術後正常腎機能で経過した開心術9症例について, 術前日および術後第1病日から第7病日まで腎機能検査値と尿中中分子量物質を測定し比較検討した.腎機能の指標として, クレアチニンクリアランス (Ccr), ナトリウム排泄比 (FeNa), 自由水クリアランス (FWC) を測定した.尿中物質としては, 尿細管由来酵素のN-acetyl-β-D-glucosaminidase (NAG) やα1-macroglobulin (α1M), β2-microglobulin (β2M) を測定した.全例とも術後腎不全を発症せず, Ccr, FeNa, FWCは術前値より改善ないし不変の経過をたどった.一方, NAGは第7病日, α1Mは第6病日, β2Mは第2病日まで術前値に比べ有意に (p<0.05) 高値であった.開心術後は, Ccrなどの腎機能検査値に異常を示さない症例においてもNAG, α1M, やβ2Mは高値を示し, 潜在性腎傷害の存在が示唆された.腎機能検査値と尿中物質量とは弱い相関を示すのみで, 中分子量物質の急性腎不全に対する診断的意義は低いと考えられた.
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