症例は89歳, 女性. 平成22年2月横行結腸癌, 肝転移に対し右半結腸切除郭清, マイクロ波凝固療法を施行した. 高分化管状腺癌, pSS, pN0, pH1, Stage IVであった. 術後は年齢を考慮し, 化学療法は行わず経過観察していた. 平成23年12月, 食思不振, 腹痛, 腹部膨満感が出現したため当科を受診し, イレウスの診断で入院した. イレウス管を挿入したところ症状の改善を認めたが, 再びイレウス症状が出現した. イレウス管造影, CT, 下部消化管内視鏡検査ならびにその際行った造影検査で, 右上腹部に腫瘤性病変がみつかり, 内視鏡検査中の吸引組織から癌が判明した. 腹膜播種の小腸浸潤と診断した. ステント挿入は困難で, 年齢を考慮すると, 手術のリスクも高いため, 磁石圧迫吻合術を行った. 術後経過は良好で, 全粥が食べられるようになり, 外泊もしたが, 退院間近の第42病日に誤嚥性肺炎で急変して亡くなった. 大腸癌腹膜再発によるイレウスの超高齢者に, 磁石圧迫吻合術を行った1例を経験したので, 若干の文献的考察を加えて報告する.
抄録全体を表示