北関東医学
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65 巻, 3 号
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原著
  • 土屋 明美, 矢島 晃子, 高橋 京子
    2015 年 65 巻 3 号 p. 181-186
    発行日: 2015/08/01
    公開日: 2015/09/16
    ジャーナル フリー
    背景・目的:手術にあたり患者の薬剤情報は, 手術計画立案の前提であり極めて重要なことである. 在院日数短縮等の理由から通常, 入院は手術前日であり, 入院後に使用薬剤の情報を収集したのでは中止該当薬があった場合, 手術延期等の措置を取らねばならず, 患者・病院にとって不利益である. 公立富岡総合病院では, 手術にあたって中止を検討しなければならない医薬品・健康食品の有無を入院前に確認するために, 手術前薬剤チェック (以下, 術前チェック) を調剤室業務として行っているが, 術前チェック件数の増加に伴い (2009年度623件, 2013年度1,577件), 術前チェック件数が調剤時間に影響を及ぼすことが懸念された. 当院調剤室での術前チェック業務の取り組みについてと, これらの取り組みにより調剤業務と術前チェック業務が両立できているか調査した.
    対象と方法:2013年8 ~10月の3ヶ月間について術前チェック件数と調剤時間の相関を調べた. 指導内容の検討として, 2013年4 ~12月の間で薬学管理が不十分なため手術中止に至った症例について調査した.
    結 果:術前チェック件数, 調剤時間に相関は見られなかった. 2013年4月から12月の期間中に術前チェックを行った患者数は延べ1,186件で, その内192名 (16.2%) に中止薬の指導を行った. 指示が守れなかったため手術延期になった症例は2例だった.
    結 語:薬剤師外来など特別な部門を設けなくても, 工夫次第で術前チェックは調剤室業務として行える.
症例報告
  • 小川 孔幸, 柳澤 邦雄, 内海 英貴, 石埼 卓馬, 三井 健揮, 滝沢 牧子, 小磯 博美, 横濱 章彦, 斉藤 貴之, 半田 寛, 塚 ...
    2015 年 65 巻 3 号 p. 187-191
    発行日: 2015/08/01
    公開日: 2015/09/16
    ジャーナル フリー
    症例は77歳, 女性. 当科受診の45年前から左大腿腫瘤を自覚し, 23年前に血管腫の診断で30 Gyの放射線治療を施行されている. 今回, 体幹と四肢に広範な皮下出血斑を認め当科入院となった. 検査データでHb 5.7 g/dlと高度の貧血と著明な凝固系検査異常 (Fib 25 mg/dl, PT 10%, APTT 67.9秒, FDP 181.1 μg/ml, TAT 326.8 ng/ml, PIC 11.0 μg/ml), 腎機能障害 (Cr 3.82 mg/dl) を認めた. 左大腿血管腫によるKasabach-Merritt症候群 (KMS), 線溶亢進型の播種性血管内凝固 (DIC) と診断し, リコンビナントトロンボモジュリン (rTM) とトラネキサム酸の投与及び新鮮凍結血漿 (FFP) 補充療法を施行した. 治療開始後, 凝固障害は速やかに改善し, 出血症状も消失した. その後, 左大腿血管腫に30 Gyの放射線照射を施行し, 以後トラネキサム酸内服のみで経過を見ているが, 1年以上に渡り凝固障害の再燃なく, 良好な経過を辿っている. 線溶亢進型DICの急性期治療としてrTMが安全かつ有用であったので報告する.
  • 石垣 太郎
    2015 年 65 巻 3 号 p. 193-197
    発行日: 2015/08/01
    公開日: 2015/09/16
    ジャーナル フリー
    症例は現在70歳の男性. 60歳時に白血球低値を指摘され, 骨髄異形成症候群 (myelodysplastic syndrome, MDS), Refractory anemia with excess blasts-1 (RAEB-1), International Prognostic Scoring System Intermediate-1 (IPSS Int-1) と診断された. 蛋白同化ホルモン, 免疫抑制剤, ビタミンD・Kによる治療は奏功せず, 血小板減少が進行した. 66歳の時点で血小板数 3.2万 (/μL), 病型はRefractory cytopenia with multilineage dysplasia (RCMD), IPSS Int-1であった. 経過観察・輸血を選択した場合, 予後の改善は見込めないと判断し, azacitidineの投与を開始したところ, 血小板数の回復, 骨髄所見の改善が認められた. 現在, 45サイクルを終了し, 経過良好にて継続治療中である. 本症例の治療経過から, 従来の治療で奏功しない低リスクMDSではAzacitidineの投与を積極的に検討するべきであることが示唆された.
  • 小林 純哉, 佐藤 泰輔, 石川 仁
    2015 年 65 巻 3 号 p. 199-203
    発行日: 2015/08/01
    公開日: 2015/09/16
    ジャーナル フリー
    大腸癌術後の縫合不全には一時的人口肛門造設による経口摂取の維持, または中心静脈栄養 (以下, TPN) による保存治療, といった栄養療法が必要となる. 今回, S状結腸癌術後の縫合不全に対しTPNを行わずに保存的に治癒した症例を経験した. 症例は54歳の男性で, 膀胱浸潤S状結腸癌の診断で当科に紹介された. 回腸にも浸潤を認め, S状結腸切除, 膀胱・回腸合併切除を行い, 結腸は端々吻合で再建した. 病理診断はT4b, N0, H0, P0, M0, StageIIであった. 術後頸部までの広範に気腫を伴う縫合不全が出現した. 患者は保存治療を希望したが中心静脈カテーテルの設置が困難であったため, 末梢静脈栄養と成分栄養剤で栄養管理し軽快した. 大腸術後の縫合不全に対する保存治療には一般的にTPNが必須とされるが, 低残渣が特質である成分栄養剤による栄養療法も選択肢となり, その創傷治癒促進作用も近年注目されている.
  • -腫瘍径 8 cmの胸腺腫に対するアプローチ-
    上吉原 光宏, 井貝 仁, 河谷 菜津子, 伊部 崇史
    2015 年 65 巻 3 号 p. 205-210
    発行日: 2015/08/01
    公開日: 2015/09/16
    ジャーナル フリー
    重症筋無力症を伴わない (抗アセチルコリンレセプター抗体軽度上昇) 浸潤型胸腺腫と臨床的に診断した40代男性に対して完全胸腔鏡下胸腺胸腺腫摘出術を行った. 手術は, 分離肺換気による全身麻酔下, 左半側臥位にて右側より3ポートで開始した. まず先行して胸腺腫瘍摘出後に一部の皮切を35 mmへ延長切開して体外へ摘出した. その後, 右側胸腺脂肪組織を授動した. 次に体位を右半側臥位へ変換し4ポートで開始し, 残りの左側残存胸腺組織を授動後, 拡大胸腺・胸腺腫摘出術を完遂した. 手術時間は5時間0分, 出血量50 g未満であった. 術後病理診断は浸潤型胸腺腫 (正岡II期), B1 typeであり完全切除であった. 胸腺腫は低悪性度とはいえ悪性疾患であることに変わりはなく, 胸腔鏡手術の適応に関しては慎重を要する. さらに, 胸腺腫の治療成績の評価には術後10年以上の長期観察が必要であり, 胸腔鏡手術の長期的な予後を議論するにはさらに観察期間が必要である.
資料
  • 安藤 亮, 内田 陽子
    2015 年 65 巻 3 号 p. 211-220
    発行日: 2015/08/01
    公開日: 2015/09/16
    ジャーナル フリー
    目 的:本研究の目的は, 地域に在住する高齢者の閉じこもりの有無と背景条件による興味のある活動の違いについて明らかにすることである.
    対象と方法:対象者はA市のB地区における65歳以上の高齢者240名のうち, 本研究に対する同意を得られた者42名である. 研究者が調査票に沿って訪問聴き取り調査を行った. JICE得点について背景条件 (日常生活自立度, 世帯構成, 移動手段) のそれぞれの項目内及び閉じこもりの有無により2群に分け, 2群間の比較をMann-WhitneyのU検定を用いて行った.
    結 果:外出頻度より閉じこもりあり群12名 (うち閉じこもり4名, 閉じこもり予備群8名), 閉じこもりなし群は30名であった. 閉じこもり有無別にJICE得点を比較した結果, 閉じこもり群の方が非閉じこもり群よりも「ドライブ」,「異性との付き合い」,「ラジオ」の項目において得点が低く, 有意差を認めた (p<0.05).
    結 語:閉じこもりの有無及び自立度, 世帯構成, 移動手段により興味のある活動に違いがあった. 閉じこもりを含めた地域在住高齢者への介護予防支援については, 高齢者の興味のある活動を取り入れ, 身近な場所で社会との交流が保てるようなプログラムを高齢者と共に作成・実施し, 効果の検証を行うことが必要であると考えられる.
  • -アイマークレコーダーを用いた検討-
    北澤 一樹, 勝山 しおり, 新井 美紀, 大瀧 瑞穂, 長谷川 拓実, 下田 佳央莉, 外里 冨佐江
    2015 年 65 巻 3 号 p. 221-227
    発行日: 2015/08/01
    公開日: 2015/09/16
    ジャーナル フリー
    目 的:メンタルローテーション課題遂行時に, 視線計測装置を用い, MR課題時のMR反応時間と利き眼間での注視回数・部位の関係について検討することを目的とした.
    方 法:健常大学生12名, 男性5名, 女性7名 (平均年齢21.3±1.7歳), うち右利き眼5名, 左利き眼7名であった. アイマークレコーダーを装着し, 手の写真から右手, 左手を判断するメンタルローテーション課題を行い, その反応時間, 視線の注視回数, 部位を記録した.
    結 果:左利き眼者は右利眼者に比べ反応時間が短く注視回数も少なかった. MR反応時間と各部位の合計注視回数で相関が認められ, MR反応時間が速いほど注視回数は少なかった. 部位別に見ると, 利き眼によって見ている箇所に大きな差はなかった. Visual analogue scaleにおいて, 難易度・疲労度とMR反応時間・利き眼では相関は認められなかった.
    考 察:物の視覚認知では, 利き眼が大きく影響しており, 利き眼間で差が出るのは視覚入力ではなく脳内での視覚情報の処理過程にあることが示唆された.
流れ
抄録
編集後記
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