-
赤羽 良一, 岡田 洋平, 千葉 一裕
セッションID: A01
発行日: 2009年
公開日: 2009/11/20
会議録・要旨集
フリー
オレフィンカチオンラジカルは合成化学的観点からも、また、反応中間体化学の観点からも興味深い化学種である。我々は電極反応を利用した、オレフィンカチオンラジカルを経由する効率的なシクロブタン環形成反応を開発してきたが、今回、環形成が、基質オレフィンの構造の効果、特に、アルコキシフェニル基によって顕著に影響を受けるという事実を見いだした。これに対して、反応論的、電気化学的(CVなど)、さらに計算化学的に検討を加え、アルコキシフェニル基の役割を解明したので、それについて報告したい。
抄録全体を表示
-
狩野 佑介, 池田 浩, 落合 鋼志郎, 高橋 康丈, 水野 一彦
セッションID: A02
発行日: 2009年
公開日: 2009/11/20
会議録・要旨集
フリー
本研究では,光誘起電子移動(PET)反応を用いて5,5-ジメチル-2,3-ビス(アルファ-スチリル)シクロペンタジエンから生ずるテトラメチレンエタン(TME)型ラジカルカチオンとそのビラジカルを観測した.選択的にTME型ラジカルカチオンとそのビラジカルをそれぞれ観測するために,二種類の増感条件(カチオン性増感剤–補増感剤,中性増感剤)を用いた.
溶媒効果,増感剤効果,トラップ剤添加実験,および時間依存密度汎関数法により算出した電子遷移との比較により,観測された過渡吸収スペクトルの帰属を行った.
抄録全体を表示
-
中村 岳史, 田村 大志, 藤原 好恒, 安倍 学
セッションID: A03
発行日: 2009年
公開日: 2009/11/20
会議録・要旨集
フリー
これまでに当研究室では、シクロペンタン-1,3-ジラジカルの最安定スピン多重度が2位の置換基により制御できることを見出している。本研究では、この知見をもとにテトララジカルのスピン整列法の開発に取り組んだ。理論的な研究により2位上の置換基を適切に選択することでこれらのポリラジカル種のスピン多重度の制御が可能になることが明らかになった。また実験的にも反応性や性質について分光学的手法を用いて調査したので報告する。
抄録全体を表示
-
北條 正司, 上田 忠治, 中野 聡之, 青木 翔
セッションID: A04
発行日: 2009年
公開日: 2009/11/20
会議録・要旨集
フリー
各種の有機溶媒―水混合溶媒中において、様々のハロゲン化アルキル類のソルボリシス反応に及ぼすアルカリ金属及びアルカリ土類金属過塩素酸塩の効果を検討した。金属塩濃度の増加により典型的なSN1基質の反応速度定数の対数値log kは、直線的に増加した。反対に、SN2基質のそれは減少した。様々のカルボカチオンの安定度(delta G値:文献値)と金属塩添加による反応速度増加(delta log k)の間に直線性が見出された。有機溶媒の金属イオンに対する及び脱離基に対する溶媒和力は、SN1基質の反応速度の増加に直接影響を及ぼした。
抄録全体を表示
-
臼井 聡, 田中 愛子, 坪谷 祥子, 梅澤 幸弘, 間 健, 岡村 睦雄
セッションID: A05
発行日: 2009年
公開日: 2009/11/20
会議録・要旨集
フリー
α-およびβ-位に電子吸引性基であるCNおよびCF
3基を有する、α-CN-α-CF
3-フェニルエチルトリフラート (1)、β-CN-β-CF
3ーフェニルエチルトリフラート (2)、α-CN-β-CF
3-フェニルエチルトリフラート (3) のアセトリシス速度に対するLArSR式による置換基効果解析は、それぞれρ=-3.28, r
+=0.98, ρ=-3.48, r
+=0.93, ρ=-2.76, r
+=1.06 を与えた。
抄録全体を表示
-
藤田 守文, 宮田 和志, 大久保 祐弥, 杉村 高志
セッションID: A06
発行日: 2009年
公開日: 2009/11/20
会議録・要旨集
フリー
アシロキシブテンと超原子価ヨウ素(III)との反応において、分子内アシロキシ基が隣接基関与してジオキサニルカチオン中間体を与え、テトラヒドロフラン生成物に至ることを報告した。カチオン中間体の環状構造による立体規制のため、立体制御されたテトラヒドロフラン生成が期待できる。生成物の立体化学から中間体カチオンの反応性について議論するとともに、ジアステレオおよびエナンチオ選択的環化反応の適応範囲を示す。
抄録全体を表示
-
岩倉 いずみ, 小林 孝嘉
セッションID: A07
発行日: 2009年
公開日: 2009/11/20
会議録・要旨集
フリー
我々は誘導ラマン過程を利用することで、5fsパルスレーザーにより熱反応をトリガーできることを見出した。そこで、アリルビニルエーテルのクライゼン転位反応に伴う分子構造の変化を直接観測し、反応機構を明らかにすることを試みた。その結果、以下に示す3段階の反応であることを明らかにした。(1)C-O結合長増加に伴う、bis-allyl構造を有する中間体の生成。(2)弱いC-C結合生成に伴う、芳香族性を有する6員環構造中間体の生成。(3)協奏的なC-O結合開裂とC-C結合生成に伴う、アリルアセトアルデヒドの生成。
抄録全体を表示
-
藤井 一生, 川口 美和, 岩橋 篤秀, 伊佐 公男, 中田 隆二, 前川 哲也, 山岡 寛史
セッションID: A08
発行日: 2009年
公開日: 2009/11/20
会議録・要旨集
フリー
掲題系ラジカル陽イオンの気相単分子分解を、構造と反応性の関連について多重水素転位に注目して検討してきた。今回、新たにインダン-2-カルボニル基をアシル基にもつラクタム類を重水素標識体を含めて合成し、電子イオン化によって生じる分子イオンやフラグメントイオンを基質に選び、4セクタータンデム質量分析計の第3自由空間での反応性を検討したので、既報と結果とも比較しながら報告する。測定条件の特徴は、高エネルギー条件(加速10 keV)で基質・生成物イオンをいずれも高分解能(分解能1000, 10%谷)で観測できる点であり、重水素標識体による検証にも最適である。
抄録全体を表示
-
内丸 忠文, 五東 弘昭, Kumar Indresh, 石川 勇人, 林 雄二郎
セッションID: A09
発行日: 2009年
公開日: 2009/11/20
会議録・要旨集
フリー
ジフェニルプロリノールシリルエーテル触媒の存在下、分子内にフルベンとアルデヒド官能基を有する基質を処理すると、合成化学的に有用なトリキナン誘導体が収率良く、高エナンチオ選択的に得られることを見出した。本反応は、反応系内でアルデヒド官能基とプロリノール触媒から生成するエナミンとフルベンの間の分子内[6+2]付加環化反応を経て進行する。密度汎関数計算を行い、本反応の反応経路を追跡したところ、ツビッターイオン型中間体が[6+2]付加環化反応の中間体として示唆された。さらに、[6+2]付加環化生成物は、[1,5]シグマトロピック転位を起こして異性化することが示唆され、その異性化の中間体として4員環スピロ型中間体が想定された。
抄録全体を表示
-
尾谷 優子, 川端 猛夫, 大和田 智彦
セッションID: A10
発行日: 2009年
公開日: 2009/11/20
会議録・要旨集
フリー
アミノ酸誘導体から生成するエノラートの不斉記憶型の立体選択的環化反応について、立体選択性の発現機構を理論計算(密度汎関数法)を用いて検討した。本反応では用いる塩基の種類(カリウムおよびリチウムアミド塩基)や反応溶媒によって分子内環化生成物のキラル中心の立体配置が異なる。本計算研究により、塩基のカウンター金属の配位形式の違いや溶媒の極性によって、基質や軸不斉エノラートのコンホメーションの安定性や反応性が異なることが立体選択性の起源となることを明らかにした。
抄録全体を表示
-
都築 誠二, 内丸 忠文, 三上 益弘
セッションID: A11
発行日: 2009年
公開日: 2009/11/20
会議録・要旨集
フリー
糖と受容体タンパク質の相互作用においては糖の疎水面の C-H 結合がアミノ酸の芳香環と接していることが多い。相互作用の詳細を明らかにするためにフコースとベンゼン、フェノール、インドールの相互作用を高精度の ab initio 分子軌道法で解析した。その結果、糖の疎水面と芳香環の間にはかなり強い引力が働くこと、引力の大部分は分散力だが、静電力の寄与も無視できないことが分かった。
抄録全体を表示
-
金野 大助, 鈴木 康光, 友田 修司
セッションID: A12
発行日: 2009年
公開日: 2009/11/20
会議録・要旨集
フリー
溶媒中におけるヒドリド試薬の構造を第一原理分子動力学シミュレーションによって解析し、その結果を基に分子軌道計算によって、ケトンのヒドリド還元における反応機構の解明を試みた。その結果、溶媒分子の存在が遷移状態構造に大きく影響し、さらには面選択に関与していることが明らかとなった。
抄録全体を表示
-
野平 博之
セッションID: A13
発行日: 2009年
公開日: 2009/11/20
会議録・要旨集
フリー
分子軌道(MO)理論は定常状態を仮定したBorn-Oppenheimer近似法に基づいて構築されている。しかし、時間と共に変化する化学反応の中間過程への適用には限界があると考えるべきである。ここでは、Schrodinger方程式の成り立ちを考察した上で、素反応過程における軌道相の最小変化という考えに基づく動的相関図の有効性と福井-Woodward-Hoffmann理論の統一理論を再提起する。
抄録全体を表示
-
佐藤 真, 山高 博, 古明地 勇人, 望月 祐志, 中野 達也
セッションID: A14
発行日: 2009年
公開日: 2009/11/20
会議録・要旨集
フリー
いまや量子化学計算は反応解析における有用な道具として広く
用いられている。しかし計算資源の問題から、溶媒分子を直接計算に
取り入れた溶液系に対する第一原理的な計算は非常に困難である。
この問題はフラグメント分子軌道法(FMO)を用いることによって解決され、
分子動力学法(MD)と組み合わせたFMO-MDを用いた反応解析を行った。
本研究では水溶液中におけるホルムアルデヒドのアンモニアによる
アミノ化反応を取り上げた。
抄録全体を表示
-
小野 泰蔵, 深谷 治彦
セッションID: A15
発行日: 2009年
公開日: 2009/11/20
会議録・要旨集
フリー
高度に枝分かれしたperfluoroolefinの合成を行うためにヘキサフルオロプロペン三量体へのRuppert-Prakash試薬によるトリフルオロメチル化反応について種々検討した。その結果、DMF, DMSO,Dimethoxyethane,diglyme, triglymeなどの非プロトン性極性有機溶媒ではモノトリフルオロメチル化とジトリフルオロメチル化反応が進行するが、1,3-dimethylimidazolidinoneを溶媒として用いた場合には、モノトリフルオロメチル化反応が選択的に進行した。
抄録全体を表示
-
小泉 拓也, 中田 侑助, 大嶋 健介
セッションID: A16
発行日: 2009年
公開日: 2009/11/20
会議録・要旨集
フリー
ビニルジアゾ化合物の金属触媒分解により生じるビニルカルベノイドと2-アリール-1,3-ジチオランとの反応により、中間に生じたビニルスルホニウムイリドは単離されることなく環拡大をし、6員環含硫黄生成物である1,4-ジチアシクロヘキサン誘導体と8員環生成物である1,4-ジチア-5-シクロオクテン誘導体を与えた。また、2-アリール-1,3-ジチオランのベンゼン環上の置換基の生成物分布に及ぼす効果についても述べる。
抄録全体を表示
-
中田 和秀, 藤尾 瑞枝, 西本 吉助, 都野 雄甫
セッションID: A17
発行日: 2009年
公開日: 2009/11/20
会議録・要旨集
フリー
ベンジル位カチオンの安定性に及ぼす置換基効果の解析では、置換基の電子効果を誘起効果と共鳴効果に分離して評価する湯川-都野式が精度よく適用される事は、実験的・理論的に確立している。一方で、本式のアニオン系の置換基効果に対する適用例は非常に少ない。そこで、種々のベンジル位アニオン系の気相安定性を理論計算によって決定し、各系の置換基効果を比較した。アニオンの安定性にどのような電子効果が寄与するのか検討した。
抄録全体を表示
-
脇坂 昭弘, 園田 高明, 小野 泰蔵, 深谷 治彦, 都築 誠二, 三島 正章
セッションID: A18
発行日: 2009年
公開日: 2009/11/20
会議録・要旨集
フリー
超分子構造の骨格の形成に寄与するハロゲン結合と水素結合の制御因子を解明するため、両相互作用によって形成されるクラスター構造を質量分析法によって解析した。ハロゲン結合についてはペンタフルオロヨードベンゼン-ピリジン系、水素結合系についてはフェノール-ピリジン系に注目しクラスター構造を比較したところ、どちらのクラスター構造についても酸-塩基相互作用の効果が顕著に現れることが明らかになった。
抄録全体を表示
-
三島 正章, 園田 高明, 張 敏, 深谷 治彦, 小野 泰蔵
セッションID: A19
発行日: 2009年
公開日: 2009/11/20
会議録・要旨集
フリー
種々の多フッ化有機化合物の気相酸性度に及ぼす含フッ素置換基効果に関してMO法を用いた理論計算およびFT-ICRMS法を用いた気相酸性度測定実験を行った。含フッ素有機アニオン種の安定化におよぼす超共役安定化相互作用の大きさについて考察した結果について報告する。
抄録全体を表示
-
バダル Md. ミザヌル ラハマン, 三島 正章
セッションID: A20
発行日: 2009年
公開日: 2009/11/20
会議録・要旨集
フリー
Reactions of substituted phenylketenes generated by light irradiation of the corresponding 2-diazoacetylbenzene with amines in MeCN were investigated by the time-resolved infrared detection (TRIR). Detailed analysis of the substituent effect for a process of formation of an intermediate (amide enol) showed curved correlations with reactivity. The degree of curvature was found to change with nucleophilicity of amines, suggesting a change of transition structure.
抄録全体を表示
-
山口 雄規, 中田 憲男, 石井 昭彦
セッションID: A21
発行日: 2009年
公開日: 2009/11/20
会議録・要旨集
フリー
ジベンゾバレレニル基を有するヒドリド(セレノラト)白金(II)錯体の熱反応から生成した四員環セレナプラチナサイクル
1とDMADとの反応から対応するカルボセレネーション付加体
2(ジエステル)が得られた。この付加体
2は蛍光極大波長494 nmで強い蛍光を示すことを見出した(蛍光量子収率0.66)。付加体
2は加水分解により、ジカルボン酸
3を与え、さらにその熱反応からは酸無水物
4が得られ、それらの蛍光極大波長はそれぞれ507、517 nmと長波長シフトした。
抄録全体を表示
-
佐々木 茂, 横山 達矢, 森田 昇
セッションID: A22
発行日: 2009年
公開日: 2009/11/20
会議録・要旨集
フリー
トリアリールアミン系機能性色素材料骨格のアミン部位を立体混雑したトリアリールホスフィンに置き換えた化合物を合成しその構造と性質を検討した。ボリル基、ボリルチエニル基等と共役した立体混雑したトリアリールホスフィンをブロモアリール基を有するトリアリールホスフィンを鍵合成中間体として合成し、その紫外可視、蛍光スペクトル及び電気化学的性質を検討しところ、化合物のオレンジ色に対応する吸収及び比較的Stokes shift の大きな蛍光が観測された。
抄録全体を表示
-
齋藤 有弘, 宮島 徹, 俣野 善博, 福島 達也, 梶 弘典, 今堀 博
セッションID: A23
発行日: 2009年
公開日: 2009/11/20
会議録・要旨集
フリー
ホスホールは高い電子受容能を持つ複素環化合物であるが、化学的・熱的に安定な新規パイ共役ホスホールの構築をめざして、ホスホール環の両ベータ位にナフタレン環が縮環した三種類の誘導体を設計し、対応するナフタレン、アセナフテン、アセナフチレンジインよりチタナサイクルを経由する方法を用いて効率よく合成することに成功した。得られた化合物の構造-物性相関を系統的に調べたので、その結果についても報告する。
抄録全体を表示
-
三宅 秀明, 狩野 直和, 川島 隆幸
セッションID: A24
発行日: 2009年
公開日: 2009/11/20
会議録・要旨集
フリー
化学結合の分極はその反応性に大きく影響を及ぼすため、種々の官能基の極性変換が研究されてきたが、水素原子の極性変換は困難であった。今回、我々は水の水素原子を6配位リン原子上へと移動させることで、その極性を変換することに成功した。この手法を用いてD
2Oの重水素を極性変換し、カルボニル化合物を還元的に重水素化することができた。本手法は遷移金属を用いずに温和な条件で進行する重水素化ラベル方法として役立つと期待される。
抄録全体を表示
-
井本 裕顕, 森崎 泰弘, 中條 善樹
セッションID: A25
発行日: 2009年
公開日: 2009/11/20
会議録・要旨集
フリー
本研究では、光学活性ビスホスフィン化合物を構成要素として用いることにより、trans-1,4-ジホスファシクロヘキサンの立体特異的合成法および光学活性18-ジホスファクラウン-6合成法を確立したので詳細について報告する。特に、光学活性18-ジホスファクラウン-6は、ゲスト分子と直接相互作用するヘテロ原子に不斉点を有する光学活性クラウンエーテルの初めての合成例である。
抄録全体を表示
-
秋葉 欣哉, 大越 昌樹, 菊池 那明, 渥美 照夫, 中井 浩巳
セッションID: A26
発行日: 2009年
公開日: 2009/11/20
会議録・要旨集
フリー
秋葉らは3中心4電子超原子価結合の概念に基づき、オクテットを超え、中心炭素原子が形式的に10個の価電子を収容する安定な5配位超原子価炭素化合物(10-C-5)を合成した。
本研究では、同様の概念に基づき12個の価電子を収容する、6配位超原子価炭素化合物(12-C-6)の安定構造が存在することを量子化学計算により示し、またその誘導体における置換基の影響を解析し、より安定な超原子価結合を有する12-C-6化合物を提案する。
抄録全体を表示
-
大塚 恭平, 石田 真太郎, 久新 荘一郎
セッションID: A27
発行日: 2009年
公開日: 2009/11/20
会議録・要旨集
フリー
これまで我々は 1,2,2,3,4,4-ヘキサ-
tert-ブチルビシクロ[1.1.0]テトラシランおよびその高周期 14 族元素類縁体の合成を行ない、これらの化合物の橋頭位間の結合がπ単結合であることを報告した。今回、我々は橋頭位にフェニル基が置換した 2,2,4,4-テトラ-
tert-ブチル-1,3-ジフェニルビシクロ[1.1.0]テトラシランの合成に成功したので報告する。X 線結晶構造解析の結果、この化合物は結晶中において π 単結合を形成し、そのπ軌道はフェニル基のπ軌道と共平面に位置しており、π単結合とフェニル基は共役していることが明らかとなった。また、この共役によって紫外可視吸収スペクトルにおける π-π
* 吸収帯は約 85 nm 長波長シフトすることがわかった。
抄録全体を表示
-
鈴木 克規, 松尾 司, 橋爪 大輔, 笛野 博之, 田中 一義, 玉尾 皓平
セッションID: A28
発行日: 2009年
公開日: 2009/11/20
会議録・要旨集
フリー
本研究では、嵩高い縮環型立体保護基を有するトリブロモシランの還元反応からシクロブタジエンのケイ素類縁体と考えられる不飽和ケイ素四員環化合物を合成することに成功した。そのX線単結晶構造解析からほぼ等価な環内ケイ素-ケイ素結合をもつ特異な平面ひし形構造が明らかとなった(添付図)。発表ではDFT計算を用いて考察を行い、その結合状態について詳細に議論する。
抄録全体を表示
-
佐藤 貴広, 水畑 吉行, 時任 宣博
セッションID: A29
発行日: 2009年
公開日: 2009/11/20
会議録・要旨集
フリー
既に、速度論的安定化の手法により、種々のケイ素―ケイ素二重結合化学種(ジシレン)が安定な化合物として合成・単離されているが、最近では、そのさらなる分子変換反応やジシレン部位をπ拡張共役部位へと組み込むことに注目が集まっている。我々は、多様な反応性を有しπ拡張共役ユニットとして期待できるアルキニル基をジシレンの中心ケイ素上に導入した1,2-ジアルキニルジシレンの合成および単離に初めて成功し、その構造や物性を明らかにしたので報告する。
抄録全体を表示
-
竹内 勝彦, 井腰 剛生, 一戸 雅聡, 関口 章
セッションID: A30
発行日: 2009年
公開日: 2009/11/20
会議録・要旨集
フリー
当研究室では、2004年に初めての安定ジシリンの合成・単離に成功して以来、様々な有機小分子との反応性も明らかにしてきた。本研究では、ジシリンと二級アミン及びヒドロボランとの反応を検討した。その結果、1,2-付加体であるアミノ置換及びボリル置換ジシリンが得られ、各種NMR、X線結晶構造解析により構造を明らかにした。また、ジシレンπ軌道と窒素上の非共有電子対、ホウ素上の空の2p軌道との共役効果についても考察した。
抄録全体を表示
-
徐 征, 金 娟, 李 志芳, 邱 化玉, 蒋 剣雄, 来 国橋, 吉良 満夫
セッションID: A31
発行日: 2009年
公開日: 2009/11/20
会議録・要旨集
フリー
密度汎関数法[B3LYP/6-31++G(d,p)]を用いて、ケイ素-塩素結合に対するジメチルシリレンの挿入反応の機構の研究を行い、反応の容易さに及ぼす置換基の効果を詳しく検討した。シリレンのクロロシランSi-Cl結合への挿入は三員環状遷移状態を経て進行するが、クロロシラン上の環面内置換基の効果は電子的であり、一方、面外置換基は立体効果が著しく、活性化エネルギーはそれぞれ、置換基定数(シグマI)および立体置換基定数(Es)と相関することが見出された。
抄録全体を表示
-
春増 健太
セッションID: B01
発行日: 2009年
公開日: 2009/11/20
会議録・要旨集
フリー
非対称に置換されたチオフェン4量体と3量体分子ワイヤーを新規に合成し、電子状態の検討を行った。3量体では両端子間に相互作用は見られなかったが、4量体では両端子間に相互作用が見られた。
抄録全体を表示
-
豊田 耕三, 勝田 弘, 辻 恭朋, 森田 昇, 岩本 武明
セッションID: B02
発行日: 2009年
公開日: 2009/11/20
会議録・要旨集
フリー
我々は最近、新規で汎用性のあるスペーサーとして、オリゴアレーンを主軸としエチニル基部分を側鎖とするビス(2-エチニル-3-チエニル)アレーン型スペーサー(ETArスペーサー:中央のベンゼン環が1個の場合はETBスペーサーと略す)をデザインした。今回はチエノ[3,2-b]チオフェンの補助スペーサーとしての機能に着目し、3-エチニルチエノ[3,2-b]チオフェン骨格あるいはチエノ[3,2-b]チオフェン骨格を有する幾つかの化合物を合成した。これと類似のユニットとの連結・脱保護・連結の繰り返しにより配列制御連結型の高分子量配位子および錯体を構築できると考えられる。
抄録全体を表示
-
村岡 宏樹, 小沢 紘平, 小川 智
セッションID: B03
発行日: 2009年
公開日: 2009/11/20
会議録・要旨集
フリー
多電子移動能を有する分子は、有機導電体の候補として材料科学分野において着目されるだけでなく、その電子移動過程に関する研究は基礎化学分野においても興味がもたれている。本研究では、このような背景のもと有機導電体への応用を指向した多電子移動型分子開発として、チオフェン、2,2’-ビチオフェン、2,2’;5’,2’’-ターチオフェンをスペーサーとして複数のフェロセンユニットを連結した有機‐有機金属複合型分子の合成、構造、酸化還元特性評価を行ったので報告する。
抄録全体を表示
-
廣瀬 智哉, 家 裕隆, 八百 篤史, 高木 紀明, 川合 眞紀, 木口 学, 安蘇 芳雄
セッションID: B04
発行日: 2009年
公開日: 2009/11/20
会議録・要旨集
フリー
分子エレクトロニクスへの応用を目指して、様々な電極との接合が可能な分子の開発を行っている。今回はピリジル基、アミノ基およびセレン官能基を有する三脚型アンカー化合物の合成を行った。それらを用いて電極上に単分子膜を作製し、サイクリックボルタンメトリー測定から吸着量や安定性の評価を行った。X線光電子分光法(XPS)、紫外線光電子分光法(UPS)測定で結合状態の評価や、フェニレンエチニレン分子ワイヤを用いた電気伝導度測定も行ったのでその結果も報告する。
抄録全体を表示
-
荘司 貢平, 熊木 大介, 西田 純一, 時任 静士, 山下 敬郎
セッションID: B05
発行日: 2009年
公開日: 2009/11/20
会議録・要旨集
フリー
現在、有機半導体材料を用いた有機電界効果トランジスタ(OFET)は電子ペーパーや次世代ディスプレイとして多くの関心を寄せている。有機半導体材料において、n型材料はp型に比べ、溶解性、移動度、大気安定性の観点から課題が多く残されている。本研究ではベンゼンやアントラセンをコアとしたさまざまなビニル化合物で有機電界効果トランジスタ(OFET)を作成した。ビニル化合物においても高移動度なn型FET特性を観測することができ、なおかつアントラセンをコアとした化合物ではn型とp型の両方の特性を示すアンバイポーラー特性を示した。
抄録全体を表示
-
鈴木 雄喜, 宮碕 栄吾, 瀧宮 和男
セッションID: B06
発行日: 2009年
公開日: 2009/11/20
会議録・要旨集
フリー
低いLUMOレベルを持つTCNQ及びその類縁体は大気下駆動できるn型OFET材料として期待できる。しかし、それらの多くは難溶であるため、低コスト・大面積塗布などの利点を有する溶液プロセス可能な材料としては不利である。そこで、可溶化修飾としてアルコキシカルボニルシアノメチレン基を有するチエノキノイド化合物に着目した。講演では、それらの合成法、物性、構造特性と併せてOFET素子の特性を報告する。
抄録全体を表示
-
村瀬 真, 林 英樹, 宮林 毅, 小島 雅彦
セッションID: B07
発行日: 2009年
公開日: 2009/11/20
会議録・要旨集
フリー
フェナザシリンの一量体、二量体、ホモポリマーを用いたトランジスタ素子の作製を行ない、その特性を調べた。その結果、重合度が高くなるほど特性が向上することがわかった。続いて、種々の置換基を持つポリフェナザシリンを用いたトランジスタ素子の作製を行ない、その特性を評価した。その結果、分子中のフェナザシリンの占める割合だけでなく、成膜性等が特性に寄与することがわかった。
抄録全体を表示
-
石井 努, 平島 亮一, 堤 尚孝, 又賀 駿太郎
セッションID: B08
発行日: 2009年
公開日: 2009/11/20
会議録・要旨集
フリー
電子輸送材料として期待されるn型有機半導体ヘキサアザトリフェニレンに、3個のフェナンスレン及びフェナントロリン環を縮環させることで、拡張したパイ電子系を構築した。各種機器測定の結果、それらの新規誘導体が、高速電子輸送に適する1次元集積能力を有することを見出したので、その結果について報告する。
抄録全体を表示
-
山口 英裕, 照井 通文, 野口 裕, 上田 里永子, 大友 明, 松田 建児
セッションID: B09
発行日: 2009年
公開日: 2009/11/20
会議録・要旨集
フリー
ギャップ間隔10 nmの電極を金ナノ粒子とフォトクロミックジアリールエテンによって架橋し、その電導特性の光応答性を評価した。この構造体は12Kにおいて単一電子トンネリング特有のクーロンブロッケードを示した。さらに紫外光を照射することにより、電流値が不連続に変化することが認められた。単一電子トランジスタの理論による解析の結果、一分子レベルでの変化が金ナノ粒子の帯電ポテンシャルをデジタルにシフトさせることが明らかとなった。
抄録全体を表示
-
一木 孝彦, 松尾 豊, 中村 栄一
セッションID: B10
発行日: 2009年
公開日: 2009/11/20
会議録・要旨集
フリー
今回我々は,[60]フラーレンと[70]フラーレンのカルボン酸誘導体を用いて,ITO電極表面上に自己組織化混合膜を作成し,その光電気化学特性を調べた.得られた混合膜は,二種の分子の吸収波長の差異に由来して,照射する光の波長に応じて発生する光電流方向を逆転させるという興味深い性質を示した.フラーレン誘導体の3次元的にかさ高い構造が,分子間の失活を抑えているものと思われる.
抄録全体を表示
-
高野 勇太, 青柳 元喜, 山田 道夫, 二川 秀史, SLANINA Zdenek, 溝呂木 直美, 生沼 みどり, 土屋 敬広, 前田 ...
セッションID: B11
発行日: 2009年
公開日: 2009/11/20
会議録・要旨集
フリー
今回我々は、カルベン付加によるCe@C
82の誘導体化を行い、2種類の一付加体(
2a,
2b)を高収率・高選択的に得た。吸収スペクトルをはじめとする各種スペクトル測定により構造解析を行った。バルク電解による電気化学的な一電子還元を各々の付加体に対して行い、得られたアニオン体の各種温度における
1H及び
13C NMR測定から、付加体のf電子に由来する磁気異方的な挙動の観測に成功した。
抄録全体を表示
-
丸山 優史, 松尾 豊, 中村 栄一
セッションID: B12
発行日: 2009年
公開日: 2009/11/20
会議録・要旨集
フリー
本発表では,コバルタジチオレン-TTF-フラーレン錯体の合成,構造,及び物性について報告する.今回我々は種々のコバルタジチオレン-TTF-フラーレン錯体をコバルトジカルボニル錯体を原料とした簡便な方法で合成することに成功した.得られたドナーアクセプター錯体は近赤外に電荷移動遷移による強い吸収を持ち,多段階の可逆な酸化還元挙動を示した.これらの錯体の構造と光物性についても報告する.
抄録全体を表示
-
雨夜 徹, 王 文珍, 坂根 裕之, 森内 敏之, 平尾 俊一
セッションID: B13
発行日: 2009年
公開日: 2009/11/20
会議録・要旨集
フリー
我々はπ共役系ボウル型化合物(πボウル)スマネンとシクロペンタジエニル(Cp)Fe(II)カチオンとの錯形成を検討し、concave面側から選択的に配位した錯体の合成に初めて成功している。今回、キラルなCpFe(II)スマネン錯体を合成した。初の不斉πボウル錯体である。また、CpRu(II)スマネン錯体がボウル反転挙動を示すことも明らかにしたので併せて報告する。
抄録全体を表示
-
東林 修平, 櫻井 英博
セッションID: B14
発行日: 2009年
公開日: 2009/11/20
会議録・要旨集
フリー
C3対称syn-トリス(ノルボルネノ)ベンゼン類は近年バッキーボウルの合成中間体や包摂化合物として利用されるカップ型化合物である。光学活性なヨードノルボルネンからパラジウム触媒を用いた環化三量化によって、種々の置換基を有するC3対称syn-トリス(ノルボルネノ)ベンゼン類を合成した。置換基によって生成物の立体選択性に顕著な違いが見られた。その反応機構の考察についても併せて報告する。
抄録全体を表示
-
篠崎 真也, 羽村 季之, 鈴木 啓介
セッションID: B15
発行日: 2009年
公開日: 2009/11/20
会議録・要旨集
フリー
先に我々は、ベンザインの[2+2]環付加反応の反復利用による酸素官能性トリシクロブタベンゼンの効率的な合成法を開発している。今回、この反応を基盤として、四員環上での選択的な置換反応を鍵とする多官能性トリシクロブタベンゼンの効率的合成法を開発することができた。また、四員環の連続的な開裂によるヘキサラジアレンへの熱的異性化や、この性質を利用した三方向への連続的な環付加反応により、トリフェニレン誘導体を選択的に与えることも見出した。
抄録全体を表示