北日本病害虫研究会報
Online ISSN : 2185-4114
Print ISSN : 0368-623X
ISSN-L : 0368-623X
1968 巻, Special8 号
選択された号の論文の30件中1~30を表示しています
  • 有機燐剤による水稲害虫の防除
    布施 寛, 佐藤 政太郎
    1968 年 1968 巻 Special8 号 p. 1-15
    発行日: 1968/03/31
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    本報告は, 有機燐粒剤を使用して, 水稲害虫の単独防除, 同時防除を行なう場合の施用量, 処理時期について1963年~1966年にわたり試験を行なつた結果を記した。
    1) 第1世代イネハモグリバエ防除は, 処理適期を産卵最盛期とし, ジメトエート粒剤は10a当り成分量50~100gで, バイジツト, ダイアジノン粒剤は10a当り成分量100~150gで可能であり, 特にジメトエート粒剤の効果がすぐれていた。
    2) イネドロオイムシ, 第2世代イネハモグリバエ, 第1世代ニカメイチユウの同時防除は, 有機燐粒剤がイネドロオイムシに対して防除効果がないので不可能であつた。
    3) 第2世代イネハモグリバエ, 第1世代ニカメイチユウの同時防除は, ジメトエート, バイジツト粒剤で可能であるが, 粉剤, 液剤形態の散布より勝るとは認めがたい。
    4) 第2世代ニカメイチユウの防除は, ジメトエート, スミチオン, バイジツト粒剤は10a当り成分量150gで発蛾最盛日~5日後の処理で, ダイアジノン粒剤は10a当り成分量100~150gで発蛾最盛日5日後~10日後の処理で可能であつた。
    5) 第2世代ニカメイチユウ, ウンカ・ヨコバイ類の同時防除は, ジメトエート, バイジット, ダイアジノン粒剤ともに10a当り成分量150gで, ジメトエート, バイジット粒剤は第2世代ニカメイチユウ発蛾最盛日~5日後の処理で, ダイアジノン粒剤は第2世代ニカメイチユウ発蛾最盛日5日後~10日後の処理で可能であつた。
    6) ジメトエート, バイジツト, ダイアジノン等の有機燐粒剤のウンカ類に対する効果は, 幼虫に対してはある程度有効であつたが, 特に成虫に対してはそれほど顕著な効果はみられなかつた。
  • 五十嵐 良造, 伊藤 春男, 峯岸 英子
    1968 年 1968 巻 Special8 号 p. 16-26
    発行日: 1968/03/31
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    1) 1965年および1966年の2年間にわたつて, ダイアジノン3%および5%粒剤, 24%油剤, バイジット5%粒剤ならびにスミチオン5%粒剤の水田面施用についての試験を行なつた。
    2) この試験においては, これらの各薬剤によつてイネヒメハモグリバエ, ニカメイチユウおよびウンカ・ヨコバイ類に対する効果が検討された。
    3) イネヒメハモグリバエに対しては, ダイアジノン粒剤は10a当り有効成分60g, 油剤は30gで有効であり, スミチオンおよびバイジツト粒剤は150gの施用で有効である。
    4) ニカメイチユウ第1世代に対しては, ダイアジノン粒剤は10a当り90g, 油剤は36g, バイジツトおよびスミチオン粒剤は150gで有効である。
    第2世代に対してもダイアジノン粒剤90g, バイジツトおよびスミチオン粒剤は150gで効果が認められている。
    施用の時期については, 第1世代, 第2世代ともに茎葉散布と同様であると考えられる。
    5) ツマグロヨコバイに対しては, スミチオン粒剤の効果は劣つている。ダイアジノン粒剤は10a当たり90~150g, 油剤は36g程度, バイジツト粒剤は150gで有効性が認められるが, 登熟期における稲では, 効果が不十分と考えられる。
    稲の登熟期におけるツマグロヨコバイに対するこれらの薬剤の効果の持続期間は3週間以内と考えられる。
    6) ヒメトビウンカに対しては, ツマグロヨコバイに対するよりもいくぶん効果は劣り, とくに成虫に対して劣つている。効果の持続期間はおよそ2週間程度であつた。
    7) セジロウンカに対してもヒメトビウンカに対する場合とほぼ同様と考えられる。
    8) ニカメイチユウ第2世代と水稲成熟期のウンカヨコバイ類の同時防除は有効性が認められる。
    9) スリツプス, フタテンヨコバイなどに対しては効果が認められなかった。
    10)ヒメハナカメムシの1種に対して影響がみられず, 天敵保護の点からは茎葉散布に比べて有利であろうと考えられる。
  • 遠藤 正
    1968 年 1968 巻 Special8 号 p. 27-29
    発行日: 1968/03/31
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    1) ダイアジノン粒剤3%は, ニカメイチユウ第1世代防除に, 10a当たり4kgを最盛日後10日に施用して有効であつた。
    2) バイジツト粒剤5%は, ニカメイチユウ第2世代とツマグロヨコバイおよびセジロウンカの同時防除に, 10a当たり4kgをニカメイチユウ発蛾最盛日後7日に施用して有効であつた。
    3) エカチンTD・BHC粒剤 (エカチンTD3%, BHC5%) は, ニカメイチユウ第2世代とツマグロヨコバイの同時防除に, 10a当たり3~4kgをニカメイチユウ発蛾最盛日後3日に施用して有効であつた。
    4) PSP-204およびPSP-112粉剤は, 乾燥籾重の3%粉衣して, 畑苗代に播種するとウンカ・ヨコバイならびに雀害の防止効果が認められた。
  • 藤田 謙三, 土岐 昭男, 豊川 菊裕, 佐々木 三千雄, 堀内 辰悦
    1968 年 1968 巻 Special8 号 p. 30-33
    発行日: 1968/03/31
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    1) ペスタン粒剤の土壌施用または水面施用のイネカラバエ防除効果は顕著で, その機構は産卵回避でなくふ化幼虫に対する殺虫作用によるものと推察された。
    2) 水面施用では6kg, 落水施用後攪拌すると3kgで実用性がある。
    3) 施用時期は産卵最盛期の5日前から5日後までの10日間が有効で, 土壌を攪拌すると産卵最盛期の前後10日間でも有効のようである。
    4) ダイアジノン粒剤の水面施用6kg, PSP-204粒剤の代掻時土壌施用6, 9, 12kg, 水面施用4, 9kgは効果がなかつた。
    5) イネドロオイムシに対するペスタン粒剤の防除効果はみられなかつた。
  • 渡辺 忻悦
    1968 年 1968 巻 Special8 号 p. 34-35
    発行日: 1968/03/31
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    1965~1966の2ケ年, イネカラバエ防除のため土壤施薬剤を用いて効果を究明した。その結果を要約すれば次のとおりである。
    1) ペスタン粒剤は, ダイシストン, PSP-204粒剤に比較してすぐれた効果がある。
    2) ペスタン粒剤は, 従来の茎葉散布剤に比べてその差が顕著で実用性が高い。
    3) ペスタン粒剤の施用量は, 中耕手段を構ずる場合は10a当り2kg, 無中耕の場合は3kg施用がよい。
    4) 施薬時期はイネカラバエの産卵初期が適当である。
    5) ペスタン粒剤は, イネハモグリバエ第2世代との同時防除も可能である。
  • バレイシヨのアブラムシの省力防除
    富岡 暢, 高倉 重義, 手塚 浩, 高桑 亮, 佐藤 謙, 木幡 寿夫, 井上 寿, 奥山 七郎, 折目 芳明
    1968 年 1968 巻 Special8 号 p. 36-41
    発行日: 1968/03/31
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    1) 土壤施薬剤を肥料と混合した形態にした場合のアブラムシに対する防除効果を, 道南, 上川, 天北 (天塩), 十勝および北見の各農試において, 1965, 1966の両年にわたり試験した。
    2) 供試したPSP-204複合肥料, エカチンTD複合肥料, ダイシストン複合肥料の3種はいずれも極めて高い防除効果を示した。
    3) 薬剤入り複合肥料を薬剤の単用と比較した場合, ほゞ同程度の効果が認められ, 約60日間はほとんどアブラムシの寄生をみなかつた。
    4) 施用量は10a当り成分量で300gと240gとでは差がなく, 240gの施用で充分と考えられる。
    5) 供試した3種の複合肥料を比較すると, PSP-204入り肥料は他に比してやゝ劣る傾向がみられたが, 実用上には差はないものと考えられる。
    6) 複合肥料の使用による増収効果は認められなかつた。
    7) 複合肥料の使用によつて, アブラムシの防除はより一層省力化されたが, ウイルス病の伝染防止上からは病株抜取りの実施は勿論のこと, 後期のアブラムシ防除のために茎葉散布を行なう必要がある。
  • 高桑 亮, 玉田 哲男, 手塚 浩, 高倉 重義, 木幡 寿夫, 成田 武四
    1968 年 1968 巻 Special8 号 p. 42-47
    発行日: 1968/03/31
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    1) 1964年から66年の3ケ年にわたり道内各地において土壤施用有機燐製剤 (粒状) のバレイシヨのアブラムシに対する効果について薬剤比較を行なつた。
    2) 各薬剤とも無処理に比しアブラムシの寄生が少なく, 効果がみとめられたが, 60日以降には一般に寄生虫数が多くなる傾向を示した。時には60日以前でもかなりのアブラムシの寄生が認められる場合があつた。
    3) 薬剤の効果は年により場所により変化し, 種々の条件によつて影響をうけることが知られた。
  • 手塚 浩, 高桑 亮, 佐藤 謙, 富岡 暢, 高倉 重義, 井上 寿, 奥山 七郎, 成田 武四
    1968 年 1968 巻 Special8 号 p. 48-54
    発行日: 1968/03/31
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    1). 土壤施薬の施用法, 広域施用等の試験を1964年から3年間にわたり, 十勝, 上川, 北見農試で行なつた。
    2). 播種期処理の効果は, 処理後約60日は有効であり, 10a当り4kg施用より多量 (6, 8kg) の方が効果が安定する。
    3). 萠芽時 (播種後約30日) に粒剤処理しても, 播種時処理と大差なく, 有効期間は延長しなかつた。
    4). 培土時処理 (播種後約40日) は即効生が認められず, 生育後期に至つて僅かに有効なようである。
    5). 播種時処理の場合は, 生育中期の7月中旬 (アブラムシ最盛直前) 以降の茎葉散布との併用が効果も高く, 実用的である。
    6). 年次, 土壤, 気象等により効果に差があり, また薬剤間の効果の差も小さくない。
  • 今林 俊一, 堀口 治夫
    1968 年 1968 巻 Special8 号 p. 55-62
    発行日: 1968/03/31
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    有機燐殺虫粒剤の土壤施用法によるバレイショのアブラムシ防除試験を1962年から実施し, つぎのような成績を得た。
    1) 北海道で栽培されるバレイショには, ジヤガイモヒゲナガアブラムシ (Aulacorthumm solmi), モモアカアブラムシ (Myzus persicae) およびワタアブラムシ (Aphis gossypii) の3種寄生するが, 葉巻病ウイルスは前2者によつて伝搬される。
    2) ジヤガイモヒゲナガアブラムシはバレイショの開花期まで漸増するが開花以後は減少しはじめ, モモアカアブラムシがこれにかわつて優位を占めその盛期は開花後およそ20日前後である。
    3) アブラムシの寄生密度は早生種 (男爵) に多く, 晩生種 (紅丸, 農林1号) に少ない傾向が認められた。地域的には, 道南地帯が密度が高く, 中央部地帯, 北見地帯とバレイショの成育の遅れる地帯ほど寄生時期が遅くその寄生密度も低くなる。
    4) バレイショの播種時に施肥帯に作条施用して有効な有機燐殺虫粒剤は, エチルチオメトン粒剤 (エカチンTD・ダイシストン), PSP-204粒剤, ジメトエート粒剤であつた。
    エチルパラチオン乳剤の7回継続散布に匹敵する効果をあげる10a当りの有効成分施用量は, 琴似圃場における小区画試験の場合, エカチンTD粒剤が250g, PSP-204粒剤が450g附近であつた。しかし, ジメトエート粒剤はバレイショの成育後期にアブラムシが急増したのでその有効施用量は判然としなかつた。
    5) エカチンTD, PSP-204, ジメトエートの各剤を化成肥料と混合しバレイショの播種時に作条施用すれば, これら単剤施用と同等の効果をあげ, しかも, バレイショの発芽, 生育に対する影響がなく, 肥効の面でも何ら差支えなく実用的であつた。
    6) 土壤施用効果は小圃揚の単独防除よりも広域防除の方が遙かに有効である。エカチンTD, PSP-204, ジメトエート各剤ともに単剤, 化成肥料との混和剤いずれも0.5ha以上の広域土壤施用であれば, 有効成分量として240~300g施用 (10a当り) でバレイショの全成育期間アブラムシの寄生を殆んど許さず, 葉巻病の発生も極めて低率に抑えることができた。
    7) 土壤の種類によつて殺虫剤の吸着性に差異のあることが認知されるので, 土質条件と殺虫剤の有効施用量との関連解析が問題点として残されている。
    8) 土壤施用剤として有効な薬剤を土壤施用した場合, その圃場の周囲・環境条件によつてはバレイショの成育後期にアブラムシが侵入増殖することがある。
    これによつて発生する葉巻病を防止する手段としては, 従来から行なわれてきた発病株の早期抜きとりと播種2カ月以降の薬剤による茎葉散布も必要である。
  • 藤田 謙三, 土岐 昭男
    1968 年 1968 巻 Special8 号 p. 63-67
    発行日: 1968/03/31
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    アブラムシの省力的な防除法を検討するためバレイシヨの播種時又は第1回培土時に土壌施薬剤 (ダイシストン5%粒剤, ジメトエート5%粒剤, PSP-2045%粒剤, 204尿素高度化成, アフエツクス3%粒剤) の処理方法 (肥料同時施用, 種薯上部及び下部施用, 側面施用, 植穴施用, 全面散布, トップ処理) と防除効果について検討した。
    1) 播種時にダイシストン, PSP-204,204尿素高度化成の種薯下部施用が最も防除効果が高く, 処理の簡便な肥料同時施用が最も省力的で10a当成分量は300gで充分であると考えられた。
    2) 植穴処理はダイシストン, ジメトエートの10a当り450gでは初期の薬害が甚しく, アフエツクスの90~120gでは効果がなかつた。
    3) 第1回培土時のトップ処理及び種薯の片側面処理は10a当300gでは効果ががみられなかつた。
    4) 播種後の植床全面散布はジメトエート, ダイシストンでは肥料同時施用に次ぐ効果がみられたが, PSP-204では効果がなかつた。
    5) 薯個数は処理区では全体に薯数の減少がみられたが, 中薯以上の比率が高くなり, 5~10%の増収となつた。
  • 和泉 昭四郎, 川村 邦夫, 相原 四郎, 伊藤 春男, 五十嵐 良造
    1968 年 1968 巻 Special8 号 p. 68-69
    発行日: 1968/03/31
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    本試験は1965年に浸透移行性殺虫剤の土壌施用法が, バレイシヨのアブラムシなどに対する防除効果と, 萌芽・収量におよぼす影響を知るために, 薬の種類と施薬時期について検討した。
    1) アブラムシに対する薬剤の効果は明らかに認められた。薬剤の種類間では, ダイシストン粒剤がPSP-204粒剤よりやや効果がすぐれている傾向がある。施用時期については両薬剤とも植付け時のほうが追肥時施用よりやや効果がすぐれていた。
    アブラムシの抑制は両薬剤ともに長期間におよび, 約100日くらいの持続効果が見られ, 実用性の高いことが認められた。
    2) 萠芽と収量におよぼす影響
    萠芽は各区とも順調で, 処理区間の差はみられず, 薬害の徴候は認められなかつた。
    収量については, 施肥区はいずれも無処理区より多かつたが, ダイシストン粒剤の追肥時施用区は100g以上の大いも割合がとくに多い傾向を示した。
    3) 以上の結果から, ダイシストン粒剤, PSP-204粒剤ともにバレイシヨの植付け時の施用は労力的にも, 安全性からも有望な方法と考えられる。
  • 遠藤 正
    1968 年 1968 巻 Special8 号 p. 70-71
    発行日: 1968/03/31
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    1) PSP-204粒剤5%は播溝に施用し, 間土を施さないで直接播種すると萠芽・初期生育が遅れる傾向がある。
    2) 初期生育の遅延は3kg/10aより6kg/10aにおいて大きいようである。
    3) しかし, 施薬区のバレイシヨは生育が途中からよくなり, 中・大薯の比率が高まつて増収した。
    4) 実用的には3kgより6kgの方が適当と考えられる。
  • オオニジュウヤホシテントウの防除効果について
    長谷川 勉
    1968 年 1968 巻 Special8 号 p. 72-76
    発行日: 1968/03/31
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    バレイシヨの播種時あるいは生育初期にPSP-204あるいはダイシストンを施用した場合におけるオオニジユウヤホシテントウに対する防除効果について1965および1966の両年に圃場試験あるいは野外条件下における実験的な観察を行つた。それらの結果を要約すると次のとおりである。
    1) 1965年には10a当り6Kの割合で播種時に条施用した圃場で越冬成虫および孵化幼虫に対する効果をみた。まず越冬成虫については5月9日処理, 6月25日の観察で処理区においては寄生数, 産卵数, 喰害が無処理に比べて少なく, 特にダイシストンでの効果が顕著にしめされた。幼虫については4月28日処理7月1日に各区の任意の株に網をかぶせて放飼して4日後に観察をおこなつたが両薬剤施用区ともに約50%程度の死虫率がしめされ, 無処理との比較でこれが施用区における防除効果のあらわれとみとめられた。
    2) 1966年には野外条件下でa.播種時に1.5g, b.播種時0.5g生育初期1.5g, c.生育初期に1.5gの3通りの施用を行つた処理株に網をかぶせて成虫あるいは幼虫を放飼し, それぞれにおける効果を観察した。その結果, 成虫に対してはダイシストンの播種時1.5gがもつとも効果が高く, 0.5gでもそれに近い顕著な効果がしめされた。PSP-204はそれに比べてかなり劣つていた。幼虫に対しては処理後約2ケ月後の放飼で播種時1.5gのダイシストン施用区での効果がやや顕著にしめされていたが其他の施用区における効果はあまり高くなかつた。
  • 第5報パレイショに対する土壌施薬方法
    小林 尚, 奥 俊夫, 前田 泰生, 工藤 和一
    1968 年 1968 巻 Special8 号 p. 77-85
    発行日: 1968/03/31
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    ダイシストン粒剤およびPSP-204粒剤の土壌施用方法を病害虫防除効果および増収効果の両面から検討して下記の結果を得た。
    1) 施薬時期はアブラムシ類, ヨコバイ類およびオオニジユウヤホシテントウの防除効果からみて, 萠芽時より播種時の方が有効であつた。増収効果は一定しなかつたが, 播種時施用の方が効果的である場合が多かつた。それ故, この両施用時期の間では播種時施用の方がより有効であると考えられる。
    2) 施薬量は播種時直接条施用において, 10aあたり6kg (1株あたり1.2-1.5b) 程度が適当と考えられる。
    3) 播種時における直接条施用法, 側条条施用法および作条土壌混入法はアブラムシに対する防除効果では互にほとんど差がなかつたが, オオニジユウヤホシテントウに対する防除効果および増収効果では直接条施用法が最も優れた。それ故, 播種時における上記3施用法のうちでは直接条施用法が最も効果的であると考えられる。
    4) 播種時における肥料との同時施用法は直接条施用法より作業回数が1回少なく, より省力的であつて, アブラムシ防除効果が播種時直接条施用法とほぼ同等であるので, アブラムシ類および葉巻病の防除には充分実用的であると考えられる。
    5) しかしこの肥料との同時施用法はオオニジユヤホシテントウおよびヨコバイ類に対する防除効果が播種時直接条施用法より明らかに劣り, 増収効果も (多雨年には) 劣る場合があるので, バレイシヨの主要害虫を同時に総合防除し, バレイシヨの増収を計ろうとする場合には播種時直接条施用法が最も効果的であると考えられる。
  • 五十嵐 良造, 伊藤 春男, 和泉 昭四郎, 川村 邦夫, 高橋 精一, 峯岸 英子
    1968 年 1968 巻 Special8 号 p. 86-90
    発行日: 1968/03/31
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    1) ダイシストンおよびPSP-204粒剤のアブラムシに対する効果ならびに作物に対するえいきようを知る目的で, はじめにバレイショを, そのあとにハクサイを栽培して試験を行なつた。
    薬剤の施用は, いずれもa当り0.6kgとし, バレイシヨにのみ施用した区と, ハクサイにのみ施用した区を設けた。
    2) バレイシヨのアブラムシに対するダイシストンおよびPSP-204粒剤の効果は明らかであつた。
    そのさい, アブラムシに対する効果は下位葉より, 生長点近くの上位葉でとくに明りようであつた。
    3) ハクサイのアブラムシに対しても, 両薬剤は有効であつた。しかし, バレイシヨで施用した場合には, ハクサイのアブラムシに対してはもはや効果が認められなくなつている。
    4) バレイシヨにおける増収効果は明らかに認められた。この増収はとくに大いもの割合が多くなることによつてもたらされているようである。
    5) ハクサイにおいても増収が認められ, それはとくに調整重においていちじるしく現われている。
    6) バレイシヨで施用した場合においても, そのあと作のハクサイに同様の増収効果が認められている。
    7) このようなバレイシヨおよびハクサイの増収は, 硝酸態ちつそを中心とした, 土壌中におけるちつそ量のうごきが一つの要因になつているものと考えられるがなお不明の点が多い。
  • 渡辺 忻悦
    1968 年 1968 巻 Special8 号 p. 91-94
    発行日: 1968/03/31
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    ナスの定植時にダイシストン5%粒剤, PSP-2045%粒剤およびエカチンTD5%粒剤を植穴施用してアブラムシの寄生数, 収量等を調査した。
    1) アブラムシの寄生は定植時における1回の施用で, ナスの生育全期間にわたつて顕著に抑制することができた。
    2) 施薬区においてはアブラムシの寄生を顕著に抑制することによつて無処理に比べて2倍以上の収量をあげることができた。
    3) 施薬量を適量以上に増加させることによつて, アブラムシの寄生抑制効果は高まるけれども, 収量は減退することが認められた。
    4) ナスに対する施薬量はダイシストン粒剤では株当り1g, PSP-204およびエカチンTD粒剤では株当り2gが適量であると考えられた。
  • 藤田 謙三, 土岐 昭男
    1968 年 1968 巻 Special8 号 p. 95-96
    発行日: 1968/03/31
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    1) PSP-204およびダイシストン粒剤のアブラムシ防除効果は顕著で, 平常発生の場合には, 定植直前あるいはアブラムシの発生初期 (定植30日目) に株当り1g前後の施用で充分である。
    2) 薬剤・肥料混合の204-尿素高度化成は定植直前の1回施用では効果が劣り, アブラムシの発生初期に施用するのが追肥の効果も兼ねてすぐれるようである。
    3) 上記薬剤の定植時における0.1g (成分) の施用ではナスの収量が増加するが, 生育期における同量の施用では薬害のために減収する場合があるようである。
  • 遠藤 正
    1968 年 1968 巻 Special8 号 p. 97-98
    発行日: 1968/03/31
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    1) SP-2045%粒剤およびダイシストン5%粒剤の10a当り9kgの植溝施用はナスのアブラムシを効果的に防除し, 収量を増加して実用性が認められる。
    2) ダィシストン5%粒剤のトマトに対する10a当り5kgの植溝施用は収量を増し, 疫病果を少なくして実用性がある。
    3) 4027粒剤は, ナスのアブラムシ防除に10a当り6~9kgを植溝に施用すれば有効である。
  • 伊藤 春男, 五十嵐 良造, 高橋 精一
    1968 年 1968 巻 Special8 号 p. 99-103
    発行日: 1968/03/31
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    1) 1964年から1966年の3力年にわたり, 農試圃場で, ダイコンに対する有機燐粒剤および粉剤の10a当り3~6kg土壌施用を行ない, 害虫防除効果および収量に及ぼす影響を調査した。
    2) アブラムシに対しては各施薬剤ともに防除効果が認められたが, なかでもダイシストン粒剤, PSP-204粒剤およびエカチンTD粒剤では収穫期まで顕著に寄生虫数が少なかつた。
    3) アブラムシ防除効果は各薬剤も3kgよりも6kgのほうがすぐれた。
    4) ダイコンの収量は総重, 根重ともに, 施薬区の方が大きく, 薬量では6kgよりも3kgの方が重い傾向を示した。
    5) 従つてダイコンに対する薬量はダイシストン粒剤, PSP-204粒剤とも10a当り3kgぐらいが適当であろう。
    6) 食葉性害虫に対する効果についてはさらに検討を要する。
    7) ダイシストン粒剤やPSP-204粒剤の土壌施用が土壌, 中のちつその動向に影響をあたえ, ダイコンのちつそ吸収量を増加し, これらがダイコンの増収の原因になつているのではないかと推測される。
  • 伊藤 春男, 五十嵐 良造, 和泉 昭四郎, 川村 邦夫
    1968 年 1968 巻 Special8 号 p. 104-106
    発行日: 1968/03/31
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    1) ハクサイに対して1965年と1966年に, 農試圃場で有機燐粒剤の10aあたり3kgおよび6kgの播溝施用を行ない, 害虫の防除効果および収量に及ぼす影響などを調査した。
    2) アブラムシに対しては各施薬剤ともに効果が認められたが, なかでもダイシストン粒剤およびエカチンTD粒剤では寄生虫数がとくに少なかつた。
    3) 施用量は, 一般に3kgよりも6kgのほうが寄生虫数が少ない傾向を示した。
    4) 収量は1965年にはPSP-204粒剤, ダイシストン粒剤ともにいちじるしく増収したが, 1966年には判然としなかつた。
    5) 薬量3kgと6kgとのあいだでは増収効果に明瞭な差が認められなかつた。
    6) 施薬量はハクサイに対してはPSP-204粒剤, ダイシストン粒剤, エカチンTD粒剤ともに10a当り3kgぐらいが適当であると考えられる。
    7) 食葉性害虫に対する効果についてはさらに検討を要する。
  • 遠藤 正
    1968 年 1968 巻 Special8 号 p. 107-108
    発行日: 1968/03/31
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    1) ハクサイ栽培におけるダイアジノン粒剤の株当り2g (6kg/10a) の播溝施用のキスジノミハムシ, アオムシおよびヨトウムシの加害防止効果および増収効果は, 2.5~3.0%製剤より5.0~10%製剤の方が高く, 実用的であると考えられた。
    2) ハクサイ栽培におけるダイシストン入り尿素複合肥料の効果は, ダイシストンの施薬量が10aあたり成分で150~300gでは高かつたが, これ以下では劣つた。ハクサイの増収効果はダイシストンの施薬量と共に複合肥料の各成分の施用量に関係が深いので, この試験に供試した製剤は肥料成分比をハクサイ用に改善することが望ましいと考えられた。
  • 長谷川 勉, 渡部 武
    1968 年 1968 巻 Special8 号 p. 109-113
    発行日: 1968/03/31
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    テンサイにおけるアカザモグリハナバエの省力防除法として, PSP-204粒剤およびダイシストン粒剤の移植栽培における移植時あるいはペーパーポツト播種時施用の効果ならびに生育初期に葉上から散布するいわゆるTOP-dressing法について試験した。
    1) 移植栽培における4月下旬の移植時に両薬剤を10a当り4kgの割合に作条施用あるいは植穴施用し, 5月下旬に第1世代幼虫の被害葉, 食入幼虫数などを調査した結果, 処理区においては被害藻の発現が少く, 食入虫数の上からも顕著な防除効果がみられた。両処理法間では植穴処理がまさつていた。しかし, 実用的には作条処理でも充分防除効果が期待できよう。薬剤間では作条処理においてPSP-204がややまさる数値がしめされた。
    2) 3月下旬の移植栽培におけるペーパーポット播種の際, ポツト1冊当り両薬剤60gおよび120gを施用し, 約2ケ月後に第1世代の防除効果をみた。その結果被害葉率は無処理区の約25%に対し, PSP-204およびダイシストン区ではそれぞれについて60g施用で6.7%および, 16.4%, 120g施用で0.4%および3.3%であり, その効果が顕著にみとめられた。薬剤間ではPSP-204の方が, 薬量間では120gの方がより効果が高く, この傾向はこの時期の卵から孵化した幼虫の殺虫効果においても同様であつた。本法は省力性, 経済性の面からも移植時施用より優るものと考えられる。
    3) 生育初期に葉上からPSP-204あるいはダイシストン粒剤を2kgを散布するいわゆるTOP-dressing法について3ケ年試験を行つた結果, 散布1週間ないし10日後の調査による食入虫に対する防除効果は1965, 66の両年度で相反し, 1966年にはきわめて効果が顕著であつたが, 1965年にはみとめられなかつた。しかし, 処理後相当の日数が経過した後の調査では1965年, 1967年とも, 処理区においては被害の発現が少く, 防除効果がみとめられた。処理後7~10日頃のガス効果が年次によつて相異した結果をしめした原因は詳らかでないが本法の実用についてはなお検討を要する。
  • 田中 恒一, 早坂 公夫, 武田 憲雄, 佐藤 靖男
    1968 年 1968 巻 Special8 号 p. 114-118
    発行日: 1968/03/31
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    ダイズおよびアズキのアブラムシ類およびウイルス病に対する浸透性有機燐粒剤 (ダイシストン粒剤, PSP-204粒剤) の土壌施用の防除効果を, 処理時期 (播種時, 発芽後) および施薬量 (10a当り2kg~8kg) について検討した。
    1) 両薬剤とも, アブラムシ類に対する防除効果が顕著に認められた。この効果は無翅アブラムシに対して特に顕著で, 処理後約50日間発生を抑圧した。しかし有翅アブラムシに対する効果は一部の処理区を除いて一般に不充分であつた。
    2) 施薬量については, 播種時処理 (作条処理) の10a当り2kgでは薬剤が均一に施用できず, アブラムシ類防除効果にむらを生じたので, 4kg以上必要かと思われた。
    3) 処理時期では, 播種時処理の方が, 発芽後処理よりも, アブラムシの初期の発生を防ぐ効果が優れたがその後の防除効果には両者の間に差が認められなかつた。
    4) 薬害については, 施薬量には関係なく播種時処理にみられ, 特にアズキの場合顕著にみられた。
    5) ウイルス病に対しては, 立毛調査および褐斑粒の調査結果から, 小面積のためか, 防除効果がまつたく認められなかつた。
  • 第6報アズキに対する土壌施薬方法について
    小林 尚, 奥 俊夫, 飯田 格
    1968 年 1968 巻 Special8 号 p. 119-126
    発行日: 1968/03/31
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    1964年~1966年の問にダイシストン粒剤およびPSP-204粒剤を用いて6通りの土壌施薬方法を試験し,
    次の成績を得た。
    1) アブラムシ類防除効果は各施用法とも顕著であつたが, 播種時直接条施用法および発芽時作条条施用法が特に優れ, 他はやや劣るようであつた。
    2) カンザワハダニ防除効果はアブラムシ類防除効果とほぼ同様の傾向を示した。
    3) ヨコバイ類, カメムシ類, 鞘翅目害虫および鱗翅目害虫は発生が少なく, これらに対する効果は明らかでなかつたが, ミドリヒメヨコバイに対してはやや有効な傾向がうかがえた。
    4) ウイルス病に対しては最終的な発病株率を低下させることはできなかつたが, アブラムシの初期密度の抑制効果が高かつた播種時直接条施用法では初期の発病率あるいは被害程度をやや軽減する効果が認められた。
    5) 施薬による発芽の遅延, 初期生育の阻害および葉における薬斑発現程度は, 播種時直接条施用および土壌混入法に大きく, 他の施薬法では小さかつた。
    6) 施薬区の生育は初期には阻害されたが, 後には無処理区よりかえつてよくなつた。この時期は播種時の薬剤肥料同時施用法, 側条条施用法および発芽時作条条施用法では他の処理区より早く, 発芽後約30~60日頃であつた。
    7) 施薬区の生育が中期に好転した理由の一つとして, 根粒の着生数が増加したことが考えられた。
    8) 施薬区の収量は各施用法区とも無処理区より多く, 増収率は生育のよい区に高い傾向があり, 収量の面からは播種時薬剤肥料同時施用法および発芽時作条条施用法が最も優れた。
    9) 作業面を含めて総合的に考えると, 播種時薬剤肥料同時施用法が実用的でなかろうかと思われた。
  • 田中 恒一, 早坂 公夫, 武田 憲雄, 佐藤 靖男
    1968 年 1968 巻 Special8 号 p. 127
    発行日: 1968/03/31
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    ホツプのハダニに対する有機燐粒剤 (ダイシストン, PSP-204粒剤) の実用化を検討するために, ホップ1株当り20gを, 時期別に1~2回土壤施用したが, 処理間に明瞭な差がみられず, 実用効果は認められなかった。
  • 桜井 清, 堤 正明, 手塚 浩, 春木 保, 佐藤 謙, 富岡 暢, 高倉 重義
    1968 年 1968 巻 Special8 号 p. 128-136
    発行日: 1968/03/31
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    1) 北海道農業試験場, 北海道立中央, 十勝, 北見各農業試験場で, タネバエ, タマネギバエに対する土壌施薬剤の防除効果について圃場試験を行なつた。
    2) タネバエに対してはインゲンを対象とし, 成虫を誘引した条件で播種前作条処理により, 各場とも春期および夏~秋季にそれぞれ試験を行なつた。
    3) 各場により供試薬剤および薬量が異なるが, 試験結果を総括すれば, 春季試験では, ダイシストン, PSP-204, エカチン各粒剤 (5%) とも有効で, 3kg以上の施用で高い防除効果が見られたが, 夏~秋季の幼虫密度がきわめて高い条件では効果が劣つた。
    4) 対照薬剤VC粉剤は, いずれの場合も安定した効果を示しており, これに比較して土壌施用剤は全般を通じて効果が劣つた。
    5) タマネギバエに対しては, タマネギおよびネギの直播, 移植につき, 播種または移植時の作条施用により試験を行なつた。
    6) 各場とも年次により, 供試薬剤, 薬量が異なり, それぞれ結果が異なるが, 全般的に見れば, ダイシストン, PSP-204, エカチン, ジメトエート各粒剤とも, 無処理区に比し被害を減じ, 防除効果が認められた。
    7) 各薬剤の効果は, 薬剤問では著しい差がなかつたが, 試験により効果に差があり, 有効薬量は成分量180gから360gまでの巾があり, タマネギバエの発生の著しく多い場合あるいは遅れた場合は効果が劣つた。
    8) これは対照薬剤VC粉剤等に比し残効が少ないためと考えられ, 全般に初期の被害を防止しても, 中期から被害が進展する例が多かつた。
    9) タネバエ, タマネギバエの試験を通じて, 土壌施用剤は全般的に効果はあるが不安定で, 顕著な効果の見られた場合からほとんど効果のない場合まであつた。
    10) これに対し現在使用されているVC粉剤他の有機燐剤等は, 常に安定した効果を示しており, タネバエやタマネギバエのみの防除を目的とした場合は, 土壌施用剤の使用は適当とは云えない。しかし地上部, 地下部害虫同時防除の目的で使用する場合は, 条件によつては応用可能の面も考えられるであろう。
  • 第7報土壌施薬の効果, とくに硝化効果に影響する要因
    小林 尚, 故桂 静江
    1968 年 1968 巻 Special8 号 p. 137-152
    発行日: 1968/03/31
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    畑地における浸透性有機燐剤の土壌施用の効果の発現に影響すると考えられる要因の一部に検討を加え, 下記の成績を得た。
    1) 害虫防除効果の発現速度および強度と土壌水分の間には正の相関関係が, 効果の持続期間とそれとの間には負の相関関係がみとめられた。
    2) 畑作物の初期生育と施薬方法の問には密接な関係があり, 薬剤が種子の近くに高密度に存在する場合には発芽遅延や薬斑発現等の薬害が起りやすく, 間土, 側条施用, 土壌混入等はこれらの薬害を軽減する働きを有すると考えられた。
    3) 厨川の下層土と川砂で土性を違えてハクサイを育てたポツト実験において, 粘土含量20%区が最も初期生育が遅延して薬害が著しかつたことから, 土壌施薬による作物の薬害は作物の生育速度と関係が深く, これが遅い場合に多く, 土性はこの発育速度に関係を有する要因であると考えられた。
    4) 土壌施薬がアズキの後期生育および収量に及ぼす好影響は土壌によつて異なり, それは厨川火山灰土壌 (SL) では著しく, 水沢の沖積土壌 (siCL) および秋田の沖積土壌 (CL) ではかなりみとめられ, 山形の洪積土壌では認められなかつた。結局その効果は, 土壌施薬によつて防除できる害虫の発生量が多い場合, および易分解性の有機物が多い土壌であつて, 土壌のN的肥沃度または施肥量 (特にN) のある範囲内の (極端でない) 不足によつて作物の収量レベルが低く抑圧されている場合に大きいと考えられた。
    5) 浸透性有機燐剤の上壌施用のNO3-N増加効果は土壌によつて異なり, 一定の培養期間 (20日) 内における硝化速度および量は, 水沢, 厨川, 月寒, 芽室, 北見の間においては地理的に南方に位置する土壌ほど優れ, 東北地方と北海道の問には顕著な差が認められた。この違いは主として土壌有機物の腐熟程度の差に基づくと推測され, 浸透性有機燐剤の土壌施用による作物の増収効果が, 東北地方においては明瞭に認められたが, 北海道においては認められなかつた一つの原因がここにあるのではないかと考えられた。
    6) 浸透性有機燐剤を添加した土壌の硝化作用 (以下「それ」と呼ぶ) は施肥量, とくにNの施用量に影響され, これが少なすぎたり多すぎたりする場合には弱く, この適量水準の範囲内において盛んであると考えられた。
    7) それは土壌の肥沃度, とくにN的肥沃度が適量水準の範囲内にある場合に盛んであると考えられた。
    8) それは土壌中の有機質量や添加する有機質量に影響され, これらが適量水準の範囲内にある場合に盛んであると考えられた。
    9) それとpH45~7.0の範囲の土壌酸度との間には平行関係がみとめられた。
    10) それは土壌水分が畑作物の生育に適当な範囲内で多い場合に盛んであると考えられた。
    11) それは降水量に影響され, 適量の降水は適当な土壌水分状態をつくるが, 土壌の最大容水量を越す多量の降水はNO3-Nの溶脱を惹起すると考えられた。
    12) それと16~30℃の範囲の土壌温度との間には, 初期 (培養開始20日後まで) には正の, その後 (培養開始21~45日後) には負の相関関係が認められ, 培養開始45日後におけるNO3-Nの蓄積量は24℃>20℃>16℃>30℃ の順に多かつた。
    13) それは土性とも関係があり, 初期には粘土含量2.5~20%の間において, 両者の問に負の関係がみとめられるように推測された。
    14) それは施薬量が適量を越えて多い場合には抑制されると考えられた。
    15) それは作物根系が存在する場合に盛んであつた。しかし, 作物の生育量が多いと, これに吸収されるNO3-N量も多くなるため, 土壌中から検出されるNO3-N量は少なくなると考えられた。
    16) 直接実験を行なわなかつたが, それは土壌および添加される有機物のC/N比, 土壌の4要素, ビタミンB12およびコバルト, アルミニウム, 気相等にも影響されると考えられた。
    17) それは実験に供試する土壌の扱い方にも影響され, 厨川の火山灰熟畑表土では培養前に室内で自然風乾することによつて弱まつた。
  • 腰原 達雄
    1968 年 1968 巻 Special8 号 p. 153-155
    発行日: 1968/03/31
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
  • 小林 尚
    1968 年 1968 巻 Special8 号 p. 156-160
    発行日: 1968/03/31
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
  • 1968 年 1968 巻 Special8 号 p. 161-163
    発行日: 1968/03/31
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
feedback
Top