2024年10月に開催された2024国際航空宇宙展(JA2024)におけるSAE-Japan Symposiumを契機に,日本の航空機産業およびドローン産業における国際標準化活動の意義について考察した.標準化は単なる技術仕様の統一にとどまらず,国際的な技術発信,人材育成,業界の信頼性向上,国際議論への影響力確保といった多面的な役割を担う.SAE International(SAE)が注目するように,カーボンニュートラルやデジタルトランスフォーメーション(DX)といった近年の潮流においては,国際的な枠組みづくりに初期段階から関与することが,日本企業にとって戦略的に重要だと考えられる.本稿は,SAE International(SAE)の活動を通じて得られる知見やネットワークといったメリットを認識し,積極的な参加を関係者に検討してもらえることを目指すものである.
小型超音速実験機「NEXST-1」は,過去に実用化された燃費性能の悪い“コンコルド”の経済性改善に向けた先進空力設計技術の飛行実証を目的とした実験機である.この実験機にはコンコルドを超える圧力抵抗低減技術の適用拡大と,大後退角の主翼(亜音速前縁翼)では世界初の摩擦抵抗低減技術(自然層流翼設計法)が適用され,高度18 km,マッハ2の飛行条件下においてその自然層流翼の飛行実証もまた世界初である.本成果は中核技術の特許化,設計ツール及び飛行データを含む「データベース」の構築と国内関係機関への提供を通して,我が国航空産業の技術力向上及び人材育成への貢献に繋がっている.海外からも高い注目を集め,将来の超音速旅客機の国際共同開発における日本のポジショニング確保にも影響を与えたものと判定され,航空宇宙技術遺産第二号に認定された.
固定ビーム及び可変ビーム通信サブシステムは,総務省の電波資源拡大のための研究開発においてその開発を行っている次世代静止通信衛星の通信の大容量化とフレキシビリティ技術を実証するための通信サブシステムである.固定ビーム通信サブシステムは,デジタルチャネライザ技術を用いて帯域や周波数を通信需要に合わせて柔軟に変更できる中継器であり,可変ビーム通信サブシステムは,デジタルビームフォーミング技術を用いて通信需要に応じた任意の形状のアンテナビームを形成できる中継器である.本稿では,これら固定ビーム通信サブシステム及び可変ビーム通信サブシステムの開発状況について述べる.
月測位研究会は,測位(PNT)すなわち位置計測・航法・調時(Positioning, Navigation and Timing)について,月面及びその周辺の測位(Lunar PNT)や低軌道衛星による測位(LEO PNT)を対象とする研究会である.この研究会は,2022年9月に当時米国及び欧州で活発化していた月の測位活動に応える形で,有志メンバーによって開始した.本稿を執筆した2024年8月までの間に2020年11月から8回にわたる月測位研究会をハイブリッド形式で開催し,近年の会議では100名を超える参加者を記録するなど日本においてもLunar PNT及びLEO PNTに対する関心と勢いが増している.本稿では,月測位研究会の紹介と過去の会議の議題を概観し,各発表の簡潔な要約を提供し,月測位研究会の今後の展望について論じる.また,本稿では月面活動の共通基盤となる月の基準座標系及び月の時刻系の現状についても紹介する.