dd系マウスの17-15匹からなる14群を用いた.10群に塩酸コカイン (COC) 10, 20および40mg/kgを1, 3-4および7日ごとに5回あて, (10群は生食水のみ) 背部皮下に投与し, そのつど180分間にわたり, 移所運動量を当教室開発による振動カゴ法 (平林, 飯塚, 田所, 日薬理誌, 1978) により測定観察した.投与回に従い運動量は増強し, 明らかな逆耐性が形成されたが, その程度は用量および投与間隔依存性であった.すなわち, COC 10-20mg/kg群3-7日ごとでは明確なそれが示されたが, 連日では貧弱で特に10mg/kgのそれは低調であった.また, 増強の進行は速く投与3-4回で天井値を示し, かつ, そのピーク時間は短く, 鋭い山型の増強パターンであった.なお, これら逆耐性は1ヵ月間持続し, また適量のメタンフェタミンと交差性を示した.一方, COC 40mg/kg群では投与間隔にかかわらず, 増強は認められず, わずかに1-2回にみられたに過ぎなかった.同用量では回数を重ねると, 投与後数10分は常同行動に伴った前けいれん症状の発現の増強が, 移所運動を減弱させたが, 時間経過に従い, 前者らの程度は低下し, 再び運動活性が増加し, ために増強パターンは複雑でやや2峰性を示した.他群において, 自由な移所運動に対する逆耐性はたとえ至適用量, 投与間隔を用いても, 運動域の狭い広口ビン内の前処置では生じなかった.
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