基礎有機化学討論会要旨集(基礎有機化学連合討論会予稿集)
第17回基礎有機化学連合討論会
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  • 村井 利昭, 森下 健, 松岡 大智
    セッションID: 1A01
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/31
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    本講演では、ビナフチル基を有するセレノリン酸誘導体の合成とジアステレオマー分離さらには性質について述べる。まず鍵出発化合物である塩化物は、三塩化リン、トリエチルアミン、ビナフトール、セレンをトルエン中加熱還流することで、高収率で得た。得られた塩化物とキラルなアミンとの反応は、二つのジアステレオマーを与えた。これらは分別結晶やHPLCにより分離することができた。また三級アミン存在下アルコールとの反応では、対応するエステルの二つのジアステレオマーをほぼ1 : 1の比で得た。アルコールの塩化物に対する反応性の違いは顕著であり、一級、二級アルコール部位を有する基質では前者のみが選択的に反応した。
  • 川崎 統, 中村 光武, 豊田 耕三, 吉藤 正明
    セッションID: 1A02
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/31
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    3,4-ジホスフィニデンシクロブテンは堅固な平面構造を有し、種々の遷移金属に対してキレート配位子として働くsp2混成リン原子を有する興味深い骨格を持つ化合物である。我々はこの骨格の共役構造に着目し、酸化還元系におけるリンカーとして用いることにした。酸化還元部位としてフェロセンを選び、対応するジホスフィニデンシクロブテンを合成し、その電気化学的な性質を調べたところ、強い金属間の相互作用がみられたので報告する。
  • 濱木 裕史, 武田 亘弘, 笹森 貴裕, 時任 宣博
    セッションID: 1A03
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/31
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    近年、かさ高いβ-ジケチミナト配位子の化学が注目を浴びている。今回我々は、極めてかさ高い置換基であるTbt基を有するリチウム β-ジケチミナート1を合成し、そのX線結晶構造解析により、1が結晶中で単量体として存在していることを明らかにした。さらに、1と2, 3, 4価のチタン錯体とを反応させることにより、対応するチタンのβ-ジケチミナト錯体2-4を合成することに成功した。また、tmeda存在下でのリチウムナフタレニドを用いた3,4の還元反応により、2が生成することを見出した。現在、2-4の構造解析、触媒活性、反応性について検討を行っているので、併せて報告する。
  • 田中 正信, 関口 章
    セッションID: 1A04
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/31
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    テトラヘドランは最も小さく最も歪みの大きなかご型化合物であり、古くから興味が持たれている化学種である。最近我々は様々な官能基変換における有用な前駆体である、トリス(トリメチルシリル)テトラヘドラニルリチウムを安定に合成単離することに成功している。そこで本研究では、リチウム置換テトラヘドランを前駆体としてメチル基及び水素が置換したテトラヘドランを新たに合成単離し、その性質などを明らかにした。また、リチウム置換テトラヘドランの酸化的カップリング反応により構造学的に非常に興味深いテトラヘドラニルテトラヘドランを合成単離し、その分子構造を明らかにすることに成功した。
  • 久新 荘一郎, 川合 宏子, 黒崎 美邦, 松本 英之, 工藤 貴子
    セッションID: 1A05
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/31
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    1,3-ジブロモヘキサ-tert-ブチルシクロテトラシランをカリウムで還元すると、三種類の常磁性化学種を経て、最終的には(ヘキサ-tert-ブチル-1,3-シクロテトラシランジイル)ジカリウムが生成した。三番目の常磁性化学種は赤色結晶として単離され、X線結晶構造解析からヘキサ-tert-ブチル-1,3-シクロテトラシランジイルビラジカルであることがわかった。このシリルビラジカルの構造や性質について説明する。また、最終生成物であるシリルジアニオンはベンゼンと共結晶を形成し、X線結晶構造解析の結果、一次元の超分子構造をとることがわかった。この構造や性質についても説明する。
  • 下 功朗, 後藤 敬, 川島 隆幸
    セッションID: 1A06
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/31
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    様々な嵩高さのbowl型構造を有するシラノールおよびゲルマノールを合成し、それらのキャビティの深さをX線結晶構造解析により見積もった。これらのシラノールとテトラベンジルジルコニウムとの反応により、そのキャビティサイズの差異を活用することで、従来合成困難であったモノ(シラノラト)錯体およびビス(シラノラト)錯体をそれぞれ選択的に合成することに成功した。また、高周期類縁体であるビス(ゲルマノラト)錯体およびビス(ゲルマンチオラト)錯体を合成した。さらにこれら各種錯体の結晶構造を明らかにするとともに、これらの錯体を触媒として用いてオレフィン重合反応を行い、触媒活性評価を行ったので報告する。
  • 岩本 武明, 石田 真太郎, 増田 英紀, 阿部 剛, 甲 千寿子, 吉良 満夫
    セッションID: 1A07
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/31
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    我々はアレンの二重結合炭素をすべて同族の高周期元素であるケイ素およびゲルマニウムに置き換えたトリシラアレンおよびトリゲルマアレンを安定化合物として合成単離することに成功した。結晶中、これらのアレン骨格は直線構造ではなく大きく折れ曲がったベントアレン構造をとっていた。その折れ曲がりの程度はゲルマニウムのほうがより大きかった。UV吸収スペクトルでは複数の吸収帯が観測され、これらの極大は孤立二重結合のものに比べて顕著に長波長シフトしていた。これは骨格内の2つ二重結合間に顕著な相互作用があることを示している。本研究では炭素のアレンとは顕著に異なるこれらの高周期14族累積二重結合化合物の構造と電子状態について考察する。
  • 竹田 裕孝, 岡本 敏宏, 倉津 将人, 小嵜 正敏, 塩見 大輔, 佐藤 和信, 工位 武治, 岡田 惠次
    セッションID: 1A08
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/31
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    ラジカル置換電子供与体は数多く知られているが、電子供与体部を酸化した場合、ラジカル部とラジカルカチオン部に大きな磁気的相互作用を伴う系は稀である。我々は、最近、電子供与体としてジヒドロフェナジン骨格を用いることにより、分子内に大きな強磁性相互作用(J>+700 K)をもつ化学的に安定な系を見出している。これらの化学種は陽電荷を有するため、対イオンとしてスピンを持った陰イオンを導入することすることにより、新しいタイプの磁性物質を合成することができる。ここでは、ラジカル置換ジヒドロフェナジンラジカルカチオンの基本的性質と陰イオンとしてスピンを導入したいくつかの磁性物質の合成と性質について発表する。
  • 西田 辰介, 森田 靖, 福井 晃三, 佐藤 和信, 塩見 大輔, 工位 武治, 中筋 一弘
    セッションID: 1A09
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/31
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    6-オキソフェナレノキシルは、当研究室で開発された新しい安定中性ラジカルであり高いアクセプター性を有している。我々は、このラジカルを基盤として、新しい電子的機能を有する有機分子の開発を念頭に、ドナー導入型中性ラジカルの合成を行っている。その中で今回、6-オキソフェナレノキシル骨格に直接TTFを導入した誘導体の合成・単離に成功し、DFT計算やCV測定から、SOMO-HOMOギャップが非常に小さいことを見出した。各種ESR法によるスピン密度分布の解明、また電子スペクトルを用いた分子内電荷移動への溶媒効果、ソルバトクロミズムなどを明らかにしたので報告する。
  • 金川 慎治, 唐澤 悟, 古賀 登
    セッションID: 1A10
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/31
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    アミノキシルラジカルとコバルト(II)化合物からなるヘテロスピン系を持つ単核錯体を合成し、それらの結晶状態、およびMTHF剛体溶媒中での磁気的な挙動の測定をおこなった。結晶状態では、いずれのコバルト(II)錯体においても低温領域で分子間の反磁性的な相互作用が観測された。一方、剛体溶液中においては、それぞれの錯体分子が充分に分散されることで分子間の磁気的相互作用はなくなり、10K以下の温度領域で単分子磁石としての性質を観測することができた。今回は、これらの錯体化合物について、用いる配位子とその磁気的挙動の関係についての詳細な検討を行った結果について報告する。
  • 吉岡 直樹, 長島 英明, 橋本 典子, 浅川 真弓, 井上 秀成
    セッションID: 1A11
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/31
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    ベンズイミダゾールニトロニルニトロキシドを基本骨格とする誘導体では、NH部位をプロトンドナーサイト、NO部位をプロトンアクセプターサイトとする分子内および分子間の分岐型水素結合によって結晶中で連鎖形成が観測される。連鎖中ではSOMOどうしが接近するため、磁気的には強磁性または反強磁性的な相互作用を有する低次元磁性を示す。本発表では、ベンゾイミダゾールのベンゾ環5(6)-位、または5,6-位にハロゲン、メトキシ基などを導入した誘導体を合成した。これら誘導体では、導入置換基の影響により、水素結合様式、分子の接近様式が大きく変化した。結晶構造、磁気特性に及ぼす置換基導入の効果を議論する。
  • 椚田 憲一, 圷 広樹, 中辻 慎一, 山田 順一, 菊地 耕一
    セッションID: 1A12
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/31
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    我々は、非TTFドナーであるBDH-TTPから数多くの安定な金属的電荷移動塩が得られることを見出している。これを踏まえて、BDH-TTPが発現する安定な金属状態を不安定化するために、分子間相互作用の減少を意図した化学修飾をBDH-TTPに施して新たなドナー分子を構築することを目指している。例えば、BDH-TTPの外側のジチオラン環をジチアン環で置換した非平面的なBDA-TTPの合成に成功し、五種類のBDA-TTP超伝導体を発見した。このような非平面構造への変化は、BDH-TTPの一つの硫黄原子を酸素原子で置換したDHOT-TTPにおいても見られることを明らかにした。本講演では、DHOT-TTP塩の構造と物性について相当するBDH-TTP塩と比較しながら述べる。
  • 中西 和郎, 林 聡子, 中本 貴士, 波田 雅彦
    セッションID: 1B01
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/31
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    NMRは極めて重要な研究手段である。我々もNMRを用いて、ナフタレン-1,8位におけるSe--Se型の非結合相互作用の研究を行ってきた。しかしながら有機化学者の立場から十分に納得できる解釈を行えるわけではない。今回、個々の分子軌道間の遷移による寄与をきちんと評価することによって、77Se NMR 化学シフトの構造依存を有機化学者の立場から解釈することを検討した。その結果、pre-α効果を導入することによって基本的な解釈の糸口が得られることを見出した。ナフタレンやアントラセン、アントラキノンによる構造固定された系と関連させて具体的な解釈を紹介する。
  • 岩本 啓, 小林 憂佳, 鈴木 将峰, 河谷 武文, 深澤 義正
    セッションID: 1B02
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/31
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    化学シフト計算法と、不斉補助試薬を組み合わせる手法により新たな第二級アルコールの絶対配置決定法を開発した。新規な不斉補助試薬として、ナフタレン環を持つ光学活性カルボン酸を合成した。得られた光学活性カルボン酸を種々の不斉第二級アルコールに導入し、得られた各種ジアステレオマーのナフタレン環の磁気異方性による化学シフト変化量を求めた。また分子動力学計算より求めた構造の経時変化から、時間平均の誘起シフトを化学シフト計算法で求めた。得られた誘起シフト実測値と計算値との相関を調べたところ、非常によい一致を示すことが明らかとなった。以上の結果から、分子動力学計算と化学シフト計算法を組み合わせることで第二級アルコールの絶対配置決定が行えることを明らかにすることができた。
  • Sahnoun Riadh, 藤村 勇一, 甲 國信, 竹内 義雄, 野依 良治
    セッションID: 1B03
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/31
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    We confirmed by molecular orbital analysis that a hyperconjugative electron delocalization mechanism is responsible for the stability of cis and trans conformations for fluoroacetaldehyde and methyl fluoroacetate. We consider that this mechanism plays an important role in determining the conformations of some chiral derivatizing agents (CDAs) having a-fluoroacetic acid structures such as a-cyano-a-fluoro-p-tolylacetic acid (CFTA).
  • 赤坂 和昭, 大瀧 高志, 小平 晃久, 大類 洋
    セッションID: 1B04
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/31
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    新しい蛍光不斉誘導体化試薬を設計、開発した。これらの試薬を用い分岐アルキル鎖を有するカルボン酸、アルコール類について、被標識官能基であるカルボキシル基或いは水酸基を蛍光不斉誘導体化試薬により誘導体化し、HPLC法及び核磁気共鳴法により被標識官能基から10個以上のメチレン基で隔てられた分岐アルキル鎖の不斉を識別する方法を開発した。
  • 根平 達夫, 田中 克典, Gennaro Pescitelli, Nina Berova, 高桑 堯, 眞砂 央, 和田 明生
    セッションID: 1B05
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/31
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    楕円鏡構造を有する新型FDCD測定装置を開発した。FDCDは蛍光を観測媒体として試料の円二色性(CD)を記録する方法で、この装置は、一般に普及しているCD測定装置上で試料台を交換するだけで作動(ユニバーサル)する。本装置で採用した楕円鏡構造は、楕円曲面を持つ帯状の鏡の両側を二つの平面鏡で挟み込む単純な構造により実現した。これにより、従来のFDCD測定装置では信頼できる測定が困難であった偏蛍光を持つ試料の場合、蛍光の全方位観測によるにせ信号の回避と、観測信号の大幅な増加による約20倍の感度向上が可能になる。この装置の詳細と、いくつかの化合物による測定例を紹介する。
  • 平尾 俊一, 櫻井 英博, 大光 太朗
    セッションID: 1B06
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/31
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    C60の部分骨格でありC3v構造を有するスマネンは構造および機能に興味が持たれていたが、未合成の化合物であった。前回の討論会で、初めてその合成法を報告するとともに、その有用性を明らかにした。今回は、その構造をX線構造解析で解明できたので、その結果について述べる。さらに、パッキング構造についても言及する。スマネンはベンジル位を有するため様々な活性種を発生できる。この報告ではカルバニオンを発生させるとともに、その同定をスペクトル的に行った。さらに、その珪素化における反応性についても検討した。
  • 澤田 正實, 井口 久美, 高井 嘉雄, 野村 幸代, 静間 基博, 山田 等, 山岡 寛史, 荒川 隆一
    セッションID: 1B07
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/31
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    ESI-マススペクトロメトリーをもちいて、キラルカルボン酸類のキラル認識能を定量化する、エナンチオマー同位体標識法(EL-Guest法システム)を見出した。ついでEL-Host対を合成し、このホスト対を用いるキラルカルボン酸類の新しいee決定法について述べる。ホストには窒素含有非環状化合物を用いホストーメタルーゲスト(カルボン酸)システムを用いた。
  • 風呂 剛広, 森 直, 斉藤 秀明, 和田 健彦, 井上 佳久
    セッションID: 1B08
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/31
    会議録・要旨集 フリー
    面不斉を有する[2.2]パラシクロファンはキラル配位子として不斉反応に用いられ、また、二分子間相互作用のモデル化合物として様々な研究に応用されている。今回、電荷移動相互作用を有するキラルな2種のパラシクロファン1、2のエナンチオマー分割に初めて成功した。これらの化合物は、いずれも強い分裂型の複雑なパターンを有する円二色スペクトルを与えた。staggered 1はDe=120M-1cm-1という極めて大きなコットン効果を示し、一方eclipsed 2ではDeは40M-1cm-1程度であったが、いくつもの遷移が重なったと考えられるより複雑なスペクトルとなった。また、1、2ともに電荷移動吸収帯にもコットン効果が見られ、異方性因子は1で0.01、2で0.002とこの種の遷移では極めて大きな値となった。X線結晶構造ならびにDFT計算による電子遷移から、得られた円二色スペクトルの解釈に関して検討したので報告する。
  • 椿 一典, 三浦 正哉, 田中 弘之, 田中 弘之, 古田 巧, 田中 圭, 冨士 薫, 川端 猛夫
    セッションID: 1B09
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/31
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    螺旋構造は三次元的に高度に秩序だった構造であり、限られた空間に密に構造・情報を詰め込むのに最も適した構造のひとつと考えられる。我々は、ナフタレンが 1,4-位で結合した化合物に注目している。これらの化合物はその軸方向には剛直、軸周りには不斉とある程度の柔軟性を持ち、さらに位置選択的官能基導入が可能という特徴がある。このような特徴を持つにもかかわらず、光学活性オリゴナフタレン類の合成(すなわち生成する軸の不斉制御)は極めて困難であることが知られている。光学活性オリゴナフタレン類の効率的合成法の開発に成功したので報告する。
  • 石井 佑典, 吉沢 俊啓, 時田 澄男, 久保 由治
    セッションID: 1B10
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/31
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    演者らは、分子機械を意識した化学システムの基盤設計として期待できる形の制御を不斉情報と連携させることで新しい機能創出を目指している。本研究では、配座柔軟性を有するアキラルな大環状クラウンエーテルをリンカーとする亜鉛(II)ポルフィリンを用いて、キラルゲスト種とのホスト/ゲスト相互作用に基づく不斉誘起を検討したところ、金属イオン配位と連携した不斉誘起の増幅現象を見いだした。その詳細を調査するとともに、キラルプローブとしての応用展開も検討した。
  • 伊熊 直彦, 田村 類, 下野 智史, 河目 直之, 玉田 攻, 酒井 尚子, 山内 淳, 青木 良夫, 野平 博之
    セッションID: 1B11
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/31
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    分子のコア中に磁気双極子モーメントをもつ「棒状有機ラジカル液晶」は、分子が集合してドメイン構造を形成する際に、大きな磁気異方性を発現すると予想され、新規磁気光学材料としての利用が期待される。しかし、平面性を好む「棒状有機液晶分子」と、立体保護を要する「安定な有機ラジカル分子」とでは合成指針が相反するため、これまでこの種の有機ラジカル液晶の合成例は皆無であった。我々は、世界初のキラル棒状有機ラジカル液晶(ラセミ体と光学活性体)の合成法を確立し、ネマチック相・コレステリック相・スメクチック相(SmC)・キラルスメクチック相(SmC*)の発現を確認し、各相の性質のキャラクタリゼーションに成功したので報告する(Angew. Chem. Int. Ed. 印刷中)。
  • 黒田 玲子, 東口 顕士, 長谷部 三養子, 今井 喜胤
    セッションID: 1B12
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/31
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    BQ結晶と3種のジオール結晶(rac-Binaphthol (rac-BN), 2,2'-biphenol (2BP), 4,4'-biphenol (4BP))の混合粉砕により、固相で結晶化が起こり、電荷移動錯体結晶が生成する。この際、元々のジオール間での水素結合が切断されbenzoquinone (BQ)と新たな水素結合が形成され、分子が再配列して、新しい結晶がアモルフォス中間状態を経ずに生成する。Rac-BNの場合には2種の結晶を共粉砕する必要があるが、2BP, 4BPの場合には細かく粉砕した結晶同士を混ぜただけで反応が進行する。それらの結晶化挙動を結晶構造、融点などと関連づけて議論する。
  • 平井 克幸, 松野 真佳, 神谷 英依子, 萩原 慎一, 富岡 秀雄
    セッションID: 1C01
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/31
    会議録・要旨集 フリー
    最近我々は室温溶液中で50時間の半減期を有する安定な三重項ジアントリルカルベンの発生に成功した。しかし、このカルベンも永久的に安定ではなく、溶液中では非常にゆっくりと二次減衰を示し、カルベン中心での二量化反応が起こっていることが示唆された。今回この二量化反応を抑制する目的で、前述の長寿命三重項カルベンの先駆体であるジアゾ化合物のアントラセン環の2,7位に種々のハロゲン基を導入したジアントリルジアゾメタンを合成し、その光分解によって発生するカルベンの特性化と反応性に対するハロゲン基の効果について検討した。
  • 金野 大助, 友田 修司
    セッションID: 1C02
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/31
    会議録・要旨集 フリー
    立体制御は不斉合成などの有機合成上、非常に重要な課題である。我々は最近、アダマンチルカルベンの面選択的分子間挿入反応について、分子軌道計算によって求めた遷移状態を用いて遷移状態安定化効果(antiperiplanar効果;AP効果)の定量評価を行い、この効果が面選択の起源とはなり得ないことを明らかにした。また、これらのカルベンは二つのコンホーマーの平衡状態として存在し、さらにIRC計算によって得られた反応経路の各段階におけるエネルギーを比較することにより、この系における選択性は二つのコンホーマーの平衡によって決定していることが明らかとなった。
  • 岡本 純子, 町口 孝久, 山辺 信一, 湊 敏
    セッションID: 1C03
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/31
    会議録・要旨集 フリー
    ケテン-オレフィン反応において,反応の濃度条件に依存するプロダクト・スウィッチング(生成物交替)現象を見出した。通常の反応濃度では定説通りシクロブタノン(正常生成物)を排他的に生成する。一方,高濃度の場合はα,β-エノン(異常生成物)を排他的に生成した。中間の濃度ではシクロブタノンとα,β-エノンの混合物が得られることを見出した。生成物が反応濃度に依存して全く異なってしまう最初の例である。いずれの場合も出発物質(全反応の初期中間体)はα-メチレンオキセタンであることが判明した。高濃度条件下ではオキセタンの分子間反応によってイオン対を生成し異常生成物α,β-エノンへ至ることを実験的に証明した。
  • 大方 勝男, 田村 由紀子, Shetuni Brandon, 宮永 渉, 高木 隆吉, Paquette Leo
    セッションID: 1C04
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/31
    会議録・要旨集 フリー
    種々の交差共役シクロヘキサジエノンを合成し、簡単なジエンとのDiels-Alder反応を行い、その面選択性について検討した。スピロ環(テトラヒドロフラン、オキセタン、エポキシド、ラクトン、ケトン)を有する交差共役シクロヘキサジエノンを用いた場合、フラン、ラクトンを有するものは高い面選択性で環化付加生成物が得られた。また、その面選択性はフラン、オキセタン、エポキシドの順に減少した。ケトンを有するシクロヘキサジエノンでは約2:1の面選択性だった。4-メチル-4-(メトキシ、シアノ、メトキシカルボニル)-二置換シクロヘキサジエノンのDiels-Alder反応も高い面選択性で進行した。これらのDiels-Alder反応について理論計算を行い、その面選択性について考察した。
  • 堀 憲次, 高橋 英雄, 岡野 克彦
    セッションID: 1C05
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/31
    会議録・要旨集 フリー
    情報化学的に反応予測を行うために、これまで比較的手軽に計算できるHOMOやLUMOの軌道エネルギー等が多く用いられてきた。しかし、それらのような反応に間接的なパラメータを用いた解析では、モデル化ができる場合でも外挿に対してはうまくいかないことが多く、他の系に適用できないことも多い。本研究では、芳香族求核置換反応(SNAr反応)の反応物、中間体および遷移状態、生成物のエネルギーを算出し、そこから得られる反応の性質を直接的に表すことのできる活性化エネルギーおよび反応熱等の反応に直接関与するパラメータを用いて多変量解析を行い、これらのパラメータが反応収率の傾向予測に有効であるかどうかについて検討の検討を行った。
  • 山高 博, Ammal Salai Cheettu, 浅野 努, 大賀 恭
    セッションID: 1C06
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/31
    会議録・要旨集 フリー
    従来からの反応論では、有機反応の生成物は固有の遷移状態を経て生成し、複数の生成物の生成比はそれぞれの遷移状態の相対的安定性によって決まると考えられている。我々は最近、反応経路分岐およびダイナミクス支配反応経路という上記の概念に合わない2つの現象を見出した。その後、このような新規な現象の原因と一般性を明らかにするため、種々の分子内転位反応や異性化反応についてMO/MDやkineticsによる検討を行っている。本講演では、Beckmann転位や分子内異性化反応に関する最新の研究結果を発表する。
  • 竹内 怜介, 速水 醇一
    セッションID: 1C07
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/31
    会議録・要旨集 フリー
    低極性溶媒中でのアミンの会合と会合種の求核性の問題を検討するために、アニリンとエチル トリフルオロアセチルヴィニルエーテルとのマイケル型反応をプローブとして速度論的研究を行った。ベンゼン中では二量体求核種機構が要請する会合定数の実測温度効果は異常で受け入れ難い。次いで、このプローブ反応の本質を探るため、溶媒和の無視できるシクロヘキサン中で速度論的検討を行った。擬一次速度定数に対する試薬濃度依存性は2次、あるいは2次と3次の混合依存性に見えたが、トリエチルアミン触媒の添加効果は3次項の寄与を否定した。2次依存性から導かれた会合定数はこれらの溶媒中での二量体求核種機構を否定した。
  • 村井 豊, 福崎 朋英, 山川 敦, 小島 聡志
    セッションID: 1C08
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/31
    会議録・要旨集 フリー
    α-シリルアセトニトリルを用いたPeterson反応において,ケイ素上の置換基効果を検討したところ,(t-BuO)Ph2Si基で置換されたアセトニトリルとアルデヒドとの反応で,高Z‐選択的(91 : 9 _から_ 99 : 1)にα,β‐不飽和シアニドが得られることを見出した。その高い選択性の原因を反応機構的に解明するため、反応中間体の類似化合物を1-NpCHOとCH3CH2CNのアルドール型付加物のジアステレオマー混合物を合成、分離し、さらにシリル化する事で合成した。それを用いて、塩基による脱離反応を検討したところ、anti体からはZ-オレフィンのみが、syn体からもZ-オレフィンが優先して得られる結果となった。
  • 石原 千津子, 川南 聡, 安倍 学, 益山 新樹
    セッションID: 1C09
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/31
    会議録・要旨集 フリー
    我々はこれまで、シクロペンタン‐1,3‐ジラジカルの最安定スピン多重度および反応性に対する2位上置換基 Xの効果について検討し、酸素官能基の場合 (X = OR) とケイ素官能基の場合 (X = SiR3) では、最安定一重項状態の電子配置が異なることを見出してきた。このような一重項ジラジカルの最安定電子配置の違いは、2,3-ジアザビシクロ[2.2.1]ヘプタン誘導体が脱窒素してシクロペンタン-1,3-ジラジカルを与える段階にも影響すると考えられる。そこで本研究では、2,3-ジアザビシクロ[2.2.1]ヘプタン誘導体の脱窒素反応機構に及ぼす7位の置換基効果を量子化学計算と実験の両面から検討し、7位の置換基が酸素官能基の場合 (X = OR) には段階的な脱窒素反応が有利となるが、ケイ素官能基の場合 (X = SiR3) には協奏的な脱窒素反応が優先することがわかった。
  • 藤田 守文, 藤原 康次, 毛利 洋, 奥山 格
    セッションID: 1C10
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/31
    会議録・要旨集 フリー
    アルキリデンシクロプロパンのシリルアセタール(1)をヨードニウム塩とケテンシリルアセタールから合成し、環開裂反応に用いた。1のシクロプロパン環は異なる3種類のC-C結合を有しており、条件をえらぶとことでそれら各々を選択的に開裂することができた。ルイス酸によってアリルカチオン中間体が生成し、それに対する求核付加の位置選択性に関しても議論を行う。
  • 赤羽 良一, 遠田 大輔, 萩原 啓介, 須賀 良浩, 鎌田 正喜, 伊藤 廣記
    セッションID: 1C11
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/31
    会議録・要旨集 フリー
    ベンジル水素を持つアルデヒドカチオンラジカルであるジアニシルエタナールを光増感電子移動反応で生成させると、その挙動は、用いる増感剤の種類により異なる。2、4、6ートリフェニルピリリウム塩(TPP)を用いるとCーC結合が切断されるが(CHO脱離)、9、10ージシアノアントラセン(DCA)を用いた場合には別の活性種が生成する。今回、この活性種は、芳香環炭素にベンジル位の水素が移動(付加)したデイストニックカチオンラジカルの可能性が高いと考え、計算化学的検討を行ったところ、これが水素の移動していないアルデヒドカチオンラジカルと同程度に低いエネルギーを持つことがわかった。また、同様な構造を持つカチオンラジカルはトリフェニルメタンカチオンラジカルからも(計算上)生成することがわかった。講演では、ベンゼン環にプロトンの付加したカチオンラジカルの化学を、生成物、レーザーフラッシュホトリシス、計算化学の結果から論ずる。
  • 峯岸 信也, Loos Robert, 小林 進二郎, Mayr Herbert
    セッションID: 1C12
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/31
    会議録・要旨集 フリー
    ジアリールメチル系のSN1反応における3つのステップ(イオン化、イオンリターン、カルボカチオンと溶媒との反応)の反応速度をレーザーフラッシュフォトリシス法、ストップトフロー法などを用いてそれぞれ決定した。これらを基に、一般的によく知られている「遅いイオン化+速い溶媒との反応」から中間体が長寿命を持つ「速いイオン化+遅い溶媒との反応」までに至るSN1反応の完全な自由エネルギープロファイルを示した。またこのエネルギープロファイルに基づいたSN1反応における中間体カルボカチオンの観測の可能性とその実例も報告する。
  • 安藤 伸治, 西田 純一, 井上 陽司, 時任 静士, 山下 敬郎
    セッションID: 2A01
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/31
    会議録・要旨集 フリー
    有機電界効果型トランジスター(有機FET)は、_丸1_柔軟な有機材料から成りフレキシブル、_丸2_低温で作製できるためプラスチック基板上に形成可能、_丸3_大面積化が容易、_丸4_低コストなどの優れた特徴を備えている。この有機FETの特性は、活性層に用いられる有機半導体に依存されるため、新しい骨格を有する有機半導体の創出が求められている。そこで我々は、新規有機半導体構造として、チアゾロチアゾール環構造を有するヘテロ環オリゴマーに着目し、その両末端に様々なドナー及びアクセプター分子を導入したπ共役チアゾロチアゾール型オリゴマーを設計した。これらオリゴマーを活性層に用いた有機FETを作製したので報告する。
  • 平谷 卓之, 小西 克明
    セッションID: 2A02
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/31
    会議録・要旨集 フリー
    半導体ナノ微粒子は、量子サイズ効果のために、サイズ(粒径)に依存した発光を示す。このため、従来の研究においては、もっぱら合成時の「サイズ制御」に重点が置かれ、合成時の反応条件など経験則に基づく無機材料合成的な手法が検討されてきた。一方、本研究ではクラスター表面に有機物から成る化学環境を構築し、これをツールとした発光特性制御を目指した。その中で最近、分子状CdSクラスターCd10S4(SAr)12の表面アリール基の間に、4級アンモニウム塩がπ相互作用を介してインターカレートすることにより集積化し、それにともなって、クラスターの発光波長・強度が大きく変化することを見出した。
  • 石井 努, 松川 恭兵, 又賀 駿太郎, Sandanayaka Atula, 荒木 保幸, 伊藤 攻
    セッションID: 2A03
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/31
    会議録・要旨集 フリー
    [60] フラーレンにアミノ置換ベンゾチアジアゾール部位を連結したアクセプター_-_アクセプター-ドナー型3元系誘導体を合成し、光誘起電荷分離特性について検討した。ベンゾチアジアゾール部位が光捕集のアンテナとして作用した後、ベンゾチアジアゾール励起一重項状態からの段階的な電子移動が生じ、最終的にフラーレン部位にラジカルアニオン種、アミン部位にラジカルカチオン種が局在化した電荷分離状態の発生に成功した。DMF 中での電荷分離状態の寿命は 690 nsec であり、フラーレン-アミン系として最長の値を示した。
  • 溝部 祐司, 藤内 謙光, 宮田 幹二
    セッションID: 2A04
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/31
    会議録・要旨集 フリー
    有機固体材料の開発は、発光デバイスなど様々な応用面から注目を集めている。本研究では、従来の開発法である機能性分子の構造設計だけでなく、固体状態における分子配列の設計にも注目し、アントラセンなどの芳香族ジスルホン酸と第一級アミンからなる有機塩を設計した。この有機塩において、組み合わせるアミンを変えることによるアントラセンの分子配列およびこれに伴う蛍光発光の変化を見出した。これはコンビナトリアルケミストリー的手法によって組み合わせるアミンを試すことでアントラセンのもつ機能を様々に引き出すことができるため、機能性材料の探索において有用であると考えられる。
  • 月形 信太郎, 種田 将嗣, 網本 貴一, 小山 弘行, 磯部 敏幸, 川東 利男
    セッションID: 2A05
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/31
    会議録・要旨集 フリー
    N-サリチリデンアニリン類結晶のフォトクロミズム現象の発現には、分子の光異性化を許容する反応空間が結晶内に確保されていることが必要である。本研究では、メソポーラスシリカと種々のN-サリチリデンアニリン類とのハイブリッド化合物を作り、そのクロモトロピズム挙動を考察した。N-サリチリデン-4-ヒドロキシアニリンのメソポーラスシリカ包接体においてフォトクロミズム現象が観測された。メソ孔における光異性化反応場の確保と隣接分子間相互作用を考慮した分子設計が、新規有機-無機ハイブリッドフォトクロミック化合物の創製に重要であることがわかった。サーモクロミズム現象についても考察した。
  • 大谷 裕之, 角田 裕介
    セッションID: 2A06
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/31
    会議録・要旨集 フリー
    熱安定性に優れ、低分子量であるにも拘わらず深く着色した非ベンゼン系発色団の開発研究の一環として、種々の置換基を有する6-フェニルアズレン類1を設計・合成し、その電子状態について詳細に検討してきた。また、化合物1の分子構造についても、X線結晶構造解析や分子軌道計算を用いて検討した。その結果、共役末端置換基の電子供与性の増大に伴って、アズレン環とベンゼン環との捩れ角が減少し、それに伴って、電子スペクトルの長波長シフトが起こることが明らかとなった。また、合成したビフェニル型アズレン類1の蒸着膜形成にも成功し、それらの固体状態での電子スペクトルの検討も行ったので併せて報告する。
  • 瀧宮 和男, 功刀 義人, 近田 安史, 新原 直人, 大坪 徹夫
    セッションID: 2A07
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/31
    会議録・要旨集 フリー
    新しい有機電界効果トランジスタ材料の開発を目指し、ベンゾジカルコゲノフェン誘導体の開発を行った。ベンゼン環上に二つのカルコゲノフェン環を同時に縮環する合成法を確立することで、硫黄、セレン、テルルと三種のカルコゲノフェン誘導体全てを合成することが出来た。また、これらの化合物を用いた薄膜トランジスタにおいて、ホールで0.1cm2/Vsを超える高い移動度をもつ化合物を見出すと共に、カルコゲン原子の違いによりトランジスタ特性に顕著な違いがあることも明らかとなった。これらに加え、薄膜での配向性やX線構造解析の結果も併せて詳細に報告する。
  • 園田 高明, 竹内 宗孝, 佐野 充
    セッションID: 2A08
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/31
    会議録・要旨集 フリー
    リチウム電池電解液のモデル系として実験に近い濃度でLiPF6 とLiBF4のPC溶液系について分子動力学計算を行い、拡散挙動と分子レベルでの溶液中の局所構造を調べ、実験値と比較した結果について報告する。 (1)リチウムイオンに4分子のPCが溶媒和しているため陰イオンや溶媒分子に比べてリチウムイオンの拡散は遅くなる。(2) 2 mol/dm3までの濃度において、LiBF4/PC系よりもLiPF6/PC系のイオン伝導度が高いのは、LiPF6/PC系でdirect contact ion pairが生成しにくいためである。(3) リチウムイオンおよびPCの拡散がLiPF6/PC系に比べてLiPF6/PC系で遅いのは、リチウムイオンにPC4分子が配位した錯イオンがより多く存在しているためである。(4) 1mol/dm3程度の濃度域においても三重イオン以上の多重イオンクラスターが存在すること が示唆された。
  • 脇 稔, 阿部 肇, 井上 将彦
    セッションID: 2A09
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/31
    会議録・要旨集 フリー
    我々はこれまでに、低極性溶媒中で水素結合を介して糖質を認識するエチニルピリジンポリマーの開発に成功している。このポリマーは、糖認識の際にキラルならせん構造をとることから、円二色性スペクトル(CD)によって認識情報の読み出しが可能である。また、このポリマーは単純な骨格が多量化した高分子であり、合成がきわめて容易なことも特徴である。ポリマー骨格上のピリジン環の4位に親水性基を付与することで含水メタノール中での糖認識に成功しており、さらに大きな親水性基を導入することで水中での糖認識への展開が期待できる。本講演では、これらのエチニルピリジンポリマーの糖認識能とその高次構造の制御について発表する。
  • 大和田 智彦, 小嶋 大輔, 黄檗 達人, 二木 史朗, 杉浦 幸雄, 西 義則, 小林 祐次
    セッションID: 2A10
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/31
    会議録・要旨集 フリー
    天然に存在する疎水性アミノ酸、特にアルキル側鎖をもつアミノ酸は、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシンなどで、アルキル炭素数も 1から4 とその疎水性の違いが比較的小さい。疎水性領域を大きく変化させたアミノ酸の機能は不明である。さらに,長いペプチド鎖に導入した際のペプチド2次構造および自己組織化構造への効果は未知である。このような考えをもとに、本研究者は 15員環以上のシクロアルカンを有する新規疎水性α,α-二置換グリシン誘導体を設計・合成し、その自己組織化構造への効果を調査した。2つを18員環シクロアルカンをCα,αに有する新規疎水性アミノ酸に置換したペプチドが100mMの塩濃度で自己集合しヘキサマーを形成することが分かった。
  • Paul Dharam, 篠田 哲史, 三宅 弘之, 築部 浩
    セッションID: 2A11
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/31
    会議録・要旨集 フリー
    生体タンパクを基質とする超分子レセプターの開発にあたっては、多数の認識部位を空間的に組織化し、水中で安定な錯体形成を可能とするなど困難な問題がある。本報では、生体内電子伝達系に関与する代表的なヘムタンパクであるシトクロムcを標的基質として、『プロテオデンドリマー』レセプターを新たに開発した。プロテオデンドリマーは、ポリカチオニックな表面をもつシトクロムcと相補的な静電相互作用を実現するポリアニオニックなペプチド空間と、疎水的なベンジルエーテル骨格、ポリエーテル鎖で被覆した親水性表面、さらに光応答性亜鉛ポルフィリンコア部より構成され、天然タンパク認識系と同程度の安定性をもつ水溶性超分子錯体の形成を可能とした。
  • 遠藤 政幸, 真嶋 哲朗
    セッションID: 2A12
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/31
    会議録・要旨集 フリー
    2本鎖DNAは周期的構造と塩基配列特異的な集合を特徴とする。しかしながら、機能性分子を規則的に集積する足場にDNAを利用するには、その柔軟性のため、導入した分子の空間的な配置を制御することは困難である。本研究では、自己集合に基づき規則的でかつ剛直なDNA構造を構築するため、2本のDNA鎖をリンカーを介して共有結合させた架橋型DNAを用いて、2本の2本鎖DNA集合体超分子の構造を制御した。これをユニットとして、ロッド状、シート状、格子状のDNAナノ構造の構築を目指した。
  • 吉澤 一裕, 戸田 芙三夫
    セッションID: 2B01
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/31
    会議録・要旨集 フリー
    ラセミ体のビス_-_β_-_ナフトール(BNO)と塩化テトラメチルアンモニウムとの包接ラセミ結晶を加熱すると、コングロメレート結晶に変換することを見出した。また、加熱する代わりにMeOHの蒸気と接触させても同様の現象が起こった。この構造変化をIRスペクトル、X線粉末パターンおよびX線結晶構造解析を用いて研究した。ラセミ体の包接結晶がコングロメレート結晶へ変換する現象は極めて興味深いことである。 また、ラセミ体のBNOをアキラルなアンモニウム塩と包接させることにより光学分割した。これは、不斉源を用いない効率の良い光学分割法である。
  • 佐田 和己, 井上 勝成, 藤内 謙光, 宮田 幹二, 松本 彰一
    セッションID: 2B02
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/03/31
    会議録・要旨集 フリー
    様々な脂肪酸の1_-_ナフチルメチルアミン塩が同形の二重層状結晶を形成することを利用して、複数の脂肪酸の混合物から混晶を作成した。混晶の層間距離をXRDで測定することで、混合した脂肪酸の炭素数の平均値を割り出すことができた。
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