直接観察されれば既に
IVではなくなってしまう. また
HCを生理的概念とのみ考えることも正しくない. かゝる見地は心理学の生理学への還元を意味するものであって事実と必らずしも一致しない. 仮定的な
MVとしては生理的なもののみでなく行動的なものもある. 然し行動的なものに実在性がないという批判があるがこれは実在性の理解をあやまっているものといえよう. 真か偽かいえるものはすべて実在性があるとみなければならず, 直接観察 (時空的定位) のみが実在性の根拠にはならない.
行動的であれ, 生理的であれ,
MVはつねに直接観察しうる
Sと
Rの両方に足場をもたねば科学的概念とはいえない. 然しゲシタルト心理学, 特にLewinの理論では
MVの
Sへの足がかりが明らかにされていない欠点がある. 勿論
S自身も
Rと無関係でないばかりか
Rによって規定されるが, それは
Rが
MVの函数であるという時の因果性でなく, 概念的定義の問題にすぎず, また
R=
f (
S) が適用される場合の
Rとは独立に規定されるから
Sと
MVとは厳密に区別されねばならない.
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