北関東医学
Online ISSN : 1883-6135
Print ISSN : 0023-1908
ISSN-L : 0023-1908
43 巻, 3 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • 福田 まゆみ
    1993 年 43 巻 3 号 p. 215-224
    発行日: 1993/05/01
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    インスリン非依存性糖尿病のインスリン分泌の特徴は, 食後血糖上昇に対する初期分泌の低下・遅延にあるとされる.この初期分泌が耐糖能や肝と末梢組織の糖処理能に与える効果を解明するため, イヌの門脈, 肝静脈, 大腿動脈にカテーテルと流速計を留置し, 無麻酔下で以下の実験を行った.1) 経口ブドウ糖負荷試験 (OGTT), 2) ソマトスタチンで内因性ホルモンを抑制した上で, 実験1) を模倣して門脈内へブドウ糖を注入しつつ, 外因性インスリンを基礎時の速度で, あるいはそれに加え初期分泌を模倣して注入した.門脈内ブドウ糖注入時, 基礎インスリン注入のみでは肝の糖取り込みは僅かで, 血糖値は持続的上昇を示した.又, 初期インスリン追加注入により肝の糖取り込みは促進され, 耐糖能は必ずしも正常化しなかったが, 血糖上昇の上限はOGTT時と同様に抑制された.以上から, 正常耐糖能を維持するためには初期インスリン分泌と持続的インスリン分泌との両者が必要であると推定した.
  • レニン・アンギオテンシン系の関与について
    八木 温子
    1993 年 43 巻 3 号 p. 225-235
    発行日: 1993/05/01
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    原発性アルドステロン症におけるアルドステロン分泌機構がスピロノラクトン (SPL) による治療の結果, どのように変化するかを明らかにするため, 未治療原発性アルドステロン症ならびにSPL治療後の同症, 本態性高血圧症を対象としてフロセミド立位負荷試験, アンギオテンシンII (Ang II) 負荷試験を行い, また, デキサメサゾン投与による血漿アルドステロン値の変化を検討した.未治療の原発性アルドステロン症ではフロセミド立位負荷, Ang II投与のいずれによっても血漿レニン活性, 血漿アルドステロン値は不変であったが, 本態性高血圧症, SPL治療後の原発性アルドステロン症ではフロセミド立位負荷により血漿レニン活性, 血漿アルドステロン値は有意に上昇し, また, Ang IIでは用量依存性に血漿アルドステロン値が上昇した.これに対し, デキサメサゾン投与により未治療の原発性アルドステロン症では血漿アルドステロン値は低下の傾向がみられたが, 本態性高血圧症, SPL治療後の原発性アルドステロン症の血漿アルドステロン値は不変であった.以上のように, 未治療の原発性アルドステロン症のアルドステロン分泌には主としてACTHが強く関与しているが, SPL治療後の原発性アルドステロン症のアルドステロン分泌はレニン・アンギオテンシン系に強く依存するようになる.その機序としては, AngIIレセプターの増加ないしは, SPLによるアルドステロン分泌抑制諸因子の解除の結果としてのAngIIに対する反応性の回復を考えたい.
  • 岡本 一真
    1993 年 43 巻 3 号 p. 237-244
    発行日: 1993/05/01
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    聴覚事象関連電位は, 被検者の高次脳機能との関連が指摘されている.今回, 出現する各成分と加齢, 課題への集中度との関係を明らかにするため, count, ボタン押し条件でのオドボール課題を用いて事象関連電位を測定した.ボタン押し条件では, ボタン押し反応時間も同時に測定し, 平均値 (RT) と標準偏差 (SD) を算出した.ここで, RTは, 標的刺激の判断の時間に関係し, SDは, 被検者の課題への集中度を表すものと考えられ, 得られた結果から以下のことが示唆された.ボタン押し条件より, count条件の方が加齢の変化をより反映する可能性がある.N200は, 標的刺激の判断について, P300よりも直接関与している.P300の潜時は, 加齢により, 1年当り, ボタン押し条件で, 0.989msec, count条件で, 1.04msec延長する.P300の振幅は, 被検者の課題への集中度を反映し, P300は, 集中して課題に取り組むものほどより明確に出現する.
  • 橋田 巌
    1993 年 43 巻 3 号 p. 245-259
    発行日: 1993/05/01
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    放射線治療と温熱療法との併用による抗腫瘍効果は, 同時併用時が最も高いとされる.しかしながら現在の温熱治療の装置では, 外照射との同時併用は装置的にも時間的にも困難であり, また皮膚などの正常組織も同様に増感され, 治療効果比の向上が得られないなどの欠点がある.そこで腫瘍には十分な線量が与えられ, 正常組織への線量は極力低下させられる低線量率小線源治療, すなわち組織内照射法あるいは腔内治療と, 温熱療法との同時併用の可能性, 安全性を検討するためファントム実験を行った.セシウム針が電極板に対して垂直に刺入されている場合には, 両端に高温部が生じた.子宮腔内用アプリケータを用いた場合では, オボイド間に高温部が認められ, オボイド間隔が狭いほど高温となった.これらの実験結果に基づき, 婦人科領域の悪性腫瘍および直腸癌の再発例の計4例に対して, 小線源治療と温熱療法との同時併用を行いその安全性を確認した.
  • 岡部 和彦
    1993 年 43 巻 3 号 p. 261-269
    発行日: 1993/05/01
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    種々の分子量をもつポリ (DL-乳酸) を, 無触媒系直接脱水重縮合によって合成した.ポリマーのin vitro-in vivo分解は圧融着処理によって成形した円柱状ポリマーを用いることによって行なった.すなわち, in vitro分解は緩衝液中に円柱状ポリマーを浸漬することによって, そしてin vivo分解は, ウィスター系ラットの背部皮下に円柱状ポリマーを埋入することによってそれぞれ評価した.その結果, in vitro-in vivo分解様式は, 数平均分子量 (Mn) が1400のポリ (DL-乳酸) の場合, 試験初期に分解が急激に促進される放物線型分解パターンを, 対照的に試験初期で分解が抑制されるS字型分解パターンはMnが2000と4400をもつポリ (DL-乳酸) で観察された.また, in vitroでのポリマーの分解速度はin vivoでのそれに比べて著しく速いことが分った.さらに, 組織学的観察によって, ポリマーのin vivo分解は, カルシトニンアゴニストの賦形剤であるD-マンニトールを添加することにより若干促進されることが分かった.このような分解様式を示すポリマーを用いてカルシトニンアゴニストを含む複合体を調製した.ポリマーからのカルシトニンアゴニストのin vitro-in vivo放出様式はポリマーのin vitro-in vivo分解パターンに類似し, ポリマーのMnを変えることにより約1週から5週間の徐放性放出を認めた.
  • 橋爪 立雄
    1993 年 43 巻 3 号 p. 271-280
    発行日: 1993/05/01
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    食道癌88例, 胃癌100例の術前内視鏡下に採取した生検材料を用いて腫瘍核DNA量のヒストグラムを作製し, 所属リンパ節転移程度からみた両腫瘍の生物学的悪性度を比較検討した.DNA ploidy patternは, 10倍体をこえる癌細胞の有無により, それぞれType A2とType A1に分類した.食道癌, 胃癌ともにType A2での所属リンパ節転移頻度はType A1にくらべ有意に高く, 核DNA量はリンパ節転移に相関した.Type A2の頻度は, 食道癌では粘膜下層 (sm) を境に, 胃癌では固有筋層 (pm) を境に増加した.食道癌では, TypeA2, smで83.3%に所属リンパ節への転移を認め, これは胃癌では, TypeA2, pmの75.0%に相当した.食道癌Type A1では, 胃癌TypeA1にくらべ所属リンパ節転移頻度が高く, また3, 4群リンパ節転移も認められた.以上より, DNA ploidy patternの解析からみると, 食道癌smは胃癌pmに相当する生物学的悪性度を示した.Type A1でも3, 4群リンパ節転移がみられ, 食道癌外科治療の適応は胃癌に比べかなり限定されると思われた.食道癌, 胃癌ともに, 腫瘍特性を考慮した外科治療の重要性が示唆された.
  • 村山 佳予子, 沢村 守夫, 村上 博和, 佐藤 貞夫, 平林 久美, 宮脇 修一, 島野 俊一, 小峰 光博, 成清 卓二, 土屋 純
    1993 年 43 巻 3 号 p. 281-287
    発行日: 1993/05/01
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    節外性リンパ腫の臨床像について節性リンパ腫と比較検討を行った.この10年間に当科で経験した悪性リンパ腫は170例で, 節外性は全症例の41%を占めていた.節外性リンパ腫の原発部位は, 胃が24例と最も多く, 次いでワルダイエル輪10例, 皮膚・皮下組織10例, 小・大腸9例, 脾臓4例などであった.全症例のうちLSG分類のなされた非ホジキンリンパ腫は131例で, 節外性リンパ腫は50%を占めていた.節外性群は節性群に比べ, I II期の症例が多かったが, B症状の有無や検査所見では大きな差はみられなかった.完全寛解率についても, 有意な差は認められなかったが, 節外性リンパ腫のなかで外科的療法を併用し得た症例は, そうでない症例に比べ完全寛解率は有意に高値であった.比較的早期の症例では節外性リンパ腫は, 節性リンパ腫に比べ生存期間, 寛解期間ともに短い傾向がみられたが, 全例の比較では両者に差はみられなかった.
  • 栗原 久
    1993 年 43 巻 3 号 p. 289-293
    発行日: 1993/05/01
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    5-HT1A受容体アゴニストのbuspironeが抗コンフリクト作用を有するのか否かを評価するため行動薬理学的検討を行ない, ベンゾジアゼピン系抗不安薬のdiazepamの効果と比較した.Buspirone (1-10mg/kg i.p.) は電気ショックの同時提示で抑制された空腹マウスの餌獲得のためのレバー押し行動 (Geller型コンフリクト行動) および渇マウスの水摂取行動 (Vogel型コンフリクト行動), および渇マウスの高張食塩水溶液 (3%) の摂取 (高張食塩水型コンフリクト行動) の抑制を軽減しなかった.一方, diazepam (0.5-2mg/kg s.c.) は用量依存的なコンフリクト軽減効果を発揮した.臨床においてbuspironeが抗不安作用を示すか否かについて, 賛否両論の意見がある.本実験結果は, buspironeの抗不安効果について否定的な成績であり, たとえbuspironeが抗不安作用を示すとしても, その性格はベンゾジアゼピン系抗不安薬とかなり異なることを示唆している.
  • 茂木 元喜, 佐藤 崇, 西松 輝高
    1993 年 43 巻 3 号 p. 295-300
    発行日: 1993/05/01
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    脊椎管狭窄を伴う頸髄不全損傷7例に, 急性期methylprednisolone大量療法を行い, その後脊柱管拡大術を行った.保存的治療を行い臨床症状の固定後手術を行った5例中2例は, 術前に比べFrankelの評価で1段階の改善を示した.慢性期手術例は軽症例でも術後の改善があったのに対し, 重症例で受傷後早期に手術を行った2例は, 自然経過の改善と区別が困難であった.急性期手術は, 現在のMRIによる病態把握の範囲内では, 早期臥床を目標としてなされるべきと考えられた.Methylprednizolone短期大量投与にて副作用は見られず, 脊髄不全損傷例の保存的治療に有用と思われる.
feedback
Top