基礎有機化学討論会要旨集(基礎有機化学連合討論会予稿集)
第55回有機反応化学討論会
選択された号の論文の90件中1~50を表示しています
  • 鈴木 啓介
    セッションID: S01
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/10/31
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     本講演では、生理活性物質の重要な構造モチーフの一つである多環式化合物の効率的合成に向けた基礎反応の開拓と、それを基盤とする合成戦略について述べる。鍵反応として、ベンザインとケテンシリルアセタールとの位置選択的[2+2]付加環化反応を用い、そこから各種の天然物に共通した部分構造であるフェニルナフタレン構造への変換について述べる。また、この反応を駆使することにより、天然物ではないが構造化学的に興味の持たれるジシクロブタベンゼン、トリシクロブタベンゼン誘導体の合成についてもふれる。
  • 藤田 誠
    セッションID: S02
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/10/31
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     遷移金属と多座架橋配位子から自己組織化する中空錯体の内部空間を活用し、さまざまな特異現象を発現させることに成功した。たとえば、包接を介して本来相互作用の存在しない2分子間に金属-金属結合や混合原子価状態をつくることができた。また、Diels-Alder反応オレフィンの光二量化が高効率、高立体選択的に進行することを明らかにした。さらに、ランダムコイルペプチド鎖を中空錯体と相互作用させ、ペプチド二次構造を誘起することにも成功した。また、巨大中空構造(直径5nm)の内面の化学修飾により特異内面に囲まれたさまざまな孤立空間を自在構築した。
  • 安倍 学, 服部 真範, 竹上 明伸, 益山 新樹, 林 高史
    セッションID: O01
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/10/31
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    我々はこれまで、2位に酸素官能基を有する1,3_-_ビラジカルS-DRが一重項基底状態である事を理論と実験の両面から証明してきた。本研究では、その閉環体の熱反応で観測される酸素転位反応の機構を明らかにするために、実験的にその転位反応の位置および立体選択性を調査するとともに、理論計算による反応経路の妥当性も評価した。その結果、一重項ビラジカルが超共役に基づく双性イオン性ZIを有している事を明らかにし、その化学的性質が酸素転位反応の位置および立体選択性を決定している事を証明した。
  • 田中 太, 甲 千寿子, 上田 実, 池田 浩
    セッションID: O02
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/10/31
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    テトラメチレンエタンの酸素類縁体の一つ,オキサテトラメチレンエタン
    (OTME) の特性を調べるため,母体OTMEの理論計算による評価,
    及びアリール置換型OTMEの理論計算,
    生成物解析,分光学的手法による評価を行った.
    本講演では,理論計算による評価を中心に,
    それぞれの立体的及び電子的構造の考察について発表する.
  • 赤羽  良一, 須賀 良浩, 細井 康平, 飯野 誠之, 鎌田 正喜, 伊藤 廣記, 池田 浩
    セッションID: O03
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/10/31
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    最近我々は、ベンジル水素を持つカチオンラジカルの分子内水素移動により、母体カチオンラジカルより安定な水素移動型異性体が生成し得ることを理論的に見出した。これらは、母体カチオンラジカルにはない、正電荷とスピンの、新規な混合共役系を構成する。この発表では、フルオラデン、フェナレン、トリフェニルメタン系化合物、ある種のアルケンやアルキンなど、ベンジル水素を有する芳香族炭化水素のカチオンラジカルとそれらの水素移動型異性体の共役系と安定化因子について、DFT計算(B3LYP/6-31G(d)レベル)により検討した結果について報告する。また、いくつかの系において、脱プロトン化反応における実験結果との関連についても考察する。
  • 藤田 守文, 江口 明良, 平山 明香, 奥山 格
    セッションID: O04
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/10/31
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    オキシ官能基を通してキラル側鎖を導入したナフタレン化合物に対して、一重項酸素の付加反応を行ったところ、低温下でエンドペルオキシドの生成が確認できた。カルボン酸が存在するとエンドペルオキシドは速やかに、ヒドロペルオキシドへ変換される事を見出した。これらの反応生成物のジアステレオマー比およびキラル補助基脱離後のエナンチオマー比から、一重項酸素付加の面選択性を評価したところ、乳酸を組み込んだ基質において高い選択性(94% ee)が得られることがわかった。この選択性の向上においてカルボン酸の会合状態が大きく寄与していると考えており、その詳細について議論する。
  • 松永  洋一郎, 前田  優, 若原  孝次, 土屋  敬広, 石塚  みどり, 長谷川  正, 赤阪  健, Ernst Horn, 与座 ...
    セッションID: O05
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/10/31
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    金属内包フラーレンの中でも、常磁性原子が内包された常磁性内包フラーレンは、非常に興味深い物質群である。これらの分子の配向・制御による磁性材料などへの応用を視野に入れると常磁性内包フラーレンの化学修飾は重要である。常磁性内包フラーレンの一つである La@C82-Aと含窒素三員環化合物であるジアジリンとの反応を検討したところ、カルベンが高い位置選択性で付加することを見いだしたので報告したい。
  • 桑谷 善之, 五十嵐 順一, 伊与田 正彦
    セッションID: O06
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/10/31
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    気相中でのベンゼン会合体の研究から、ベンゼン三量体が大きな会合エネルギーを持つ安定なクラスターを形成することが報告されている。この会合体に対する理論計算からは、C3対称性を持った構造が提唱されているが、これを実験によって確認することは困難である。今回cis-スチルベン骨格を持つ環状六量体である標題化合物の構造について検討し、溶液中でも結晶中でもC3対称性を有する構造がもっとも安定であることを明らかにした。この構造中には三つのベンゼン環の間で協同的にCH-π相互作用が働いており、その結果このコンフォメーションが安定化されていると考えられる。この3つのベンゼン環の相対配置は上で述べた会合体の構造と酷似しており、その安定化エネルギーとの関連から興味深い。講演ではベンゼン三量体のCH-π相互作用による安定化を標題化合物の配座安定性から議論する。
  • 金野 大助, 三浦 雅也, 友田 修司
    セッションID: O07
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/10/31
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    α位を置換したケトンのリチウムアルミニウムヒドリドによる還元反応を行い、その結果と分子軌道計算によって得られた結果とを併せて考察し、Felkin- AnhモデルおよびCieplakモデルの問題点およびこの反応における面選択性支配因子を解明することを試みた。その結果、実験によって得られた選択性はFelkin-Anhモデルで予測される選択性とは正反対となり、さらに計算によって求められた遷移状態構造は、Cieplakモデルで予測されるものとは異なっていた。また、反応の初期構造の分子構造および分子軌道を検証したところ、この反応では初期段階からカルボニル基およびメトキシ基の二つの酸素がリチウムに配位した構造を取っており、その構造と分子軌道が面選択を決定する主要因となっていることが示唆された。
  • 小林 進二郎, Tidwell Thomas T., Allen Annette, Fedorov Andrei V.
    セッションID: O08
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/10/31
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    ケテンの生成方法としてジアゾケトンの光分解は広く研究されてきた。我々の研究室でも、含窒素芳香核置換ジアゾケトンのレーザ_-_フラッシュフォトリスを行ってきた。検出はUV法とIR法を用いている。ケテンの水和反応やアミノ化反応ではプロトンが窒素を攻撃する化合物が初期に生成することを明らかにした。また、窒素が2_-_位(オルト位)にあるときは、ジアゾケトンが光分解して生成すると考えられるカルベンが窒素を攻撃して、4員環ケトンが不安定化合物として生成するというマトリックアイソレーション法による報告もあり、レーザ_-_フラッシュフォトリシスによってもその検出がかくにんされた。
  • 湯浅  順平, 末延 知義, 福住 俊一
    セッションID: O09
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/10/31
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    生体内の代表的な電子受容体であるキノン類の電子移動還元反応では、その一電子還元体であるセミキノンラジカルアニオンが金属イオンなどのカチオン種と錯形成して安定化されることで、電子移動が活性化される。この場合、電子移動前後の金属錯体の結合様式の違いが電子移動反応の活性化に大きく影響を与えることが予想されるが、電子移動前後の金属イオンとの結合様式と電子移動反応の活性化の程度との関係は、明らかになっていない。本研究ではキノン類とその一電子還元体であるセミキノンラジカルアニオンの金属錯体の結合様式について、電子移動前後の結合様式の違いが電子移動反応に与える影響について調べた。
  • 安井 伸郎, 藤乗 幸子, 真嶋 哲朗
    セッションID: O10
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/10/31
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    9,10-ジシアノアントラセン(DCA)を増感剤とする種々のトリアリルホスフィンの光反応を、酸素雰囲気下、アセトニトリル中で行った。ホスフィンは、対応するトリアリスホスフィンオキシドに酸化された。ガスクロマトグラフによる生成物分析およびレーザーフラッシュフォトリシスの結果から、ホスフィンオキシドは、一重項励起状態DCAへの電子移動で生じるホスフィンのラジカルカチオンが分子状酸素と反応することにより生じることが分かった。
  • 西辻 七菜, 飯田 将行, 前多 肇, 水野 一彦
    セッションID: O11
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/10/31
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    アリルシラン類による非環状の電子不足アルケンの光アリル化反応および光還元反応における立体選択性について検討した。本反応はフェナントレンを光増感剤とする光誘起電子移動反応によって進行し、カルボン酸を添加することによって促進された。1,1-ジシアノ-2-メチル-3-フェニル-1-ブテンの光反応におけるジアステレオ選択性は1当量の乳酸を添加した場合に最も高く、72%deで還元体が得られた。また、1,1-ジシアノ-2-メチル-3,3-ジフェニル-1-プロペンを基質としてエナンチオ選択性について検討した結果、1当量の(S)-マンデル酸を添加した場合に3.4%eeでアリル化生成物が生成することが分かった。
  • 坂本 健吉, 今 喜裕, 土田 和弘, 甲 千寿子, 吉良 満夫
    セッションID: O12
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/10/31
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    最近、我々が合成単離に成功した4-シラトリアフルベン1はシクロプロペニリウムカチオン構造の寄与のため、ケイ素が陰電荷、炭素が陽電荷を持つ。これは通常のシレンとは逆転した分極であり、1がどのような反応性を示すのか興味深い。本研究では、1と種々のケトン類との反応を研究した。その結果、α不飽和ケトン類との反応において、1のケイ素原子がケトンに求核攻撃する新規な反応を見出した。また、1は80℃という穏和な加熱条件下でシラシクロブタジエンに異性化するが、このことを利用して、シラシクロブタジエン6とケトン類との反応を初めて明らかにした。ジ(t−ブチル)シクロプロペノンと1との反応では、高度に歪んだ5-シラビシクロ[3.2.0]へプタトリエン誘導体が得られた。
  • 伊藤 繁和, 三宅 秀明, 吉藤 正明
    セッションID: O13
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/10/31
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    かさ高い置換基で立体保護されたホスファニリデンカルベノイド[R-P=C:]の形式的三量体である1,3,6-トリホスファフルベンは求電子的性質を有し、求核試薬が環外リン原子上に位置選択的に反応する。この時生成するアニオン体をハロゲン化アルキルで処理すると、5員環内のリン原子にアルキル基が導入されるが、酢酸で処理すると環外のリン原子がプロトン化されて、P-H結合を有する安定なイリド体が生成することを見いだした。P-H結合を有するイリド体は、トリホスファフルベンに三フッ化ホウ素やテトラフルオロホウ酸を反応させることによっても得られた。また、単離した1,3,6-トリホスファフルベンの形式的分子内環化反応生成物の単離同定を行った。
  • 長洞 記嘉, 笹森 貴裕, 時任 宣博
    セッションID: O14
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/10/31
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    既に我々は、優れた立体保護基であるTbt基を用いて種々の安定な高周期15族元素間二重結合化合物の合成に成功している。また、フェロセニルジホスフェン(3)の合成研究において、1,3-ジヒドロ-2-フェロセニルトリホスファン(1)を安定な化合物として単離することに成功した。その構造は各種スペクトルデータさらにX線結晶構造解析により決定した。封管中、トリホスファン(1)の重トルエン溶液を加熱したところ、不均化反応が進行し、ホスフィン(2)とジホスフェン(3)が定量的に得られた。この熱分解反応の速度論的考察を行い、活性化パラメーターを求めた。併せて理論計算も行ない、反応経路について検討を行った。
  • 中藤 慎也, 小林 潤司, 川島 隆幸
    セッションID: O15
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/10/31
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    6-カルバホスファトラン1とその互変異性体2の合成と構造についてすでに報告している。今回、平衡下にある1,2の反応性を5-カルバホスファトラン5とともに検討した。1,2の平衡混合物に重メタノールを作用させたところ、2のプロトン交換を通じて1のアピカル位の水素が重水素に置換された。1,2の混合物とPh3CClO4との反応では、1のアピカル位の水素がヒドリドとして引き抜かれたホスホニウムカチオン3が生成した。1,2を触媒量のPhSSPh存在下、光照射したところ、ホスホン酸エステル6が得られた。また、種々のラジカル反応などの検討を行い、反応機構について詳細を検討したので併せて報告する。
  • 山本 陽介, 姜 新東, 松川 史郎, 秋葉 欣哉
    セッションID: O16
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/10/31
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    最近C6H5C(CF3)2OHをジリチオ 化した二座配位子(Martin 配位子)を用いてアピコフィリシティーに反したスピロ型5配位 リン化合物を速度論的な生成物として初めて単離することに成功した。しかし、 O-equatorialのMe置換体は、単離できなかった。それで、このMartin配位子上のト リフルオロメチル基を全てペンタフルオロエチル基に置き換えた配位子を初めて合成し、 Me置換体のO-equatorial体の合成に成功した。O-apical体への位置異性化の自 由エネルギーを測定した。また、このO-equatorial体を原料として、6 配位リン化合 物の単離を検討した。
  • 山岡 寛史, 塩野 景, 岡田 享子, 伊佐 公男, 堂川 尚人, 澤田 正實, 高井 嘉雄
    セッションID: O17
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/10/31
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    掲題化合物を対象に、気相単分子イオン反応における構造と反応性に関して、タンデム質量分析法によるメタステーブル時間軸での挙動を報告する。今回は、ラクタム部分構造の異性体識別を志向して、反応中間体イオンとして提案したイオンーニュートラルコンプレクスの構造と反応性について論じたい。
  • 脇坂 昭弘, 大木 崇弘
    セッションID: O18
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/10/31
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    アルコール分子は水中で自己会合クラスターを形成し、不均一なクラスター構造を形成する。これは疎水性相互作用によって説明され、水分子間の水素結合ネットワークがアルコール分子の自己会合に必要不可欠と考えられてきた。しかし、質量分析法によるクラスター構造解析から、(1)水中でアルコール自己会合クラスターが生成するとき水分子クラスターが分解すること、(2)水以外の有機溶媒(アセトニトリル、ジクロロメタン等)を用いてもアルコール自己会合クラスターの生成が促進されること、が明らかとなった。これにより、溶液中の分子の自己組織化に対する溶媒の重要な役割を考察する。
  • 木下 知己, 岡崎 隆男, 中村 真一, 従野 剛
    セッションID: O19
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/10/31
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    溶液中における反応種とくにイオン種の安定性は、溶媒分子による溶媒和作用に大きく支配されることが知られている。溶媒和は、溶質がイオン種の場合にとくに大きく、カルボアニオンの場合には、安定性の序列が気相中と逆転することも先に見出している。その溶媒和エネルギーは溶媒分子の種類によって相当大きく変化する。しかし、各種有機溶媒中におけるカルボカチオンやカルボアニオンの安定性の定量的評価には、主に水系溶媒中の尺度が用いられており、適合しない場合が少なくない。そこで、水系溶媒中と有機溶媒中におけるこれらのイオンの安定性を、気相中の安定性をもとに、各溶媒中の溶媒和エネルギーを考慮して、定量的に比較検討した。
  • 中田 和秀, 藤尾 瑞枝, 西本 吉助, 都野 雄甫
    セッションID: O20
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/10/31
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    フェノールの酸性度に及ぼす置換基効果は、水中と気相中で大きく異なる。パラ位に電子吸引性共鳴基を導入したフェノールは、気相に比べて水中の酸性度の大きな増大が観測される。この原因を明らかにする目的で理論研究を行なった。まず、置換フェノキシドイオンおよび対応するフェノールのエネルギーを非経験的分子軌道法によって計算し、置換フェノールの相対気相酸性度を決定した。次に、いくつかの水和構造についてエネルギーを計算して相対酸性度を決定し、置換基効果を気相計算値および水中実験値と比較した。フェノキシドの置換基への水1分子の溶媒和が水中の酸性度を再現するために本質的な要素であることが明らかになった。
  • 大賀 恭, 吉良 宜博, 高橋 徹, 浅野 努
    セッションID: O21
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/10/31
    会議録・要旨集 フリー
    2-(2,4-dinitrobenzyl)pyridine()の光照射により生じるエナミン体()が熱的にへ戻る反応速度定数の圧力依存性をエタノール,酢酸メチル,および対応する高粘性媒体2-メチルペンタン-2,4-ジオール,グリセロールトリアセタート中で測定した。反応速度定数の圧力依存性は,溶媒分子が関与する機構と関与しない機構が併発していて,高圧領域では溶媒関与機構が支配的であることを示唆している。一方,高粘性媒体中では,高圧領域で強い反応抑制,すなわち動的溶媒効果が観測された。講演では二次元反応座標モデルに基づいて解析した結果について議論する。
  • 北川 敏一, 小川 紘平, 小松 紘一
    セッションID: O22
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/10/31
    会議録・要旨集 フリー
    強固なシクロアルケン骨格の縮合は、環状π共役系カチオン種を安定化する方法として有効である。本研究では、2個のホモアダマンテン骨格が縮環したシクロペンタジエニル (Cp) カチオンの発生と反応について検討するために、前駆体として新たに合成した塩化物の i) メタノリシス、および ii) ジクロロメタン中でのAg+またはB(C6F5)3による塩化物イオンの引き抜き、を行なった。その結果、i)の条件ではCpカチオンは骨格転位することなくメタノール分子に捕捉され溶媒置換体を与えるが、ii)の条件ではこのカチオンが反芳香族性を避けるためにホモアダマンタン骨格の転位を起こし、安定なアリルカチオンを与えることが明らかとなった。
  • 山高 博, アマル サライ チェトゥ, 長谷川 拡人, 田中 悠也
    セッションID: O23
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/10/31
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    置換ベンジルメチルケトキシムの酸触媒イオン化反応の経路を理論計算ならびに実験によって検討した。DFTおよびMP2計算では、これらのオキシムは単一の遷移状態を経て進行し、置換基によって転位生成物あるいは断片化生成物のいずれかを与える事が示された。その際の反応経路の選択性は、遷移状態構造のわずかな違いに由来する。一方、実験では、転位生成物と断片化生成物の混合物を与えた。この2種の反応経路がどのようにして切り替わるのか議論する。
  • 速水 醇一, 孫 立権, 竹内 怜介
    セッションID: O24
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/10/31
    会議録・要旨集 フリー
    ベンゼンやシクロヘキサン等無極性溶媒中のアミン類による芳香族求核置換反応(SNAr反応) の実態について論究する。始めに、現在行われているアミン二量体による優先攻撃を伴う定常状態機構がなぜ真実を示さないかについて反応機構の要請を詳述し、特にNMR法による直接観測から、現行機構で要請されるシクロヘキサン中での二量体の存在が否定されることを述べるとともに、通常水素結合性錯体の解析に多用されるHildebrand 型解析を行う場合の注意点と、正しい解析法を述べる。ついで、ベンゼン中のH-1 NMR シフトの解析から、二量体の生成定数は0.018 mol-1</SUPdm3弱と極めて小さく、溶液反応においてアニリン二量体が主攻撃種と成り得ないことを簡単な速度論的考察によって示す。
  • 竹上 明伸, 安倍 学, 益山 新樹, 林 高史
    セッションID: P01
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/10/31
    会議録・要旨集 フリー
    我々は、これまで、酸素官能基を有するシクロペンタン-1,3-ジラジカルDR1の最安定スピン多重度が一重項である事を、理論と実験の両面から証明してきた。1,3位にフェニル基を有する一重項ジラジカルの寿命は、室温でナノ秒からマイクロ秒程度と短い。これは、速い分子内環化や2位上置換基の1,2-転位が起こるためである。今回、シクロペンタン-1,3-ジラジカルの2位の炭素原子をSi,Geに変えると、その分子内環化生成物CP2のひずみエネルギーが大きいことや、2位上置換基転位生成物MG2の弱いパイ結合エネルギーのために、1,3-ジラジカルDR2の方が安定であることを量子化学計算により見積り、1,3-ジラジカル種の長寿命化が期待できることを見出した。また、2位の元素としてホウ素を導入したジラジカルDR3も一重項が最安定スピン多重度になる事も見出している。発表では、長寿命1,3-ジラジカルの実験的発生を試みた結果についても報告する。
  • 川南 聡, 安倍 学, 益山 新樹, 林 高史
    セッションID: P02
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/10/31
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    我々はこれまで、シクロペンタン-1,3-ジラジカルDR1 (Y = H)の最安定スピン多重度に及ぼす2位上の置換基(X)効果について検討し、2位に酸素官能基(X = OR)やケイ素官能基(X = SiR3)を有するジラジカルの最安定スピン多重度が一重項であることを見出している。今回、1及び3位に電子求引性置換基や電子供与性置換基(Y)を導入したジラジカルDR2,3の一重項_-_三重項エネルギー差を精査した。その結果、1,3位に電子求引性置換基(Y = CF3)を導入すると、2位上の置換基が酸素官能基(X = OMe)の場合、そのエネルギー差はDR1より小さくなるが、2位がケイ素官能基(X = SiH3)の場合、DR1のエネルギー差よりも大きくなることを見出した。一方、1,3位に電子供与性置換基(Y = OMe)を導入すると、2位が酸素官能基の場合、DR1のエネルギー差より大きくなるが、2位がケイ素官能基であると、三重項状態に変化することも見出した。
  • 濱口 正史, 中石 将宏, 永井 利一, 安倍  学, 益山 新樹, 林 高史
    セッションID: P03
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/10/31
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    アゾアルカンの脱窒素反応はラジカル類の効率的な発生方法として知られているばかりでなく、歪化合物の合成反応としても広く用いられている。例えば、1_-_ピラゾリン誘導体 AZ1 (R = H) の脱窒素反応はシクロプロパン類の合成に使われる。一方、我々は3位に電子求引性の置換基を有するピラゾリン誘導体AZ2 (R = COOMe) の脱窒素反応が、転位生成物を主に与える事を見出してきた。本研究では、そのピラゾリン誘導体の脱窒素反応に及ぼす顕著な3位の置換基効果を明らかにするために、量子化学計算を行った。その結果、3位に電子求引基を有するピラゾリンの脱窒素反応は協奏的な機構が有利となる事が分かった。発表では、その詳細を述べる。
  • 池田 浩, 生井 準人, 上田 実, 平野 誉
    セッションID: P04
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/10/31
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    以前,平野らは生成物解析の研究から 7-ジフェニルメチレンノルボルネン系
    ラジカルカチオンが非古典的性質を有することを指摘した.
    これはラジカルカチオン状態における軌道間相互作用の観点から興味深い指摘であるが,
    物理化学的手法による研究はされていなかった.
    そこで我々は時間分解過渡吸収スペクトルと DFT 計算を用いた研究により,
    折れ曲がり構造を持つ非古典的ラジカルカチオンの直接観測に成功した.
  • 林 春英, 杉村 高志, 奥山 格
    セッションID: P05
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/10/31
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    ロジウムカルベノイドのOH挿入反応はエーテル結合の有用な形成反応であるが、その不斉合成に関しては研究例が少ない。反応の立体選択性は、酸素!)炭素結合形成後に起きるプロトン移動過程で決定されるが、どの中間体で起るかについては議論の余地がある。我々はキラル架橋反応を用いる不斉合成法の開発の一環としてカルベノイドの分子内OH挿入反応の選択性を調べ、最高84%のジアステレオマ_-_過剰率で生成物が得られることを見いだした。得られた生成物比が熱力学的な平衡比に極めて近いことからプロトン移動が従来の機構よりもさらに後段で起っていると推定した。発表では分子内反応の選択性、立体構造の決定、生成物の異性化反応の詳細などについて報告する。
  • 矢葺 絵美, 長野 吉晃, 石黒 勝也
    セッションID: P06
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/10/31
    会議録・要旨集 フリー
    光照射により直接絶縁体から導電体に変換できるような物質は、新しい高機能材料となる可能性がある。本研究は光照射により導電性を発現させる、新規のドーピング反応の開発を目的とする。電子受容体として、テトラシアノキノジンメタン(TCNQ)を、また電子供与体には、光照射により不可逆的に電子を放出する、犠牲ドナーを用いることで、導電性の発現が期待される。TCNQ及び犠牲ドナーをLangmuir_-_Blodgett膜(LB膜)として積層した系での検討を行った。くし型電極上にこれらを交互積層させたLB膜を作成した。この電極に光を照射すると、導電性の発現が観測され、新たなドーピング反応を構築することができた。
  • 見宝 祥江, 西山 卓治, 谷本 隆俊, 石黒 勝也
    セッションID: P07
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/10/31
    会議録・要旨集 フリー
    本研究は、同波長の光を照射するという操作により、一回おきにON・OFFを繰り返すFlip-flopフォトクロミズムの実現を目的とする。優れたフォトクロミック特性をもつことが知られている電子供与基と受容基が置換したノルボルナジエン(N)_-_クアドリシクラン(Q)光異性化系に注目した。NからQへは、光を直接吸収することによる光異性化、QからNへは、増感反応によりラジカルカチオン中間体を経る電子交換反応により進行する。置換ジカルボン酸モノエステル体では、NとQのカルボン酸のpK値が1.5以上異なることが明らかとなっている。そこで、界面での物質移動が制御可能な反応系について検討した。
  • 上村 佳吾, 宮路 嘉一, 石山 愛, 村松 幸, 粟野 一志, 荻野 敏夫
    セッションID: P08
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/10/31
    会議録・要旨集 フリー
    三種のフェニル置換ジシクロペンタジエノン123 (9-フェニル,8-フェニルおよび5-フェニルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカー4,8-ジエンー3-オン)の三重項分子内[2+2]光環化反応について触媒量のチオフェノールを添加したところ,無添加の実験と比較して23の反応はPhSHの添加とその濃度に異存して著しく加速されるのに対し,1ではほとんど効果が見られなかった.DFT計算の結果は,三重項から三重項ビラジカルの生成過程が1の反応では大きく発熱的であるのに対して23では吸熱的であることが示された.このことは 23 の反応では三重項ビラジカルの一重項への項間交差が律速段階であること,チオフェノールがスピン触媒として機能したことを示唆している.
  • 大橋 万紀, 前多 肇, 水野 一彦
    セッションID: P09
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/10/31
    会議録・要旨集 フリー
    電子豊富な共役ジエンに9-シアノフェナントレンの共存下、メタノール中で光照射すると電子移動反応が進行し、メトキシ基が導入されたジエンの二量体を与えることが知られている。本研究では、この酸化的光二量化反応の機構の解明、効率の向上および有機合成反応への応用を目的とし、種々の反応条件における収率、および反応の一般性について検討した。その結果、9-シアノフェナントレンの触媒的な作用によってこの光二量化反応が高効率で進行すること、および種々の求核剤が二量体に導入可能であることが明らかになった。
  • 池田 明代, 高橋 康丈, 赤木 愛, 鎌田 正喜, 手老 省三, 宮仕 勉, 上田 実, 池田 浩
    セッションID: P10
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/10/31
    会議録・要旨集 フリー
    1,2-ビス(α-スチリル)ベンゼン(1)の光誘起電子移動反応により生成するオルトキノジメタン(2)とそのラジカルカチオン(RC)の過渡吸収スペクトルを観測し,それらの挙動から逆電子移動(BET)過程を速度論的に解析した.その結果,化学反応に介在するRC中間体のBETによる中性種への変換を実証できた.また,2に対する酸素やフマロニトリルの付加反応において速度論的解析を行い,さらに1とTCNEの電荷移動錯体光励起反応の置換基効果を検討し,2の反応性について興味深い知見を得た.
  • 橘 美奈, 田中 倫成, 臼井 聡
    セッションID: P11
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/10/31
    会議録・要旨集 フリー
    キノンメチドには、ベンジルカチオン、フェノール陰イオンを同時に有する極限構造式が存在する。o-ベンジルオキシベンジルアセテート(1)の光反応により、ベンジルカチオン‐アセテートイオン対の生成反応の可能性を酢酸中で検討した。1の酢酸溶液を3h光照射すると、o-ヒドロキシベンジルアセテート(55.9%)とベンズアルデヒド(65.6%)が得られた。これは、の光反応により、エーテル結合がラジカル開裂で進行したことを示している。しかし、エステルのOとベンジルのCが開裂し、重酢酸が求核付加した重水素化物が得られなかったことから、この結合の開裂は進行しなかったと考えられる。これらのことからの光反応は、ラジカル開裂で進行したことを示している。
  • 齋藤 洋志, 牧野島 高史, 臼井 聡
    セッションID: P12
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/10/31
    会議録・要旨集 フリー
     Xeランプ(λ>280 nm)を用いて2-クロロ-3-フェニルプロピオフェノン(1)のトリフルオロエタノール中におけるフォトソルボリシスを行った。HPLC及び1H-NMRによる反応生成物解析の結、Photo-Favorskii転位生成物である2,3-ジフェニルプロピオン酸トリフルオロエチルエステル(2)、求核置換生成物である3-フェニル-2-トリフルオロエチルプロピオフェノン(3)、3-位フェニル転位生成物である2-フェニル-3-トリフルオロエチルプロピオフェノン(4)が得られていることが確認された。これらの生成物は、3-位フェニル上に電子求引性置換基を導入すると、Photo-Favorskii転位生成物が主生成物として得られ、電子供与性置換基を導入すると、Photo-Favorskii転位生成物は得られず、3位フェニル転位生成物のみが得られた。これらの結果は、3-位フェニル基からの電子移動によるフェナシルカチオンの生成とフェナシルラジカルを含んだPhoto-Favorskii転位反応を示唆している。
  • 清田 貴之, 山口 尚人, 高橋 智也, 長谷川 英悦, 池田 浩
    セッションID: P13
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/10/31
    会議録・要旨集 フリー
    我々はこれまでに、1,3-ジメチル-2-フェニルベンズイミダゾリン(DMPBI)とベンゾフェノンとの光反応において、添加するプロトン供与体の種類によりベンズヒドロールとベンズピナコールの生成比が顕著に異なることを見出している。一方、2-ヒドロキシフェニル-1,3-ジメチルベンズイミダゾリン(HPDMBI)を用いるベンゾフェノンの光反応では、プロトン供与体の種類に関わらずベンズピナコールのみが得られた。今回、3-メチルベンゾフェノンをプローブ基質としてDMPBIおよび HPDMBIとの光誘起電子移動反応機構を詳細に検討した。さらに、反応により生じるDMPBIおよびHPDMBI酸化体の性質についても検討を行った。
  • 岡本 健太郎, 谷川 尚子, 土田 裕之, 長谷川 英悦
    セッションID: P14
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/10/31
    会議録・要旨集 フリー
    これまでに我々は、アルコキシカルボニル置換ケトン(ROCO!)COR')とヨウ化サマリウム(II)(SmI2)の反応により、サマリウムケチルラジカルが生じた後に、分子内ケトン-エステルカップリング反応および転位反応が進行し、環状アルコールが得られることを見出している。この分子内ケトン-エステルカップリング反応の一般性を調べる目的で、種々のアシルオキシ置換ケトン(RCOO!)COR')とSmI2との反応を検討したところ、ケトン-エステルカップリング反応が進行して2, 3-ジヒドロキシ環状エーテル化合物が得られた。本発表では、その実験結果と反応機構について報告する。
  • 緑川 雅信, 水野 真盛, 山ノ井 孝
    セッションID: P15
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/10/31
    会議録・要旨集 フリー
    グリコシルアセテートは容易に合成することができ、グリコシル化反応の糖供与体としての利用が期待されている。しかし、脱離基であるアセチルオキシを活性化させる有効な方法は少ない。我々のグループでは、Yb(OTf) 3とわずか3mol%のBF3・Et2Oを組み合わせた活性化方法により、グリコシルアセテートのグリコシル化反応が速やかに進行することを見出している。本研究では、このグリコシル化をN-Acetyl-D-glucosaminide合成法に適応した。糖供与体にフェノール類を用いたところ、α-グリコシド体が高立体選択的に得られるという興味深い結果を見出したので報告する。
  • 山ノ井 孝, 松田 翔, 奈良 由香里, 吉田 彰宏, 渡邊 幹夫
    セッションID: P16
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/10/31
    会議録・要旨集 フリー
    我々は、既に1-C-アルキル糖を用いたグリコシル化反応で、種々のアノマー二分岐型グリコシド体合成に成功している。ところで、1-C-ビニル糖を用いた場合には、求核剤が末端オレフィン炭素を攻撃するSN1’型求核付加反応が進行して、exo-グリカール体が生成すると考えた。そこで、本研究では、2,3,4,6-テトラ-O-ベンジル-1-C-ビニル-D-グルコピラノースとトリメチルシリル誘導体との求核付加反応を検討した。20モル%のTMSOTfの存在下、アリルトリメチルシランやシリルエノールエーテル等を求核剤に用いた場合には、SN1'反応が進行し、exo-(Z)-グリカール体が選択的に得られた。
  • 湯浅  順平, 末延 知義, 福住 俊一
    セッションID: P17
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/10/31
    会議録・要旨集 フリー
    常磁性!)反磁性の変化を伴うサーモクロミズムは、新しい分子スイッチへの応用面から注目を集めている。例えば、これまでにo-キノン類を配位子として用いた遷移金属錯体のサーモクロミズムと、これに伴うスピンクロスオーバー現象が数多く報告されている。一方、セミキノンラジカルアニオン等の有機ラジカルアニオンの金属塩は、溶液中で不均化やダイマー化が起こることが知られているが、その反応機構については、まだ良くわかっていない。本研究ではフェロセン類等の電子供与体から、o-やp-キノン類への電子移動反応において、生成するセミキノンラジカルアニオン種と金属イオンの作る錯体は電子移動平衡や不均化平衡状態になることを見いだした。これらの平衡を利用した常磁性!)反磁性状態の制御及びそれに伴うサーモクロミズム現象について報告する。
  • 湯浅  順平, 末延 知義, 福住 俊一
    セッションID: P18
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/10/31
    会議録・要旨集 フリー
    我々はこれまでに、スカンジウムイオン(Sc3+)存在下でp-ベンソキノン(Q)の高次自己組織化電子移動還元反応が進行し、低温(203 K)においてQのダイマーラジカルアニオン(Q2・-)にスカンジウムイオン(Sc3+)が3つ架橋したπ-ダイマーラジカルアニオン錯体[Q・--3Sc3+-Q]が生成し、これが可視光の長波長領域(λ = 600 > nm)に強い吸収を持つことを報告している。室温では、Sc3+がQ2・-に2つ架橋したπ-ダイマーラジカルアニオン錯体が生成するが、長波長域には吸収を有しない。本研究では、このπ錯体の (Sc3+)にキラル配位子を配位させることで、室温においても可視光長波長領域(λmax 600 > nm)に吸収を有するようになり、これが強い円二色性偏光(CD)を示すことを見いだした。これは、発色部位であるπ-ダイマーラジカルアニオンのC2対称性がキラル配位子によりわずかに低下することで、光学遷移が可能となるためであると考えられる。これらのπ-ダイマーラジカルアニオン錯体の分光特性を調べた。
  • 山田 俊介, 湯浅 順平, 末延 知義, 福住 俊一
    セッションID: P19
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/10/31
    会議録・要旨集 フリー
    中性状態でスカンジウムイオンと錯形成する(S)-2-p-トルイルスルフィニル-1,4-ベンゾキノン (TolSQ)を用いて一電子還元剤による電子移動還元反応とNADH類縁体とのヒドリド移動反応におけるスカンジウムイオンの反応促進作用機構の違いについて検討した。電子移動反応では速度定数(kobs)がスカンジウムイオン濃度およびTolSQ濃度に対して高次の依存性を示して増大することがわかった。これはTolSQ●-とスカンジウムイオンが高次に自己組織化して錯体を形成するためであり、そのESRも観測できた。一方、NADH類縁体とのヒドリド移動反応では、スカンジウムイオンとTolSQとの錯体形成を経て反応が進行し、速度論的重水素同位体が観測された。
  • 大久保 敬, フェルナンデスラザロ フェルナンド, サストレサントス アンジェラ, 福住 俊一
    セッションID: P20
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/10/31
    会議録・要旨集 フリー
    アクセプター部位にカルボニル基を有するドナー・アクセプター連結系分子(亜鉛フタロシアニン-ペリレンジイミドおよびトリニトロフルオレノン-フラーレン連結分子)のベンゾニトリル溶液に光照射を行うと、電荷分離状態は観測されず、分子内エネルギー移動のみが進行した。次に、マグネシウム過塩素酸塩やスカンジウムトリフラートなどのルイス酸を添加して光照射を行うと電荷分離状態が観測された。これは金属イオンと連結分子のアクセプター部位のラジカルアニオン種と強く錯形成するために電荷分離状態のエネルギーレベルが大きく低下したためである。
  • 加本 拓, 林 直人, 樋口 弘行
    セッションID: P21
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/10/31
    会議録・要旨集 フリー
    フェノキシルラジカルは、o及びp-位にフェニル基を有することで大きく安定化されるが、ビフェノールやトリフェノールから得られるラジカルでは、さらにその効果は大きくなる。フェノールのオリゴマー化が安定化に及ぼす要因を知るために、周辺フェニル基のp-位に種々の置換基(H基、methyl基、t-butyl基)を持つ誘導体を調製し、その分解挙動を調べた。その結果どの誘導体でも、1量体では溶媒等からの水素引き抜きによりフェノールに戻るのに対し、2及び3量体では分子内反応により環化生成物が高選択的に得られた。またH基を持つものに比べ、t-butyl基を持つものの溶液中でのラジカル寿命は一般に短かかった。
  • 藏川 惠, 林 直人, 樋口 弘行
    セッションID: P22
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/10/31
    会議録・要旨集 フリー
    キノンはヒドロキノンと化学量論比1:1でキンヒドロンと呼ばれる分子錯体を形成することがよく知られている。今回、キノン2量体及び3量体について同様の錯体を形成する可能性について調べた。その結果固体試料に関しては、キノン上にt-butyl基を有するものでは置換基の立体障害のためにキンヒドロン型錯体は得られなかったが、n-dodecyl基を持つものではキンヒドロン型錯体特有の、電荷移動相互作用に起因する色変化が観測された。キノン1_から_3量体とヒドロキノン1_から_3量体について様々に組み合わせを変えた場合の結果について発表する。
  • 杉山 右子, 林 直人, 樋口 弘行
    セッションID: P23
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/10/31
    会議録・要旨集 フリー
    キノン誘導体は、特異な酸化反応のための有機試剤として重要である。代表的なものにDDQやクロラニルがあるが、前者は後者に比べ高い反応性を示す一方で、加水分解によりシアン化水素を発生するという欠点がある。この点を改善すべく、DDQ同様の高い電子受容能が期待される、2_から_3個のクロラニルを結合した新規なキノン化合物を合成し、それらの基礎的性質(還元電位等)を調べた。また水素引き抜き反応の反応性について調べ、DDQ及びクロラニルと比較したので報告する。
  • 星 隆, 中澤 太一, 萩原 久大, 鈴木 敏夫
    セッションID: P24
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/10/31
    会議録・要旨集 フリー
    かさ高いモノホスフィン配位子〓Pd錯体[PdL]は、不安定だが酸化的付加に対する高い触媒活性を示すことからクロスカップリング反応の優れた触媒として注目されている。そこで、[PdL]を安定化するπ-配位部位としてフェナントレン骨格を有するかさ高いルテノセニルホスフィン1を設計し、合成した。1とPd(dba)2から調製した触媒をTHF中K3PO4・H2O存在下p-AcC6H4BrとPhB(OH)2の室温での鈴木〓宮浦反応へ適用した所、Pd/1比を1:1とすると反応は4時間で終了し、定量的に目的物を得た。更に、Pd(dba)2の代わりにPd(OAc)2を用いたところ反応は顕著に加速され1時間で終了した。
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