磁力支持天秤装置(MSBS: Magnetic Suspension and Balance System)は,風洞試験でしばしば問題となる支持干渉を排除できるため,理想的な空力計測を実現するための最も有望なツールの一つである.大規模な流れの剝離を伴う鈍頭物体においても,支持干渉の影響は無視できず,このシステムの利点は非常に大きい.東北大学流体科学研究所では,過去10年間にわたり,1メートル級のMSBSを用いて,円柱に対するブロッケージ補正手法の研究,角柱の空力特性の評価,回転球における負のマグナス力の発生などを調査してきた.本稿では,これらの基本的な鈍頭物体形状に対する磁気浮上を用いた試験技術と,そこに関わる技術的課題について全2回にわたり報告する.第2回では鈍頭物体の風洞試験例を挙げながら試験技術と課題について解説する.
商業デブリ除去実証(Commercial Removal of Debris Demonstration: CRD2)は,日本由来の大型スペースデブリの除去を,民間企業と協力して実施することで,デブリの積極的除去の国際的議論の具体的な進展と,日本企業の軌道上サービス市場への訴求力向上の実現を目指す,JAXAのプロジェクトである.JAXAの技術的支援のもと,株式会社アストロスケールによりCRD2 Phase Iの実証衛星ADRAS-Jが開発された.ADRAS-Jは,非協力的物体であるデブリへのフルレンジのランデブ・近傍運用能力を持つ小型衛星である.ADRAS-Jは,2024年2月18日に打ち上げられ,「フルレンジ非協力ランデブ・近傍運用技術実証の成功」「デブリの定点観測・フライアラウンド観測による詳細な映像取得の成功」「距離15 mへの接近の成功」といった成果を達成した.本稿では,CRD2プロジェクトの成り立ちと構成,Phase I/ADRAS-Jプロジェクトの概要と,実証衛星ADRAS-Jの開発成果・軌道上運用成果について概要を解説する.
2025年5月に神戸で開催された第16回構造および複合領域の最適設計に関する世界会議(The 16th World Congress of Structural and Multidisciplinary Optimization: WCSMO-16)の参加報告を行う.本会議は機械製品や建築物等の最適化に関する幅広いテーマを扱う会議である.近年は最適化に機械学習を導入する報告が目立って多く,今大会でもその傾向は続いた.本報告では,一般講演の中から幾何学的特徴量を利用したトポロジー最適化,data-driven/機械学習,信頼性とロバスト最適化の大きく3テーマと特別企画の“The Dawn of Topology Optimization”を取り上げて会議の様子を紹介する.