左室肥大における心電図, ベクトル心電図の変化についてはこれまで多くの研究がある.しかし, 近年, 心エコー図によって, 臨床例について各心房, 心室の内径や心室壁, 心室中隔の厚さを適確に測定し, 更に, これらの成績から心内腔の容積や左室心筋重量などの推定が可能となり, 主として剖検所見との対比に基づく従来の知見を再検討する機運を生じて来た.左室肥大心電図の最も特徴的な所見とされるQRS波高の増大, すなわち高電位差について, これが心筋の肥厚あるいは増加, 左室の拡大のいずれによるかをめぐっても, 新しい観点からの検討を要する.教室においては, これまで, 心電図, ベクトル心電図の異常, 正常所見を修飾する要因を検討し, その臨床的意義を追求して来たが, 本研究においては, 左室肥大心電図所見の出現に関与する因子を分析し, 併せて, 従来提唱されている心電図学的な左室肥大の診断基準を再評価するため, 心電図所見, ベクトル心電図所見と心エコー図所見とを定量的に対比検討した.
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