近年,木星表面では直径数mから数10 mのサイズを持つ小天体が大気圏突入した際に発生する発光現象,いわゆる『衝突閃光』が,主にアマチュアの天体観測家によって発見・観測されてきている.こうした木星への天体衝突は外部太陽系の小天体について新たな知見を提供するだけでなく,地球では発生頻度の極めて小さい天体の大気圏突入現象に対する現象論的理解を実現するまたとない機会である.本稿では木星閃光観測の歴史を概説するとともに,近年の木星閃光の観測的研究の進展について,筆者が代表として実施している外惑星閃光モニタ観測システムPlanetary ObservatioN Camera for Optical Transient Surveys: PONCOTS(ポンコツ)の最新観測成果を中心に紹介し,サイエンス的な発展の難しかった木星閃光観測について,木星を『検出器』として活用する,太陽系小天体の全く新しい研究手法として確立させた経緯について振り返る.さらに,こうした木星閃光観測が地球の天体衝突問題への取り組みにどのように貢献するのか考察する.
技術試験衛星9号機(ETS-9)は,従来の2液式スラスタとは異なるホールスラスタを搭載した,日本初の全電化衛星である.ホールスラスタは低推力,高比推力の特徴を持ち,姿勢軌道制御サブシステム(AOCS)に求められる機能が大きく異なる.本稿では,ETS-9の特徴的な機能である静止化のためのEOR(Electric Orbit Raising)機能と定常運用時の統合化制御について述べる.
第67回宇宙科学技術連合講演会(2023年10月)にて,パネルディスカッション「電気推進の研究成果を日本の競争力強化へ」が開催された.本パネルディスカッションでは,衛星/サービス事業者および電気推進研究者からなる計7名のパネリストにご登壇いただき,「使う側からの視点」を切り口として,電気推進の更なる活用に向けた方策を議論していただいた.今後の電気推進の研究開発にとって重要な多くのメッセージが含まれる談論となったため,本誌面を借りてその内容を紹介する.