本稿では,JAXAの観測ロケットをベースにした超小型衛星打ち上げ機SS-520 5号機の電源系システムについて述べる.本号機は衛星軌道投入のためのロケットであるため,システム全体として小型・軽量化が求められた.そのため従来採用されていたすべての機器の電源供給源が1つの電源から成る集中電源システムでなく,送信機・レーダ・航法機器用,及び4つのアビオニクスごとに電源を分散して搭載する,分散電源システムを採用し,システムの効率化を図った.また,使用する電池の種類も従来観測ロケットで搭載されているニッケルカドミウム電池から,リチウムイオン二次電池及び,イオン液体二次電池へ変更した.ここではそれらの新規電源システム,及びイオン液体二次電池の特徴を紹介する.
観測ロケットのように小型で打ち上げ能力が限られているロケットでも搭載可能なレーダトランスポンダとコマンドデコーダを開発したので報告する.本搭載機器は総重量600 g程度と軽く,小型かつ安価なコンポーネントである.本搭載機器は2018年2月3日に内之浦宇宙空間観測所から打ち上げられたSS-520 5号機に搭載され,所期の目的を達成するに至った.本稿では,コンポーネントの概要及び飛翔結果について述べる.
HTV搭載小型回収カプセル(HSRC)は,宇宙ステーション補給機「こうのとり」7号機の与圧部搭載カーゴとして打ち上げられ,国際宇宙ステーション(ISS)で実験サンプルを地上へ回収するための実証機であり,2018年11月に国内で初めてISSからのサンプル回収ミッションを成功させた.実証技術の一つに,バンク角制御による揚力誘導技術があり,そのために姿勢制御用推進系を搭載している.この機能を実現するために搭載した姿勢制御用スラスタは,ISS安全要求に対応したコールドガスジェットシステムであり,熱防護材の壁面に収めるため,小型かつ断熱性を持たせる必要があった.国内初の金属積層造形によるチタン合金製を採用し新たに開発したものである.金属積層造形と精密加工を組み合わせた製造方法により,ノズルおよびスロート部の形状精度を確保することで,推力性能のばらつきを抑えた.実飛行において,誘導制御からの信号により推進系は正常に作動した.回収後の点検において,スラスタノズル含め外観上損傷は認められず,熱対策が適切であったことが示された.
HTV搭載小型回収カプセル(HSRC)は,国際宇宙ステーション(ISS)から実験サンプル等を持ち帰るために必要な技術の獲得を目指した技術実証ミッションである.2018年11月,宇宙ステーション補給機(HTV)のハッチ部に搭載されたHSRCは,HTVの最終軌道離脱制御終了後にHTVから放出され,その後は自律的に揚力誘導飛行を実施,既定の速度域にてパラシュートを開傘し南鳥島沖の海上に着水,浮上,回収された.本稿では亜音速から着水速度までの減速及び着水後の浮上・着水位置送信機能を担った緩降下回収系の設計開発及び飛行結果を紹介する.