北の丸 ―国立公文書館報―
Online ISSN : 2759-6842
Print ISSN : 0286-5750
51 巻
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
  • 白石 昌也
    2019 年 51 巻 p. 3-17
    発行日: 2019年
    公開日: 2025/06/23
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    日本の国立公文書館とベトナムの国家記録アーカイブズ局の共同事業「日本とベトナム~きざまれた交流の軌跡をたどる~」で紹介された『越南亡国史』は、二〇世紀初頭の革命家ファン・ボイ・チャウが日本で執筆した最初の文書であり、またベトナムの民族運動にとって画期的な意義を持つ著作であった。本稿では、同書の成立過程(第一章)、体裁(第二章)、内容(第三章)について述べるとともに、第四章においては、同書刊行の背景として、当時日本に亡命していた中国の思想家・梁啓超との間に成立した親密な交流に着目した。東アジアの知識人として共有する漢字文化が、二人の間の相互理解を促した。漢字文化を媒介として、チャウはさらに日本の知識人や政治家の心をも捉えることとなった。第四章の後半では、活字メディアが果たした決定的な役割に留意し、『越南亡国史』が当時のベトナムにもたらした影響の大きさについて言及した。
  • 髙木 重治
    2019 年 51 巻 p. 18-60
    発行日: 2019年
    公開日: 2025/06/23
    研究報告書・技術報告書 フリー
    本稿は、平成26年(2014)にKDDI株式会社から国立公文書館へ寄贈されたKDDI旧蔵文書を対象として、文書の作成取得部局、年代、内容、地域を分析することで、KDDI旧蔵文書の構造を示した。KDDI旧蔵文書は、主に逓信省電務局外信課が作成取得した1920年代~1940年代の国際電気通信に関する文書である。内容的には、国際電信・電話、海底ケーブル、無線通信など国際電気通信事業に関する文書、条約や法令に関する文書、国際電気通信株式会社などの民間法人に関する文書からなり、地域は、中国、アメリカ、ヨーロッパを主な対象としてる。国際電気通信に関する公文書は、KDDI旧蔵文書の他に、逓信省・郵政省文書や郵政博物館収蔵資料の一部にも確認できるが、これらはそれぞれ独自の特徴をもっており、互いに補完的な関係にある。
  • 国立公文書館への移管と公文書管理法施行の意義
    新見 克彦
    2019 年 51 巻 p. 61-84
    発行日: 2019年
    公開日: 2025/06/23
    研究報告書・技術報告書 フリー
    本稿では、裁判文書について、裁判所保管時における現用段階と、国立公文書館への移管後の非現用段階の公開のあり方の違いに注目し、比較検討することで、裁判文書が国立公文書館に移管された意義について論じた。 まず第一章では、裁判文書の国立公文書館への移管の経緯や仕組みについて整理した。次に第二章では、行政文書との比較から裁判文書の特徴を把握した。そして第三章では、裁判文書について、民事訴訟法にもとづく現用段階と公文書管理法にもとづく非現用段階の公開のあり方を比較した。さらに第四章では、裁判文書の利用について、国民共有の知的資源として、今後どのように活用していくことができるのかを検証した。
  • 氏家 幹人
    2019 年 51 巻 p. 85-100
    発行日: 2019年
    公開日: 2025/06/23
    研究報告書・技術報告書 フリー
    電子付録
    紅葉山文庫は徳川幕府将軍の文庫(蔵書庫)で、徳川家康以来の貴重な書籍や文書を保存していた。書物奉行は文庫を保管する書物方(しょもつかた)の長で、紅葉山文庫は数名の書物奉行とその配下の十数名の書物同心(しょもつどうしん)によって管理されていた。歴代の書物奉行90名については、すでに森潤三郎『紅葉山文庫と書物奉行』(1933年刊)で詳しく紹介されているが、同書執筆時にはまだ書物方の業務日誌等の存在が知られておらず、森の業績を補うかたちで、書物奉行を務めた人物について調査を重ねる必要がある。本稿ではその一人目として、鈴木白藤(すずき・はくとう 1767―1851)を取り上げた。
  • 星 瑞穂
    2019 年 51 巻 p. 101-130
    発行日: 2019年
    公開日: 2025/06/23
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     本稿は当館所蔵の資料のうち、平安時代に成立した文学作品(中古文学)および後世に成立したその注釈書類の書誌解題である。広く一般の利用に供するため、作品解説を加えて掲載する。 今回は『改訂 内閣文庫国書分類目録』の「国文」の項目に挙げられている資料から、該当の資料を抽出して調査した。『源氏物語』等の注釈書が中心となる。旧蔵者は紅葉山文庫・昌平坂学問所・和学講談所など多岐に及ぶが、多くが国学者の手元にあったものと想像され、書き入れが遺されている場合も少なくなく、近世における中古文学の享受の様子を伝える。 なお、挿絵を伴う資料については、すでに『北の丸』四五号(平成二五年)~五〇号(平成三〇年)に「当館所蔵の「絵入り本」解題①~⑥」として紹介しているので参照されたい。
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