1959年にCameronらは本来 A
1 (β) 型であった7例の患者血球が抗B (β) に凝集するようになった特殊な例を報告し, この弱いB型様抗原は後天的に獲得 (acquired) されたもので, 遺伝性はなく, 高年齢あるいは疾病, 特に直腸及び結腸がん又は両方に関連があるのではないかと述べている.Gilesらは遺伝子型が A
1A
2型の結腸がんの患者の血球が弱いB型様抗原を獲得した例を, MarshらもA
1型の同様な症例を pseudo Bとして報告した.その後, A型の直腸がん結腸がん, 幽門狭窄症, 胃がん, 腹膜炎, 慢性白血病, 腸閉塞, がん, 虫垂炎, 感染症, 消化器がん, 胃十二指腸炎などの患者のほか, 正常人にも出現していることが報告されている.
Stratton and Rentonは, 大腸菌の菌体多糖体を吸着した赤血球は, 正常ヒト血清によって凝集するので, Springer らが見出したB型活性を持つ
E. coli O
86の菌体抗原が或る環境のもとで生体内で血球に吸着すれば, 血液型が変る可能性があり, acquired B は B-like 菌体多糖体が血球に吸着したものであることを示唆した.Springer and Ansellは, Isokiらによって見出された B型活性抗原多糖体をもつ腸内細菌を含めて,
S.berkeley O
43,
Arizona O
21,
E. coli O
4,
E. coli O
7,
E. coli O
8,
E. coli O
55,
Proteus mirabilis,
Proteus vulgaris Citrobacter, Klebsiella, Bethesda-Ballerup, Pasteurella pseudo-tuber-culosis, Herrrella 等のB型活性物質及び E. coli-O
86 から純化した lipopolysaccharide と protein-lipopolysaccharide を吸着したA及びO型赤血球は汎血球凝集性をもつようになるが抗B抗体を吸着解離することを明らかにした.この菌の多糖体吸着血球の汎血球凝集性は, 生後6~12ヶ月以上の殆んどすべてのヒト血清中に存在する抗
E. coli抗体によるとし, B型ヒト血球から吸着解離した抗B 抗体は
E. coli O
86 多糖体の吸着0型ヒト血球を凝集することをみている.また, Marshは, T賦活性細菌の培養濾液がOやA型血球に pseudoB抗原の産生能があることを報告している. Gerbal らは, acquired B がA型のヒトにだけ出現することは, A型の抗原決定基の
N-acetylgalacto-samine のdeacetylation が考えられるとし, さらに, acquired B は細菌の doacetylase が A1 型の抗原決定基である
N-acetylgalactosamine に作用して, galactosamine を形成したものであり, この糖が坑B抗体と交叉反応するという仮説を提出した。そして, 患者からの acquired B 血球をアセチル化するとB様活性は消失し, Marcusら, Yamamo-to and Isekiにょり
N-deacetylaseを含むことが明らかにされている
Clostridum tertium Aの培養濾液を A1 型血球に作用させると, B 様活性が出現することを証明した.
ここでは,
Clostridum tertium O (H), Le
aから精製した
N-deacetylase 処理 A
1 型血球及び型物質と, これらと反応するヒト血清中の凝集素との反応性について報告する.
抄録全体を表示