2020年12月6日,「はやぶさ2」は,小惑星リュウグウで採取したサンプルを地球に持ち帰り,新たな深宇宙の旅へと飛び立った.次の目的地は,1998 KY26という直径30m程度の非常に小さな天体である.地球帰還までに予定していたミッションすべてが順調に進み,余分に搭載していた燃料で到達可能となった.但し,到着は2031年と非常に長期の巡航となる.その間,省燃料の探査機運用技術の獲得や,巡航中の黄道光観測,系外惑星観測などの理学観測運用を行う.さらに2026年には別の小惑星2001 CC21へのフライバイを計画しており,近接画像を取得するための挑戦的な観測ミッションを行う.その後,2027年,2028年に2度の地球スイングバイを予定しており,サイエンス機器による地球・月の撮像や,地球からのはやぶさ2の観測も期待される.本稿では,はやぶさ2の拡張ミッションの全体計画について述べる.
防衛装備庁航空装備研究所におけるローテティング・デトネーションエンジン(RDE)に関する研究の経緯とこれまでの成果について概説する.航空装備研究所は,RDEの高い熱効率や単純構造等のメリットから,ゲームチェンジャーとなる装備品に寄与しうる技術として,平成28年度から研究を実施している.米空軍研究所の知見を参考に,まず無冷却の供試体を製作し,デトネーションの発生を確認した.次いでこの設計に水冷却機構を追加し,10秒の長秒時燃焼に成功し,熱流束推定等の成果を得た.引き続き,航空機用ガスタービンエンジンの燃焼器を代替することを想定し,技術課題の解明に取り組んでいる.
我が国の参加する国際有人宇宙活動は,国際宇宙ステーション(ISS)計画を経て,いよいよ月の有人探査(アルテミス計画)に移行しつつある.ISS計画により宇宙医学・心理学の多くの知見が蓄積され,少なくとも地球の軌道上では宇宙飛行士は健康を損ねることなく,半年程度の長期活動が行えることが実証された.しかし月の有人探査となると,飛行士の健康管理のハードルはかなり高くなり,特に放射線被ばく,健康管理の自立性,精神心理的ストレスへの対策などが課題となるであろう.本稿では特に心理的課題について論じるが,地球からの支援が容易でない月探査活動でのストレスや対策を考える時,最も参考とすべきは南極越冬隊の長年の経験であると考え,心理研究の文献をレビューした.南極特有の現象として,越冬症候群,第3四半期現象,ステージ理論などが報告されているが,月派遣隊への心理的対策にも応用できる知見が多く,隊員の選抜,教育・訓練,支援対策の企画・実施のために有力な参考となるであろう.