北里大学一般教育紀要
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最新号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
原著論文
  • -教養教育との交差点-
    大石 敏広
    原稿種別: 原著論文
    2024 年 29 巻 p. 1-26
    発行日: 2024/03/20
    公開日: 2024/06/15
    研究報告書・技術報告書 フリー
     本論文の目的は、設計的思考という方法論が倫理学と教養教育に関して重要な意味を有するという点を明確にすることである。まず、設計的思考が、倫理問題を解決するための方法論であることを指摘し、方法論としての設計的思考が求められる背景について述べる。次に、設計的思考の4つの特徴を次の順に説明していく。(1)多様な制約条件の間には複雑な関係性があるため、その対処策としてトレード・オフという方法を採用する。(2)制約条件の1つとして倫理的要素があることを主張する。(3)複数解と解欠如を容認する。(4)問題に直面した行為者の視点に基づく。この4つの特徴を明確にすることによって、設計的思考が実践的な方法論であることが示され、倫理学が日常で役割を有するとするなら、設計的思考に学ぶ必要があるという点が指摘される。最後に、設計的思考は問題解決のための実践的技術であり、その点に教養教育との繋がりがあることが明らかにされる。
  • 福田 宏
    原稿種別: 原著論文
    2024 年 29 巻 p. 27-40
    発行日: 2024/03/20
    公開日: 2024/06/15
    研究報告書・技術報告書 フリー
     古典力学3体問題8の字解の分岐解析に必要な点群の既約直交表現を,Mathematicaを使って,直接,1)生成元の関係式と直交条件を行列の方程式として解くことで直交表現を得て,2)同値な表現の定義を行列の方程式として解くことで同値な表現を取り除き,3)可換な対称行列かを調べることで既約判定して導出する。
  • -その理論的位置づけと教育実践への示唆-
    猪原 敬介
    原稿種別: 原著論文
    2024 年 29 巻 p. 41-62
    発行日: 2024/03/20
    公開日: 2024/06/15
    研究報告書・技術報告書 フリー
     文章理解プロセスについて考えるための理論的枠組みとして「語彙クオリティ仮説」がある。これは「語彙知識には,量だけでなく質における個人差・項目差がある」という仮説であり,語彙の質が高いほど,単語処理が自動化されやすくなると仮定されている。結果として,「語彙の質→単語処理の自動化→処理能力(ワーキングメモリ)の余裕→正確で流暢な読解」という因果連鎖により,語彙の質は文章理解力につながっている,というのがこの仮説の主張である。海外においては頻繁に参照される理論的枠組みだが,国内ではまだこの枠組みを踏まえた研究は少なく,その現状を解決するために,本稿ではまず語彙クオリティ仮説について概説した。続いて,具体的な研究例として,語彙の質が単語処理の際に語彙知識内の他の類似単語から受ける干渉をどのように和らげるかについて同音異義語を用いた実験を行ったPerfetti & Hart (2001) と,低頻度語への事前学習が文理解中の眼球運動にどのような影響を及ぼすかを検討したTaylor & Perfetti (2016) 実験2を紹介した。その上で,語彙クオリティ仮説と同様に文章理解力を説明する「ワーキングメモリ仮説」や「音韻処理仮説」と比較し,その理論的位置づけについて論じている。また,教育実践に語彙クオリティ仮説からどのような示唆があるかについても述べた。本稿により,本領域の理論的進展と教育実践への貢献を目指す。
  • 矢野 奈々
    原稿種別: 原著論文
    2024 年 29 巻 p. 63-78
    発行日: 2024/03/20
    公開日: 2024/06/15
    研究報告書・技術報告書 フリー
     19世紀のイギリスは医学的飛躍が目覚ましく、それに伴い医者と患者の関係も大きく変化した。そして、19世紀半ばの小説において、以前は脇役に据えられることの多かった医者が主役に変わって描かれるようになる。医者が主役となる代表的な小説にアントニー・トロロープ(Anthony Trollope, 1815-1882)の『ソーン医師』(Doctor Thorne, 1858)とジョージ・エリオット(George Eliot, 1819-1880)の『ミドルマーチ』(Middlemarch, 1871-72)が挙げられる。『ソーン医師』の主人公ソーン医師、『ミドルマーチ』の主人公リドゲイト(Lydgate)は共に田舎の開業医であるが、それぞれのコミュニティ内での二人の立場や評価、人間関係には違いがある。本稿では二人の医者の描写を通し、医者の役割がどのように変わったのかを考察し、さらに作家たちは医者をどのような存在として捉えていたのかを検証した。
     二作品の検証を通し、作家たちが医者を完全なる主役に据えられなかった葛藤があったことが分かる。また、ソーン医師とリドゲイトを比較すると、彼らの「人間性」において大きな違いを見ることができ、その一方で、両者にはそれぞれのコミュニティにおいてインフルエンサーとしての役割を果たしている共通点がある。小説に描出される医者像の変遷を辿ると、主人公の人間性と科学の進歩のはざまで、時代に即した医者像の造形に奮闘した作家たちの苦悩が顕在化する。医学、科学が進歩した時代の過渡期において、ソーン医師とリドゲイトは小説における医者の脇役から主役への移行の流れに大きな影響を及ぼしたのである。
  • YouTubeとBloggerの事例
    池谷 咲良
    原稿種別: 原著論文
    2024 年 29 巻 p. 79-103
    発行日: 2024/03/20
    公開日: 2024/06/15
    研究報告書・技術報告書 フリー
     授業でのデジタルツールの活用はオンライン学習の時代に不可欠なものとなっており、デジタルツールは言語発達に効果的であることが証明されている。しかし、クイックトランスレーション、ロールプレイ、反復練習、発音チェック、置き換えドリルといった、デジタルツールのほとんどのアクティビティーは一方的なやりとりに限られてしまい、インタラクティブ性が乏しい傾向にあるため、英語学習の面白味が少々減少してしまい、モチベーションを下げてしまう可能性がある。本研究では、こうした要因を踏まえ、学習者が自宅で取り組める、よりインタラクティブ性に富んだデジタルツールの開発を試みる。先に述べた現在の教材の欠点を克服するため、YouTube、Blogger、Googleフォーム、Quizletを用いて語学スクールのテキストで扱われている文法をさらに練習するための自宅学習用パイロット教材を考案し、モニターによる評価を実施した。本稿ではYouTube版とBlogger版を詳細に紹介しながら、パイロット教材に対するモニターの回答やコメントの分析をもとに、インタラクティブ性に富む言語学習向けデジタルツールに対する教育的な意義を示唆する。
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