【背景と目的】乳癌患者が最大の危機であるボディイメージの変化に直面し, その変化を受容するためには, 影響因子を的確に捉えた適切な看護援助が必要となる.本研究は乳がん患者の術前・術後におけるボディイメージの変化を明らかにする事を目的とした.【対象及び方法】国立高崎病院において, 乳癌の診断のもとに外科的治療を受ける目的で入院中の患者のうち, 本研究参加に同意が得られた者10名.方法は, 身体カセクシス, 身体尊重, 身体コントロールの3カテゴリーについて研究者が作成した質問紙を用い, 留め置き法で後日回収した.年齢, 職業, 婚姻, 術式の4つの項目においてt検定を実施した.また, 術前・術後の面接により面接内容の逐語録を作成した.【結果】身体カセクシスについて, 術前は60歳以下の群が61歳以上の群よりも得点が高く, 温存術又は再建術を受ける群の方が乳房切除術を受ける群よりも身体に対する意識の集中度が高かった.身体尊重については, 術前において60歳以下の群が61歳以上の群よりも得点が高く, 自己の身体を尊重できにくくなっており, 無職者よりも有職者が, 乳房切除術を受ける群よりも温存術又は再建術を受ける群が自分の身体を尊いものとして考えにくくなっていた.身体尊重のカテゴリーにおける術後では, 無職者の群よりも有職者の群が有意に高値を示し(p<0.01), 乳房切除術を受ける群よりも温存術又は再建術を受ける群が有意に高値を示しており(p<0.02), 身体を尊重しにくくなっていた.身体コントロールでは, 術後において, 有職者の群が無職者の群よりも有意に高値を示し(p<0.04), 身体に対するコントロール感が低く, 温存術又は再建術を受ける群が乳房切除術を受ける群よりも自分の身体に対するコントロール感が低かった.看護援助として, 身体カセクシス, 身体尊重, 身体コントロールに関する援助と一人の人間として統合し, 尊重した援助の重要性が明らかになった.【結論】身体カセクシスについては術前において, 年齢別, 術式別で差を認めた.身体尊重については術前に, 年齢別, 職業別, 術式別で差を認め, 術後においては職業別, 術式別に差を認めた.身体コントロールでは術後に, 職業別, 術式別で差を認めた.看護援助として, 身体カセクシスに対する看護援助, 身体尊重のための看護援助, 身体コントロールのための看護援助の重要性が示唆された.
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