北関東医学
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44 巻, 1 号
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  • B市の住民健診から
    新明 ローザ怜美
    1994 年 44 巻 1 号 p. 1-17
    発行日: 1994/01/01
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    食塩摂取量の高い群馬県の中からB市を選び, 40歳以上の地域住民1,475人を対象に, 高血圧の家族歴, 治療歴, 性別に, 推定食塩摂取量, カリウム排泄量, ケトレー指数, 血清コレステロール, 飲酒, 喫煙等の血圧関連因子としての血圧値への影響度を検討した.
    対象者は男女それぞれ483と992人, 平均年齢は64と60歳である.このうち, 高血圧者はそれぞれ194と324人で, その内, 高血圧治療中の男女はそれぞれ104と226人であった.家族歴有りの男女はそれぞれ85と170人であった.血圧値は40-50歳代で男性の方が高く, 70歳代では性差はみられなかった.収縮期血圧は男女とも加齢と共に高くなったが, 拡張期血圧ではその現象はほとんどみられなかった.対象者全体の平均1日食塩摂取量は14.52gと高かった.
    高血圧治療中の者を除いた集団について収縮・拡張期血圧値を従属変数として重回帰分析を行なった.それによると男性の収縮期血圧値には, 年齢, 飲酒量, 1日食塩摂取量, ケトレー指数, 尿中Na/K比, 血清コレステロールの順で影響していた.男性の拡張期血圧値には飲酒量, ケトレー指数, 血清コレステロール, 尿中Na/K比の順で影響していた.女性の収縮期血圧値は, 年齢, ケトレー指数および1日食塩摂取量の順に規定され, 拡張期血圧値はケトレー指数と年齢の2つによって最も大きく規定されていた.これらとり上げた5-7個の血圧関連因子すべてによっても, 収縮・拡張期血圧の8-18%を説明するに過ぎなかった.
    高血圧の治療中の者を除いた群から高血圧の家族歴の有る群をとり出して, 同様に重回帰分析をすると, 特に男性で, ケトレー指数と飲酒量の重みが大きくなり, 説明割合も25-26%と大きくなった.
    以上まとめると, 高血圧の治療中の者を除いた群の収縮期血圧を規定する要因としては年齢を除いて, 食塩摂取量, ケトレー指数および飲酒量 (男性) が重要であり, 拡張期血圧を規定する要因としてはケトレー指数と飲酒量 (男性) が重要であることがいえた.
  • 田端 雅彦
    1994 年 44 巻 1 号 p. 19-29
    発行日: 1994/01/01
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    胃粘膜の防御因子の1つである粘液層について, その厚さおよび厚さのプロスタグランディン (PG) に対する反応の発達を検討し, 以下の結果を得た. (1) 新生仔ラットの胃粘液層の厚さおよび粘膜内のPGE2濃度は加齢とともに増加した. (2) 新生仔ラットでは, 成熟ラットに比して胃粘液層の厚さの経口PGE2に対する反応性が低い. (3) 2'-carboxymethoxy-4, 4'-bis (3-methyl-2-butenyloxy) chalconeの経口投与は, 新生仔ラット, 成熟ラットのいずれにおいても, 粘膜内PGE2含量, 胃粘液層の厚さを増加させエタノール潰瘍の発生を有意に抑制した. (4) mild irritant (10%エタノール) は, 新生仔ラツト, 成熟ラットのいずれにおいても, 粘膜内PGE2含量や, 胃粘液層の厚さを増加させなかったが, エタノール潰瘍の発生は有意に抑制した.以上の結果より新生仔ラットでは胃粘膜層が薄く, このことが粘膜障害のでき易さに関与していることが考えられた.また, 粘膜内PG含量の低いことが胃粘膜層の薄さの原因であることが考えられた.
  • 特に運動負荷法との対比について
    外山 卓二
    1994 年 44 巻 1 号 p. 31-41
    発行日: 1994/01/01
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    201Tl負荷心筋シンチグラフィにおける (1) 冠動脈病変の検出能, (2) 負荷時の左室負荷・心筋虚血の様式, (3) 負荷の心機能に及ぼす影響について, 運動負荷とdipyridamole (D) 負荷の違いを検討した.更に, (4) 運動負荷が困難あるいは好ましくない動脈, 大動脈疾患例でのD負荷心筋シンチグラフィの有用性も併せ追求した.なお対象は (1) の126例, (2) の58例, (3) の31例, (4) の257例であった.
    有意の冠動脈病変の診断については, 運動負荷では感度85.7%, 特異度95.3%, D負荷では感度84.6%, 特異度80.0%と, 両負荷法間に有意差はみられなかった.しかし, D負荷では運動負荷に比べ心拍数, 収縮期血圧の上昇, double productの増加が軽度で心電図上ST下降の出現率が低く, また, 左室駆出率, 局所左室駆出率の障害も軽度であった.すなわち, D負荷では運動負荷に比べ左室負荷, 心筋虚血が軽度で, D負荷による心筋シンチグラフィの異常像には虚血と必ずしも直結しない心筋血流分布の変化がかなり大きな役割を演じている可能性が示唆された.なお, D負荷心筋シンチグラフィを行った動脈, 大動脈疾患257例中89例, 34.6%に異常像が認められたが, そのうち冠動脈造影施行の55例中51例, 92.7%に有意の冠動脈狭窄が確認された.
    D負荷心筋シンチグラフィは心負荷および心筋虚血が軽度であったが, 診断上は運動負荷と同程度の感度と特異度とを有していた.運動負荷が困難あるいは好ましくない症例ではD負荷が運動負荷より優れていると考える.
  • -特にリンパ球サブセットとインターロイキン2からの検討-
    泉 勝, 大和田 進, 森下 靖雄
    1994 年 44 巻 1 号 p. 43-50
    発行日: 1994/01/01
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    胃癌患者20症例を, stage I+II群 (10例), stage III+IV群 (10例) の2群に分け, 末梢血, 術中採取した胃所属リンパ節と脾臓中のリンパ球サブセット, NK活性, IL-2産生能, リセプターを測定し, 胃癌患者の免疫能を検討した.リンパ球サブセットは, OKM 1, 0KT3, 4, 8, 4/8比, OKT4+2H4-, OKT4+2H4+, OKT8+Leu15+, OKT8+Leu15-を使用した.胃癌の進行により, 末梢血中でOKT4, OKT4+2H4-, OKT4/8比が低下する傾向にあり, IL-2産生能は有意に低下した.所属リンパ節では早期癌近位リンパ節のOKT4+2H4-, OKT4/8比が遠位リンパ節に比較して高値で, 進行癌の近位リンパ節は遠位リンパ節と比較してOKT3, 0KT8, 0KT8+Leu15-が低く, OKT4/8が高値であった.すなわち, 胃癌の進行で末梢血では活性化helper T細胞の低下が, 所属リンパ節ではkiller T細胞誘導能の低下が推定された.T細胞サブセットとIL-2産生能は, 胃癌患者における細胞性免疫能判定に有用なパラメターと考える.
  • 柿沼 臣一, 草場 輝雄, 飯島 耕太郎, 三ツ木 禎尚, 村上 淳, 大木 聡, 津田 京一郎, 川辺 昌道, 石田 常博
    1994 年 44 巻 1 号 p. 51-55
    発行日: 1994/01/01
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    最近4年間に経験した上腸間膜動脈閉塞症5例を対象として診断, 治療, 予後について臨床的検討を行った.また, 術前1年間腹部アンギーナの症状を呈していた教訓的な1症例を呈示した.5症例の平均年齢は72歳と高齢であった.3例は, 突然の腹痛で発症した.既往歴は, 心房細動が3例と最も多かった.1例は破裂性腹部大動脈瘤を伴っていた.術前血管造影施行例はなく, 腹膜炎または腸閉塞の診断で開腹された.5例全例に手術が行われ, うち2例は小腸部分切除術, 2例は小腸広範囲切除+結腸右半切除術を施行した.1例は状態が極めて不良のため非切除で閉腹した.発症より24時間以内に開腹された小腸部分切除例の2例のみ救命しえた.腹部救急診療においては, 腹痛の原因として腸管虚血性疾患を念頭におくことが大切であり, 心疾患を有する高齢者で突然の腹痛を来たした場合には, 本症を強く疑い血管造影による早期診断, 早期治療が重要と思われた.
  • 小須田 貴史, 曽根 克彦, 田端 裕之, 篠原 真, 小林 敏宏, 小林 富男
    1994 年 44 巻 1 号 p. 57-62
    発行日: 1994/01/01
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    肺動脈閉鎖をともなった先天性心疾患の肺血管造影像ついて検討した.対象は肺動脈閉鎖をともなった先天性心疾患症例で, 単心室15例 (無脾症11例, 多脾症4例), Fallot四徴症 (Fallot極型) 14例, 純型肺動脈閉鎖9例, 三尖弁閉鎖5例, 修正大血管転位4例, 完全大血管転位3例, 両大血管右室起始3例, 僧帽弁閉鎖2例の合計55例である.
    心血管造影による肺動脈造影所見は, 主肺動脈があるものは33例, 無いものは15例, 造影上不明なものは7例であった.中心肺動脈の左右連続性は47例に認められ, 連続性の無いものは3例であった.中心肺動脈に狭窄のあるものは5例で, 狭窄はいずれも動脈管開存 (PDA) の肺動脈接続部位に認められた.肺動脈への主要な血液供給路はPDAが49例, 右側PDA, 両側PDA, 主要側副血管がそれぞれ2例であった.
    血管造影所見より肺動脈内径の計測が可能で, 肺動脈係数 (PA index) が得られたのは38例であった.肺動脈内径は単心室では左肺動脈内径の方が大きく, Fallot極型, 純型肺動脈閉鎖では右肺動脈内径の方が大きかった.PA indexはFallot極型では単心室, 純型肺動脈閉鎖よりも有意に低値を示していた.
  • 肛囲Paget病の1手術例
    中神 克尚, 大和田 進, 綿貫 文夫, 大矢 敏裕, 吉田 崇, 森下 靖雄, 岡田 克之, 水沼 英樹, 宇津木 利雄, 倉林 良幸
    1994 年 44 巻 1 号 p. 63-67
    発行日: 1994/01/01
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    症例は65歳の女性で, 1年半前より肛門周囲 (肛囲) 掻痒感があった.その後肛囲に出現した塵欄は, 肛門管から膣に及び, 生検でPaget細胞を認めた.乳房外Paget病の診断で, 腹会陰式直腸切断および膣後壁合併切除術を施行した.病理組織学的に, Paget細胞は上皮内に限局し, 断端への浸潤はなかった.肛囲Paget病の治療は腹会陰式直腸切断術を標準術式とし, 生検で他臓器に浸潤していた場合は合併切除を行わなければならない.乳房外Paget病は, リンパ節転移や遠隔転移がみられるほか他癌との合併がみられるため, 厳重な術後の経過観察が大切である.
  • 吉田 崇, 石川 進, 相崎 雅弘, 大滝 彰男, 坂田 一宏, 大谷 嘉巳, 市川 秀昭, 高橋 透, 佐藤 泰史, 森下 靖雄
    1994 年 44 巻 1 号 p. 69-73
    発行日: 1994/01/01
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    下肢静脈閉塞に対する血行再建は, 動脈に比べて開存率の点で未だ問題が多い.著者らは左総腸骨静脈閉塞症の患者に血行再建術を行い, 良好な結果を得たので報告する.患者は63歳の男性で, 左下肢の腫張及び熱感で来院した.静脈造影で左大腿部から骨盤内にかけて血栓による左大腿~総腸骨静脈の閉塞を認めた.手術所見では, 左総腸骨静脈は内外腸骨静脈分岐部の中枢側が細く索状化していた.再建には径10mmのリング付expanded polytetrafluoroethylene (EPTFE) グラフトを用い, 大腿-大腿静脈問交叉バイパス術を施行した.術後12日目の静脈造影でグラフトは開存しており, 術後11ヶ月目の現在症状も改善し, 経過も良好である.
  • 丸山 秀樹, 佐藤 則之, 吉浜 豊, 三田 佳伯, 長嶺 竹明, 新井 孝之, 竹原 健, 山田 昇司, 森 昌朋
    1994 年 44 巻 1 号 p. 75-80
    発行日: 1994/01/01
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    症例は34歳男性.トランスアミナーゼ高値 (GOT211, GPT265) 精査目的にて入院.特異的顔貌, 筋力低下, 筋萎縮, myotonia現象, 筋電図より, 筋緊張性ジストロフィー症と診断した.肝生検及び逸脱酵素アイソザイムより, トランスアミナーゼの高値は筋由来の逸脱であると考えた.Myotoniaに対して, Mexiletine (300mg/日) を用いたところ, gripmyotoniaの弛緩時間 (finger extension time) が著明に改善しmyotoniaに対して有効であったのみならず, 更に, 高値を示していたトランスアミナーゼ値を明らかに低下させた.本症例は, Mexiletineが従来の報告に無い, “筋由来の酵素逸脱の改善” に対しても有効である可能性を示唆したことから, 筋緊張性ジストロフィーの病態, 治療を検討するうえで興味ある一例と考えられたので報告する.
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