本稿では,2020年代末に月圏に輸送が計画されている日本の月測位衛星システム(LNSS)の実証衛星における軌道推定,及び月面受信実証装置の位置推定の精度検証方法について論じる.LNSS実証衛星は,地球から飛来する極めて微弱なGNSS測位信号を高感度GNSS受信機で受信し,搭載測位計算機の航法フィルタで自身の軌道を推定する.月面受信実証装置は,月の南極域に設置され,LNSS実証衛星,ESA/NASAの月圏測位衛星が送信する測位信号を受信して擬似距離・搬送波位相・航法メッセージを地上に送信する.このデータを地上システムで処理することにより位置を推定する.これら軌道推定・位置推定の精度を評価するため,LNSS実証衛星と月面受信実証装置は,地上局からRARR観測,DDOR観測,LLR観測が行われ,これら観測データを用いた軌道推定・位置推定結果をリファレンスの座標値とする計画である.本稿では,リファレンス座標値として必要な推定精度を得るために実施した擬似データ解析について論じる.
現在,総務省,文部科学省,宇宙航空研究開発機構(JAXA)及び情報通信研究機構(NICT)を中心に,次世代の静止通信衛星が必要とする最先端の衛星バス技術及び通信ペイロード技術を開発することを目的として,技術試験衛星9号機(Engineering Test Satellite 9: ETS-9)の開発が進められている.NICTでは,静止衛星と地上間で,10 Gbpsの光通信を実証する光フィーダリンク通信サブシステム(HIgh speed Communication with Advanced Laser Instrument: HICALI)及び光通信実験とKa帯衛星通信実験を円滑に進めるため必要な機能を持つ共通部通信サブシステム(Common Communication Subsystem: CCS)の開発を実施し,それをETS-9に搭載し,各種の光及びKa帯衛星通信実験を計画している.本稿では,CCSの機能及び構成の概要,地上試験の試験結果などの開発状況について述べる.
2020年に発足したModel-Based Aviation development Consortium(MBAC)は,国内航空機業界におけるModel Based System Engineering(MBSE)/Model Based Design(MBD)の普及と標準化を目的に,これまで11個のワーキング・グループ(WG)に分かれて活動してきた.本稿では,2021〜2022年度に活動した5つのWGについて紹介する.モデル流通WGは,統合シミュレーション構築を目的に企業間でモデル授受するためのプロセスを策定し,モデル作成規約WGでは,航空機開発向けSimulink®モデル作成規約を発行した.MBD社内普及/ACG(Auto Code Generation)導入WGは,導入メリットや障壁対策をまとめた普及ガイドラインを作成し,MBSE推進WGでは,System ComposerTMを活用したシステムモデル設計を試行した.Simulink®モデル企業間流通WGは,企業間でモデル授受の試行を通じて規約を改訂し,実運用可能なレベルに整備した.(Simulink®,System ComposerTMはThe MathWorks, Inc.の登録商標)