性腺と副腎皮質との間の深い関係は両者が発生学的に近似していることと共に古くから知られており, すでにKolmer (1912), Takechi (1926), Poll (1933), Llusia (1949), Tonutti (1942) 及びParkes (1945) 等が種々の観点から論述している。両臓器の病変で相互に夫々が影響し合うことも多くの事実から理解されているが, 卵巣機能異常だけをとり上げてみても両内分泌系の密接な関係を知らせるいくつかの臨床的事実に相遇する。即ち, Cushing's Syndromeの際の無月経の頻発, Adrenogenital Syndromeの無月経等がCortisoneにより治療されうるというWilkins et al. (1950) の知見などは両臓器の関連を示すにたる事実であり, 更にSubclinicalなAdrenogenital syndromeがcortisoncその他の副腎皮質ホルモンの投与で排卵, ときには妊娠さえすることが, また最近では単に無月経や不妊がこれらcorticoidの投与で治療され排卵や妊娠を見ることが知られていて, その機序や病態についても色々研究されている。
そこで卵巣機能なかんづく月経周期機能に対し副腎皮質がどんな役割を果しているかが問題となるが, 従来よりこの面の観察は比較的乏しく未だ明確な結論が得られていない。
一方, 副腎皮質機能検査法としては, いわゆるThorntcst (アドレナリン試験), ACTH注射後の好酸球減少率を見る方法, 尿中尿酸-クレアチニン比, ACTH投与後尿中17-KS並びに血中または尿中17-OHCS排泄量の変動から判定する方法 (ACTHテスト), Robinson-Kepler-Powerテスト, 糖負荷テストやOlesky testなど種々の方法があるが, これらのうち好酸球減少率による判定法には種々問題があり, また尿中17-KS排泄量をもってする判定法にも特異性の点で問題があり, 現在では尿中17-OHCS排泄量測定が示標として最も意義があるとされている。
そこで種々の卵巣機能不全なかんづく月経異常を示す患者に対して表1に示すような系統的検索と同時に尿中総17-OHCS値測定を行ない卵巣機能と副腎皮質機能との関係を追及した。
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