上部消化管疾患を疑われた小児306例に内視鏡検査を行い, 胃では発赤36例, びらん19例, 出血12例, 潰瘍16例, 十二指腸ではびらん・出血9例, 潰瘍38例, および食道病変8例の合計138例 (45.1%) に異常をみとめた.胃のびらんは年長児 (9歳以上) の腹痛, 嘔吐などの慢性腹部症状に, 胃体部の出血は小児期全般の吐血に, 前庭部の出血は年長児の腹痛にみとめられた.胃潰瘍は全例8歳以上で, 11歳以下では前庭部潰瘍が多く, 胃体部潰瘍は13歳以上にみとめられた.十二指腸潰瘍は71%は年長児の慢性腹部症状であり, 年少児では大量出血で発症するのが特徴であった.各症状, 徴候, の診断価値は年長児と年少児 (8歳以下) で異なるが, (1) 嘔吐, (2) 吐下血, (3) 貧血, 年長児ではさらに (4) 夜間の腹痛, (5) 消化性潰瘍の家族歴, (6) 消化管病変の原因となりうる薬剤の内服歴の各項目が胃, 十二指腸病変の存在を示唆するものとして重要であった.
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