北里大学一般教育紀要
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15 巻
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原著論文
  • 小河原 誠
    原稿種別: 原著論文
    2010 年 15 巻 p. 1-16
    発行日: 2010/03/31
    公開日: 2017/09/29
    研究報告書・技術報告書 フリー
     本稿が試みるのは、本質主義および道具主義との比較のもとで反証主義の概念をいっそう明確にすることである。本質主義および道具主義の輪郭を描いたあとで、筆者はそれらを反証主義の 観点から批判することを試みた。主として批判したのは道具主義である。筆者はそれをウェーバーの価値自由のテーゼを用いて批判したのみならず、他面で道具主義によって支持されている・推論ライセンス説も批判した。最終的に、反証主義が修正された本質主義として描き出される。
  • ブルックス ディビット L
    原稿種別: 原著論文
    2010 年 15 巻 p. 17-42
    発行日: 2010/03/31
    公開日: 2017/09/29
    研究報告書・技術報告書 フリー
      アジア圏の語学教員にとって、学生たちが学んでいる言語を実際のコミュニケーションをするための目的として産出させることは一つの重要な課題である。本稿が推奨する教授法は長期的な学習 をめざすと同時に、厳密でもあるという特徴を持つ。さらに異文化間への対応を取り入れ、定性的 な性質を持ったものである。Intercultural communicative competence(ICC:異文化間のコミュニケーション能力)の開発を促す学習環境を整えるために必要な学習方法や教授法を確立するための新たな異文化フレームワークを活用することが協調を介するtask-based learning approachの焦点である。
  • アメリカの中等教育の分析から
    平井 清子
    原稿種別: 原著論文
    2010 年 15 巻 p. 43-66
    発行日: 2010/03/31
    公開日: 2017/09/29
    研究報告書・技術報告書 フリー
      現在の日本の英語教育において、国際社会で通用する高い英語力を養成することは重要な目標である。国際社会で英語が共通言語として使用されている中で要求されるのは、「外国語」として学ぶ教室での「英語」ではなく、意思疎通の手段としての「言語」としての「英語」である。
      このような観点で言語教育の質と内容を考え、本稿では高等学校の英語教育において、これまでのように言語知識の習得に焦点を当てるのではなく、Cummins(1984)の提唱したCALP:Cognitive Academic Language Proficiency(学習言語能力)の概念を、バイリンガリズムの視点から考察し、思考を伴う言語発達の必要性を提示した。ここでは、米国の高等学校で行われている英語(国語)と社会科という、いわゆる教科の授業を参与観察し考察をした。さらに、参与観察をした二つの高校で教育を受けた日本人の卒業生、つまり、日米を行き来し両方の教育を受けた経験のある日本人生徒達への質問紙調査・面接結果を検討し、両者の授業・学習形態の違いを分析し、それらが学習者に及ぼす英語習得への影響と効果を探った。
     参与観察をした米国の授業では、認知的要求度の高いコミュニケーションスキルを培い、同時に批判的・分析的能力を育てる「ディスカッション」が活動の主流をなしていた。アカデミックな内容について、高い思考力を伴う分析的な言語活動というCALPの概念に基づき、Vygotskyの「発達の最近接領域」の概念で裏付けられる共同学習に根差した、このような活動は、言語を使用して思考を可視化することでより深い思考を促し、第二言語としても英語(言語)が効果的に習得されている側面があることが提示された。
      認知的に深い思考を要求する、批判的、分析的に比較・評価・判断をし、モチベーションを高める教材として、内容重視の授業(CBI)、つまり、他教科と統合された英語の授業が提案できる。思考を伴う言語発達においては、読むこと、書くことにも充分重きを置くべきであり、資料や教室での「ディスカッション」に基づいて各自が意見を「ライティング」する過程の中で、生徒は自分自身の理解を明らかにし、論理的思考力や批判的思考力を培い、高い英語力を育てる可能性が大きいことを示唆している。
  • 谷口 哲也
    原稿種別: 原著論文
    2010 年 15 巻 p. 67-73
    発行日: 2010/03/31
    公開日: 2017/09/29
    研究報告書・技術報告書 フリー
     本稿において、クリフォードトーラスのスペクトルデータによる構成方法を紹介する。
     本稿の1節から3節はディラック作用素のスペクトルデータによるクリフォードトーラスの構成に関するもので、 Taimanov の Clifford torus に関する仕事 ([5]) を必要最小限に紹介したものである。 Taimanovはあるディラック作用素のスペクトルデータを発見し、ディラック作用素の核を具体的に構成した。さらに、その核をワイエルシュトラスの表現公式に適用しクリフォードトーラスを構成した。
     4節において、 Ian McIntosh によって導入された複素平面から複素射影空間への調和写像のあるスペクトルデータを探し出し、対応する調和写像は幾何学的な方法を用いて、クリフォードトーラスに変換可能であることを報告する。
  • ─試行の成果と課題─
    小島 佐恵子
    原稿種別: 原著論文
    2010 年 15 巻 p. 75-95
    発行日: 2010/03/31
    公開日: 2017/09/29
    研究報告書・技術報告書 フリー
      本稿では、2009年度に試行した初年次教育の一環としての教養演習の計画、実施、成果の把握、 課題について整理し、検討した1。本稿の目的は、今回の取組を客観的に省察するとともに、次年度以降の課題を明確にすることである。
     今回の成果としては、①履修者の多さ(学生からのニーズの高さ)、②出席率、単位修得率の割合が高かったこと、③授業評価結果が良好だったこと、④演習に対する満足度が非常に高かったことの4点が挙げられた。
     しかし、課題としては、①授業の画一的な実施、②内容・実施枠組み、③担当教員、④学力のばらつき、⑤クラス規模、⑥成績評価、⑦他科目・次年度以降へのつながり、の7点に関する点が挙げられた。
     これらは他大学の動向とも一部共通する点であり、同じように解決には時間がかかると思われるが、次年度に向けた課題が明確になったともいえる。
     今後は、初年次教育の定義に立ち返り、本来の多様な要素(領域)から構成される内容を意識し、本学における初年次教育の在り方について確認しながら、上記の課題7点に照らして本演習を充実させる必要がある。
  • 市山 陽子
    原稿種別: 原著論文
    2010 年 15 巻 p. 97-110
    発行日: 2010/03/31
    公開日: 2017/09/29
    研究報告書・技術報告書 フリー
      カリキュラムの内容により合致したテストを作るため、リーディング・パッセージ分析による予備的調査を行った。この研究では市販の英語テストと教科書のリーディング・パッセージの統語的構造を比較した。  
      研究結果から市販のテストと教科書のリーディング・パッセージの統語構造は各所において異なる点が見られた。これはクラス分けには市販のテストを利用するのではなく教育機関独自のテスト作成を推奨する主張を裏付けるものである。
  • 加藤 英一
    原稿種別: 原著論文
    2010 年 15 巻 p. 111-131
    発行日: 2010/03/31
    公開日: 2017/09/29
    研究報告書・技術報告書 フリー
     2009年、 ⌈ 臓器移植に関する法律⌋の改正案が国会において採決された。日本共産党を除いた 各政党は、改正案の特性から投票に際して党議拘束を外した。投票の結果、原案通りに改正案は 成立した。これによって日本では、法的に脳死が人の死として認められることになった。衆・参両議院での投票行動は、党議拘束を外したにも拘らず、政党による影響を否定できない結果となった。それは1997年の ⌈ 臓器の移植に関する法律⌋が可決された際と同じである。これは R.K.マートンの準拠枠組みの理論によって、ある程度は説明が可能である。しかし今回の法改正における投票行動では、それ以外の要因である、衆・参議院のねじれ状態や小泉チルドレンの影響をも考慮しなければならない。
  • ―日本の教員養成制度史, 牧口常三郎の教師論, 教職志望者の意識に着目して―
    田村 修一
    原稿種別: 原著論文
    2010 年 15 巻 p. 133-145
    発行日: 2010/03/31
    公開日: 2017/09/29
    研究報告書・技術報告書 フリー
     本稿は、教員に期待される資質・能力について、(1)日本の教員養成制度史、(2)牧口常三郎の教師論、 (3)教職志望者対象の意識調査をふまえて検討した。その結果、(1)教員養成制度の変遷に伴い、教員に期待される資質・能力も変化していること、(2)牧口常三郎は、教員に期待される資質・能力として「教育の技術」が最も重要と考えていたこと、(3)教職志望者は、教員に期待される資質・能力として、コミュニケーション能力・学習指導力・カウンセリング能力・人柄が重要と考えていることが分かった。これらの結果をふまえて、今後の大学における教員養成の課題について考察した。
  • 鈴木 文雄
    原稿種別: 原著論文
    2010 年 15 巻 p. 147-157
    発行日: 2010/03/31
    公開日: 2017/09/29
    研究報告書・技術報告書 フリー
     教育は、教育基本法に示されているように、⌈人格の完成を目指し、平和で民主的な国家社会の形成者としての必要な資質を備えた身心ともに健康な国民の育成を期しておこなわれなければならない⌋ものである。高等学校においても、教育基本法や学校教育法の目的に照らし、生徒の実態等を踏まえて各学校ごとに⌈教育目標⌋を定めることになる。  
     各学校の教育目標を達成するために編成されるのが教育課程であり、その編成は校務の中でも最も重要なものである。また、生徒が学校生活を送る上での基盤となるのが学級であり、学級での生活・活動は有意義な高校生活を送る上で極めて重要な要素であることから、生徒を主体にした真摯で工夫を凝らした学級経営のあり方が問われることとなる。  
     一学級40人の個々の生徒を適切に指導することは容易なことではなく、自ずから限界もあると考えられる。従って、他の教師との連携の下、情報交換を密にして学級経営にあたる必要がある。また、高校生の発達を理解することは、生徒理解の第一歩であり、学級経営を軌道に乗せ、生徒の成長を支援するために欠かすことのできないものである。  
     この時期の発達の特徴としては⌈身体的発達⌋、⌈知的発達⌋、⌈対人関係の変化⌋、⌈自己意識の発達⌋等を挙げることができる。教師はこのような特徴をよく理解してさまざまな面での指導に生かしていかなければならない。
     学級担任は生徒に接する時間が最も多いことから、生徒理解面で多くの利点を有している。しかし、逆にそのことで生徒をよく理解したかのような錯覚に陥る場合もある。学級経営のまさに基盤である、生徒と教師の信頼関係を損なってしまうことのないよう、初心を忘れることなく生徒に接していかなければならない。初心とは、⌈生徒の話に耳を傾ける⌋」ことであり、すべての生徒に⌈愛情を持って接する⌋ことである。
  • ─北里大学一般教育部の授業(社会学)におけるアンケート調査を通じて─
    加藤 英一
    原稿種別: 原著論文
    2010 年 15 巻 p. 159-177
    発行日: 2010/03/31
    公開日: 2017/09/29
    研究報告書・技術報告書 フリー
     拙者がこれまでの自らの授業を対象に行ってきた調査によれば、授業の満足度に最も影響を与 える要因は ⌈ 授業への興味・関心⌋と ⌈ 授業の理解度⌋であった。そしてこの調査過程において、 新たな課題も浮き彫りになった。授業の満足度と授業の質との関係である。そこでこの関係を分析するにあたり、試験の成績は、授業の質を示す1つの指標であると捉えることができよう。
     このことを前提として、本稿では授業の満足度と成績との関係を、学生に対するアンケート調査と期末試験の結果を基に明らかにすることを試みた。授業の満足度と成績との関係では、統計的な相関関係を見出すことができた(相関係数0.23)。
     また成績に関しては、学生の性別および学部別に統計的有意差を見出すことができたものの、 満足度に関しては統計的な有意差を見出すことはできなかった。
     この結果は、論理的に矛盾しており、実証データの収集方法および理論の再構築が必要である。
  • ─校長講話から─
    鈴木 文雄
    原稿種別: 原著論文
    2010 年 15 巻 p. 179-188
    発行日: 2010/03/31
    公開日: 2017/09/29
    研究報告書・技術報告書 フリー
     学校教育法施行規則によれば、小・中学校においては⌈道徳⌋が教育課程の編成に含まれてい るが、高等学校では含まれていない。しかしながら、高等学校学習指導要領には、⌈道徳教育⌋を⌈学校の教育活動全体を通じて行う⌋ものとして明確に位置づけている。また、小・中学校においては、道徳教育を推し進めるにあたって、 ⌈ 道徳の時間⌋が設けられ、その目標として ⌈ 道徳的実践力を育成する⌋、および⌈道徳的実践力を養う⌋とあり、実践力に主眼が置かれたものとなっている。  
     高等学校では⌈道徳の時間⌋が設けられていないが、⌈道徳教育⌋を推し進めるにあたっては、小・中学校の⌈道徳の時間 ⌋ 等の主旨、内容を受け継ぎ深化させたうえで、高等学校の教育課程で示されている ⌈ 各教科 ⌋ 、 ⌈ 総合的な学習の時間 ⌋ 、 ⌈ 特別活動」の3領域全体を統合した形での組織的な取組みが必要である。⌈総合的な学習の時間 ⌋ と⌈特別活動 ⌋ は、それぞれに教務担当、生徒指導担当によって年間計画が立案されるのが一般的であり、その計画の中には、ボランティア活動や体験学習、講話等も組み込まれている。また、多くの場合、指導の主体は学級担任が務めることになる。  
     校長が直接生徒を指導する場面は限られているが、校長には講話等で全校生徒に話す機会が多く与えられている。話すにあたっては、生徒の発達段階における「悩みや葛藤」等に心を配ることが肝心である。さらに、講話をきくことによって、生徒が自分自身の課題や目標を模索し、自らの考えを深め、成長を実感し、結果的に深い人間理解につながっていくようにすることが大切である。学校のそれぞれの節目において、適切な講話を実践していくことが校長に与えられた重要な役目である。そのためにも、ある程度の年間プランを組み立てておく必要がある。
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