食塩摂取量の高い群馬県の中からB市を選び, 40歳以上の地域住民1,475人を対象に, 高血圧の家族歴, 治療歴, 性別に, 推定食塩摂取量, カリウム排泄量, ケトレー指数, 血清コレステロール, 飲酒, 喫煙等の血圧関連因子としての血圧値への影響度を検討した.
対象者は男女それぞれ483と992人, 平均年齢は64と60歳である.このうち, 高血圧者はそれぞれ194と324人で, その内, 高血圧治療中の男女はそれぞれ104と226人であった.家族歴有りの男女はそれぞれ85と170人であった.血圧値は40-50歳代で男性の方が高く, 70歳代では性差はみられなかった.収縮期血圧は男女とも加齢と共に高くなったが, 拡張期血圧ではその現象はほとんどみられなかった.対象者全体の平均1日食塩摂取量は14.52gと高かった.
高血圧治療中の者を除いた集団について収縮・拡張期血圧値を従属変数として重回帰分析を行なった.それによると男性の収縮期血圧値には, 年齢, 飲酒量, 1日食塩摂取量, ケトレー指数, 尿中Na/K比, 血清コレステロールの順で影響していた.男性の拡張期血圧値には飲酒量, ケトレー指数, 血清コレステロール, 尿中Na/K比の順で影響していた.女性の収縮期血圧値は, 年齢, ケトレー指数および1日食塩摂取量の順に規定され, 拡張期血圧値はケトレー指数と年齢の2つによって最も大きく規定されていた.これらとり上げた5-7個の血圧関連因子すべてによっても, 収縮・拡張期血圧の8-18%を説明するに過ぎなかった.
高血圧の治療中の者を除いた群から高血圧の家族歴の有る群をとり出して, 同様に重回帰分析をすると, 特に男性で, ケトレー指数と飲酒量の重みが大きくなり, 説明割合も25-26%と大きくなった.
以上まとめると, 高血圧の治療中の者を除いた群の収縮期血圧を規定する要因としては年齢を除いて, 食塩摂取量, ケトレー指数および飲酒量 (男性) が重要であり, 拡張期血圧を規定する要因としてはケトレー指数と飲酒量 (男性) が重要であることがいえた.
抄録全体を表示