北関東医学
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44 巻, 3 号
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  • 倉林 均
    1994 年 44 巻 3 号 p. 181-192
    発行日: 1994/05/01
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    44例の多発性骨髄腫の患者で腫瘍細胞の透過電子顕微鏡所見と臨床像, 薬剤感受性及び予後との関連を検討した.核の成熟度によって骨髄腫細胞を成熟, 中間並びに未熟型に分類した.化学療法に対する反応性は骨髄腫細胞が未熟な核を持つ症例で最も悪かった.これに反して細胞質の成熟度と化学療法の反応性との間には相関関係は認められなかった.種々の核や細胞質の異常が観察されたが, 細胞小器官の配列異常, single sac loop-like structureとミトコンドリア内顆粒増加の認められた症例では化学療法に対する反応性が悪かった.また多くの種類の異常構造が見られる症例ほど生存期間が短かった.腎障害例では未熟型細胞質やbuddingが多く見られた.このような成績から骨髄腫細胞の電子顕微鏡的観察は本症患者の治療に有用な情報を提供すると考えられる.
  • 横山 知行
    1994 年 44 巻 3 号 p. 193-201
    発行日: 1994/05/01
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    成熟した心臓におけるTumor necrosis factor-α (TNFα) の正常左室及び正常単離心筋細胞に対する作用を正常な摘出心および単離成熟心筋細胞を用いて検討した.
    TNFα投与により濃度及び時間依存性, かつ, 可逆的な負の変力作用が認められた.
    TNFαの投与を中止すると収縮力は回復した.負の変力作用は投与後約15分で出現し, その國値濃度は約100U/mlであった.心筋細胞におけるTNFαの作用は抗TNFαにより発現を抑えられた.以上の実験結果から, TNFαは成熟心筋細胞レベルにおいて直接的に負の変力作用を示すが, これはTNFαのcytotoxicな作用によるものではなく, また, 心筋細胞周囲に存在する他の細胞から分泌される物質による2次的な作用でもないことが明らかになった
  • 電顕および内分泌学的検討
    太田 直樹
    1994 年 44 巻 3 号 p. 203-217
    発行日: 1994/05/01
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    糖尿病妊婦の新生児にみられる合併症として一過性の心筋障害の発生が知られている.このような心病変の成因を明らかにするため, 著者はストレプトゾトシンにより作製した糖尿病ラットを妊娠させ, その仔ラットの心形態変化を胎令15日より生後2日まで光顕および電顕を用いて観察した.また, 成長因子であるIGF-I, インスリンを測定し, 胎仔の発育および心肥大との関連について内分泌学的に検討した.DM群 (糖尿病ラットの仔), 対照群 (非糖尿病ラットの仔) とも胎生15日から18日まで非対称性心室中隔肥厚 (DVST) を呈した.対照群では胎生21日よりDVSTが消退したが, DM群では胎生21日で76%, 生後2日で60%にDVSTが残存した.電顕による観察で胎仔心の心筋細胞間結合は未熟な形態である側側結合や端側結合が多く, その頻度は胎齢にしたがって減少したが, DM群では胎生21日, 生後2日で対照群に比し未熟な心筋細胞間結合が有意に多く残存していた.DM群の胎仔および新生仔では血清IGF-I, 血清インスリン, 膵インスリン含量の低下を認め, また, 血清IGF-Iと血清インスリンは心/体重比および心室中隔壁厚/左室自由壁厚比と負の相関を示した.以上のように, 糖尿病母体新生仔ラットでは胎児期の未熟な心形態が新生仔期まで残存して新生仔ラットの心にDVSTを呈するが, その要因のひとつとして胎生発育期における血清IGF-Iと血清インスリンの欠乏との関与が考えられる.
  • 運動耐容能および心機能による評価
    山口 悦男
    1994 年 44 巻 3 号 p. 219-227
    発行日: 1994/05/01
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    体動感知心拍応答型ペースメーカー (rate responsive pacemaker) を植え込んだ13例を対象とした.treadmillによる30秒毎の漸増運動負荷時に呼気ガス分析および連続波ドプラ検査を行い, 運動耐容能および心拍出量を測定し, 体動感知心拍応答型ペースメーカーの有用性および至適ペーシング数について検討した.
    最高酸素摂取量 (peak VO2) および嫌気性代謝閾値 (ATge) は, 心拍固定型心室ペーシング (VVI) にくらべ心拍応答型心室ペーシング (VVIR) で有意に増加した.VVIRでペーシング数を最大110beatsper minute (以下bpm) に設定した時 (VVIR 110) と130bpmに設定した時 (VVIR 130) のpeak VO2はそれぞれ20.3ml/min/kg, 19.2ml/min/kg, ATgeはそれぞれ15.4ml/min/kg, 14.6ml/min/kgであり, いずれもVVIR110の方が高値であった.
    最大運動時の心係数 (CI) は, VVIにくらべVVIRで有意に高値であったが, VVIR110とVVIR130とでは, それぞれ5.14L/min/m2, 5.23L/min/m2と有意差がなかった.
    以上のように, VVIRではVVIにくらべ心拍出量および運動耐容能が増加する.しかし, ペーシング数を110bpmから130bpmに増加させても心拍出量の更なる増加はなく, また, peakVO2, ATgeはVVIR110の方が大であったことから考えると, ペーシング数110bpmの方がすぐれている.
  • 山内 康彦
    1994 年 44 巻 3 号 p. 229-237
    発行日: 1994/05/01
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    心筋梗塞患者416例 (男性339例, 女性77例, 平均年齢57.8歳) の退院後の経過を平均6.9年間追跡し, coronary intervention, 再梗塞, 胸痛の有無, ならびにquality of life (QOL) について調査した.性・年齢別, 初回か再梗塞か, 冠危険因子, 入院時検査所見, 心電図, 心エコー, 負荷心電図と心臓カテーテル検査ならびに冠動脈造影の所見を因子として統計処理した.追跡不能4例, 院内死亡20例, 心臓死42例 (再梗塞15例, 心不全・突然死27例), 非心臓死33例, 経過中に経皮的冠動脈形成術 (PTCA) あるいは冠動脈バイパス術 (ACBG) を必要としたもの61例, 再梗塞の発症28例であった.死亡例では生存例にくらべて年齢が高く, 左室拡張末期径が大きく, 罹患冠動脈枝数が多く, 再梗塞例が多かった.これらは生命についての予後を悪化させる要因である.また, 悪化には, 血清総コレステロール値, LDLコレステロール値, 罹患冠動脈枝数が影響していた.QOLには胸痛の有無の関連が大であり, 心機能, 負荷心電図の結果や罹患冠動脈枝数との関連は明かでなかった.院内死亡を除く, 5年生存率は82.5%であり, 罹患冠動脈枝数別にみると, 1枝以下で90.4%, 2枝以上で84.3%であった.
  • 大島 伸浩
    1994 年 44 巻 3 号 p. 239-249
    発行日: 1994/05/01
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    初代培養ラット大動脈平滑筋細胞を用いて45Ca2+とMn2+流入, 細胞内Ca2+の移動を抑制した状態での細胞外Ca2+による [Ca2+] iの上昇をfura2で測定し, Ca2+流入の生理学的特徴を調べた.Ca2+流入は, dihydropyridine (DHP) 感受性電位依存性Ca2+チャンネル阻害物質であるPN200-110や過分極により抑制され, DHP感受性電位依存性Ca2+チャンネル活性化物質であるBay K 8644で増加した.
    Ca2+流入は, エンドセリン-1やPMAにて抑制され, この抑制効果はスタウロスポリンにより消失した.従って, この細胞では, C-キナーゼの活性化によりDHP感受性電位依存性Ca2+チャンネルが抑制されると考えられた.Mn2+流入では, DHP抵抗性電位依存性の流入経路が存在し, PMAやエンドセリン-1および [Ca2+] iの上昇に影響を受けなかった.平滑筋では筋小胞体 (SR) が大きなCa2+プールとなっており, SRのCa2+ポンプ活性が45Ca2+取り込みの速度に影響を与えているものと考えられた.
  • パーキンソン病の成因との関連
    外松 明美
    1994 年 44 巻 3 号 p. 251-262
    発行日: 1994/05/01
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    カテコールと鉄の相互作用を基礎的に検討し, さらに, カテコールないしメラニンと鉄による細胞毒性を生体膜脂質過酸化反応の観点から明らかにした.すなわち、ドーパと3価鉄・ADP複合体は0.1Mトリス塩酸緩衝液 (pH7.4) 中で錯体をなし, その構成比はドーパ : 3価鉄=1.3 : 1であった.この錯体は、さらに酸素分子が付加することにより, より強力な酸化剤となり, 生体膜リン脂質の脂質過酸化反応を惹起した.この反応には, スーパーオキシド, 過酸化水素, ヒドロキシルラジカル, あるいは一重項酸素の関与はなかった.ドパミン, エピネフリン, ないしノルエピネフリンもまた, 3価鉄存在下にドーパに比し弱いながらも脂質過酸化能を発揮した.また, メラニンは3価鉄・ADP存在下に生体膜リン脂質の脂質過酸化を惹起し, この反応にはスーパオキシドの関与が示唆された.
    以上の結果から, 内在性のカテコールないしメラニンと鉄による脂質過酸化反応が黒質神経細胞の変性脱落の一因となり得ると考えられた.
  • 柿沼 臣一, 草場 輝雄, 鈴木 良彦, 大和田 進, 横田 徹, 坂田 義行, 石田 常博, 森下 靖雄
    1994 年 44 巻 3 号 p. 263-268
    発行日: 1994/05/01
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    1984年以来施行してきた切除不能膵癌に対する術中照射 (Intraoperative Radiotherapy, 以下IOR) の治療成績について検討した.IOR施行例は13例で, 進行度はStage IIIが1例, Stage IVが12例であった.9例に術後外照射を追加した.術中照射線量は25Gyで, 全例に消化管バイパス術と胆道バイパス術 (幽門側胃切除Billroth II法再建および胆嚢空腸吻合 (Roux-Y)) を行った.IORおよび付加手術に起因する縫合不全や消化管出血などの早期合併症は経験しなかった.平均生存期間は12カ月, 50%生存期間は10カ月で, 36カ月の長期生存例もみられた.術前疼痛の認められた10例全例に疼痛の消失または軽減を認めた.全例一度は軽快退院し, 社会復帰を果たせる症例もあった.IORによる除痛と付加手術は, quality of lifeの向上に貢献しているものと考える.
  • 高橋 篤, 松山 四郎, 鈴木 則夫, 黒岩 実, 池田 均
    1994 年 44 巻 3 号 p. 269-276
    発行日: 1994/05/01
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    胆道閉鎖症の肝門部空腸吻合術後に生じる上行性胆管炎 (AC) について, 当科で経験した77回のACをretrospectiveに検討した.
    AC発生は術後2年まで, 黄疸再上昇例, 肝門部空腸吻合を出生41日以後に行った例に多く, 発熱と胆汁流出量減少をきたした場合の半数以上はその後総ビリルビン上昇をきたした.AC治療46回中24回に1-2ヶ月後の再発生や胆汁減少の持続が認められた.AC短期予後は術後2年以上, 出生40日以内手術例, 長期黄疸消失例に良好であった.AC発生時の総ビリルビン上昇程度と短期予後は相関しなかった.ACに対して外科的治療が有効の場合もあった.
    以上より, ACの発生や治療面からは, 早期に肝門部空腸吻合を行う必要性が示唆された.また, 術後2年までは厳重なフォローを行い, 発熱と胆汁減少を認めた場合はACを疑い積極的な原因の検索と治療が必要と考えられた.
  • 小玉 仁, 吉田 一郎, 大谷 嘉己, 石川 進, 大滝 章男, 川島 修, 森下 靖雄
    1994 年 44 巻 3 号 p. 277-282
    発行日: 1994/05/01
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    重症筋無力症に対して拡大胸腺摘出術を行ない, 1年以上経過観察しえた26例について術後の治療効果を経年推移も含めて検討した.また, 拡大胸腺摘出術の治療効果に影響を及ぼす可能性のある背景因子により有効率を比較した.治療効果の最終評価は, 寛解が5例 (19%), 改善が13例 (50%), 不変が5例 (19%), 増悪が2例 (8%), 死亡が1例 (4%) であり, 寛解と改善を合わせた有効は18例 (69%) であった.寛解率と有効率ともに術後の年数が経過するほど上昇した.背景因子別の治療効果の比較では, Osserman分類, 性別, 発症および手術時年齢, 病悩期間, 胸腺腫の有無, 術前抗アセチルコリン受容体抗体価による拡大胸腺摘出術の有効率の差に有意を示すものはなかった.重症筋無力症に対しては, 背景因子にかかわらず拡大胸腺摘出の適応があり, その治療効果はdelayed remissionの傾向にあるため, 術後長期間の経過観察が重要と考えられた.
  • 井上 洋, 甲賀 英明, 小林 聡, 大林 克巳, 杉田 正夫, 西松 輝高, 鶯塚 明能, 角田 忠生
    1994 年 44 巻 3 号 p. 283-287
    発行日: 1994/05/01
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    頭蓋頸椎移行部病変に対する我々の治療方針および手術法について, 症例を提示して述べた。同部の不安定性により症状の出現した症例に対しては, ハローベストにて徐々に牽引矯正し, 神経所見およびMRI所見の改善程度によりその後の治療法を決定した.病態と症状の軽快消失した症例に対しては, 後方アプローチにて大孔減圧術に後頭骨頸椎固定術を行った。牽引にて改善の少ない症例には, 後方減圧固定術と前方からの経口腔的odontoidectomyを行った.本法にてより安全確実な治療が行えるが, 今後頭頸部の可動制限を少なくする方法の開発が望まれる.
  • 平井 利和, 浜田 芳郎, 狩野 貴之, 小林 純哉, 遠藤 敬一, 森下 靖雄
    1994 年 44 巻 3 号 p. 289-295
    発行日: 1994/05/01
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    術後病理病期1期 (pI期) 肺癌196例の予後について検討した.pI期全体の5生率は73%, pT因子別5生率はpT1が83%, pT2が59%で両群間に有意差 (P=0.0003) を認めた.年齢分布別では70歳以上と70歳未満の各群間に有意差 (p<0.01) を認め, 70歳以上は予後不良であった.腫瘍径別では腫瘍径3cm以下と3cmより大きいものとの問に有意差 (p<0.01) を認め, 腫瘍径が3cmより大きいものは予後不良であった.組織型別では腺癌が扁平上皮癌より予後良好な傾向 (p=0.062) にあった.性別では女性が男性より予後良好な傾向 (p=0.052) にあった.その要因は腺癌ではpT1の比率が高いこと, 女性ではpT1の腺癌の比率の高いことが考えられた.
    全死亡例は50例で, うち再発死亡は25例 (12.8%) であった.再発様式は局所再発が4例と少なく, 遠隔転移が21例と大部分を占めた。また, pT2の腺癌の再発死亡は11例 (32.4%) と高かった.今回の検討より, pI期例の予後向上, 特にpT2の腺癌において, 遠隔転移に対する有効な術後補助療法が必要であるとの結論を得た.
  • 浜田 芳郎, 平井 利和, 安東 立正, 富沢 直樹, 狩野 貴之, 小林 純哉, 蒔田 富士雄, 遠藤 敬一, 森下 靖雄
    1994 年 44 巻 3 号 p. 297-302
    発行日: 1994/05/01
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    症例は69歳女性で, 原発性肺腺癌の診断で右下葉切除を受けた.術後2週目の胸部単純X線写真で, 右下肺野に鏡面形成がみられ胸腔ドレナージを行った.気管支鏡で下葉気管支断端と中葉支側壁に瘻孔を認めた.胸腔ドレーンを通して洗滌し, さらに術後第51病日に開窓術を行った.3週間の開放療法の後, 有茎大網充填術を施行し, 気管支断端瘻膿胸を治癒せしめた.肺機能 (%VC) は, 術前86.6%で大網充填術後術後8カ月目では35.6%であった.
  • 津田 京一郎, 川邊 昌道, 石田 常博, 大木 聡, 飯島 耕太郎, 三ツ木 禎尚, 村上 淳, 柿沼 臣一, 草場 輝雄
    1994 年 44 巻 3 号 p. 309-316
    発行日: 1994/05/01
    公開日: 2009/10/21
    ジャーナル フリー
    症例は66歳, 女性.健診で胸部異常陰影を指摘され, 縦隔腫瘍の疑いで当科入院となった.胸部X線写真では右第1弓の著明な突出と左肺門部に腫瘤影を認めた.胸部CT, MRIでは縦隔及び左肺門リンパ節の著明な腫大が認められ, その一部は右頚部にまで及んでいた.また胸部CTで左下葉に胸膜嵌入を伴う径5mmの結節陰影を認めたが, 肺癌の確診は得られなかった.当初悪性リンパ腫を疑ったが, Gaシンチで集積なく, CEA高値のため, 診断目的で右頚部リンパ節生検を行った。病理所見は大小の濾胞形成からなる甲状腺腫であった.次に右開胸で縦隔郭清を行ったところ, 病理所見は腺癌のリンパ節転移であった.左下葉肺癌の縦隔転移と診断し, 左下葉切除郭清を行い確診を得た.最終診断は完全型縦隔内甲状腺腫を合併した小型進行肺癌 (III B期) とした.CEA高値を示す縦隔腫瘍では, 小型進行癌も鑑別診断に加え検査を進めることが必要と思われる.
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