オンデマンド観測は,災害発生時に短期間で被災領域を観測しデータを伝送する観測方式である.災害発生時に即応するため,自律化運用技術を用いて変化にロバストに対応し,衛星打上げ直後の不安定・不確実な状況下でも観測・伝送運用を実施する.我々は2018年2月に打ち上げたCubeSatを用いてオンデマンド観測の軌道上実証を実施した.本稿においては自律化運用技術の説明と,軌道上実証の内容及び将来の運用省力化に向けた発展について説明する.
超高速インターネット衛星「きずな」(WINDS)搭載のマルチビームアンテナの概要と成果を概説する.WINDSは,e-Japan計画にて「無線による広範囲の超高速アクセスを可能とする技術」を実証する衛星として位置付けられた.このため,JAXAは超高速アクセスを可能とするマルチビームアンテナを開発した.マルチビームアンテナは,同様にWINDS搭載のマルチポートアンプと合わせ,超高速アクセスを実現する.マルチビームアンテナは,2.4mΦのソリッド反射鏡を2枚持ち,国内及び近隣国12カ所,アジア太平洋地域7カ所に対して,サービスビームを提供する.このマルチビームアンテナとマルチポートアンプを合わせ,68dBW以上のEIRPを実現した.これにより,1.2Gbps(当時世界初),その後3.2Gbps(当時世界初)の超高速通信を実証した.WINDSが実現した超高速通信は,東日本大震災等の災害の際に,被災地にて活用された.本稿では,どのように高い性能を実現したのかと,被災地での活躍を概説する.
JAXA FQUROHプロジェクトではJAXA実験用航空機「飛翔」を用いて機体騒音低減技術を実証する飛行試験を実施し,改造したフラップ端と主脚の低騒音化効果を地上からの音源計測により実証した.低騒音化効果の測定に加え,流れ場を含めた低騒音化設計検証を目的として右舷最外舷フラップに計装を施し,フラップ表面の圧力計測を行った.計装はフラップ表面に設置するプレッシャーベルトと内蔵の計測システムで構成され,いずれも今回の試験に向けて開発した.2017年3月にベースライン形態(低騒音デバイスの無い形態),2017年8月~9月にフラップ低騒音化デバイス設置形態の飛行試験において圧力計測を実施し,設計検証に使用可能な精度(繰り返し精度)でフラップ表面の圧力分布,非定常圧力データを取得することができた.実機フラップ圧力測定の結果を,風洞試験,CFDの結果と比較し,低騒音化デバイス設置による流れ場の変化が概ね予測通りであり,意図した設計結果が実機において得られていることを確認した.
超低高度衛星技術試験機「つばめ」(以降,SLATS : Super Low Altitude Test Satellite)の姿勢制御用搭載機器である国産新型ホイール・タイプS は,10Nms以下クラスの国産リアクションホイール(RW)として開発された.本ホイールは,それまで輸入品に頼っていた小型RWに関して,高信頼性,高品質な国産品に対するユーザからのニーズにこたえるために開発を行ったものであり,SLATSに搭載され軌道上実証することとなった.本ホイールの地上での開発は順調に進み,2017年12月のSLATS打ち上げ後も約2年弱の運用期間にわたり軌道上で順調に動作し続け,機器特性や健全性等に関する貴重な結果をもたらした.本解説記事では,国産新型ホイール・タイプSの開発結果と軌道上での実証結果について紹介する.