北関東医学
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42 巻, 2 号
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  • 望月 博之
    1992 年 42 巻 2 号 p. 69-76
    発行日: 1992/03/01
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    培養イヌ気管上皮細胞を用いて, アラキドン酸 (AA) の短絡電流 (Isc) に及ぼす影響を検討した.気管上皮は無血清培地を用いてフィルター上に培養し, 培養2日目から粘膜側をair interfaceとした. IscはUssing chamber法により測定した.AA投与によりIscは27.8±5.2μA/cm2 (n=8) 増加したがindomethacin (INDO) とnordihydroguaiaretic acid (NDGA) 投与後AAを投与するとIscは減少した (-4.4±1.0μA/cm2, n=10).この変化はamilorideによる影響を受けなかった.さらにINDOとNDGAの投与後AAを投与するとisoproterenol (ISO) によるIscの増加は抑制された.ISOの刺激による細胞内cAMPの増加はAA投与群と未投与群問に差はみられなかった. forskolin, CPT-cAMPによる125I effluxの増加はAAの前投与により有意に抑制された.AAは気管上皮細胞のC1チャンネルを直接的に抑制することが考えられた.
  • 寺田 庄一, 小林 葉子, 篠沢 隆雄
    1992 年 42 巻 2 号 p. 77-85
    発行日: 1992/03/01
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    生体内の, 細胞増殖をつかさどる栄養因子 (Trophic Factors) についてはこれまで多数の報告がなされている.しかし, 成長を抑制する内因性の因子に関する報告は少ない.
    ウシ大脳皮質をホモジナイズした後, トリプシン処理, ならびに熱処理したものをイオン交換カラムクロマトグラフィーにより分画した.それぞれの画分を, 培養細胞を用いて細胞増殖抑制能を調べたところ, 陽イオン交換体に吸着する画分にPC-12細胞に特異的な細胞増殖抑制能を見いだした.この増殖抑制能は, これまでに見いだされいたシアログリコペプチドなどとは異なる精製過程での挙動や細胞特異性を示した.
  • 石川 進
    1992 年 42 巻 2 号 p. 87-96
    発行日: 1992/03/01
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    開心術後心房細動 (Af) の発生機序とAf発生時の血行動態及び心筋代謝を, 臨床及び実験的に検討した.臨床では, 30歳以上の心房中隔欠損症 (ASD) 手術患者94例を対象とした.術後Afの発生は, 50歳以上及び術前の左房径40mm以上の例で有意に高率であった.術中・術後因子では, Af発生例で有意に水分過多の状態にあった.実験では雑種成犬を用い, 右房を持続的に電気刺激する方法でAfを作成した.Afの発生に要する電気刺激閾値は, 中心静脈圧及び左房圧の上昇に伴い有意に低下した.血行動態では, 平均動脈圧及び心拍出量はAf前値のそれぞれ72%, 67%へと低下し, 中心静脈圧及び左房圧はそれぞれ185%, 174%へと上昇した.心筋代謝では, 心筋の酸素及びブドウ糖摂取率は, Afの発生10分後より増加し, 好気性代謝の亢進が示された.開心術後のAfの発生には, 左房の拡大に代表される心臓自体の変化と, 術中・術後の水分負荷の関与が強く示唆された.
  • 宮本 幸男, 竹吉 泉, 中村 正治, 棚橋 美文, 大和田 進, 森下 靖雄
    1992 年 42 巻 2 号 p. 97-101
    発行日: 1992/03/01
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    1990年12月までに治癒切除した胃癌527例を, 占居部位別に第1群リンパ節である4sbへの転移状況をretrospectiveに検索し次ぎの結果を得た.
    1) 各占居部位の進行癌では, 4sbへの転移が高率にみられた.2) 下部領域早期胃癌では, 4 sbへの転移は全くなかった.3) 中部領域では早期胃癌でも転移はみられた.4) 下部領域早期胃癌の第2群リンパ節No, 1, 7, 8の転移率は2~7%であった.それ故, 下部領域早期胃癌の手術に際し, 第2群の重点的郭清は必須であるが, 4sbの郭清を縮小することは可能である.そうすることで, 消化性潰瘍に対する幽門側胃切除範囲と同等な切除, さらに大網, 網嚢の左側を温存でき, 手術および, 麻酔時間の短縮や, 輸血量の削減など, 単に生存率の向上だけでなく, quality of lifeの向上を見込むことができる.
  • 10週間にわたる検討
    安達 仁, 長谷川 昭, 内藤 滋人, 斎藤 典之, 大村 暁, 今成 哲朗, 羽鳥 幹子, 鈴木 忠, 村田 和彦
    1992 年 42 巻 2 号 p. 103-109
    発行日: 1992/03/01
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    広範囲心筋梗塞慢性期の心筋β受容体系の変化を経時的に観察した.ラットに心筋梗塞を作製し, 1, 6, 10週目の心筋細胞膜β受容体量, β受容体系の活性 (細胞膜cAMP産生量) を測定した.Sham手術群を同時に作製し対照とした.心室重量・体重比は1週目から増加した.左室拡張末期圧は1週目より上昇を続け10週目にはさらに上昇した.心拍数は1週目に一時的に上昇して6週目は対照群とほぼ同程度に減少したが, 10週目には再上昇した.β受容体量は1週目より6週目まで増加していたが, 10週目になると減少した.一方, 単位膜蛋白当りのcAMP産生量は, 基礎活性もイソプロテレノール刺激でも, 1週後からすでに低下していた.以上より, 心拍数, 左室拡張終期圧の変動からみると心筋梗塞発症1週目から代償機序が働いているが, 10週目では代償機序が破綻し, 心不全状態に陥ったものと考えられる.β受容体系の活性充進は代償機序の一つと考えられる.
  • 小西 敏雄, 大林 民幸, 金子 達夫, 大木 俊英, 大和 保昌, 内藤 滋人, 大島 茂, 湯浅 和夫
    1992 年 42 巻 2 号 p. 111-115
    発行日: 1992/03/01
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    エリスロポエチン (EPO) 製剤を心臓外科手術予定例に術前より使用した.手術内容は, 冠動脈バイパス術2例と人工弁置換術1例で, EPO投与後約1週後に網状赤血球数と血液Hb値の増加効果が認められ始めた.3例中2例には自己血液を採血し保存して手術時に使用した.全例で術中術後に同種血輸血を必要とせず, 副作用及び合併症は無く退院となった.同種血輸血を回避する方法として, EPO術前投与と自己血輸血の併用は有効でかつ実用的であった.今後は, その最適な投与方法につき検討の余地があり, 更に臨床試行を必要とすると考えられた.
  • 渡辺 秀臣, IVAN R. NABI, AVRAHAM RAZ
    1992 年 42 巻 2 号 p. 117-124
    発行日: 1992/03/01
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    非接着基質上で培養することにより球状になった転移細胞B16-F1黒色腫は偏平状態で培養されたものより高い自己分泌型運動性因子活性を産生することが金コロイド法により示された.球状形態で培養した細胞は偏平状態で培養されたものより高い固有運動能を有した.球状形態で培養した細胞の自己分泌型運動性因子のレセプターは偏平状態で培養されたものより表面に少なく発現していることがこのレセプターに対するモノクロナール抗体 (3F3A) を用いたfluorescence activated cell sorter (FACS) 分析法により明らかになった.以上より自己分泌型運動性因子の産生増加とそれに対するレセプターの内部移行に対する制御が球状形態細胞の転移能の増強に役割を果たしていることが示唆された.
  • 生存例と死亡例の検討
    小林 富男, 曽根 克彦, 小須田 貴史, 広野 一輝, 田代 雅彦, 田端 裕之, 小野 真康, 小林 敏宏
    1992 年 42 巻 2 号 p. 125-132
    発行日: 1992/03/01
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    原発性心内膜線維弾性症は小児, 特に乳児期に発症する予後不良な疾患で, 発生頻度はKeithらによれば先天性心疾患中の0.94%とまれである.本症の基本的病態は, 弾性線維や膠原線維の増生による心内膜の線維性肥厚にあり, その病因には様々な説があるが確定的なものはない.単一の要因では説明が困難で, 1つの独立した疾患ではなく種々の原因に基づいた反応過程の病理学的な最終像であろうと考えられている.本症は一般的に予後不良で, 治療に抵抗し心不全の悪化を繰返し死亡する例が多い.しかし, 心不全の治療で寛解状態になり長期生存例も報告されるようになった.
    我々は6例の原発性心内膜線維弾性症を経験し, その4例が内科的治療に良く反応し現在寛解状態にあり, 2例が治療に抵抗し心不全の悪化を繰返し死亡した.これら生存例と死亡例の臨床経過, 検査所見を検討した.発症から治療開始までの経過期間, 左側胸部誘導上の低電位と極端な高電位, 病理組織像における心内膜の線維化の程度などが予後を判断する因子として重要と思われた.また, 寛解例も左心機能低下が残存しており長期問の注意深い経過観察と生活指導が必要である.
  • 平林 牧三, 岡田 静, 田所 作太郎
    1992 年 42 巻 2 号 p. 133-143
    発行日: 1992/03/01
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    dd系マウスの17-15匹からなる14群を用いた.10群に塩酸コカイン (COC) 10, 20および40mg/kgを1, 3-4および7日ごとに5回あて, (10群は生食水のみ) 背部皮下に投与し, そのつど180分間にわたり, 移所運動量を当教室開発による振動カゴ法 (平林, 飯塚, 田所, 日薬理誌, 1978) により測定観察した.投与回に従い運動量は増強し, 明らかな逆耐性が形成されたが, その程度は用量および投与間隔依存性であった.すなわち, COC 10-20mg/kg群3-7日ごとでは明確なそれが示されたが, 連日では貧弱で特に10mg/kgのそれは低調であった.また, 増強の進行は速く投与3-4回で天井値を示し, かつ, そのピーク時間は短く, 鋭い山型の増強パターンであった.なお, これら逆耐性は1ヵ月間持続し, また適量のメタンフェタミンと交差性を示した.一方, COC 40mg/kg群では投与間隔にかかわらず, 増強は認められず, わずかに1-2回にみられたに過ぎなかった.同用量では回数を重ねると, 投与後数10分は常同行動に伴った前けいれん症状の発現の増強が, 移所運動を減弱させたが, 時間経過に従い, 前者らの程度は低下し, 再び運動活性が増加し, ために増強パターンは複雑でやや2峰性を示した.他群において, 自由な移所運動に対する逆耐性はたとえ至適用量, 投与間隔を用いても, 運動域の狭い広口ビン内の前処置では生じなかった.
  • 佐藤 尚文, 青柳 秀忠, 勅使河原 修, 金丸 稔, 善如寺 恵子, 宮本 幸男
    1992 年 42 巻 2 号 p. 145-150
    発行日: 1992/03/01
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    膵管と胆管がOddi括約筋の作用部位より上方で合流し, 膵液が胆管内へ逆流しやすい先天奇形を膵胆管合流異常症と総称するが, 本奇形は近年, 総胆管拡張症の原因であり, また胆道系の悪性疾患を高率に合併することが知られている.著者らは1991年1月からの1年間に5例の膵胆管合流異常症例を経験した.4例は総胆管拡張症を合併し, その内1例は癌化を認めた.他の1例は, 総胆管の拡張を伴わない合流異常であった.これらの症例に対して, 胆管切除を伴う胆道再建術をおこなった.再建術式はRoux-en-Y肝管空腸吻合を基本としたものであり, 本稿では術式選択の理由と術後の胆道ドレナージ経路について述べた.
  • 佐藤 則之, 魚住 義之, 矢野 新太郎
    1992 年 42 巻 2 号 p. 151-157
    発行日: 1992/03/01
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    IgA 腎症は腎生検例の30~50%を占めるもっともありふれた原発性糸球体腎炎であり, その10~30%は末期腎不全にいたると言われている.本症での, 腎機能障害が進行して末期腎不全にいたる危険因子としては, 臨床的には腎機能の低下や多量の蛋白尿が, 組織学的には中等度以上のメサンジウム増殖や半月体の存在などが知られている.われわれは, このような所見を有する, 元来予後不良と考えられる IgA 腎症の18歳女性例に, prednisolone, ticlopidine hydrochloride, およびdipyridamole の三者併用療法をおこない, 腎機能の正常化のみならず尿所見の正常化をみた.
    近年, IgA腎症に対して, ステロイド剤, 免疫抑制剤を中心としたとした治療が積極的に試みられるようになりそれなりの効果をあげているが, 本例のように予後不良と思われる因子を多く持ちながら, ほとんど治癒したと考えられる症例の報告は皆無に近い.
  • 井嶋 裕子, 設楽 利二, 末武 教行, 由上 伸一郎, 外松 学, 大島 幸雄
    1992 年 42 巻 2 号 p. 159-163
    発行日: 1992/03/01
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    Infantile genetic agranulocytosis (Kostmann type) の一例を報告し, 顆粒球系造血抑制の機序について検討した.患児は新生児期早期から高度の好中球減少を呈し, 感染症を発症した.患児は好中球遊走試験その他の好中球機能試験でも好中球の出現は認められなかった.骨髄では前骨髄球以上の成熟段階の好中球は認められなかった.また患児の好中球減少症の発現にT細胞が重要な役割を果たしていることが示唆されたが, anti-lymphocyte globulin などの治療では現在まで好中球の増加は得られていない.
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